Tuesday, March 12, 2019

改訂版 【資料】第4次安倍晋三改造内閣の超タカ派(極右)の大臣たち Far-right Ministers of Abe Shinzo Administration

いつも俵義文さんが提供してくださる、この見るのもおぞましい安倍内閣のカルト度がよくわかるチャートが、全国紙に載ることを切望します。

【資料】第4次安倍晋三改造内閣の超タカ派(極右)の大臣たち

2019131日改訂    俵 義文(子どもと教科書全国ネット21)作成

大 臣
 氏 名
         所属の議員連盟など
総 理
安倍 晋三
歴史、日本(特別顧問)、教科書(顧問)、神道(会長)、靖国、改憲、同盟(顧問)、創生(会長)、拉致(顧問)、「慰安婦」、親学(会長)、人格(最高顧問)
副総理・財務・金融

麻生 太郎
日本(特別顧問)、神道、靖国、教基法(顧問)、改憲、同盟、創生(副会長)、拉致(顧問)
総 務
石田 真敏
神道、靖国
法 務
山下 貴司 日本、神道、靖国、創生(委員)、文化
外 務
河野 太郎
神道、靖国
文部科学
柴山 昌彦
日本、神道、靖国、創生(委員)、拉致、反日教組
厚生労働
根本 匠
日本、教科書、神道、靖国、創生(委員)
農林水産
吉川 貴盛
日本、教科書、神道、靖国、反日教組
経済産業
世耕 弘成
日本、神道、靖国、若手靖国、改憲、同盟、創生(副会長)、反日教組、「慰安婦」 (参)
国土交通
石井 啓一
 (公明党)
環 境
原田 義昭
教科書、神道、靖国、改憲
防 衛
岩屋 毅
日本(幹事)、神道、靖国、教基法(事務局長)、改憲、拉致、創生(副会長)、反日教組
復 興
渡辺 博道
日本、教科書(事務局次長)、神道、靖国、若手靖国
国家公安・防災
山本 順三
日本、神道、靖国、若手靖国、同盟、「慰安婦」 (参)
沖縄・北方・1億総活躍
宮腰 光寛
日本、神道、靖国、改憲
情報通信・科学技術
平井 卓也
神道、靖国、拉致、
経済再生
茂木 敏光 日本、神道、靖国、改憲
地方創生・女性活躍
片山 さつき
日本、神道、靖国、同盟 (参)
オリンピック・パラリンピック
櫻田 義孝
日本(副幹事長)、教科書、神道、靖国、教基法(副委員長)、改憲、同盟、創生(委員)、拉致、
官房長官・拉致
菅 義偉
日本(副会長)、教科書、神道、靖国、若手靖国、改憲、拉致、創生(副会長)
 首相補佐官


教育再生・少子化
その他の国政の重要課題
衛藤 晟一
歴史、日本(幹事長)、教科書(会長代行)、神道、靖国、教基法(副委員長)、改憲、同盟、創生(幹事長)、反日教組、拉致(副会長)、「慰安婦」、正しい (参)
ふるさとづくり推進・農産物輸出
江藤 拓
日本(幹事)、神道、靖国、同盟、創生(副幹事長)、拉致(副幹事長)、W・P、正しい
国家安全保障・選挙制度
薗浦 健太郎
日本(幹事)、神道、靖国、同盟、創生(委員)、W・P、文化
 内閣官房


