Wednesday, September 02, 2026

ICC赤根所長応援は日本人ナショナリズム発揚の場となっていないか―ICCの政治的、歴史的文脈を提供するベン・ノートン記事を紹介 Has Support for ICC President Akane Become a Vehicle for Promoting Japanese Nationalism? Introducing an Article by Ben Norton That Provides Political and Historical Context

国際刑事裁判所(ICC)が日本のメディアで大きな話題になっているが、ジャーナリスト、ベン・ノートン氏の2023年3月29日の記事「米国はかつて国際刑事裁判所への軍事侵攻をちらつかせた。今やプーチンを標的にするICCを歓迎」の翻訳を紹介したい。当時も訳したい!と思いながら流れてしまった記事だった。ICCも公平とは言えないこと、米国がICCの構成員を制裁するのは初めてではないこと、ICCの管轄権行使に長年反対し、ICC関係者への制裁まで行ってきた米国がプーチン大統領への逮捕状を歓迎した二重基準など、昨今のニュースに歴史的、政治的文脈を提供できる貴重な記事と思う。

8月18日、「トランプ政権がICC(国際刑事裁判所)の赤根智子所長らに制裁を科す」というニュースが、日本で大きく報じられた。もちろん「法の支配」を標ぼうする国際組織に対し一国の政権が恣意的な制裁を加えるのは間違っている。ただ、私が違和感を感じるのは、どうして日本のメディアが、にわかにこの件について大騒ぎしているかということである。答えは明らかだ。現在の所長がたまたま日本人だからである。メディアで多用されている赤根智子所長「ら」という表現に象徴されている。ICCは8月19日に声明を出し、「国際刑事裁判所(ICC)は、米国政府が、同裁判所の所長である赤根智子判事(日本)および検察局の上級法廷弁護士アブドゥライ・セイ氏(セネガル)を新たな制裁対象に指定すると発表したことに、強い遺憾の意を表する」と言っている。アブドゥライ・セイ氏というちゃんと名前のある弁護士も今回制裁対象になった。制裁されているもう一人の人を「ら」で済ませることができてしまうところに、日本人のナショナリズムが見え隠れする。

この記事でも指摘されているようにICCはアフリカ諸国など主に非白人国あるいは非西側国の人間ばかりに逮捕状を出してきた経緯があり、「インターナショナル・コロニアル・コート」(国際植民地主義裁判所)とか「インターナショナル・コケージアン・コート」(国際白人裁判所)といった批判を受けてきた。セネガル人の弁護士の存在を無視するのは日本のメディアや世論にも日本人偏重だけでなく西側偏重、白人偏重の傾向があるのではないかと思ってしまう。これが、ワールドカップで日本が勝ったとか、そもそもナショナリズムが前提のプラットフォームでの話だったら敢えて言うこともないが、ICCのような国際組織の構成員に起こったことをその国籍によって扱いを変えるというのは理にかなったこととは言えない。

高市首相がこの件について「残念」「深刻」だという表明にとどまっていることで「弱腰だ」といった批判があるようだ。私は高市首相を支持していないが、ここで日本政府が、日本国籍者だからといってICCの特定の構成員の制裁について米国政府と直談判することを求めるのは、ある意味で、自国の都合でICC構成員に制裁する米国と同じ土俵に立った考え方である。日本政府がICC締約国として、アフガニスタンでの米軍・CIA要員らの戦争犯罪容疑の捜査や、ガザをめぐるネタニヤフ首相らへの逮捕状に関与したことなどを理由に制裁されている、現在13人のすべてのICC関連被制裁対象者について米国に抗議するというのなら筋が通っていると言えようが、日本のメディアや世論はもっぱら「赤根所長」コールばかりである。この記事にもあるように、締約国ではない米国がICC構成員に制裁を課すのは初めてのことではないが、過去のケースについて日本メディアや世論は今回のように盛り上がらなかった。

