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Tuesday, September 27, 2011

「野田オバマ会談報道はおかしい」その後

9月23日の投稿「野田オバマ会談報道はおかしい」では、オバマが野田に首脳会談で「結果を求めた」「強く迫った」というマスメディアの報道は誤りであり、これは国務省記者会見でカート・キャンベル東アジア・太平洋担当米国務次官補が会談の報告として言ったことを、大統領の発言かであるかのように報道したものである、と伝えた。

そして、9月24日の投稿「日米会談 オバマ発言とされたものを野田が否定」では、琉球新報テレビ朝日が、首脳会談後の記者との懇談で野田氏が「結果を求める」と言ったかどうかについては、「首をかしげ」、「進展を『期待』する」という話はあった」と話したと報じた。

9月27日には、26日の衆院予算委で野田氏は、この件について聞かれ「大統領本人というよりも、ブリーフ(説明)をした方の個人的な思いの中で出たのではないか」と答えた、との報道があった(琉球新報)。私の当初の投稿が国会議員やメディアに読まれているかどうかは不明だが、この件が国会にまで持ち込まれ、メディアの誤報道が明らかになったことは評価できることである。

27日の琉球新報は社説でこの件を取り上げた(下方記事参照)。「結果を求める時期が近付いてきている」と「進展に期待する」とでは随分ニュアンスが違うので、カート・キャンベルの言っていることが、会談の内容を誤って伝えており、それは意図的であった可能性があるとしている。キャンベルは、辺野古に基地を新設したがっている「ジャパン・ハンドラーズ」と言われている人たちの一人であることからも、そういうことをする可能性がないとは言えない。しかし、私から見ると、キャンベルが言ったことと、野田が言ったことにそこまでの乖離はないのではないかと思う。

もう一度、キャンベルが言ったことを読んでほしい。ここに再度引用する。(くわしくは23日投稿参照)
キャンベル:We all acknowledged the challenges associated with Futenma replacement. But I think both sides understand that we’re approaching a period where we need to see results, and that was made very clear by the President. (国務省ウェブサイトより

キャンベル「普天間移設問題についての様々な課題を我々は皆認識した。しかし日米双方とも、そろそろ結果を見る必要のある時期に近づいていることを理解しているし、大統領もその点を非常に明確にしていた。」
キャンベルがここで言っているのは、「我々は」という言葉で、「日米双方が」と言っているのである。米側が日本側に何か要求したとは言っていない。また、「結果を求める」とは言っていない。「結果を見る必要のある時期に近付いている」と言ったのである。また、彼は大統領の言葉の引用としてそれを言ったのではなく、会談のまとめとして自分の言葉でこれを言ったのである。その後に言った、「オバマがこの点を非常に明確にした」というのはキャンベルの解釈で付け足したのではないかと私はにらんでいるが、今は、確実に言ったとわかっていることに焦点を置こう。私は、この言葉と、野田氏によるオバマの言葉「進展を期待している」の間に大差はないと思っている。ニュアンスの違いは、キャンベルが言ったことと野田が言ったことの間にあるのではなく、キャンベルや野田が表現したことと、日本メディアが報じたことの間にある。

要するに、日本メディアは、キャンベルが言ったことを、米側が日本側に強い圧力をかけたかのように演出し、報道したのである。(もちろんその演出の度合いにはかなりの差がある。比較的フェアな報道をしたところもある。下記参照)

また、特記しておきたいのは、23日の投稿でも書いたように、外務省側の会談の要旨には、普天間問題についての米側からの発言が何かあったという記録は全くない。なので、やはり、記者会見でのキャンベルの発言が、野田氏のいうように「個人的な思い」から出た言葉である可能性はあると思う。会談録が公開されていないのだから報道するのも手探りであるというのはわかる。しかし、外務省の要旨国務省記者会見でのキャンベル発言から見ると、このようにまとめることができると思う。今回の会談では普天間問題については米側からの具体的な意見は特に出されなかった可能性が高く、何か言ったにしても、野田首相による「日米合意を進めたい。沖縄の理解を得るべく全力を尽くす」との発言に対して、表現はともかく、「わかりました」程度の返答があっただけではないかと。

いずれにせよ、普天間問題や日米関係についての「米側の立場」というのは誤って報道されることが多く、多くの場合はそのままにされてしまっていた。今回は、琉球新報が指摘し、社説でも取り上げ、毎日新聞やTV朝日なども報道し、国会答弁でまで取上げられたということは、大きな進歩であると思う。今回のことが、日本の人たちにとって、「米側の圧力」というものがメディアで報道されるときに、注意して読むきっかけになればと願う。@PeacePhilosophy