官房副長官
西村 康稔
日本(副幹事長)、神道、靖国、教基法(事務局次長)、改憲、創生(副幹事長)、拉致(副幹事長)、親学
官房副長官
野上 浩太郎
日本、神道、若手靖国、改憲、同盟(事務局次長)、創生(委員)、拉致、 (参)
 副大臣
 氏 名
         所属の議員連盟など
復 興
橘 慶一郎
神道
復 興
浜田 昌良
(公明党) (参)
内 閣 府
佐藤 章
日本、神道、靖国、改憲、同盟、創生(委員)
内 閣 府
田中 良正
日本、神道、靖国
内 閣 府
中根 一幸
神道、靖国
総 務
鈴木 淳司
日本、靖国、改憲、創生(委員)
総務・内閣府
佐藤 ゆかり
日本、神道、靖国、同盟
法 務
平口 洋
日本、神道
外 務
あべ 俊子
神道、靖国
外 務
佐藤 正久
日本(政策副会長)、神道、靖国、創生(委員)、拉致(幹事)(参)
財 務
上野 賢一郎
日本、神道、靖国、同盟
財 務
鈴木馨祐
神道、創生(委員)、W・P
文部科学
永岡 桂子
日本、神道、靖国、創生(委員)
文部科学・内閣府
浮島 智子
文化 (公明党)
厚生労働
大口 善徳
同盟 (公明党)
厚生労働
高階 恵美子
  (参)
農林水産
小里 泰弘
日本、神道、靖国、同盟、創生(委員)
農林水産
高鳥 修一
日本(事務局次長)、神道、靖国、創生(委員)、拉致、文化、正しい
経済産業
関 芳弘
日本、神道、靖国
経済産業・内閣府
磯崎 仁彦
日本、神道、靖国、親学、拉致、「慰安婦」  (参)
国土交通
大塚 高司
日本、神道、靖国、W・P
国交・内閣・復興
塚田 一郎
日本、神道、靖国、創生(委員)、拉致、「慰安婦」 (参)
環 境
城内 実
日本、教科書、神道、靖国、教基法(委員長)、創生(事務局次長)、正しい
環境・内閣府
秋元 司
日本、神道、靖国、同盟、創生(委員)
防衛・内閣府
原田 憲治
神道、靖国、
大臣政務官
 氏 名
         所属の議員連盟など
内閣府 長尾 敬 日本、神道、靖国、拉致、文化
内閣府
舞立 昇治
日本、神道、靖国、創生(委員)、拉致、 (参)
内閣府・復興
安藤 裕
日本、神道、靖国
総 務 大西 英男 日本、神道、靖国、拉致、文化
総 務 国重 徹  (公明党)
総務・内閣府 古賀 友一郎
 (参)
法 務
門山 宏哲
日本、神道、
外 務
鈴木 憲和

外 務 辻 清人
外 務 山田 賢司 日本、神道、靖国、創生(委員)
財 務 伊佐 進一  (公明党)
財 務 渡辺美知太郎
 (参)
文部科学 中村裕之
日本、神道、靖国
文科・内閣・復興 白須賀 貴樹
神道、靖国、文化
厚生労働 上野 宏史
厚生労働 新谷 正義 日本、神道、靖国
農林水産 浜村 進  (公明党)
農林水産 高野 光二郎
日本、神道、創生(委員) (参)
経済産業 滝波 宏文 神道、靖国、文化  (参)
経産・内閣・復興 石川 昭政 神道、靖国、拉致、文化
国土交通 工藤 彰三 日本、神道、靖国
国土交通
田中 英之
日本、神道、靖国
国土交通・内閣府
阿達 雅志 日本、神道、靖国  (参)
環 境 勝俣 孝明 日本、神道、靖国
環境・内閣府 菅家 一郎 神道、靖国
防 衛 鈴木 貴子 靖国
防衛・内閣府 山田 宏 日本、神道、靖国、拉致、人格(事務局長) (参)
自民党役員  氏 名          所属の議員連盟など
幹事長 二階 俊博 靖国、改憲、同盟(副会長)
幹事長代行

萩生田 光一
日本(政策副会長)、教科書(沖縄問題小委員長)、神道、靖国、若手靖国、同盟、創生(前事務局長)、反中国(幹事長)、正しい(幹事長)、人格(副幹事長)、拉致、文化
幹事長代理
林 幹雄
日本、教科書、神道、靖国、改憲
幹事長代理
金田 勝年
日本、神道、靖国、改憲
幹事長代理
岡田 直樹
神道、靖国、創生(事務局次長)、同盟(事務局次長) (参)
筆頭副幹事長
*総裁特別補佐
稲田 朋美
日本(政策審議副会長)、教科書、神道、靖国、同盟、創生(事務局長代理)、正しい(事務局長)、南京、反中国(事務局長)、W・P、「慰安婦」、拉致(幹事)
総務会長
加藤 勝信
日本(副幹事長)、神道、靖国、若手靖国、同盟、創生(元事務局長)、拉致、文化
政調会長
岸田 文雄
歴史、日本、教科書、神道
選対委員長
甘利 明
日本、神道、同盟、親学(副会長)
広報本部長
松島 みどり
神道、靖国、改憲
組織運動本部長 山口 泰明
日本、神道、靖国、改憲、創生(委員)、反日教組
国対委員長 森山 裕 日本、神道、靖国、若手靖国、改憲、創生(委員)
憲法改正推進本部長
下村 博文
日本(事務局長)、教科書(幹事長)、神道、靖国、教基法(委員長代理)、改憲、同盟、創生(副会長)、拉致、反日教組、「慰安婦」、正しい、親学(事務局長)
参・議員会長 橋本 聖子 日本(副会長)、教科書(幹事)、靖国、教基法(副委員長)、親学
参・幹事長 吉田 博美 神道、靖国、改憲
参・幹事長代行 岡田 直樹 神道、靖国、同盟、創生(事務局次長)
参・幹事長代理 松村 祥史 神道、靖国、創生(委員)
参・政策審議会長 愛知 治郎 日本、神道、改憲、拉致
参・国対委員長 関口 昌一 神道、靖国、創生(委員)
参・国対委員長代行 西田 昌司
日本、神道、靖国、創生(事務局次長)、同盟、拉致、「慰安婦」、反日教組、正しい
参・国対委員長代理 青木 一彦
日本、神道、



