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Tuesday, May 07, 2019

ジョン・ピルジャー「アサンジ逮捕は歴史からの警告だ」John Pilger: The Assange Arrest is a Warning from History (Japanese Translation)


当サイトでも何度も翻訳で紹介したジャーナリスト、ジョン・ピルジャー氏の4月13日記事を紹介します。(注:翻訳はアップ後微修正することがあります。)

「ウィキリークス」を利用したのは日本の媒体にしても同じです。朝日新聞も2011年5月、大特集を組みました。私も一人の書き手として、著書に「ウィキリークス」からの引用を行いました。「ウィキリークス」があったからこそ、(普天間飛行場の移設問題について)「最低でも県外」を訴え2009年9月首相になった鳩山由紀夫氏に対し、鳩山氏自身の内閣の閣僚を含む民主党内部の政治家やワシントンのジャパン・ハンドラーたちとそれと結託する日本の外務、防衛官僚たちがどれだけの裏工作をして鳩山氏を追い詰めていったかがわかったのです。詳しくはガバン・マコーマック、乗松聡子著『沖縄の〈怒〉日米への抵抗』法律文化社、2013年の第5章「鳩山の乱」を見てください。鳩山氏は「正直に申し上げて、ウィキリークスの公開した文書を含めて、私自身の知らなかった事実もあり、」とコメントしています(鳩山氏コメントの全文はここを見てください)。ピルジャー氏が言うようにジャーナリズム自体が犯罪とされているこのアサンジ氏の逮捕および米国への身柄引き渡しの危機を、世の中のあらゆる発信の仕事をしている者たち、発信者の情報を受け取る者たちが自分の問題として捉え声を上げることが必要と思います。(前文:乗松聡子)

THE ASSANGE ARREST IS A WARNING FROM HISTORY
http://johnpilger.com/articles/the-assange-arrest-is-a-warning-from-history


アサンジ逮捕は歴史からの警告だ


2019413

ジョン・ピルジャー

翻訳 酒井泰幸 翻訳協力 乗松聡子
ジョン・ピルジャー

ジュリアン・アサンジがロンドンのエクアドル大使館から引きずり出される光景は、この時代を象徴するものだ。権利に対する権力。法に対する暴力。勇気に対する下劣さ。警察官6人に連行される病気のジャーナリストは、約7年ぶりに見る外の光のまぶしさに目を細めていた。

この暴挙が、マグナ・カルタの地であるロンドンのど真ん中で起きたということこそ、「民主的」社会を憂える全ての人々を恥じ入らせ憤らせるはずだ。アサンジは国際法で保護される政治難民で、英国も調印している厳格な協定の下に庇護を受けている。このことを国連は「恣意的拘禁に関する作業部会」の裁定で明らかにした。

だがそんなのは知ったことではない。悪党どもの登場だ。トランプ政権内のファシストまがいの者たちが糸を引いて、腐った自らの政権を偽装しようと企むラテンアメリカのユダであり嘘つきのエクアドル大統領レニン・モレノと結託した英国の支配層は、公平と正義という大英帝国最後の神話を捨て去った。

想像してみると良い。トニー・ブレアが、ロンドンのコノート・スクエアにある数百万ポンド[数億円]は下らないジョージ王朝風の自宅から、手錠をかけられ引きずり出され、ハーグの国際司法裁判所へ送られようとするのを。ニュルンベルク裁判の基準に従えば、ブレアの「最重要犯罪」は百万人のイラク人を死に追いやったことだ。それに比べアサンジが何の罪に問われているのか。ジャーナリズムだ。彼は強欲な人々の責任を問い、嘘を暴露し、真実で世界中の人々に力を与えた。

アサンジの衝撃的な逮捕から伝わってくるのは、詩人オスカー・ワイルドが書いたように、「文明の進歩には欠かせない不満の種をまく」人々全てに対する警告だ。とりわけジャーナリストにとってこの警告は明らかだ。ウィキリークスの創設者・編集長の身に起きたことは、新聞に書き、テレビ、ラジオに出演し、ポッドキャストを配信するあなた自身にも起きるかもしれない。

アサンジへのメディア攻撃で先頭に立っている『ガーディアン』紙は、闇の政府への協力者だが、今回の事件を受けて出した今週の社説はこれまで以上にずる賢い内容で、同紙のいら立ちの度合いが見て取れる。『ガーディアン』は、前編集長が「この30年で最大のスクープ」と呼んだように、アサンジとウィキリークスの業績をさんざん利用してきた。同紙はウィキリークスが暴露した事実から甘い汁を吸い、称賛と収益をわが物にした。

ジュリアン・アサンジやウィキリークスには一銭も払われなかったが、鳴り物入りの『ガーディアン』の本(訳者注:日本語訳は『ウィキリークス Wikileaks アサンジの戦争』講談社、2011年)はハリウッドで映画化され大当たりした。本の著者、ルーク・ハーディングとデヴィッド・リーは、情報源であるアサンジを敵に回し、アサンジが同紙に内々で渡していた秘密のパスワード(漏洩された米国大使館の電報を含むデジタル文書ファイルを保護するため)を、彼を裏切って公表した。

アサンジがエクアドル大使館の中で幽囚の身となると、ハーディングは外で警察と手を結び、「最後に笑うのはスコットランド・ヤード(訳者注:ロンドン警視庁)だろう」とブログで嘲笑した。これ以来、『ガーディアン』はアサンジについての虚偽の記事を次々と掲載し、ロシア人の一団とトランプ側近のポール・マナフォートが大使館にいるアサンジに面会したという、疑わしい記事まであった。実際そのような会合が持たれたことはなく、フェイク・ニュースだった。

だが、今になって論調が変化した。「アサンジの一件は道徳的な面で複雑に絡み合っている。公表すべきでない物事を公表することの正当性を彼(アサンジ)は信じているが、けっして隠蔽されるべきではない物事に、彼は常に光を当て続けてきた」と同紙は見解を述べた(訳者注:先述の月9社説)。

これらの「物事」とは、米国が植民地戦争を遂行する際の殺人的な方法についての真実であり、チャゴス諸島住民のように弱い立場にいる人々の権利を否定している英国外務省の嘘であり、中東聖戦主義(ジハーディズム)の支援者であり受益者であるヒラリー・クリントンの暴露記事であり、米国大使が詳細に記述したシリアとベネズエラの政権を転覆させる方法、などなどだ。全てウィキリークスのウェブサイトに公開されている。