残念なのは、赤根氏自身がこの日本の自国中心的な赤根氏応援に乗っかっているように見えることだ。8月26日の「報道ステーション」で大越キャスターが赤根氏にインタビューしていたが、赤根氏は、日本のNGOが始めた赤根氏制裁の撤回を求める署名を毎日見ていると言い、「これこそ日本人だな、とつくづく思う」と言っていた。赤根氏もこの件を日本人賛美につなげている。このような文脈で「日本人」という概念が使われるとき、日本のいわゆる「日本人」ではない市民たちがどのような疎外感を味わうかなど思いも至らないのであろう。ちなみに9月3日の時点で14万筆近く集まっているこの署名は「赤根所長」のみを対象とし、他に制裁されているICCの関係者は含まれていない。赤根氏はこういうときこそ「日本人だからではなく、ICCの締約国としてすべての制裁対象者を応援してほしい」と伝えることができたのではないか。

また、赤根氏は、ロシアのウクライナ侵攻を受けて「目が覚めた」と言っており、「第二次大戦後、ヨーロッパではこういうこと(戦争は)起きないという考えがあった」と言っていたことにも驚いた。

「私はウクライナ侵攻の時に目が覚めたんですね。第2次世界大戦以降、そうしたことはヨーロッパで起きないと。国連もできたしという考えが広くあったと思います。他の地域はともかくとしてですね。そうした大きな戦争がヨーロッパでは起きないと。それが私としては打ち砕かれた感じがして」

赤根氏の発言からは、1990年代に旧ユーゴスラビアのクロアチア、ボスニア、コソボなどで起き、ボスニアとコソボにはNATOも介入した血みどろの紛争が、すっかり抜け落ちている。また「他の地域はともかくとして」という言い方はどうなのだろうか。「ともかく」と言われた地域の人たちが聞いたらどう思うかと思いが至らないか。国連設立以降、欧州以外で起き、米国など西側諸国が遂行または介入した朝鮮戦争、ベトナム戦争、イラク・アフガン戦争、パレスチナ戦争などでは赤根氏の目は覚めなかったということだ。

赤根氏の西側バイアス、欧州の旧社会主義国やグローバルサウスの国々への軽視を感じざるを得ない。ノートン氏がここで指摘するICC自体の西側バイアスにも通じるように見える。逆に、西側が30年の挑発と威嚇を繰り返した上で起きたのに西側ではロシアが一方的な「悪」とされている戦争によってのみ「目が覚めた」のか。ロシアのプーチン大統領とマリア・リボア=ベロワ大統領全権代表(子どもの権利担当)の、ウクライナの子どもの「占領地域からの違法な追放・移送」容疑についても、ロシア側の、戦闘地域で危険に晒されていた子どもたちを安全な場所に避難させ保護した人道的措置であり、可能な場合には親や保護者の同意を得ていたという主張に対しどこまでの検討を加えたのか、十分な証拠はあったのかなど疑問が残る。

ベン・ノートン氏は、2025年3月にフィリピンのドゥテルテ前大統領が、麻薬対策における自国民殺害の容疑でフィリピン当局に逮捕されICCに引き渡されたことを受けて、「ICCは西側帝国が標的とした者しか逮捕しない」と断言している。ドゥテルテ氏が米国の言いなりにはならず、中国と良好な関係を築いていて敵視されていたとノートン氏は解説する。2025年にネタニヤフ首相に逮捕状を出したのは西側偏重のICCが名誉挽回するチャンスだったが逮捕には至っておらずネタニヤフ政権下でイスラエル軍はパレスチナやレバノンでの市民虐殺をやりたい放題続けている。米国のバックアップがあってのことだ。

日本の人は日本人バンザイ的な赤根氏応援ではなく、あらためて西側帝国主義に対して無力であるどころか助長しているようなICCの限界と矛盾を冷静に認知し、高市首相の「弱腰」だけでなく、米国に追随し事実上米帝国の一部となっていることを問題視するべきではないか。ナショナリズムを発揮するのなら、日本人スゴイではなく、戦争犯罪を繰り返す帝国に加担することを辞め、日本の独立と主権を取り戻し、アジアの平和的一員となることを目指すのはどうか。