議員連盟の略字の説明

歴史=自民党歴史・検討委員会

日本=日本会議国会議員懇談会(「日本会議議連」)、衆参290人(2016.12現在)

教科書=日本の前途と歴史教育を考える議員の会(「教科書議連」)

神道=神道政治連盟国会議員懇談会(「神道議連」)、衆参326人(2016.5.30現在)

靖国=みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会(「靖国議連」)、衆参362人(2016.5.30現在)


創生=創生「日本」。安倍が会長の「戦後レジーム」からの脱却、改憲をめざす超党派議員連盟(大部分は自民党)で事実上の「安倍議連」。201025日の発足時は75人、安倍政権誕生10か月後の131029日の総会時に190人に。151128日に2年ぶりに開催した研修会で190人の国会議員が加入と発表。その後、若い議員が加入しさらに増えたと推測される。副大臣、政務官にはこの表よりももっと同議連メンバーがいると思われる。

改憲=憲法調査推進議員連盟(超党派の「改憲議連」)

同盟=新憲法制定議員同盟(超党派の「改憲同盟」)

教基法=教育基本法改正促進委員会(自民・民主による超党派議連)

拉致=北朝鮮に拉致された日本人を早期に救出するために行動する議員連盟(「拉致議連」)

正しい=正しい日本を創る会

反中国=中国の抗日記念館から不当な写真の撤去を求める国会議員の会

南京=映画「南京の真実」賛同者

W・P=米「ワシントンポスト」への「慰安婦」否定の意見広告に賛同した議員

米抗議=アメリカ下院の「慰安婦」決議への抗議文に署名した議員

「慰安婦」=米・ニュージャージー州「スターレッジャー」に「慰安婦」否定の意見広告に賛同した議員

反日教組=日教組問題を究明し、教育正常化実現に向け教育現場の実態を把握する議員の会

親学=親学推進議員連盟。高橋史郎が理事長の親学推進協会と連携して20124月に設立

人格=人格教養教育推進議員連盟。14610日設立の超党派議連。道徳の教科化などを推進。70人。

文化=文化芸術懇話会。自民党の若手タカ派議員によって15625日の初会合で正式発足。作家の百田尚樹を講師に招いた同日の会合で、マスコミをこらしめるには広告料収入をなくせばいい。文化人が経団連に働き掛けてほしい」「悪影響を与えている番組を発表し、そのスポンサーを列挙すればいい」などの意見が出て、大きな問題になった。

これらの議連など解説は俵義文ほか共著『軍事立国への野望』(かもがわ出版)又は『安倍晋三の本性』(金曜社)、『日本会議の全貌知られざる巨大組織の実態』(花伝社)、『日本会議の野望―極右組織が目論む「この国のかたち」』(花伝社)を参照。

参考(数字は人数、比率)

 議連等
大 臣
首相補佐官 官房副長官 副大臣 政務官    合 計
日 本
15
75.0%         3         2    16    14
50
64.9%
教科書
 7 35.0%         1     1     1     1   6 14.3%
神 道
 19 95.0%         3         2    19   18  63 81.8%
靖 国
 18 90.0%         3         1    18    17  53 74.0%
創 生
  9 45.0%         3         2    10     3  25 35.1%
改 憲
9
45.0%         1         2     2        18 15.6%
同 盟
  5 25.0%         3         1     6        20 19.5%
「慰安婦」   3 15.0%         3             4        7 13.0%
文 化
  1
5.0
        1             1     5
 8
11.7%



  *大臣20人、首相補佐官3人、官房副長官2人、副大臣25人、政務官27人 計77

  *「慰安婦」の集計にはW・Pと「慰安婦」の合計を集計した

Monday, March 11, 2019

大槻とも恵:不可視化される性暴力と『創』が語る「リベラルズム」への問題提起 -広河隆一氏の「手記」を受けて- 


先日、『創』4月号で広河隆一氏が自らの性暴力・セクハラ事件について書いた「手記」を批判する投稿「『創』4月号の広河隆一氏の「手記」は、自らの性暴力を認めたものではなく、セカンドレイプに他ならない」をアップしました。それを読んで、現在UCバークレーでポストドクトラル・フェローとして研究に従事する大槻とも恵氏が寄稿してくれました。ここに紹介します。(乗松聡子 @PeacePhilosophy)