『ガーディアン』が神経をとがらせているのは理解できる。秘密警察はすでに同紙を捜索し、ハードディスクを破壊する儀式を行うよう求め、実施した。このことについて、同紙にはお決まりの手順がある。1983年に外務省職員のセーラ・ティズドールは、米国の巡航核ミサイルがいつヨーロッパに到来するかを記した英国政府の文書をリークした。『ガーディアン』には称賛の嵐が寄せられた。

裁判所の命令で情報源を明かすように求められたとき、情報源の保護という根本原理に基づいて編集長が投獄されるかわりに、ティズドールは裏切られ、起訴されて6カ月の刑に服した。

もしもアサンジが、『ガーディアン』のいう本当の「物事」を報道したという理由で米国に引き渡されるなら、何が現編集長のキャサリン・ヴァイナーをして、当時の編集長や、、前編集長アラン・ラスブリッジャー、プロパガンダ流布に余念がないルーク・ハーディングのような者たちの轍を踏むことを止めさせることができるのだろうか?

ウィキリークスに端を発する真実の数々を公表した『ニューヨーク・タイムズ』や『ワシントン・ポスト』の編集長、スペインの『エル・パイス』、ドイツの『デア・シュピーゲル』、オーストラリアの『シドニー・モーニング・ヘラルド』の編集長にとっても、何が歯止めになるというのだろうか。このリストは延々と続く。

『ニューヨーク・タイムズ』の弁護団長デイビット・マクロウはこう書いた。「(アサンジの)訴追は出版者にとって非常に悪い前例となると思う。私の知る限り、彼は昔ながらの出版社と同じような立場にあり、ニューヨーク・タイムズとウィキリークスを法律が区別するのは非常に困難となるだろう。」ウィキリークスの漏洩文書を公表したジャーナリストが米国大陪審に喚問されないとしても、ジュリアン・アサンジとチェルシー・マニングに対する脅迫だけで十分だ。真のジャーナリズムは悪党どもの手により衆人環視の中で犯罪化されている。異議を唱えることは身勝手な道楽になってしまった。

オーストラリアでは、貧しい小国からティモール海の石油天然ガス資源の正当な取り分を騙し取るという明確な目的のため、オーストラリア政府のスパイが東ティモール新政府の閣僚会議を盗聴したことを暴露した2人の内部告発者を、米国に心酔した現政権が告訴している。裁判は非公開で行われる。オーストラリアのスコット・モリソン首相は太平洋のナウル島とマヌス島に難民強制収容所を設置したことで悪名高いが、そこでは子供たちが自傷行為や自殺に追い込まれている。2014年に、モリソンは3万人を収容する大規模仮収容所を提案した。

真のジャーナリズムが敵とするのはこのような不名誉だ。10年前、ロンドンの英国国防省が作成した機密文書には、社会秩序に対する「主要な脅威」が3つあると述べられていた。テロリスト、ロシアのスパイ、調査ジャーナリストの3つ。調査ジャーナリストは重大な脅威に指定された。

その文書はしかるべくしてウィキリークスに漏洩され、そこから公表された。「他の選択肢は無かった。非常に単純なことだ。人々には知る権利があり、権力を問いただし異議を申し立てる権利がある。それが真の民主主義だ」とアサンジは私に語った。

もしアサンジとマニング、そして後に続く人々(そのような人々が出てくるとしたら)が沈黙させられ、「知る権利と、権力を問いただし異議を申し立てる権利」が奪われたらどうなるだろう?

1970年代に、私はアドルフ・ヒトラーの親友、レニ・リーフェンシュタールに会った。彼女の映画のおかげでナチの呪文がドイツ全土に振りまかれた。

彼女の映画のメッセージ、つまりプロパガンダが依存していたのは、「上からの命令」ではなく、彼女が大衆の「服従的虚無」と呼ぶものだったと、彼女は私に語った。

「この服従的虚無にはリベラルで教養あるブルジョアも含まれていたのですか」と私は彼女に尋ねた。

「もちろんです。特にインテリ層です。…もう真面目な質問をしなくなった人々は、服従的で従順です。どんなことでも起きる可能性があります」と彼女は言った。

そして実際に起きたのだ。

彼女なら言い添えていたかもしれない。「それ以降のことは周知の通りです。」

(終)

このサイトの過去のジョン・ピルジャー記事の翻訳はここを見てください

Sunday, November 05, 2017

ジェレミー・コービンへの期待と不安:ジョン・ピルジャー「英国『新政治』の台頭」 John Pilger: The Rising of Britain's 'New Politics' - Japanese Translation

どのように既存勢力に抗って民衆の支持を得た指導者といえども、いったん権力の地位につくと軍産複合体の重圧に勝てなくなるのだろうか-気鋭のジャーナリスト、ジョン・ピルジャーが、躍進を続け期待のかかる英国労働党のジェレミー・コービン党首について抱く不安である。コービンの外交政策は不明のままだが、彼の「影の内閣」の外相は「人権を英国外交政策の中心に取り戻す」「英国を再び世界における善の勢力とする」などと言っている。ピルジャーはそれを「帝国の懐古趣味」とし、英国が「人権」を外交政策の中心にしていたことなど一度もない、と数々の実例で反証する。コービンは歴史を変えられる「本物」なのか、それとも、労働党大会におけるBAEシステムズの展示に象徴されるように、結果的には権力の「代償」として軍産複合体に服従させられるのかーーー考えさせられる記事、総選挙後の日本にも届けたいと思い、日本語で提供する。@PeacePhilosophy 

(注:翻訳はアップ後微修正することがあります。)

原文:
THE RISING OF BRITAIN'S 'NEW POLITICS'
http://johnpilger.com/articles/the-rising-of-britain-s-new-politics

英国「新政治」の台頭

2017年10月6日
ジョン・ピルジャー

翻訳:酒井泰幸(協力:乗松聡子)

 イギリス海岸の街ブライトンで先日開かれた労働党大会に出席した代議員たちの中に、その正面入口で上映されていた映像に気を留めた人はいなかったようだ。サウジアラビアに納入している世界第3位の兵器メーカー、BAEシステムズが、自社の銃、爆弾、ミサイル、軍艦、戦闘機を宣伝していた。

 それは、今や何百万もの英国人が政治的な望みをかけている党の、背信の象徴に見えた。かつてのトニー・ブレアの縄張りを現在率いているジェレミー・コービンの経歴は、ブレアのものとは非常に異なり、英国の政治支配者層では希なものだ。