★★★

長い前文になりました。以下、ベン・ノートン氏記事の翻訳です。AI訳に私が手を加えました。 乗松聡子 @PeacePhilosophy 

米国はかつて国際刑事裁判所への軍事侵攻をちらつかせた。今やプーチンを標的にするICCを歓迎


ベン・ノートン 

2023年3月29日

 

グローバル・サウスの多くの国々は、国際刑事裁判所(ICC)を西側に有利な偏向をもつ新植民地主義的機関だとして非難してきた。その指導部は欧州出身者によって占められており、2016年の時点では、同裁判所で裁判にかけられたのはアフリカ人だけだった

めずらしく意見が一致する点として、米国もまた、国際刑事裁判所(ICC)の設立当初からこれに反対してきた。米国はICCの加盟国ではなく、ワシントンは同裁判所の最高幹部に制裁を科し、裁判官や検察官を逮捕すると脅したことさえある。

実際、同裁判所が2002年にオランダで発足した際、米国は「ハーグ侵攻法」として知られる法律を成立させた。この法律によりワシントンは、ICCで裁判にかけられている者が米国市民であるか、米国の「国家安全保障」上の利益にとって重要だと判断された場合、その者を解放するために米軍を派遣すると威嚇している。

ところが、21年にわたるICCの歴史を通じて同裁判所を容赦なく攻撃してきたワシントンは、突如として180度転換し、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領を逮捕しようとするICCを公然と支持するようになった。

3月17日、ICC所長でポーランド出身のピョートル・ホフマンスキは、NATOとロシアの間のウクライナでの代理戦争で行われたとされる残虐行為をめぐり、プーチンに対する逮捕状を発付した。

ICCの逮捕状が発付されたのは、100万人以上の死者をもたらし、国連のコフィ・アナン事務総長でさえ違法であり国連憲章に違反していると述べた米国のイラク侵攻開始から、ほぼちょうど20年後のことだった。

イラクで犯された戦争犯罪について責任を問われた米国当局者は一人もいない。しかし今、ICCはロシアに狙いを定めている。

ロシアはICCの締約国ではない。ウクライナも正式な加盟国ではない。

モスクワは、この「刑事訴追は明らかに違法」であり、西側諸国に支配された同裁判所のロシアに対する「明白な敵意」の表れだと述べた。

米国はICCの加盟国ではないにもかかわらず、ジョー・バイデン大統領は同裁判所の逮捕状を強く支持した

米国のアントニー・ブリンケン国務長官は、欧州連合と連携し、ICC加盟国に逮捕状を履行してプーチンを逮捕するよう圧力をかけている。

これはブリンケンにとってかなりの方針転換である。2021年3月、イスラエルがパレスチナ被占領地で犯した戦争犯罪について同裁判所が捜査していた際、米国外交の最高責任者であるブリンケンはICCを激しく非難する声明を発表したからである。

ブリンケンは声を荒らげた。

ICCにはこの問題について管轄権がない。イスラエルはICCの締約国ではなく、同裁判所の管轄権に同意してもいない。ICCがイスラエル人に対して管轄権を行使しようとしていることに、われわれは重大な懸念を抱いている。パレスチナ人は主権国家としての要件を満たしておらず、したがって、国家としてICCの加盟資格を得ることも、国家として参加することも、ICCに管轄権を委ねることもできない。

イスラエルや米国と同様、ロシアもICC加盟国ではない。ところが、加盟国ではないイスラエルの戦争犯罪を同裁判所が捜査することはできないと主張してからわずか2年後、ブリンケンは突如として、ICCは加盟国ではないウクライナのために、加盟国ではないロシアに対して措置を講じなければならないと強く主張している。

米国、ICCに制裁を科し、当局者の家族を脅す

ブリンケンの前任者は、ICCの最高幹部に制裁を科すところまで踏み込んだ。

ドナルド・トランプ大統領の在任中だった2020年、ICCは、米国、NATO、およびその同盟者であるアフガニスタン政府がアフガニスタンで犯した戦争犯罪について捜査を開始した。

