To view articles in English only, click HERE. 日本語投稿のみを表示するにはここをクリック。点击此处观看中文稿件한국어 투고 Follow Twitter ツイッターは@PeacePhilosophy and Facebook ★投稿内に断り書きがない限り、当サイトの記事の転載は許可が必要です。peacephilosophycentre@gmail.com にメールをください。Re-posting from this blog requires permission unless otherwise specified. Please email peacephilosophycentre@gmail.com to contact us.

Friday, April 06, 2012

原発が「安い」?それはあなたの税金で補助しているからです。NYT紙: 原子力発電の「育成」 和訳 The Nurture of Nuclear Power

日本の脱原発の道へ示唆することが多いと思われる、2012年3月26日『ニューヨーク・タイムズ』紙、3月23日のmsnbc.comからの記事の和訳を紹介する。

NYT記事でフォルバーが指摘している「原子力産業の育成」構造は日本にも当てはまる。国家が多額の補助金を出して原子力産業を「育成」し、いったん事故が起きても国家が救済し、被害者への賠償は電気料金値上げで賄おうとする。一人一人の市民は、一瞬でも立ち止まって考えれば「国家」の名の下に、「料金」の名の下にすべて結局自分たちが搾取されていることに気づくだろう。私たち一人一人、自らの貴重な資産を盗み健康を害す犯罪者に小遣いをやって支えてきたようなものだ。これ以上こんな腐った産業を支え続けるのか、一人一人が自らを問う必要がある。

核の力、原子力を作り出したアメリカでも、市民による原子力発電所への反対運動が続けられている。原子力を推進する組織の力は当然ながらアメリカでも強く、老朽化した原発の運転延長を司法も止めることができないでいる。しかし、州知事は稼働停止を求めて法廷で争っており、アメリカとて一枚岩なわけではない。市民の側も逮捕を厭わず抗議行動に臨んでいることが、以下の記事に紹介されている。そして、アメリカにはこのような反対運動を報道するメディアが健在である。

翻訳 酒井泰幸

The Nurture of Nuclear Power
原子力発電の「育成」
ナンシー・フォルバーNancy Folbre):マサチューセッツ大学アマースト校、経済学教授

規制当局と議会は、ニューヨーク・シティの北、ブキャナンにあるインディアン・ポイント2号機のような、アメリカの老朽化しつつある原発を依然として支持している。
写真:Librado Romero/The New York Times


自由市場経済? 州の自治権? 世論? 原子力産業はこれらの概念を、原子炉格納容器に向かって投げ付けられた小石のように跳ね返す。

太陽電池メーカーのソリンドラ社が昨年秋に倒産し、オバマ政権が約5億6千3百万ドルの債務保証を行ったときの大論争を覚えているだろうか。その一方で、巨大電力会社サザン・カンパニーがジョージア州で原子炉を建設するために、エネルギー省が83億ドルに上ると見られる債務保証をしたことに対して、オバマ大統領も議会の共和党員も反対の声を上げなかった。

この比較への回答を求められて、フロリダ州の共和党員で、エネルギーと商業の監視・調査に関する小委員会の委員長であるクリフ・スターンズ下院議員は、原子力発電所建設のための債務保証は「好成績な記録を打ち立てている、確立された産業」のためのものだったと説明した。

原子力産業は確かに記録を打ち立ててきた。しかしそれは恐ろしい事故についてのものである。いちばん最近では、日本の福島第一原発事故で、9万人の住民が避難させられ帰宅の目処も立たず、また首相の退陣にもつながった。福島事故はドイツ政府を動かし、2022年までに全ての原子力発電を撤廃する動きが始まった。

しかし原子力産業は、事故賠償に対する公的保証から債務保証にいたるまで、アメリカで公的支援を獲得することに関して非常に長けていることが証明されてきた。ウォール・ストリート・ジャーナルの昨年の記事では、開発初期段階での電力1キロワット時あたりの補助金は、太陽光や風力エネルギー技術に与えられるものを大きく上回ることが報じられた。

憂慮する科学者の会(Union of Concerned Scientists)が発表した詳細な報告書によれば、核燃料サイクルに対する補助金は多くの場合、発電した電力の価値を上回っている。公開市場で電力を購入して無料で配った方が安く上ったはずである。