不可視化される性暴力と『創』が語る「リベラルズム」への問題提起
-広河隆一氏の「手記」を受けて-


大槻とも恵 (社会学博士)

Postdoctoral Fellow, University of California, Berkeley



2019年4月号『創』に、女性に強制的に性行為を要求した問題で渦中にいる写真家広河隆一氏の手記が掲載された。タイトルは「『性暴力』について謝罪し30年遅れで学ぶ」とある。タイトル見た瞬間にまず思ったのが、なぜ「性暴力」と括弧がついているのかという疑問である。日本語でも英語でも、コンテキストによるとはいえ、「」には、その名詞で呼ぶこと及び書くことへ疑問・議論の余地があるという含みがある。しかし、広河氏が告発した女性たちへ行った行為は性暴力である。そこに疑問を挟む余地はない。しかし、広河氏の手記の中では、性暴力という言葉が一貫し括弧でくくられて記述されている。私は、むしろこの括弧つきの性暴力という名詞の使用方法に、広河氏及び編集部がこの事件の本質を認識していない事が露呈されていたと考えている。


記事の冒頭にある「はじめに」には、『創』の編集部の言葉として、「なぜ、そんことが起きていたのか?何が問題だったのか?」を検証することが、この手記掲載の目的であると書かれていた。しかし読者の多くは、この後者の問い自体が問題と感じたのではないだろうか。なぜなら、何が問題だったかが、広河氏と編集部にはまだ自明ではないようなのだから。広河氏が告発した女性たちに行った行為はレイプである。それが犯罪として司法にかけられるかは法律と制度の問題であるが、広河氏が女性たちの身体・心に冒したことはレイプである。なぜなら、その性行為に合意は存在しなかったのだから、強制的な性行為、つまり性暴力・レイプ以外の何ものでもなく、ゆえに括弧を付ける必要はない。


でもまさに、その事実(広河氏が女性たちをレイプしたり、セクハラ・パワハラ行為に及んだこと)を「事実ではない」ことにするのが、広河氏の手記の目的であることは、読んでいくと明白である。本文で何度も繰り返されるのは、被害者との間に「合意があった」こと、それは広河氏を最初にインタービューした田村栄治氏も認めている「事実」であり、ただ問題は広河氏が30年経って「本来の合意ではなかったとようやく気付いた」という醜い自己弁護である。過去何十年にも渡って日本軍「慰安婦」問題をはじめとする戦場での女性への性暴力を取材してきた広河氏が、今になって「性暴力を理解していなかった。」と、己の罪を弁解するために放った言葉の意味は深刻である。


広河氏の手記の何が問題だったのかをさらに考えてみたい。


広河氏は、手記の中で「Days で扱った「女性への性暴力」と、私の「女性への性暴力」はどこが違っていたのだろう」(本文より引用)という問題提起をしているが、広河氏、そしてDays Japanがすべき事は、Days がこれまでに取材してきた女性への性暴力と、広河氏が犯した女性への性暴力の共通点に焦点を向けることではなかったのか。なぜなら、そこから性暴力の根幹となるものが見えてくるからだ。両者の違いは、前者は戦争・紛争時に犯された組織だった性暴力であるのに対し、広河氏のは個人の独断で平時に行われた性暴力、それのみである。あえてもう一点の共通点を挙げるのなら、両者の犯罪が成立した背景には、その事を知っていながら、権威に逆らうことを恐れ何も言わなかった周りの人間たちの存在であろう。手記を読むと、その二つの違いは、広河氏の場合だと「傷つけたという認識」や、それが「性暴力という認識」がなかったこととしたいようだが、それは戦争・紛争下での性暴力の加害者も同様である。性暴力の加害者は、被害者がその後一生背負うトラウマなど全く考えることもなく、その身体と心を犯し続けている。そして、広河氏はそういった性暴力の加害者なのだ。