 労働党大会で演説した運動家のナオミ・クラインは、コービンの台頭をこう表現した。それは「世界的現象の一部です。米国大統領予備選でのバーニー・サンダースの歴史的な選挙戦で私たちはこれを目にしました。それを支援していたのは、無難な中道政治が無難な未来をもたらすなどあり得ないと知っているミレニアル世代でした。」

 実際には、昨年の米国大統領予備選の終わりに、サンダースは、彼の支援者たちを、民主党で長く続いてきたリベラルの戦争屋、ヒラリー・クリントンの手に委ねた。

 オバマ大統領政権の国務長官として、クリントンは2011年のリビア侵攻を取り仕切り、その結果ヨーロッパに難民が殺到した。リビアの大統領が惨殺されるのを彼女が満足げに眺めたことは良く知られている。彼女はその2年前、民主的に選ばれたホンジュラスの大統領を打倒するクーデターを承認した。彼女が10月14日にウェールズに招かれスウォンジー大学から名誉博士号を授与された理由に、彼女が「人権の代名詞」だとされたことは、全く理解に苦しむ。

 クリントン同様、サンダースは冷戦の戦士で、米国以外の世界を所有しているような見方を持った「反共」の偏執狂だ。彼は、1998年にビル・クリントンとトニー・ブレアが行ったユーゴスラビアへの不法な攻撃と、アフガニスタン、シリア、リビアへの侵攻、さらにバラク・オバマのドローンによるテロ攻撃作戦も支持した。彼はロシアの挑発を支持し、内部告発者のエドワード・スノーデンを裁判にかけるべきだということに同調している。何度もの選挙に勝利した社会民主主義者の故ウゴ・チャベスを、サンダースは「死んだ共産主義の独裁者」と呼んだ。

 サンダースはよくいるようなリベラル政治家だが、コービンは実際に「現象」となるのかもしれない。彼は米英の植民地進出の犠牲者や民衆抵抗運動を根強く支持している。

 たとえば、1960年代と70年代に、インド洋の英国植民地のチャゴス諸島住民は、労働党政権によって祖国を追われた。全住民が拉致されたのだ。この目的は、本島のディエゴガルシア島を米軍基地のために明け渡すことだった。英国への「補償」は、ポラリス原子力潜水艦の価格を1400万ドル値引きするという秘密の取引だった。

 私はこれまでチャゴス諸島住民と深く関わってきた。モーリシャスとセイシェルで追放の身となって暮らしている住民たちを撮影した。彼らはそこで嘆き苦しみ、「悲しみのあまり死んだ」者もいたと私は聞いた。彼らは国会の労働党員、ジェレミー・コービンという人物に政治的指導者を見出した。

 パレスチナ人も同様だった。2003年に当時の労働党首相[ブレア首相]による侵略で恐怖に陥ったイラク人も同じだった。西洋大国の陰謀から逃れようと苦闘している他の国々も同じだった。米国巨大企業によって破壊された数々の社会に希望以上のものをもたらしたウゴ・チャベスのような人物を、コービンは支持した。

 一方、今やコービンはかつて想像したこともないほど権力の座に近付いたが、彼の外交政策は秘密のままだ。

 秘密というのは、聞こえの良い言葉以外ほとんど何もなかったということだ。「我々は価値を外交政策の中心に据えなければなりません」とコービンは労働党大会で発言した。だがこの「価値」とはいったい何のことなのか?

 1945年以来、保守党同様、英国労働党は帝国の政党で、ワシントンに追随し、チャゴス諸島での犯罪行為のような過去を持っている。

 何が変わったのか?ジェレミー・コービンは、米国の戦争機構やスパイ組織、経済封鎖といった人間性に背く政策から労働党が手を引くとでも言うのだろうか?

 コービンの「影の政府」の外相であるエミリー・ソーンベリーは、コービンが政権を取ったら「人権を英国外交政策の中心に取り戻します」という。だがパーマストン子爵(ヘンリー・ジョン・テンプル)が19世紀に言明したように、人権が英国外交政策の中心にあった試しはなく、あったのは「利益」だけだ。英国社会の頂点にいる人々の利益だ。

 ソーンベリーは1997年に、トニー・ブレア政権の最初の外相であった故ロビン・クックを引用し、「英国を再び世界における善の勢力とする…、倫理的な外交政策」を誓った。

 歴史は帝国の懐古趣味に寛大ではない。1947年に労働党政権が行ったインド分割を記念する催しが先日あった。国境線を性急に引いたのは、ロンドンの法廷弁護士シリル・ラドクリフで、それ以前にインドに行ったことはなく、その後にインドから戻ることはなかった。彼が引いた国境線は大量虐殺と呼べるほどの流血を招いた。

ひとり籠もった邸宅には、守衛が昼も夜も 
刺客を寄せ付けぬよう庭園を巡り、 
彼が着手したのは、運命を定める仕事 
何百万人もの運命。彼の手にあった地図は時代遅れで
国勢調査の報告書は、ほぼ確実に間違いだったが、
確認する時間はなく、調査する時間はなかった 
争いの舞台を。気候は恐ろしいほどに暑く、 
赤痢の発作で下痢は絶え間なく続いたが、 
それは7週間で完成し、国境が定められた、 
大陸は良くも悪しくも分割された。 
-「分割」W・H・オーデン

 現代の基準からすれば「急進的な」クレメント・アトリー首相が率いる、同じ労働党政権(1945〜51年)は、イギリス帝国陸軍をサイゴンへと派遣した。司令官はダグラス・グレーシーで、ベトナム民族主義者が自国を解放するのを防ぐため、敗北した日本軍将兵を再軍備する命令を受けていた。こうして、20世紀で最も長い戦争[インドシナ戦争]の火蓋が切られた。

 労働党[アトリー政権下の]のアーネスト・ベヴィン外相こそ、世界、特に中東で、最も悪意ある専制君主の何人かと「相互依存」と「協力関係」を結ぶ政策によって、現在も持続する関係を構築した人物で、しばしば地域や社会全体の人権を脇に追いやり押し潰した。その動機は英国の「国益」、つまり石油と権力と富だった。

