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Friday, July 12, 2013

「ペンタゴン・ペーパー」で知られるダニエル・エルズバーグ氏によるワシントン・ポスト紙への寄稿:アメリカを脱出したスノーデン氏は正しかった Daniel Ellsberg's Op-Ed to Washington Post: Snowden made the right call when he fled the U.S.


 アメリカ国家安全保障局(NSA)の機密文書をリークして、現在は亡命を求めて出国しているエドワード・スノーデン氏に、かつてベトナム戦争に関する機密文書「ペンタゴン・ペーパーズ」を暴露したために逮捕され裁判を闘ったダニエル・エルズバーグ氏がワシントンポストにコメントを寄せる。権力が腐敗するように、秘密主義は腐敗する。このような機密情報のリークは、昔も今も、自由な報道と私たち民衆の血液なのだ。司法の現状は当時より悪化しているので、スノーデン氏は米国内に留まるべきではないとする。私たちはスノーデン氏が与えてくれたチャンスを生かすことが出来るだろうか。
 エルズバーグ氏が警告するネット社会の監視とプライバシーの無効化は、国境に関係なく日本でも進んでいる。またそれを企んでいるのは国家や公安組織にとどまらず、私たちの行動記録を単に「ビッグデータ」と呼んで収益を吸い取ろうとする企業が群がっている。シェア獲得競争を勝ち抜くため、企業は知的財産権を盾に秘密主義で行動する。したがってエルズバーグ氏が指摘するように、秘密主義はやがて腐敗し、私たち個人の存在を際限なく切り崩して売買し、監視のために利用するようになるだろう。
 秘密主義の組織や企業が腐敗するのは、原子力を見ても明らかだ。1954年に日本学術会議は、原子力に対する政府の態度を非難し、核兵器研究の拒否と原子力研究にあたっての三原則(自主・民主・公開)遵守を声明したが、実際に政府が推し進めた原子力政策は、秘密で覆い尽くされた原子力ムラを生み出した。核武装という秘密の意図を隠すため、秘密主義が膨張し、そして腐敗したのだ。
(前文、翻訳:酒井泰幸)

アメリカを脱出したスノーデン氏は正しかった

ダニエル・エルズバーグ


 ダニエル・エルズバーグは「Secrets: A Memoir of Vietnam and the Pentagon Papers (秘密:ベトナムとペンタゴン・ペーパーズの回顧録)」の著者である。彼は1971年に、窃盗と、ペンタゴン・ペーパーズの複写に関する謀議、スパイ活動法違反の容疑をかけられた。この裁判は、違法な盗聴をはじめとする政府の不正行為の証拠が提出されると、1973年に免訴となった。


 多くの人々はエドワード・スノーデン氏と私を比べようとする。私のように裁判を受けるのではなく、彼がアメリカを出国して亡命を求めたことを非難する。私はこれに賛同できない。私がいた国は、遙か昔の、今とは違うアメリカだった。

 ニューヨーク・タイムズがペンタゴン・ペーパーズの公表を禁じられ(1971615日、新聞に対する事前の規制はアメリカ史上初のことだった)、ワシントン・ポストにも文書のコピーを渡すと(こちらも発行禁止になるのだが)、私は妻のパトリシアといっしょに13日にわたって地下に潜伏した。私の目的は、スノーデン氏が香港に飛んだのと全く同じように、FBIに知られていない何人もの仲間たちの助けを借りて、私がペンタゴン・ペーパーズを他の新聞17紙に次々と配布する手はずを整えるあいだ、監視の目を逃れるためだった。別の2紙も発行差し止めを受けていた。この間の最後の3日間は逮捕令状を無視しての潜伏だった。現在のスノーデン氏のように、私は「法からの逃亡者」だったのだ。

 しかし、前日の夜にペンタゴン・ペーパーズの最後のコピーを手渡して、私がボストンに出頭し逮捕されると、同日のうちに私は誓約保証金を払って釈放された。その後、私の容疑が最初の3件から12に増え、刑期の合計が最長115年にもなると、私の誓約保証金は5万ドルに引き上げられた。しかし起訴されていた2年の間、私はメディアや集会、講演会で自由に発言することができた。何といっても私は、長引く[ベトナム]戦争に反対する運動に参加していたのだ。その戦争を終わらせるための力になることが、私の第一の関心事だった。これはアメリカの外では出来なかっただろうし、アメリカを出ることなど私の念頭にはなかった。