広河氏の手記のもうひとつの問題は、彼がもはやジャーナリストという信用・立場を完全に喪失しているにも関わらず、まだ読者たちに「教える」立場でいようとすることだ。己の罪を理解するために、ジェンダー専門の学者たちが書いた本から学んだ浅い知識を、あたかも読者にレクチャーするように本文内で「披露」している。しかもその内容は情けないほどに陳腐である。例えば、ある専門家が「男性たちが最も恐れるのが、セクハラは受け取る側の主観で決まると言う、よく聞くセクハラの常識。した側、言った側に全く悪気がないとしても、相手が不快に思えばそれはセクハラに当たるのだという説明です」(本文より引用)と、広河氏は述べている。これが、何十年もの間、女性への性暴力を世界中で取材してきた元ジャーナリストの書いたものかと思うと、怒りよりも情けなさを覚える。広河氏の意図は明白だ。つまり、セクハラ・性暴力と呼ばれるものは、感情的に反応する女性のあくまでも「主観的」な考えであり、ゆえに「客観的」に物事を考える男性の「脅威」であるということだ。広河氏が冒した行為は、告発者だけでなく、当事者でない我々が客観的に見ても、レイプ・性暴力である。広河氏は、これらの本を引用しながら、自分の行った行為を「不本意な合意」のもとに起きた「非身体的な暴力」と位置付けたいようだ。広河氏が引用した本を読んでいないが、己の罪を弁護するために「つまみ食い」のように引用された本の著者たちも大迷惑であろう。


もうひとつの問題点は、広河氏が自分の行為の問題を、あたかも醜く年老いた男が、若い女性を「くどいた事」という、全く本質とは関係ないことへ転換しているところである。老人=醜い=恋愛をしてはいけないという、本末転倒な発想である。また、この論点のすり替えは、若いイケメンの男性であれば、彼の行った行為はセクハラにあたらなかったと言っているようなものである。


最後に、この手記を書いた広河氏本人と、この手記の掲載を決めた『創』の編集部たちが共有する大きな問題点を指摘したい。彼らは、広河氏が起こした事件を、「現代という時代が作った犯罪・性暴力」と捉えていないだろうか。つまり、広河氏がレイプをした時代は、その行為は「性暴力」でも「セクハラ」でもなかったのに、ここ数年の#Me too運動の高まりなどで、女性たちの告発が「トレンド」・「主流」になった「時代が構築した性暴力」というニュアンスを感じ取った読者もいたのではないだろうか。しかし、これは完全に間違った解釈であり、危険な印象操作である。その問題を検証するために、広河氏自身が過去に取材してきたという日本軍「慰安婦」問題と照らし合せてみたい。


フェミニズム・スタディーズの学者・上野千鶴子氏が1999年に英文で発表した “The Politics of Memory: Nation, Individual and Self” (History & Memory Vol 11 (2) 1999)*という論文の中で、日本軍「慰安婦」たちが、戦後まもない時代に男性によって執筆・制作された小説、エッセイ、映画などでしばしば語られてきたことを指摘している。つまり彼女たちの存在は決して「知られていなかった」存在ではなかったということである。しかし冷戦が終わり、1980年後半から1990年代にかけて日本軍「慰安婦」の存在が「旧日本帝国軍による戦争犯罪の被害者」として注目を浴びるようになったのは何故なのか?その問いに、上野氏は戦後と冷戦後の違いついて、前者では日本軍「慰安婦」たちは、「可哀そうな女性たち」の「悲劇」として男性に描写されていたのが、冷戦後に、それまで沈黙を強いられた元日本軍「慰安婦」たちが、自ら証言に立ち、旧日本軍を告発したことにより、それが単なる「悲劇」などでは到底収まり切れない性暴力・戦争犯罪だったことが明るみになったことによると論じている。


今回の広河氏の過去の性暴力が明るみになった背景にも、日本軍「慰安婦」が「悲劇」から戦争犯罪として認識されるようになった過程と多くの共通点がある。被害者が勇気を出して告発したことで、それはセクハラなどでは済まされない「合意不在」の「性暴力」だったという事実が明るみになった。広河氏が冒した暴力は、「時代が構築した暴力」では決してなく、むしろ「時代が可視化した卑劣な性暴力」だったという事なのだ。


広河氏の今回の手記は、セカンド・レイプといっても過言ではないほど酷い内容のものだった。ゆえに、この手記の掲載を決めた『創』の編集部の責任も大きいと言えるだろう。『創』の編集長である篠田博之氏は、今回の掲載決断についてこう述べている。


世論が一色になっている時に違った声や異論に目を向け、考えるための素材にしてほしいと思うからだ。「敢えて火中の栗を拾う」のも時として必要と考えている。特に何かの事件について議論する時に当事者の生の声を聞くことは必要だ。 https://news.yahoo.co.jp/byline/shinodahiroyuki/20190307-00117311/