 「急進的な」1960年代に、労働党のデニス・ヒーリー国防大臣は、武器取引を促進し殺傷兵器を世界に売って金を稼ぐことを明確な目標とする、国防販売支援機構(DSO)を設立した。ヒーリーは国会で、「軍備管理と軍縮の分野での進展を図ることを最重要目標とする一方で、我が国がこの価値ある市場で正当な分け前の獲得に失敗しないようにするため、我々は取り得る実務的な手順をも踏まなければなりません」と発言した。

 二重思考は労働党の得意とするところだ。

 私がのちにこの「価値ある市場」についてヒーリーに尋ねたとき、彼の決定は武器輸出の量に何の影響ももたらさなかったと彼は主張した。しかし実際には、武器市場での英国のシェアは、ほぼ倍増した。現在、英国は世界第2位の武器販売国で、武器、戦闘機、機関銃、「暴動鎮圧用」車両を、英国政府が人権侵害国家と名指しする30カ国のうち22カ国に売っている。

 このようなことがコービン政権下で終わりを迎えるのだろうか?コービンがお手本としているようであるロビン・クック[ブレア政権の外相]の「倫理的外交政策」が何だったかを調べればわかってくる。ジェレミー・コービンと同様に、クック[庶民院初当選1974年]は武器取引に批判的な一般代議士として名声を築いた。「武器が売られるところはどこでも、戦争の現実を隠蔽する暗黙の謀略が存在」し、「過去20年のあらゆる戦争は、豊かな国が供給した武器で貧しい国々が戦ったということは自明の理だ」とクックは書いていた。

 クックは英国のBAEホーク戦闘機のインドネシアへの売却を「特に憂慮すべき」だと指摘した。インドネシアは「弾圧的なだけでなく実際に2つの戦線で戦争をしている。東ティモールではおそらく人口の6分の1が虐殺され…、西パプア州では先住民の解放運動と対峙している」。

 外相として[ブレア政権下で1997-2001年]、クックは「武器販売の全面見直し」を約束した。のちにノーベル平和賞を受賞した東ティモールのカルロス・ベロ司教は当時、クックに直訴した。「どうか、お願いですから、これ以上紛争を継続しないで下さい。この武器販売がなければ、そもそも争われることはなく、これほど長期にわたることもなかったでしょう。」彼が言っていたのは、インドネシアが英国のBAEホークを使って行った東ティモール空爆と、英国の機関銃を使った東ティモール人民の虐殺のことだった。これに対する回答はなかった。

 その翌週、クックは記者たちを外務省に呼び、「新世紀における人権」に向けた彼の「任務声明」を発表した。この宣伝イベントにはBBCなど一部の記者との恒例の私的懇談も含まれ、そこで外務省担当者は、英国のBAEホーク戦闘機が東ティモールで作戦投入されたという「証拠はない」と、虚偽の発言をした。

 数日後、外務省はクックの武器販売政策「全面見直し」の結果を発表した。「労働党が選挙に勝ったときに有効で実施中だった販売免許を取り消すことは、現実的でも実務的でもなかった」とクックは書いた。スハルト政権のエディ・スドラジャト国防大臣は、さらに18機のBAEホーク戦闘機の購入に向けて、英国との交渉が進行中だと語った。「英国の政治的変化が我が国の交渉に影響を与えることはないでしょう」と彼は言った。そしてそれは本当になった。

 現在の場合では、インドネシアをサウジアラビアに、東ティモールをイエメンに置き換えればよい。保守党と労働党の両政権の承認を得て販売された英国の軍用機は、労働党大会では最高の場所で宣伝映像を流していた企業が製造したものだ。世界で最も貧しい国の一つ、イエメンでは、その飛行機による空爆で人々は焼け出され、子どもの半数は栄養不良で、現代では最大規模のコレラ大流行が発生している。

 病院、学校、結婚式、葬式が攻撃対象になった。リヤドでは、英国軍人がサウジアラビア人に標的の選び方を教えていると伝えられている。

 労働党の2017年選挙公約では、ジェレミー・コービンと彼の党員は次のように約束した。「労働党は、包括的、独立、国連主導の調査を要求する。その対象は、サウジアラビア主導の連合軍が行ったイエメンの市民に対する空爆など、違反が疑われる事件だ。我々は、この紛争で使われる武器のさらなる販売を、調査の結論が出るまで即時保留する。」

 だがイエメンでのサウジアラビアの犯罪の証拠は、すでにアムネスティなどよって記録され、英国人ジャーナリスト、アイオナ・クレイグの勇気ある報道は特筆すべきものだ。調査書類は膨大な量に上る。

 労働党はサウジアラビアへの武器輸出を停止するとは約束していない。英国がイスラム聖戦思想の波及に手を貸している政府への支持を撤回するとは言っていない。武器取引を廃絶するという約束はどこにもない。

 選挙公約は次のように述べている。「共有する価値に基づく(米国との)特別な関係があるが…、現トランプ政権があえてこれを無視するなら、…我が国は恐れることなく異議を唱える。」

 米国と渡り合っていくのは単に「異議を唱える」ことではないことを、ジェレミー・コービンは知っている。米国は強欲で身勝手な大国で、大統領がトランプか他の誰かであるかに関わらず、人権を擁護する国家の自然な同盟国と見なされるべきではない。

 エミリー・ソーンベリーがベネズエラとフィリピンを結び付けて「ますます独裁的になりつつある体制」と言ったとき、(これはベネズエラでの政権転覆に米国が果たした役割を無視した、文脈上の真実を奪われたスローガンに過ぎないのだが、)彼女は意識的に敵の面前で演じていたのだ。これはジェレミー・コービンが熟知することになる戦術だ。

 コービンが政権を執れば、チャゴス諸島住民に帰還の権利を認めるだろう。だが労働党は、英米間で50年目の更新に署名したばかりの合意を再交渉するとは言っていない。この合意はディエゴガルシア島の基地の使用を許可するもので、ここから米国はアフガニスタンとイラクを空爆した。

 コービンが政権を執れば、「パレスチナ自治政府を即時承認」するだろう。だが、英国がイスラエルに武器供与を続けるかどうか、イスラエルの違法な「入植地」での違法な取引を黙認し続け、イスラエルを米英に免責された歴史的な迫害者としてではなく単に戦争当事者として扱い続けるのか、労働党は沈黙している。

 NATOが現在進めている戦争準備を英国が支持していることについて、NATOに対して「前回の労働党政権はGDPの2%という基準以上に支出した」と労働党は自慢する。労働党によれば、「保守党の支出削減により英国の安全保障は危険にさらされて」おり、英国の軍事的「責任」を強化すると約束する。