安全性に対する関心が高まったので、最近ではコスト見積もりがさらに高くなり、ほとんどの民間投資家は逃げ出している。原子力産業についての著作が多い投資アナリストのトラヴィス・ホイム(Travis Hoium)は、ウエブサイト「The Motley Fool」で、原子力を衰退産業と呼んでいる。ある記事で彼は、建設資金を前もって料金に上乗せすることを電力会社に許すことで、リスクを投資家から料金負担者に移し替えようとする最近の動きを、「ウォーレン・バフェットがあなたから補助金を求めている」と明解に説明している。

原子力発電に対する投資家の関心が低下したのは、一部ではシェール・ガスの採掘ブームの結果である。しかし、炭素排出を増加させないエネルギー源も大きな役割を担っている。風力や、水力、その他の再生可能エネルギーは、2010年から2035年の間に、アメリカでの新規発電能力の約30パーセントを担うと予測されている。

その一方で、私が住むマサチューセッツ州の西部に近いバーモント・ヤンキー原発のように、福島で爆発したのと類似設計のものを含む、23ヶ所の原子力発電所が、アメリカで稼働を続けている。ニューヨーク・シティからわずか24マイル(約38キロ)北に位置するインディアン・ポイント2号機のように、バーモント・ヤンキー原発は設計寿命の終わりを迎えているが、原子力規制委員会は地元の反対にもかかわらず認可の延長を支持した。

バーモント州知事と州議会は廃炉を要請した。しかし連邦地方裁判所は、バーモント州の動きは安全性への懸念によって「不適切に動機づけられている」と裁定し、安全性は連邦原子力規制委員会の管轄であるとした。バーモント州が上級審に上告している間も、バーモント・ヤンキー原発は稼働を続けている。

3月22日、この原発に反対して千人以上がデモ行進に参加し、信念の固い93歳の活動家フランシス・クロウ(Frances Crowe)を含むおよそ130人が市民的不服従に関与したとして逮捕された。

米非営利調査機関ピュー・リサーチ・センター(Pew Research Center)の最近の調査によれば、アメリカ人の44パーセントが原子力の推進を支持する一方、69パーセントが風力、太陽光、水素エネルギー技術の研究に対する連邦予算の増額を支持した。

ならば、なぜ私たちは、他のより安全でコストの安い発電方法に比べて、遙かに寛大な資金を注ぎ込んで原子力を「育成」し続けるのだろうか。


関連記事

'Hell no, we won't glow': Dozens of anti-nuclear activists arrested at Vermont Yankee protest

何十人もの反核活動家たちがバーモント・ヤンキー原発での抗議行動で逮捕される


93歳の反核活動家であるフランシス・クロウ(写真中央)と、友人のアニク・コーベットは 、不法侵入で逮捕され、バーモント州ブラトルボロにあるエンタジー社の敷地から連行される。

写真:ジム・コール / AP通信

バーモント州ブラトルボロ —— 93歳の反核活動家は、バーモント・ヤンキー原発の40年の認可が切れた後、最初の稼働日となった3月22日に、会社事務所前で逮捕された130人以上の抗議行動参加者の一人であった。

マサチューセッツ州ノーザンプトンから来たフランシス・クロウは、バーモント・ヤンキー原発は近隣住民の脅威だと感じているので、稼働停止して欲しいと訴えた。

「私は行進しているとき、福島と人々すべての苦しみのことしか考えられなかった。それがここニューイングランドで起きて欲しくないの。」クロウは昨年の地震と津波で破壊された日本の原発のことを引き合いに出してこう語った。

これまで逮捕されたのは何回になるかと彼女に聞いたら、「まだまだ、十分じゃないわ」と答えた。

ブラトルボロの本社事務所への立ち入りは警察の厳重な警備とロープで封鎖されていた。逮捕は衝突もなく粛々と行われた。抗議参加者と警官隊はこの日の行動を前もって打ち合わせてあったことは明らかだった。