篠田氏は、これまでにも幼児連続誘拐・殺人事件で死刑になった宮崎勤や和歌山カレー事件の林眞須美死刑囚と10年以上に渡って面会を重ねたり、昨年死刑が執行されたオウム真理教の元教祖麻原彰晃の三女や家族との交流などについて、公の場で積極的に発言してきた人物である。つい最近では、遺族から強い反対があったにも関わらず、相模原障害者殺傷事件・植松聖被告が初めて書いた獄中手記をやはり『創』で掲載している。私自身、上に抜粋された篠田氏の考えには同感である。しかし、今回の広河氏の手記掲載に関しては、もっと違う形での発表を考えるべきではなかったろうか。なぜなら、篠田氏がこれまで取材・面会してきた相手と違い、広河氏と篠田氏の間には多くの共通点があるからだ。まず二人とも、現代の日本で「リベラル」と呼ばれる雑誌の(元)編集長であること。そして広河氏が日本の写真業界の重鎮で圧倒的な権威を持っていたように、篠田氏も「日本ペンクラブ言論表現委員会」副委員長や、大学講師、東京新聞などでコラムを持つ、やはり言論界の重鎮であり、「権威」として見られていることは想像に難くはない。そして二人は1947年(広河氏)、1951年(篠田氏)生まれと、まさに同時代を生きながら「社会正義」を問い続けていた知識人・文化人である。ゆえに、今回の手記に関しては、篠田氏に対談・インタービューという形で、とことん広河氏に向き合って欲しかった。広河氏の手記には、海外取材に連れて行かれ、二週間に渡ってレイプされ続けた女性については全く言及していなかった点など、篠田氏は追及するべきではなかったか。また広河氏と向き合うことで、篠田氏自身もご自分が持つ権威について自問することも出来たのではないか。しかし篠田氏は、ただ広河氏に自己弁護・加害意識の否定をする機会を与えただけでなく、被害者へのセカンド・レイプも容認してしまった。写真界・言論界を牽引してきた戦後生まれのリベラル知識人二人の共同作業には、倫理もメディアの教育(Pedagogy)的な意味合いすらなかったことに、愕然としているのは私だけではないだろう。



*この論文のオリジナル(日本語)は、上野千鶴子著『ナショナリズムとジェンダー』に収められている。

Thursday, March 07, 2019

『創』4月号の広河隆一氏の「手記」は、自らの性暴力を認めたものではなく、セカンドレイプに他ならない Hirokawa Ryuichi's apologia in monthly Tsukuru is nothing but a second rape

『創』4月号表紙の一部
3月11日追記。この投稿に寄せられたコメント(末尾)も併せてお読みください。

『DAYS JAPAN』元発行人の広河隆一氏から性暴力・セクハラ・パワハラを受けたと告発する人々や『DAYS JAPAN』という会社自体に構造的問題があったとのレポートが『週刊文春』(1月3&10日号2月7日号)、『ビジネスインサイダー』(1月9日)、『毎日新聞』(1月16日1月16日1月31日)、『東京新聞』(共同通信電、2月18日)といった媒体から続出する中、月刊誌『創』4月号(3月7日発売)に広河隆一氏本人の手記が8頁にわたり発表された。それも最後に「続く」とあり、5月号に後半が出るらしい。一体何をそんなに書くことがあるのかと思ったら、4月号の内容は、被害者が見たら二重に傷つくであろうセカンドレイプの類である。私は『ふぇみん』2月25日号で、広河事件についての多くの同業者のコメントが「ほとんどがとにかく長い。そしてその質は、量に見事に反比例している。悪いことはただ悪いと言えばいいのに、(中略)書けば書くほど実質的な広河氏の擁護、被害者軽視の蟻地獄にはまる。」と書いたが、今回のは広河氏自身がその蟻地獄にはまっているように見える。

以下、昨日とりあえず発信したツイートより。(@PeacePhilosophy) (時間は太平洋標準時間で日本より17時間遅れています)