 実際には、英国が軍に現在支出している400億ポンドのほとんどは、英国の領土防衛のためではなく攻撃目的で、ジェレミー・コービンを非国民として中傷しようとする人々が定義するような「国益」のためだ。

 国勢調査が信頼できるとすれば、英国人のほとんどは自国の政治家たちよりずっと進んでいる。公共サービスを充実させるため高い税率を受け入れ、国民保健サービスを健全な状態に再建することを求めている。まともな仕事と給料、住宅と学校を求めている。外国人を憎んではおらず、搾取的労働に憤っている。太陽の沈まない帝国を懐かしく思ってはいない。

 英国が他国を侵攻することに反対し、ブレアを嘘つきと見なす。ドナルド・トランプの台頭は、自国を引きずる米国がどれほどの脅威となり得るかを思い起こさせた。

 労働党はこの雰囲気の恩恵を受けているが、その約束の多くは(外交政策では確かに)制限され譲歩したもので、多くの英国人にとっては、以前と同じだと映る。

 ジェレミー・コービンの誠実さは多くの人が認めるところだ。彼はトライデント核兵器システムの更新に反対し、労働党はそれを支持している。だが彼が影の内閣の役職に据えたのはブレア主義を支持する戦争推進の議員たちで、彼を「選出の見込み無し」と罵り退陣させようとしたような者たちだ。

 「我々は今や政治的主流派だ」とコービンはいう。そう、だがその代償は何だろうか?


著者のジョン・ピルジャー(John Pilger) は、1939年オーストラリア生まれ、ロンド ン在住のジャーナリスト、ドキュメンタリー映画作家。50本以上のドキュメンタ リーを制作し、戦争報道に対して英国でジャーナリストに贈られる最高の栄誉「ジャーナリスト・オブ・ザ・イヤー」を2度受賞、記録映画に 対しては、フランスの「国境なき記者団」賞、米国のエミー賞、英国のリチャード・ディンブルビー賞などを受賞している。ベトナム、カンボ ジア、エジプト、インド、バングラデシュ、ビアフラなど世界各地の戦地に赴任した。邦訳著書には『世界の新しい支配者たち』(井上礼子訳、岩波書店)がある。また、過去記事は、デモクラシー・ナウやTUPなどのサイトにも多数掲載されている。

ジョン・ピルジャーのウェブサイトはこちら。www.johnpilger.com

当ブログの過去のピルジャー記事翻訳:

ジョン・ピルジャー『きたる対中戦争』

ジョン・ピルジャー:なぜヒラリー・クリントンはドナルド・トランプよりも危険なのか 

ジョン・ピルジャー「今なぜファシズム台頭が再び問題になるのか」




Wednesday, February 08, 2017

ジョン・ピルジャー『きたる対中戦争』John Pilger: The Coming War on China

 ドナルド・トランプは2016年のニューヨーク・タイムズとのインタビューで、米国は世界の警察官をやめて国防費を削減すると主張していた。彼が国防長官に任命したジェームズ・マティスは、就任早々の2月2日に韓国、続く3日に日本を訪問した。そこで確認されたのは、2017年内のTHAAD配備尖閣諸島にも安保条約第5条が適用されること、普天間基地の移設問題については名護市辺野古沖が唯一の移転先など、オバマ政権が進めてきた軍事力による支配を継続する内容だった。これが中国を刺激するのは当然の成り行きだ。マティス国防長官はトランプ政権の閣僚の中で最も「まとも」だと言われるが、それは従来の政策からの乖離が少ないという意味でもある。トランプの中で従来路線の堅持が固まっているのなら、軍事費の総額が減るはずもなく、真意は世界の警察官をやめることではなく、軍事費をさらに他国に肩代わりさせることに違いない。
 今回紹介するジョン・ピルジャーの記事は、先鋭的な暴露記事で知られるアメリカの雑誌『カウンターパンチ』電子版に掲載されたもので、彼が最近制作したドキュメンタリー映画と同じタイトルが付けられ、オバマ政権下で準備されてきた中国を仮想敵国とする軍事政策を、トランプが継承したことが語られている。マティスが今回確認したのは、そのような対中戦争準備に他ならない。

翻訳・前文:酒井泰幸
文中の[ ]内は訳者注。

『きたる対中戦争』


ジョン・ピルジャー著

2016年12月2日

 1967年に私が初めて広島へ行ったとき、石段に付いた影はまだそこにあった。休んでいる人間の姿がほぼ完全な形で刻印されたものだった。両足を広げ、背中を丸め、片手を傍らに置いて座り、銀行の開店を待っていた。1945年8月6日の朝8時15分、彼女と影法師は花こう岩に焼き付けられた。私はその影を1時間以上見つめていた。それを忘れられずにいる。何年も経って再びその場所を訪れたとき、その影は無くなっていた。撤去され「消滅した」。政治的に恥ずべきことだ。(訳注1)

 私は2年をかけてドキュメンタリー映画『きたる対中戦争』(Coming War on China) を制作した。この映画が証拠と証言で警告するのは、核戦争がもはや影ではなく、偶発的に起こり得るということだ。アメリカが率いる軍事力の蓄積は第二次世界大戦後最大規模で進んでいる。それは北半球にあって、ロシアの西部国境とアジア太平洋地域で中国と対峙している。

 これが招き寄せる大きな危険は目新しいものではないが、埋没し歪曲されている。20世紀の大半にわたり人々の意識に埋め込まれてきた精神病的な恐怖を、主流メディアの捏造記事が、こだまする太鼓のように繰り返す。

 ソビエト崩壊後のロシアの再興と同様に、中国が経済大国として勃興したことは、アメリカ合州国が人間社会を支配する神権の「存続に対する脅威」だと宣言する。

 これに対抗するため、2011年にオバマ大統領が発表した「アジア基軸戦略」は、2020年までに米海軍のほぼ3分の2をアジアと太平洋に移転することを意味するものだった。現在、400以上の米軍基地が、ミサイル、爆撃機、軍艦、そして何より核兵器で中国を包囲している。オーストラリアから太平洋を北進し、日本と、朝鮮半島、ユーラシア大陸の反対側のアフガニスタンとインドまで、基地が「完全な輪」を作っていると、ある米国の戦略家はいう。