これに対し、元CIA長官から国務長官に転じたマイク・ポンペオは、同裁判所を非難する怒りに満ちた演説を行った。

「われわれは、ICCが米国人に対して管轄権を行使しようとするいかなる試みにも反対する。米国人を捜査または訴追しようとする、同裁判所の不適切かつ不当な試みを容認しない」と、同年3月に宣言した。

ポンペオはICCを「恥さらし」であり、「自らが露骨に政治的な機関であることをさらけ出している、“いわゆる”裁判所」だと激しく非難した。そして、「われわれはその権限濫用を暴き、これに立ち向かっている」と主張した。

米国外交の最高責任者はICC最高幹部の家族まで脅し、「われわれは、この党派的な捜査の責任者とその家族を特定したい」と言い放った。

その後、同年9月、米国務省は同裁判所のファトゥ・ベンスーダ主任検察官と同僚らに制裁を科した。

(法律家でアクティビストのセイラ・リア・ウィットソン氏の投稿の翻訳:「衝撃的な国際刑事裁判所(ICC)への攻撃だ。ポンペオ米国務長官は、米国の関与が疑われるアフガニスタンでの犯罪についてICCが進めている捜査をめぐり、名指しした裁判所職員とその家族に対する集団的制裁を課すと脅している」)

2021年初頭にバイデン政権が発足すると、米国によるこれらのICC制裁は解除された。しかしワシントンは、その後も同裁判所への攻撃と妨害を続けた。

米国の国営メディア「ボイス・オブ・アメリカ」はブリンケンの発言を引用し、ワシントンは引き続き「アフガニスタンおよびパレスチナ情勢に関するICCの行動に強く反対」し、米国やイスラエルのような「非締約国の人員に対して管轄権を行使しようとする」ICCの試みに異議を唱えると強調した。

つまりバイデン政権は、米国とNATOがアフガニスタンで犯した戦争犯罪、およびイスラエルがパレスチナ被占領地で犯した戦争犯罪を捜査しようとするICCの試みに強く反対したのである。

しかし、ICCがプーチンを追及するようになった今、ワシントンの政治階級は歓喜している。

一方、国防総省の軍指導部は、より慎重である。

ICCがプーチンに対する逮捕状を発付するわずか1週間前の3月初旬、『ニューヨーク・タイムズ』は次のように報じた。「国防総省は、ウクライナでのロシアによる残虐行為に関する証拠を米国が国際刑事裁判所と共有するのを阻止している、と当局者らは述べた。軍指導部は、それが米国人の訴追に道を開きかねない先例となることを懸念している」

(ニューヨーク・タイムズの投稿の翻訳:「【速報】米国防総省が、ウクライナでロシアが行った残虐行為に関する証拠を米国が国際刑事裁判所(ICC)と共有することを阻んでいると、当局者らが明らかにした。米軍首脳部は、それによって将来、米国人がICCに訴追される道を開くような前例が作られることを懸念している」)

ICCがグローバル・サウス、特にアフリカに対して偏った姿勢を取ってきたことは、十分な根拠をもって指摘されている

国際刑事裁判所には21年の歴史しかないが、グローバル・サウス、特にアフリカに対する著しい偏向を明確に示してきた。

『ロサンゼルス・タイムズ』は2016年、その一方的な姿勢を明確に示す記事を掲載した。「地球上で最も重大な犯罪を理由に同裁判所で裁かれたのはアフリカ人だけである

同年、カナダの国営メディアCBCは、「国際刑事裁判所、人種差別との非難を受けアフリカ諸国の大量脱退に直面」と報じた。

CBCは、「ICCが現在捜査している10件のうち9件がアフリカに関するもの」であることを認めた。

ブルンジ、ガンビア、南アフリカはICCを人種差別的な機関だと非難し、脱退すると表明した。

ガンビアの情報相は、ICCは「実のところ、有色人種、特にアフリカ人を訴追し、辱めるための国際白人裁判所(International Caucasian Court)である」と述べた。