『創』4月号の広河隆一手記。「知らなかった」という主張で自分がやったことを正当化することはできない。 6:46 PM - 6 Mar 2019 自分の被害者化を行い「ボクちゃんこれだけ勉強してるの、エライでしょ」と延々と同情を誘う試みをしながら、肝心の「自分のしたことは性暴力だった」「立場を利用した合意なき行為だった」という2点を認めていない。 6:46 PM - 6 Mar 2019 先日の共同通信の取材では、性暴力は否定し、合意があったと主張していると報じられているがこれと合致するものだ。 6:47 PM - 6 Mar 2019 たくさん告発されているパワハラを完全にスルーし、「文春」第二弾のケースについても全く触れていない。「謝罪したい」と言いながら、暴力はなかった、合意はあった、事実関係がはっきりしていないと主張し続ける。本人によるセカンドレープが本格的に始まった。 6:53 PM - 6 Mar 2019 「私が向き合わなければいけないのは、そこで紹介されている一人ひとりの女性たちなのだ」と言っている←あなたが「向き合」わなければいけないのは自分の性暴力とパワハラ行為です。被害者にしたらあなたを思い出すだけで虫唾が走るでしょう。キモすぎ。 7:05 PM - 6 Mar 2019 暴力はなかった、合意があった、事実関係がはっきりしない、といいながら「被害者に直接謝罪させろ」と追いかけるストーカー。まじ怖いです。 10:23 PM - 6 Mar 2019 あれだけのパワハラの告発を完全に無視し、労働問題まみれだった会社の暴力と隠蔽の構造を脇におき、「僕と女性たちの問題」にしようとしている。 10:32 PM - 6 Mar 2019 また、『創』編集長の篠田博之氏が今回の手記の紹介文をここに公開しており、「月刊『創』は世の中でバッシングされている人たちの手記を載せることが多い。別に弁護するということではなく、世論が一色になっている時に違った声や異論に目を向け、考えるための素材にしてほしいと思うからだ。」と述べていることを受け、こうツイートした。 広河氏の性暴力に声を上げてきた被害者や被害者を支援する声を「バッシング」と一蹴するこの篠田という人。加害者を被害者化する。実際はこの人のを含めて擁護論だらけなのに、「世論が一色になっている」と言う。これも立派なセカンドレープですね。被害の声に「お前が加害者だ!」って言うのだから。 12:07 AM - 7 Mar 2019 きょうはもう少しこの手記の本質に迫ってみたい。

広河氏は終始、「性暴力」とカッコ付で、「自分はそうは思っていないが相手がそう言っているもの」「実際は性暴力ではない」というようなニュアンスを含ませているように思える。冒頭から、

私は、「性暴力」というものを理解していなかった。身体的暴力をふるっていないこと、相手と合意があったことを理由に、「性暴力」は自分には関係がないと考えていた。拒否されずに受け入れられたとしても、自分の行為が「性暴力」と評価されうるのだ、ということを指摘されるまで全く理解していなかったのだ。そのことを今ようやくわかろうとする過程にあると思うようになった。

と言っている。ここにもう、それ以降全く読まなくていいと言えるほどのこの記事のエッセンスが凝縮されている。①性暴力を振るっているのに「身体的暴力」を否定し、②立場を利用したり、恐怖を与えたりした上での「拒否の不在」は「合意」とはいえないのに「拒否されずに受け入れられた」と主張し、それらが人によっては「性暴力」と評価されてしまうのだと言っているのである。
この点は読む人に注意してほしい。彼の「学び」とやらのビフォーとアフターが何なのかということ。
広河氏は、 この手記で、「BEFORE 自分のしたことが性暴力とは思っていなかったが、AFTER 今となっては性暴力をしたということがわかった」と言っていると解釈してしまう人がいるかもしれないが、実際に彼が言っているのは、「BEFORE 自分のしたことが性暴力とは思っていなかったが、AFTER 今となっては自分のしたことが『性暴力』と評価されることがあるのだ、ということがわかった」と言っているだけなのである。ここの大きな違いを把握した上で全文を読んでもらえれば、この文の「性暴力の否定」(「合意の主張」と裏表一体)という本質が見えてくると思う。
実際に上にも書いたように、数ある報道の中でも一番最近(2月17日)発表された、共同通信の取材には彼は「性暴力を否定」しており、「これまで性交渉をした女性とは合意があった」と言っているのである。この手記で彼が敢えてこの共同通信への返答に触れていないことからも、彼はこの手記によって、自分の「性暴力を認めていない」「女性たちとは合意があった」という主張を隠しているようにも見える。実際、この手記を読めば内容は共同通信への応答と何ら矛盾がないことがわかる。私に反対する人がいたら、この手記のどの部分から、彼が自らの性暴力を認めているとわかるのかを教えてほしい。私にはどこにも見つからない。
この本質さえつかめば、この手記の他の部分は、何ページもだらだらだらだらと、ときには自分の被害者化や、同情を誘うような自虐的表現を織り交ぜながら、手を変え品を変え、”一生懸命考えて学んでいる”というアピールをしているという類に過ぎず、合意の不在と、性暴力を認めているのか、という本質からはかけ離れていることがわかる。
そして、この手記の一番怖いところは、彼は長い全編を通して性暴力を認めるのを拒否していながら、しきりに被害者に「謝罪」したがっていることだ。性暴力の被害者というのは、加害者の存在を思い起こすことだけで、加害者がこの世のどこかにいる(だからどこかで出っくわしてしまうかもしれない)と想像するだけで、心や体に異常が出てくるものだ。この感覚がわからない人は伊藤詩織氏の『BLACK BOX』を読んでほしい。
ただでさえ加害者のことを思い起こすのも苦痛である被害者に対して、直接会うか、手紙を書くか、人を通してか知らないが、とにかく被害者にコンタクトするということを迫ること自体が暴力に上塗りをする行為なのである。上では「ストーカー」と書いた。一体誰のための謝罪なのかということを問えば明白だろう。ましてや、自分の性暴力を認めない形での「謝罪」など、セカンドレープにしかならない。「ボクは性暴力とは思っていないが、あなたにとっては『性暴力』となってしまった行為をしたことを、謝罪します」とでも言うつもりなのだろうか。論外だ。
性暴力の被害者にとっては、加害者が「謝罪したがっている」ということを知るだけで苦痛なのだ。加害者が自分のことを考えているということを想像するだけでも気持ちが悪くなるものだ。じゃあどうすればいいのか。性暴力を認めることだ。合意がなかったことを認めることだ。自分が立場の差、指導・雇用関係、相手の自分への畏敬や尊敬の念を利用して、合意なき性行為や性的行動の対象として相手に強いたことを認めることだ。本人に直接「謝罪」したい(許させたい)という自分のエゴを諦めることだ。自分が被害者にとっていかに思い出したくもない、気持ち悪い存在かということを受け入れ、それを変えようとはしないことだ。
この手記の細部には突っ込みたいところがもっともっとたくさんあるが、以上に述べた本質から離れたくないので、とりあえずはこれぐらいにしておく。
最後に、この手記を「自分を切開し」とか美化し、被害を訴え性暴力を糾弾する声を「バッシング」と呼び、加害者の被害者化つまりセカンドレイプに加担した『創』の編集長、篠田氏の罪は重い。広河氏と、篠田氏に問いたい。『創』5月号で、さらにセカンドレイプを続けるつもりなのか。
                           乗松聡子 @PeacePhilosophy