 ベトナム以来アメリカの戦争を立案してきたランド研究所の報告書は、「中国との戦争:考えられないことを通して考える」と題されている。米陸軍に委嘱された著者たちが、このタイトルで思い起こさせるのは、冷戦だ。当時、ランド研究所の主席戦略家ハーマン・カーンが作ったキャッチフレーズ「考えられないことを考える」は悪名高い。カーンの著書『熱核戦争について』では、ソビエト連邦に「勝てる」核戦争の計画を詳しく述べた。

 現在、カーンの終末論的な見通しを共有しているのは、アメリカ合州国で実権を握る人々、つまり、行政機関、ペンタゴン、諜報機関、「国家安全保障」を牛耳る人々、そして議会の中にいる軍事専門家とネオコンたちだ。

 [執筆当時]国防長官のアシュトン・カーターは、挑発的な発言の多いことで知られるが、「アメリカから支配権を奪い取りたいと望む」者たちと対決するのが米国の政策だと言っている。

 外交政策での打開を図る試みにもかかわらず、この見解はほぼ確実にドナルド・トランプのものと同じだ。彼が選挙戦で放った暴言には、中国はアメリカ経済の「レイピスト」だというものもあった。12月2日に、中国を直接挑発する形で、トランプ次期大統領は台湾の総統と話した。中国は台湾を本土への反乱地域と見なしている。アメリカのミサイルで武装した台湾は、ワシントンと北京の間にくすぶる消えない火種だ。

 ジョージ・ワシントン大学で国際情勢が専門のアミタイ・エツィオーニ教授は次のように書いた。「アメリカ合州国は中国との戦争を準備しており、これは重大な決定だが、現在まで選出議員、つまりホワイトハウスと議会による、徹底的な検討を受けることがなかった」。またこの戦争は「中国の地上・海上のミサイル発射装置…衛星と衛星攻撃兵器などの接近阻止施設に対する目くらまし攻撃」で始まるだろう。

 この計り知れないリスクは、「内陸部への攻撃が中国の核兵器を無力化する先制攻撃と誤認されかねず、『使わなければ負ける』の恐ろしいジレンマへと追い込み、核戦争につながる(かもしれない)」ことだ。

 2015年に、ペンタゴンは戦時法規マニュアルを公表した。それによれば、「アメリカ合州国は核兵器の使用自体を禁止する条約法を受け入れていないので、核兵器はアメリカ合州国にとって合法的な兵器である」。

 中国では、ある戦略家が私に語った。「我々はあなた方の敵ではないが、もし(西側陣営の)あなた方が我々を敵とするなら、我々は遅滞なく準備しなければならない」。中国の軍隊と兵器はアメリカに比べれば小さい。しかし、「憂慮する科学者同盟」のグレゴリー・カラキーは次のように書いた。「初めて中国は核ミサイルを厳戒態勢に置くことを議論している。攻撃の警告があれば速やかに打ち上げ可能にするためだ…。これは中国の政策における重大で危険な変化となる…。実際、アメリカ合州国の核兵器政策は中国核戦力の警戒レベルを引き上げるよう中国の主唱者に影響を与える最大の外部要因だ」。

 テオドール・ポストル教授は米海軍作戦本部の科学顧問だった。核兵器の権威である教授は私にこう語った。「ここにいる全員が、自分はタフガイだと見られたいと思っています。私がタフであろうとするなら…私は軍事行動を恐れず、脅迫を恐れず、胸毛だらけのゴリラであることが必要です。私たちが陥っている状況は、おびただしい軍事力をアメリカ合州国が誇示する状況で、実はこれをトップが画策しているのです」

「これは非常に危険な状況に見えます」と私は言った。

「それは過小評価というものです」。

 2015年に、並々ならぬ秘密に包まれて、米国は冷戦以後では単一で最大の軍事演習を実施した。これは「タリスマン・セーバー(加護の剣)」と呼ばれ、大艦隊と長距離爆撃機を使ってマラッカ海峡のシーレーンを封鎖し、中国が石油、ガスその他の原材料を中東とアフリカから入手できないようにする、「対中国エアシー・バトル(空海統合戦略)構想」(ASB)のリハーサルだった。

 このような挑発と米海軍による海上封鎖への恐怖こそ、中国が紛争の渦中にある南シナ海の南沙諸島の珊瑚礁と小島に戦略的な飛行場を無我夢中で建設している理由なのだ。昨年7月に、国連の常設仲裁裁判所は、中国が主張するこれらの島々の統治権は認められないと裁定した。この訴訟はフィリピンが起こしたものだったが、訴状を提出したのはアメリカとイギリスの著名な弁護士で、さらに元をたどればヒラリー・クリントン米国務長官に行き着く。

 2010年に、クリントン国務長官はマニラに飛んだ。彼女はアメリカの元植民地フィリピンに、閉鎖された米軍基地の再開を要求した。この基地が1990年代に閉鎖されたのは、基地が作る暴力、特にフィリピン人女性に対する暴力に対する大規模な反対運動の結果だった。南沙諸島はアメリカ合州国から1万2千キロ以上離れているが、中国がその領有を主張していることについてクリントンは、米国の「国家安全保障」と「航行の自由」への脅威と宣言した。

 数百万ドル分の武器と軍装備品を受け取った、当時のベニグノ・アキノ大統領政権は、中国との二国間交渉を離脱し、米国との秘密の防衛協力強化協定(EDCA)に署名した。この協定により、輪番で駐留する5つの米軍基地を開設し、米軍と請負業者はフィリピン国内法の縛りを受けないという、忌み嫌われた植民地条項が復活した。

 ロドリーゴ・ドゥテルテが4月に大統領に選出されたことで、ワシントンに動揺が走った。自称社会主義者のドゥテルテは、「フィリピンと世界の関係において、フィリピンは独自の外交政策を進める」と宣言し、アメリカ合州国は植民地への残虐行為に対して謝罪していないと指摘した。「私はアメリカと決別する」とドゥテルテは言い、米軍の追放を約束した。だが米国はフィリピンに留まり、合同軍事演習が継続する。

 「インフォメーション・ドミナンス(情報支配)」とは、メディア操作、つまり偽ニュースを指す業界用語で、これにペンタゴンは40億ドル以上を費やしている。2014年に、情報支配の名のもとに、オバマ政権は世界最大の通商国である中国を、「航行の自由」への脅威と見なす宣伝活動を開始した。