 あの体験が今日の世界で再現されることはあり得ない。リチャード・ニクソン時代には明らかに犯罪行為であったような、被告人を不利にするためのホワイトハウスの行為が露見したことぐらいで、裁判が打ち切られるなど言わずもがなである。ニクソンはその結果、弾劾され辞任に追い込まれたが、今日では、私の「社会的権利を全て剥奪する」ことも含め、そのような行為はすべて合法と見なされている。

 スノーデン氏の暴露が私たちの民主主義を救う運動に火を付けることを私は期待しているが、彼がアメリカに留まっていたら運動に参加することは出来ないだろう。彼が今アメリカに戻れば保釈を許される可能性は一切なく、そもそも彼がアメリカを出国しなかったとしても、保釈される可能性はほとんどない。彼はその代わりにブラッドリー・マニング陸軍一等兵[米軍機密をウィキリークスに大量リークした米軍情報分析官]のように独房に監禁されるだろう。

 マニング一等兵の裁判が最近になってやっと始まる前に収監されていた3年の中で、特にひどい扱いを受けた8ヶ月よりもさらに長い間、スノーデン氏が完全な隔離のもとに監禁されるのはほぼ確実だろう。拷問に関する国連特別報告官は、マニング一等兵の置かれた状況を「残酷で、非人道的、自尊心を傷つける」ものだと表現した。(その現実的な見解はそれ自体、多くの国々がスノーデン氏に亡命を認める根拠となっている。アメリカからの嫌がらせと賄賂に屈しなければの話だが。

 スノーデン氏は自分が何も悪いことをしていないと確信している。私はこれに全面的に賛同する。私がペンタゴン・ペーパーズを無断で公表してから40年以上がたつが、このようなリークは今も自由な報道と私たち民衆の血液であり続けている。ペンタゴン・ペーパーズとスノーデン氏のリークから、一つの明快な教訓が浮かび上がる。権力が腐敗するように、秘密主義は腐敗するのだ。

 私の場合、ペンタゴンとランド研究所[軍事戦略の研究機関]で最高機密文書を職権で閲覧することができた。私が公表した後それらはペンタゴン・ペーパーズとして知られるようになった。私はその文書から、アメリカの議会と国民は歴代の大統領に嘘をつかれ、そして引きずり込まれた望みのない泥沼の戦争は、最初から違法だったということを知った。

 スノーデン氏は、国家安全保障局(NSA)に発する、もっと高度に機密指定された文書に接して当惑し、今回そのいくつかを選んで公表した。スノーデン氏が働いていたこの監視機関の、全てを吸い取ろうとするその意図は、「世界中のあらゆる会話や通信、あらゆる形の行動記録を、自らの知るところにする」ことだったと、彼はガーディアン紙のグレン・グリーンウォルド記者に語った。

 それは 、「全てを知る」ことを目的とした、スターリン体制の「ドイツ民主共和国[東ドイツ]」の国家保安省であるシュタージを、実質的に全地球規模へと拡大したものである。しかし、NSAが傍受している携帯電話や光ファイバー網、パソコン、インターネット通信は、シュタージの全盛時代には存在しなかった。

 スノーデン氏がガーディアン紙に語ったように、「この国は死んでも守る価値がある。」必要なら投獄も辞さない。たとえ死ぬまで出られないとしても。

 しかし、アメリカ憲法の修正第1条[信教、言論、出版、集会の自由、請願権]、修正第4条[不合理な捜索、逮捕、押収の禁止]、修正第5条[大陪審の保障、二重の処罰の禁止、適正手続、財産権の保障]を回復する高邁な理想のためにスノーデン氏がおこなった貢献は、彼が公表した文書の中にこそある。このことは、彼の名声、彼の性格や動機に対する憶測、ましてや現在掛けられている容疑に反論するために法廷に立つかどうか、あるいは残りの人生を彼が刑務所で過ごすかどうかとは無関係である。私の意見では、現在の司法の状況を考えれば、スノーデン氏が自発的にアメリカ当局に投降しても、何も価値のあることには結びつかないだろうと思う。

 彼が安全な場所を見つけることが出来て、アメリカ特殊部隊による誘拐や暗殺の危険が可能な限り低く、なるべく自由に発言できる場所であることを、私は望む。

 彼が私達に与えてくれたのは、絶好のチャンスなのだ。行政府と諜報機関、つまり、ユナイテッド・シュタージ・オブ・アメリカに、あらゆる実質的な権力を引き渡してしまう制御不能の監視網から、私たち自身を救い出すチャンスなのだ。もし私達に、彼のもたらした情報と、彼の困難に応じる用意があるなら。




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