参考記事

広河隆一氏の性暴力 女性差別抜け落ちた「人権」(『琉球新報』)
https://ryukyushimpo.jp/news/entry-874320.html

広河隆一性暴力事件が突きつけるもの(『ふぇみん』)
http://peacephilosophy.blogspot.com/2019/02/from-femin-eiko-tamamoto-and-satoko-oka.html


Wednesday, March 06, 2019

English translation of an article on Japanese photojournalist Hirokawa Ryuichi's sexual assault and harrassment cases now available on the Asia-Pacific Journal: Japan Focus 広河隆一性暴力事件の『文春』記事英訳 『アジア太平洋ジャーナル:ジャパンフォーカス』より

Now an English translation of journalist Tamura Hideharu's article in January 3 and 10 edition of weekly magazine Shukan Bunshun on seven women's testimonies of Hirokawa Ryuichi's sexual assault, sexual harassment and other abuses of power is available on the Asia-Pacific Journal: Japan Focus. Translation by Sandi Aritza. Introduction by Satoko Oka Norimatsu. 

See the full article here: 


See also: 

Shingetsu News Agency 
Do Not “Human Rights” Also Include Women’s Rights?
http://shingetsunewsagency.com/2019/01/08/do-not-human-rights-also-include-womens-rights/ 

Mainichi Shimbun 
Photojournalist Hirokawa admits to coercing female magazine staff into sex
https://mainichi.jp/english/articles/20190120/p2a/00m/0na/001000c

Japan Times 
Well-known Japanese photojournalist Ryuichi Hirokawa admits to sexual harassment
https://www.japantimes.co.jp/news/2018/12/28/national/well-known-japanese-photojournalist-ryuichi-hirokawa-admits-sexual-harassment/#.XIAGyHdFxyx 

Le Monde 
Au Japon, un magazine mythique chute sur des accusations de viols et harcelement sexuel
https://www.lemonde.fr/international/article/2019/02/11/une-affaire-de-harcelement-sexuel-fait-couler-le-magazine-mythique-days-japan_5421804_3210.html

Thursday, February 28, 2019

『ふぇみん』より、「広河隆一性暴力事件が突きつけるもの」玉本英子・乗松聡子 From FEMIN: Eiko Tamamoto and Satoko Oka Norimatsu comment on photojournalist Hirokawa Ryuichi's sexual assault allegations

「ふぇみん婦人民主新聞」2月25日号に、「広河隆一性暴力事件」特集が出ました。「ふぇみん」の許可を得てここに転載します。どうか拡散してください。

ふぇみんのトップページはここ⇒ https://www.jca.apc.org/femin
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『ふぇみん』提供

参考記事

「琉球新報」<乗松聡子の眼> 広河隆一氏の性暴力 女性差別抜け落ちた「人権」