 CNNが先頭を切って、「国家安全保障担当記者」が南沙諸島上空を偵察飛行する米海軍機上から興奮気味に伝えた。BBCは怖じ気づくフィリピン人パイロットを説得して単発エンジンのセスナ機で係争中の島々の上空を飛び、「中国がどう反応するか見た」。この記者たちの中に、なぜ中国が自国の海岸線より沖合に飛行場を建設していたのか、またなぜ米軍が中国の玄関口に集結していたのかを問う者はいなかった。

 最高位の伝道者に指名されたのは、アメリカ太平洋軍司令官のハリー・ハリス海軍大将だ。「私の責任範囲は、ボリウッド(インド映画産業)からハリウッドまで、ホッキョクグマから南極のペンギンまで含む」とハリス大将はニューヨーク・タイムズに語った。帝国支配をここまで端的に表明した例はなかった。

 ハリス大将はペンタゴンの陸海空軍大将たちの一人として、選ばれた従順なジャーナリストや放送記者たちに、脅威を正当化する目的を説明する。それは、イラクと中東の大部分を破壊したことを、ジョージ・W・ブッシュ大統領とトニー・ブレア首相が正当化したのと同じように、見掛け倒しの説明だ。

 ロサンゼルスで9月に、ハリス大将は「報復主義者のロシアと強引な中国に対抗する準備がある」と宣言した。「もし我々が今夜戦わなければならないなら、フェアな戦いをしようなどと私は思わない。相手がナイフを使うなら、私は銃を使う。相手が銃なら私は大砲で…、それも仲間全員に大砲を持たせて対抗する」。

 ここでいう「仲間」に含まれる韓国では、ペンタゴンの高高度防衛ミサイル「THAAD(サード)」の発射台が、表向きには北朝鮮を狙っている。ポストル教授が指摘するように、真の標的は中国だ。

 オーストラリアのシドニーで、ハリス大将は中国に「南シナ海の万里の長城を取り壊す」よう要求した。このイメージは一面トップのニュースになった。オーストラリアはアメリカの最も追従的な「仲間」で、政治指導層と軍部、諜報機関、メディアが一体となって、いわゆる「同盟」を形作っている。同国を訪問したアメリカ政府「要人」の車列を通すためにシドニーハーバーブリッジを閉鎖することも珍しくない。戦争犯罪人のディック・チェイニーはこの栄誉に浴した。

 中国はオーストラリア経済のほとんどを依存する最大の貿易相手だが、「中国への対抗」はワシントンからの絶対命令だ。首都キャンベラにいる少数の反体制派政治家は、マードックが支配する報道メディアの中では、マッカーシズム[1950年代アメリカでの共産主義者の追放]のようなブラックリストに載せられることを覚悟しなければならない。「オーストラリアの皆さんは何が起ころうと我々と共にあります」と言ったのは、ベトナム戦争を構想した人々の一人、マクジョージ・バンディだ。最重要の米軍基地の一つは、ノーザンテリトリーの街アリススプリングス近くにあるパイン・ギャップだ。CIAが建てたこの基地は、中国とアジア全域をスパイし、アメリカが中東で行うドローンを使った殺人戦争に不可欠の役割を果たしている。

 10月に、オーストラリアの最大野党、オーストラリア労働党の防衛スポークスマンであるリチャード・マールズは、中国に対する挑発行為の「作戦判断」は南シナ海の軍司令官に一任するよう要求した。つまり、核戦力を用いた戦争を意味するかもしれない決定を、選挙で選ばれた指導者や国会ではなく軍の大将が行うべきだと言っているのだ。

 これがペンタゴンの方針で、民主主義を自認する国家からの歴史的逸脱だ。ペンタゴンのワシントンでの権勢は、[ベトナム戦争の機密文書、ペンタゴン・ペーパーズの暴露で知られる]ダニエル・エルズバーグが静かなクーデターと呼んだように、アメリカが9.11以降の侵略戦争に費やした記録的な5兆ドルという金額に現れていると、ブラウン大学の研究が示している。イラクで死んだ百万人と、少なくとも4カ国から脱出した1200万人の難民が、この結果だ。

 日本の沖縄には32の軍事施設があり、アメリカ合州国はここから、朝鮮半島、ベトナム、カンボジア、アフガニスタン、イラクへの攻撃を行った。現在、主要な標的は中国だが、沖縄住民は中国と親密な文化と貿易の関係を結んできた。

 沖縄の空には常に軍用機が飛び、ときおり家屋や学校に墜落する。人々は眠ることができず、教師は教えることができない。自分たちの国の中だというのに、どこへ行っても基地はフェンスで囲われ、立ち入り禁止だと言われる。

 1995年に米兵が集団で12歳の少女を強姦したことをきっかけに、大規模な沖縄基地反対運動が巻き起こった。それは同様な何百もの犯罪の一つに過ぎず、多くは起訴されない。日本国外ではほとんど知られていないが、この抵抗運動は日本で初めて基地反対の知事、翁長雄志の選出へとつながり、本土政府と超国家主義者である安倍晋三首相が日本の「平和憲法」を破棄する計画にとって、不慣れな障害物となった。

 この抵抗運動には87歳の島袋文子も加わっている。彼女はアメリカの侵攻で沖縄住民の4分の1が死んだ第二次世界大戦の生き残りだ。沖縄戦で、文子ら数百人が戦火に追われて命からがら避難していたのは、いま彼女が守ろうとしている美しい大浦湾の辺野古だった。米国は爆撃機用の滑走路を拡張するためこの湾を破壊したがっている。「私たちの選択は、沈黙か命かです」と文子は言った。私たちが米軍基地キャンプ・シュワブの外で平和的に集まっている時に、巨大なCH-53シースタリオン・ヘリコプターが私たちの上でホバリングした。私たちに対する脅し以外に理由は考えられない。

 東シナ海の向こうに韓国の済州島がある。亜熱帯の楽園で、「世界平和の島」として世界遺産に登録されている。上海から650キロ足らずの場所にあるこの世界平和の島に、世界で最も挑発的な軍事基地の一つが建設された。漁村のカンジョン(江汀)村を圧倒しているのは、中国を狙うイージスミサイル・システムを搭載する米国の航空母艦、原子力潜水艦、駆逐艦のため専用に作られた韓国の海軍基地だ。

 これらの戦争準備に対する民衆の抵抗運動は10年近くにわたって済州島に存在してきた。毎日、たいてい1日2回、村の住民とカトリックの神父、世界中から集まった支持者たちが、基地のゲートを塞いでキリスト教のミサを行う。韓国では単なる政治的デモは禁止されることが多いが、有力な宗教のミサの形をとる戦術が功を奏し、気持ちを奮い立たせる光景を作り出した。