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23日の時点では報道諸例をしっかり紹介しなかったが、報道はこのようであった(全部網羅はしていない)。この中では唯一、普天間問題については、正確な報道をしたのが「日経」であると思う。なぜかというと、普天間問題については野田首相からの発言しか引用しておらず、米側が何か言ったとは報道していないからだ。

他の報道については、上記のキャンベル発言の解釈がこのような報道になった、ということを、見てほしい。

時事 「野田首相、普天間進展へ課題背負う=米の強硬姿勢鮮明に―日米首脳会談」
21日行われた野田佳彦首相とオバマ大統領による初の日米首脳会談。懸案の米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)移設問題をめぐり、米側の厳しい姿勢が鮮明になった。大統領選を来年11月に控え、米国の対日圧力がさらに強まるとみられるが、日米合意に反発する沖縄の理解が得られるめどは立っていない。外交初舞台の首相は、出だしから重い課題を突き付けられた。

 「結果を出す時期が近づいている」。大統領は首相との会談で、時間を惜しむかのように本題に切り込んだ。首相同行筋によると、クリントン米国務長官ら同席者が自己紹介をする間もなく、大統領は強い口調で普天間問題を進展させるよう首相に詰め寄ったという。
 読売 日米首脳会談 同盟深化へ 「結果」を出す時だ

「結果を出す時期が近づいている」。大統領は首相との会談で、時間を惜しむかのように本題に切り込んだ。首相同行筋によると、クリントン米国務長官ら同席者が自己紹介をする間もなく、大統領は強い口調で普天間問題を進展させるよう首相に詰め寄ったという。

大統領は、米軍普天間飛行場の移設問題について「結果を見いだすべき時期に近づいている」と述べ、進展に強い期待を示した。
産経 日米首脳会談、オバマ大統領「結果求める時期近い」 普天間進展強く迫る
大統領は米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾(ぎのわん)市)移設問題について「結果を求める時期が近づいている」と具体的な進展を強く求めた。

 首相は昨年5月の日米合意の履行に向け、沖縄県民の理解が得られるように全力を挙げると表明。大統領は「進展に期待する」と念を押した。 
日経 野田首相、米大統領との初の会談 日米同盟深化を確認

首相は沖縄県の普天間基地移設問題を巡り、同県名護市辺野古移設を明記した昨年5月の日米合意を踏まえるとの考えを伝達。「沖縄の負担軽減を考えながら、沖縄の皆さんのご理解を頂けるよう全力を尽くす」と述べた。
東京(「核心」より) 普天間移設 米が結果要求 日米首脳会談

野田佳彦首相とオバマ米大統領の初の日米首脳会談はオバマ大統領が一向に前進しない米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設問題について進展を迫るなど、野田首相にとっては厳しい内容となった。
西日本 首脳会談 「結果を」と迫られる日本
就任して間もない首相にとって初めての首脳会談であり、日本側は首脳同士が信頼を構築する「顔合わせ」的な話し合いを予想していたかもしれない。だが、少なくともオバマ大統領は、そんな悠長な構えではなかったようだ。

 「目に見える結果を求める時期が近づいている」

 日米首脳会談で、オバマ大統領は懸案の米軍普天間飛行場移設問題について、強い言葉で早期の具体的進展を迫った。

 野田首相は「日米合意にのっとって沖縄の負担軽減を図りながら、沖縄の皆さまの理解を得られるよう全力を尽くす」と応じた。沖縄県名護市辺野古に移すとした日米合意の実現を目指し、沖縄への説得を強める姿勢を示したものだ。

 しかし、通常、一般社会で「結果を出せ」と言うときは、「『努力します』などの弁解は聞きたくない」との意味が込められている。「全力を尽くす」とした首相の応答に、オバマ大統領は不満だったろう。
毎日 日米首脳会談:「普天間、結果求める時期」米大統領、首相に打開要請