不法侵入
ブラトルボロ警察署長のジーン・リンは130人以上を不法侵入で逮捕したとの声明を発表し、逮捕者たちは手続きの後釈放されたと語った。

地元紙のブラトルボロ・リフォーマーは、3月22日の抗議行動はバーモント州の過去25年間で最大規模のものだったと報じた。

電力会社のスポークスマンは、バーノン・タウンから10マイル(16キロメートル)南にある発電所では、通常通り作業が継続されたと語った。

「我が社は、支持者の皆様からの応援に感謝すると共に、反対者の皆様が平和的に抗議する権利を尊重いたします」と会社スポークスマンのラリー・スミスはその日発表した声明で語った。「門の中にいる我が社の従業員たちは、このことで心を乱されるようなことはありません。彼らは毎日、レーザー光線のように鋭敏に、安全への注意を払っています。」

「稼働を止めろ」
千人以上と推定される群衆が、本社までの3マイル半(5.6キロメートル)を行進する前に、ブラトルボロ中心街にある公園に集まった。竹馬に乗って行進した人たちもいた。顔をペインティングして「地獄は要らない、私たちは“燃え”ない」(訳注:Coleman Hell Glowという曲をもじっている)と書かれたプラカードを掲げた人たちもいた。大勢が「稼働を止めろ」と気勢を上げた。

ピーター・シャムリン知事は抗議参加者に共感していた。

「老朽化した原発が、合意による認可年限が切れた後も稼働を続けることに対する、彼らの、そして私のいら立ちを表明するために、今日ブラトルボロに集まった平和的な抗議参加者たちを、心より支持します」と知事は語った。
バーモント・ヤンキー原発の所有者であるエンタジー社の地区事務所に向かって何百人もの反核活動家たちが行進する。3月22日、バーモント州ブラトルボロにて。
写真:ジム・コール / AP通信

バーモント・ヤンキー原発の親会社であるエンタジー・ニュークリアーの所在地であるニュー・オーリンズでの同時行動で、7人の活動家グループが建物に入り、退去を拒否したため逮捕されたと警察が発表した。ジャーナル・ニューズ紙は、ニューヨーク州ホワイト・プレインズにあるエンタジー社の事務所でも5人が逮捕されたと報じた。

ロヨーラ大学の法律学教授であるビル・クイグリー氏は、ニュー・オーリンズで抗議行動を起こしたグループはバーモント州の原発近くに住んでおり、エンタジー社長のJ・ウエイン・レナードとの面会を求めてルイジアナ州まで旅して来たと語った。逮捕の前に社長との面会がかなうことはなかった。
「全世界が注目しており、国土の一地域を汚染すれば、その影響は全国民に及ぶということを、我々はエンタジー社に伝えようとしているのです」とクイグリー教授は語った。

連邦原子力規制委員会は、バーモント・ヤンキー原発の稼働を20年延長することを認可したが、バーモント州はこの原発の閉鎖を求めており、両者は法廷で争っている。連邦地方裁判所は1月に、裁判が続く間も原発の運転を継続することを許可する命令を出した。

手錠
 抗議行動参加者たちがブラトルボロ・コモンズ広場に集まった時、バーモント・ヤンキー原発の支持者たちは通りを挟んで座り、ことの成り行きに注目していた。芝生の上には 「VT4VY」(バーモント州はバーモント・ヤンキーに賛成)と書かれたサインが6つ並べられた。

「この人たちは手遅れになるまで気付こうとはしないのです。一体どんなメリットがここにあるというのでしょう。彼らを見ていると残念に思います。彼らは広い視野で物事を見ていないのだと思います」と、ブラトルボロのスティーブ・シャクルーミスは語った。

クロウを含む何人かの抗議参加者たちは法廷への召喚状を受け取って即時釈放された。他の逮捕者は手錠を掛けられて待機していたスクールバスに乗せられた。彼らは警察署に連行され、そこで釈放されるだろうと見られた。

ニューヨーク・タイムズによれば、1基の原子炉を廃炉にするコストは4億ドルから10億ドルになる。

ニューヨーク・タイムズは3月22日に、エンタジー社は「5億6千万ドルと推定されるバーモント・ヤンキー原発の解体コストのうち、少なくとも9千万ドルが不足している」と報じた。

No comments:

Post a Comment