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Tuesday, July 16, 2013

もうすぐ来日するオリバー・ストーン、ピーター・カズニックによる「ファイナンシャル・タイムズ」誌寄稿: オバマは暗黒の未来の土台を作っている Oliver Stone and Peter Kuznick: Obama is laying the foundations of a dystopian future (Financial Times)

昨年秋に発表され世界中で大反響を呼んでいるドキュメンタリー10部作と本『The Untold History of the United States (語られなかった米国史)』の共作者、映画監督オリバー・ストーン氏、アメリカン大学歴史学教授ピーター・カズニック氏が8月4日、広島、長崎、東京、沖縄を訪れる(来日サイトはここhttp://peacephilosophy.blogspot.ca/2013/06/blog-post_10.html)。その二氏による、『ファイナンシャル・タイムズ』へのホットな寄稿(7月10日掲載)を和訳で紹介する。(翻訳: 酒井泰幸)


Obama is laying the foundations of a dystopian future


オバマは暗黒の未来の土台を作っている 
オリバー・ストーン、ピーター・カズニック

 オバマの後継者たちは、どこの誰でも標的にすることができるようになると、オリバー・ストーンとピーター・カズニックは語る。

 戦争と人権無視というジョージ・W・ブッシュの政策のせいでアメリカは国際社会ののけ者になったが、選挙運動中にバラク・オバマは、これを厳しく非難した。私たちにとってオバマが候補者として魅力的だったのは、彼が透明性を約束し、イラク戦争に反対し、軍国主義に決別したからでもあった。だからこそ失望を感じないわけにはいかない。

 オバマ氏は今、彼が攻撃した思想のいくつかを擁護し、さらにエスカレートさせている。これは私たちのような左派の批判者の視点とは異なるものだ。ブッシュ氏の報道官だったアリ・フライシャーは、「ジョージ・ブッシュが第4期目を勤めているようなものだ…(オバマ氏は偽善者だ」と語った。実は、この言い方には少し深みが欠けている。この大統領はネオコン政策の中心的要素を破棄したのだから。

 現政権は多少なりとも、拷問を止め、イラクから軍隊を引き上げ、アフガニスタンからの撤退に向けた工程表を定め、核廃絶のリップサービスを行い、イランへの侵攻を拒否した。オバマ大統領はシリアでの調停について、ワシントンのほとんどの政治家よりも懐疑的な態度をとってきた。彼はグアンタナモを閉鎖する道も探ったが、こちらは今のところ実を結びそうにない。

 だから、そう、彼はブッシュ氏ではないのだ。しかし、オバマ氏は、重要な点で、実際は前任者よりもたちが悪いということを主張しておかねばならない。内部告発者のエドワード・スノーデン氏による暴露から分かるのは、セキュリティー権限を持つ百万人以上のアメリカ人たちが、どれほど網羅的な監視能力を持っているかということだ。この集団は、国内外の人々をこれまで想像もできなかった規模で監視することを任務としている。

 オバマ氏は、流れていく膨大なデータと、データセンターが満杯になるほど蓄積された過去の記録が悪用されないように、たとえば外国諜報活動監視法廷のような歯止めがなされていると主張する。しかしこの団体は「めくら判」を乱発しているように見える。昨年おこなわれた申請のすべてに承認を与え、2008年から2012までの間に提出された8591件の申請のうち、却下されたのはたった2件だけである。

 それでも、この巨大な力を悪用しないというホワイトハウスの言葉を素直に受け取ることにしよう。オバマ氏の善意を信じることにしよう。だがもし、国家安全保障局(NSA)を通り抜けていく何兆ものEメールや写真、音声通話に網を掛けることをオバマ政権が望まないとしても、そうしたいと望む者がどこかに必ずいる。このようなデータをいちど収集すれば、いずれ閲覧され利用されることは間違いない。その誘惑はあまりに強い。

 これが真実であることは、1935年から1972年まで連邦捜査局(FBI)長官を務めたジョン・エドガー・フーヴァーの、長く不名誉な職歴がよく示している。彼はマーティン・ルーサー・キング・ジュニア牧師を監視下に置いたが、これは彼が失墜を目論んだ何人もの市民運動指導者のほんの一例に過ぎない。この国の将来の指導者たちは、抗議デモの参加者を却けるために放水銃と催涙ガスに頼らなくてもすむ。盗聴器を仕掛ける必要すらない。NSAは今、東ドイツのシュタージ[訳者註:秘密警察・諜報機関である国家保安省]が夢見ることしかできなかったような通信傍受装置を手にしているのだ。

 さらに、巧妙な弾圧が上手くいかず強制力が必要となるとき、オバマ氏とその後継者たちは、だれでもどこでも標的にできる正確無比な必殺の手段を手にすることになる。アメリカは、陸、海、空、宇宙、そしてサイバー空間の、全領域を覆う絶対的支配権を確立しようとしている。

 私達はこれが形をなし始めるのを見てきた。オバマ氏は毎週届く「処刑リスト」を読みふけっている。彼は誰を無人機の標的にするかを選ぶ。もっと改良された新型の無人機を急ピッチで開発しているのはアメリカだけではない。だがこれらの計画が、抹殺するよりも多くのテロリストを生み出しているという事実を、オバマ氏と彼の顧問たちはほとんど心に留めることがない。無人機によって何千人もが殺害されたパキスタンほど、アメリカが憎まれている場所はない。

 さらに、アメリカの技術的優位性は、アメリカを守ってはくれない。ハリー・トルーマン大統領は1940年代に、ソビエト連邦が核兵器を作るのはまだ遠い先のことで、アメリカは長期にわたって核を独占できると信じていた。しかし独占は1949年までしか続かなかった。もしアメリカが無人機を世界中に配備し、宇宙に兵器を送り込み、あるいはサイバー戦争を常態化させるなら、アメリカは同様の誤算を犯すだろう。

 オバマ氏は、人当たりが良く有能なアメリカ帝国の経営者になった。そして彼は、国家安全保障の名の下に、全領域の監視と全領域の軍事支配を組み合わせて、ぞっとするような暗黒の未来への土台を作っているのだ。

 オバマ氏が勇気あるスノーデン氏を世界の果てまで執拗に追い詰めるのは、このような恥ずべき行いの最も新しい一例である。ジャン=ポール・サルトルがアメリカ人にこう語ったのは、ちょうど60年前のことだった。「あなた方の国は恐怖で病んでいます…、ヨーロッパの一端からもう一方の端に向かって、私達がこう叫んでも驚かないで下さい。気をつけろ!アメリカは狂犬病にかかった!アメリカとの繋がりを全て断つのだ。さもなければ、私達はアメリカに咬まれて気が狂ってしまうぞ。」

 オバマ氏のもとでは、ハンガーストライキを行っても強制的に栄養を注入され[訳者注:グアンタナモ収容所で起こっていること]、内部告発者は残酷無比なやり方で告訴される。かつての誇り高きアメリカ共和国の棺桶に最後の釘を打ち込む前に、オバマ氏は狂いを生じた政策を再び正常に戻さなければならない。


 オリバー・ストーンはアカデミー賞受賞作家・監督である。ピーター・カズニックはアメリカン大学の歴史学教授である。ドキュメンタリー・シリーズ「オリバー・ストーンが語る もうひとつのアメリカ史(The Untold History of the United States)」は二人の共著である。

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