2016年、ガンビアは実際に同裁判所から脱退した

南アフリカも脱退したが、のちに同国の高等裁判所が脱退を無効にした

2017年、アフリカ連合は加盟国にICCからの脱退を呼びかけた

それ以来、アフリカの知識人はICCを新植民地主義的な機関だとして継続的に非難してきた

(投稿されている記事の題の翻訳:「植民地主義の遺産を今なお引きずる国際刑事裁判所」) 

ガンビア出身のICC検察官ファトゥ・ベンスーダは、米国とNATOがアフガニスタンで犯した戦争犯罪、およびイスラエルがパレスチナ被占領地で犯した戦争犯罪について捜査を開始し、同裁判所の評判を変えようとしたように見えた。

トランプ政権は制裁と脅迫で応酬した。イスラエルの極右首相ベンヤミン・ネタニヤフは、ICCを「反ユダヤ主義」だと根拠なく非難することで応じた。

しかしベンスーダの取り組みは、いかに限定的なものであったにせよ、2021年に彼女の9年間の任期が終了すると頓挫した。

後任には、英国人弁護士で現ICC検察官のカリム・アハマド・カーンが就いた。

カーンは、英国保守党の元国会議員で右派政治家のイムラン・アハマド・カーンの兄である(イムランは小児性犯罪で有罪判決を受けている)。

カリム・カーンはICCを引き継ぐとほぼ直ちに、米国とNATOがアフガニスタンで犯した戦争犯罪、およびイスラエルがパレスチナ被占領地で犯した戦争犯罪についての捜査を打ち切った。

ロイター通信の記事によると、アフガニスタンの人権活動家ホリア・モサディクは、カーンの決定について、「アフガニスタン政府軍、米軍、NATO軍による犯罪の何千人もの被害者に対する侮辱」であると言って批判した。

(ベン・ノートンの投稿の翻訳:「これは大スキャンダルになるべき話だ。国際刑事裁判所(ICC)の新たな主任検察官、カリム・カーン(@KarimKhanQC)は、アフガニスタンで行われた米国の戦争犯罪に対する捜査を、「捜査に充てる人員や資金が不足している」という名目で、ひっそりと打ち切った。米国の戦争犯罪者は、またしても処罰を免れることになった」)

カーンは2021年、ICCは資源不足に苦しんでいるため、代わりに「同裁判所の管轄権に属する犯罪の規模と性質」に重点を置くと主張した。

しかし、正式な加盟国ではないウクライナで行われたとされる残虐行為をめぐり、加盟国ではないロシアの大統領に逮捕状を発付したことは、「同裁判所の管轄権に属する犯罪」に重点を置くというカーンの表明した方針と明らかに矛盾している。

イスラエルのメディアは、ICC加盟国ではないイスラエルが、カーンを主任検察官に選出するよう同裁判所の締約国に圧力をかけるため「舞台裏で懸命に働きかけた」ことを明らかにした。

(イスラエルのジャーナリスト、ノア・ランダウ氏の投稿の翻訳:

「イスラエルの公共放送によると、イスラエルは国際刑事裁判所(ICC)の加盟国に働きかけ、カリム・カーンを主任検察官に選出させた。」

「次から次へと驚くべき話が出てくる。今度は、その報道によると、イスラエルはカリム・カーンを国際刑事裁判所(ICC)の主任検察官に選出させるため、『水面下で懸命に働きかけた』という。」)

2022年、『タイムズ・オブ・イスラエル』はカーンを称賛し、「新たなICC検察官は今日まで、イスラエル・パレスチナに関して公の声明を一度も発表せず、公の行動も一切とっていない」と書いた。

さらに同紙は興奮気味に、「多くのイスラエル当局者は、ベンスーダが9年の任期を超えて在職し続けていたなら、すでに行動を起こし、おそらく逮捕状さえ発付していただろうと考えている」と付け加えた。