米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設問題について、首相は同県名護市辺野古に移す昨年5月の日米合意の履行に全力を尽くすと表明したが、大統領は「結果を求める時期が近い」と述べ、進展に向けて日本側の努力を強く求めた。
朝日 米、「普天間」履行迫る 日米首脳会談 
大統領は、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設について、具体的な結果を出すよう野田首相に要求。首相は同県名護市辺野古に代替施設を建設する日米合意の早期の履行を迫られた。
・・・普天間問題について、首相は「引き続き日米合意に従って協力を進めたい。沖縄の人々の理解を得るように全力を尽くしたい」と強調。大統領は「これからの進展に期待をしている」と語った。会談に同席したキャンベル米国務次官補は終了後、記者団に「両国は結果を求める時期が近づいている、と理解している。その点は大統領が非常に明確にした」と説明した。
新聞あかはた 新基地建設 米「結果」迫る 
懸案の米海兵隊普天間基地(沖縄県宜野湾市)「移設」問題について大統領は「結果が必要だ」と強調し、同県名護市辺野古に新基地を建設するとした日米合意の履行を迫りました。首相は「全力を尽くしていく」と約束しました。

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参考資料 琉球新報9月27日社説


1 comment:

yes to peace said...

「ニュアンスの違いは、キャンベルが言ったことと野田が言ったことの間にあるのではなく、キャンベルや野田が表現したことと、日本メディアが報じたことの間にある。

要するに、日本メディアは、キャンベルが言ったことを、米側が日本側に強い圧力をかけたかのように演出し、報道したのである。」

まったくその通りだと思います。キャンベルの会見内容、外務省の要旨、各新聞の報道を読み比べると、日本メデイアによる脚色がよく見えてきました。

(1)時事の記事。

「『結果を出す時期が近づいている』。大統領は首相との会談で、時間を惜しむかのように本題に切り込んだ。首相同行筋によると、クリントン米国務長官ら同席者が自己紹介をする間もなく、大統領は強い口調で普天間問題を進展させるよう首相に詰め寄ったという。」

この記事では、大統領が「時間を惜しむかのように本題に切り込んだ」とか「クリントン米国務長官ら同席者が自己紹介をする間もなく、大統領は強い口調で普天間問題を進展させるよう首相に詰め寄った」と、非常に臨場感あふれる、まるで映画の一場面のような、あたかも記者自身が会談の場にいて実際に見てきたかのような描写がなされています。

しかし、日米政府の公表した記録にはそういう描写はどこにもありません。「首相同行筋によると」とあるから、その場にいた外務省官僚にでも聞いたのでしょうか? 

いずれにせよ、公式記録にはない描写を加えて、かなりの脚色をしていることが明らかです。そして、その描写は「米の強硬姿勢」「米国の対日圧力」を”例証”するために加えられたのでしょう。とすると、時事には、会談で実際に何が話されたかを検証することなく、「米の強硬姿勢」「米国の対日圧力」の筋書きがはじめからあったのでは、と勘ぐりたくなります。

(2)時事の記事をリサイクル/追随している殆どの他社 

日本側の発言しか伝えていない日経を除き、他社も多かれ少なかれ時事の「米の強硬姿勢」「米国の対日圧力」の筋書きを踏襲しています。読売にいたっては、かの臨場感あふれる描写もほぼそのまま写しています。(「大統領は首相との会談で、時間を惜しむかのように本題に切り込んだ。首相同行筋によると、クリントン米国務長官ら同席者が自己紹介をする間もなく、大統領は強い口調で普天間問題を進展させるよう首相に詰め寄ったという。」)

日本の報道機関には、日米政府間に立場の相違がある時は米国が「強硬姿勢」に出て「対日圧力」をかけてくる、という筋書きが(長年の対米従属の結果?)頭の中にしみ込んでしまっていて、記事を書くとき自動的にその筋書きが出てきてしまうのでしょうか? それともメデイア自体に何かアジェンダがあるのでしょうか? (例えば、新政権に「重い課題」を負わせたい、とか?)

(3)時事がかなりカラフルに脚色した記事を発信し、他社の殆ども同じ筋書きの記事を出しているのを読んで、鉢呂元経産大臣の「問題発言」の報道を思い出しました。

あれほどヒステリックではないにせよ、一社が言い出したことを、その情報の正確さも確かめもせずに繰り返す。これは、鉢呂スキャンダルの時と全く同じパターンではないか? そもそも、時事の臨場感あふれる描写が匿名の情報源からの伝聞だった。その伝聞が、既存メデイアが忌み嫌う「チェーン・メール」のように、他社によって繰り返された。そして、米国の「強硬姿勢」、「対日圧力」という筋書きが、事実の検証抜きに一人歩きした。鉢呂元大臣が言ったという「問題発言」のように。

ずい分長くなりましたが、このようなことを考えさせてくれた、とても刺激に満ちた検証シリーズをありがとうございました。大手報道機関の報道姿勢と手法について、大変勉強になりました。

通信社、見てきたような うそを言い。