ICCは国連機関ではない――ICJは国連機関である

ワシントンの国際刑事裁判所に対する敵対的姿勢は、同裁判所が2002年に正式に発足する以前にまで遡る。

任期満了のわずか3週間前にあたる2000年の最終日、ビル・クリントン米大統領はICCの基礎となるローマ規程に署名した。しかし、後継のジョージ・W・ブッシュ大統領はのちに同条約への署名を撤回した

その後、ブッシュ政権は新設されたICCに対する政治戦争を展開した。

ブッシュ政権の国務省を率いた人物の一人である筋金入りのネオコン、ジョン・ボルトンは、米国のICC離脱を、自身の「公職人生で最も幸福な瞬間」と呼んだ。(ボルトンは、化学兵器禁止機関のホセ・ブスタニ事務局長の家族に対しても、「われわれは、あなたの子どもたちがどこに住んでいるか知っている」と脅迫した。)

親西側的な偏向で悪名高い、億万長者の寡頭富豪から資金提供を受けるロビー団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」でさえ、2002年7月、「普遍的正義の原則は依然としてワシントンによる深刻な脅威にさらされている」と警告した。しかもこれは、米国政府が悪名高い「ハーグ侵攻法」を成立させる前のことだった。

ブッシュに続き、オバマ、トランプ、バイデン各大統領もローマ規程への再署名を拒否してきた。したがって、米国はICCの加盟国ではない。

トランプがボルトンを国家安全保障担当大統領補佐官に任命すると、このネオコン強硬派は2018年、こう明言した。「われわれはICCに一切協力しない。ICCには加盟しない。ICCが自然消滅するに任せる。結局のところ、実質的に、ICCはわれわれにとってすでに死んでいる

ボルトンはICCの裁判官や検察官を逮捕するとさえ脅し、こう宣言した。「われわれはICCの裁判官や検察官の米国入国を禁止し、米国の金融システム内にある彼らの資金に制裁を科し、米国の刑事司法制度で彼らを訴追する。米国人に対するICCの捜査に協力するいかなる企業または国家に対しても、同様の措置をとる」

(フランス24の投稿の翻訳:「 米国、アフガニスタンでの戦争犯罪をめぐり米国人を訴追すればICC判事を逮捕すると脅迫」)

ICC加盟国はわずか123カ国である。(国連は世界に193カ国があると認めているため、ICC締約国は3分の2未満であり、それらの国々の人口を合わせても世界人口の半分に満たない。)

締約国ではない主要国には、米国、イスラエル、ウクライナ、ロシア、中国、インド、パキスタン、インドネシア、エチオピア、キューバ、ベトナム、トルコ、サウジアラビア、カタールがある。

国際刑事裁判所(ICC)を設立したローマ規程の署名国


一般に混同されているが、ICCは国連の機関ではなく、国連の正式な司法機関である国際司法裁判所(ICJ)とは別の独立した裁判所である。

ICCが2002年に設立されたのに対し、ICJは1945年に発足した。両者がともにオランダのハーグに置かれていることが、混同にさらに拍車をかけている。

ICJが国家間の紛争を裁くのに対し、ICCは個人を対象とする。

しかし、国連の構造に根本的な問題があるため、ICJの能力は非常に限定されてきた。安全保障理事会の常任理事国が拒否権を行使し、同裁判所の判決の履行を阻止できるのである。

米国はまさにこれを行い、ICJを事実上無力化してきた。

1984年、ニカラグアは、米国によるコントラ支援をめぐり、米国をハーグの法廷に提訴した。コントラとは、同国の革命的なサンディニスタ政権を暴力によって打倒しようと、民間人に対するテロを組織的に行った極右の暗殺部隊である。

「ニカラグア対アメリカ合衆国」事件で、ICJは、コントラのテロリストを支援し、ニカラグアの港湾に機雷を敷設したことにより、ワシントンが国際法に違反したとの判断を下した。

国際司法裁判所(ICJ)は、米国に対しニカラグアへの賠償金の支払いを命じた。しかし、ワシントンはこれを拒否し、判決が履行されるのを阻止するために国連安全保障理事会で拒否権を行使した。


(ベン・ノートン氏の23年3月9日の記事の翻訳はここまで)

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