リーダーの一人、ムン・ジョンヒョン(文正鉉)神父は私にこう語った。「どんな天気の日でも、私は基地で毎日4曲歌います。台風の中でも歌います。例外はありません。この基地を建設するために、彼らは環境を破壊しました。住民の生活を破壊しました。我々はその目撃者になるべきです。彼らは太平洋を支配したいのです。彼らは中国を世界から孤立させたいのです。彼らは世界の帝王になりたいのです。」

 私は済州島から上海へ飛んだ。30年ぶりか、それ以上だ。以前私が中国にいたときの記憶では、一番うるさい騒音がチリンチリンと鳴る自転車のベルで、毛沢東が死んでから日は浅く、街は暗く、不吉な予感と明るい希望がひしめき合っていた。それから2〜3年後、「中国を変えた男」鄧小平が「最高指導者」となった。現在の驚くような変化は想像すらできなかった。

 中国は、この上ない皮肉を呈する。極めつけは1921年に毛沢東と同志たちが秘かに中国共産党を設立した上海の家[中国共産党第一次全国代表大会会址]だ。それが立つ場所は、いまや非常に資本主義的なビジネス街の真ん中だ。この共産主義の聖地から、毛主席語録の赤本と毛沢東のプラスチック製の胸像を手に一歩外へ出ると、スターバックス、アップル、カルティエ、プラダがそこを取り囲んでいる。

 毛沢東は驚くだろうか? そうは思わない。1949年の大革命[中華人民共和国の建国]の5年前、毛沢東は秘密のメッセージをワシントンに送った。「中国は工業化しなければならない。これは自由企業によってのみ達成可能である。中国とアメリカの国益は、経済的にも政治的にも一致する。アメリカは、中国が非協力的になると恐れる必要はない。我々は紛争の危険を冒すわけにはいかない」と、彼は書いた。

 毛沢東はフランクリン・ルーズベルトにホワイトハウスで面会するよう申し入れ、ルーズベルトの後継者ハリー・トルーマンにも、その後継者ドワイト・アイゼンハワーにも申し入れた。歴代の大統領は毛沢東を拒絶するか、わざと無視した。アジアでの戦争を回避し、数多くの命を救い、現代史を変えたかもしれないチャンスが失われたのは、これら序章の真実が1950年代のワシントンで否認されたからで、ジェームス・ネアモアが書いたように、「冷戦のカタレプシー的な[固まった]恍惚状態が、我が国を固く掌握した」からだ。(訳注2)

 主流メディアによる偽のニュースが、再び中国は脅威だというイメージを作っているのは、同じ精神構造だ。

 世界は否応なく東にシフトしているが、中国を中心としたユーラシアという驚くべきビジョンは、西側ではほとんど理解されていない。「新シルクロード」は、はるばるヨーロッパまで続く、貿易、港湾、パイプライン、高速鉄道の帯だ。鉄道技術で世界をリードする中国は28カ国とルート交渉をしており、そこを走る列車は時速400キロに達する予定だ。世界に向けたこの開国は人類の大多数の願いにかなっており、その経路上で中国とロシアが結ばれる。

 「私は全身全霊でアメリカ例外主義の正当性を信じている」というバラク・オバマの発言は、1930年代の盲目的な崇拝を思い起こさせた。この優越性という現代のカルト宗教こそが、アメリカ主義、つまり世界を支配する捕食動物だ。ノーベル平和賞を受賞したリベラルなオバマ大統領の下で、核弾頭への支出は冷戦終結後のどの大統領の時代よりも高く上昇した。B61モデル12というミニ核兵器が計画されている。元米統合参謀本部副議長のジェームズ・カートライト大将によれば、「小型化すれば(使うことを)もっと考えやすくなる」ということを意味する。

 9月に、米国の主流地政学シンクタンクである大西洋評議会(アトランティック・カウンシル)が公表した報告書は、ホッブズ的な[万人が万人に対して闘争する]世界を予測し、それは「秩序の崩壊、暴力的な過激思想、果てしない戦争の時代を特徴とする」。新しい敵は「復活した」ロシアと「ますます好戦的になる」中国だった。勇敢なアメリカだけが我々を救うのだ。

 この戦争挑発は気違いじみている。それはあたかも、アメリカの帝国主義者でタイム誌の所有者であるヘンリー・ルースが1941年に宣言した「アメリカの世紀」が予告もなく終わったのに、誰も帝王に「銃を持って家に帰れ」と告げる勇気がないかのようだ。


(以上、翻訳終わり)


訳注1:「人影の石」は広島平和祈念資料館に移設展示されている。
http://www.pcf.city.hiroshima.jp/outline/index.php?l=J&id=31

訳注2:カタレプシーとは、受動的にとらされた姿勢を保ち続け、自分の意思で変えようとしない状態。統合失調症やヒステリーなどでみられる。蝋屈症。



John Pilger

著者のジョン・ピルジャー(John Pilger) は、1939年オーストラリア生まれ、ロンド ン在住のジャーナリスト、ドキュメンタリー映画作家。50本以上のドキュメンタ リーを制作し、戦争報道に対して英国でジャーナリストに贈られる最高の栄誉「ジャーナリスト・オブ・ザ・イヤー」を2度受賞、記録映画に 対しては、フランスの「国境なき記者団」賞、米国のエミー賞、英国のリチャード・ディンブルビー賞などを受賞している。ベトナム、カンボ ジア、エジプト、インド、バングラデシュ、ビアフラなど世界各地の戦地に赴任した。邦訳著書には『世界の新しい支配者たち』(井上礼子訳、岩波書店)がある。また、過去記事は、デモクラシー・ナウTUPなどのサイトにも多数掲載されている。

ジョン・ピルジャーのウェブサイトはこちら。www.johnpilger.com


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ジョン・ピルジャー:なぜヒラリー・クリントンはドナルド・トランプよりも危険なのか (2016年4月29日掲載)

ジョン・ピルジャー「今なぜファシズム台頭が再び問題になるのか」(2015年3月28日掲載)
http://peacephilosophy.blogspot.jp/2015/03/jon-pilger-why-rise-of-fascism-is-again.html




Thursday, April 28, 2016

ジョン・ピルジャー:なぜヒラリー・クリントンはドナルド・トランプよりも危険なのか John Pilger: Why Hillary Clinton is More Dangerous Than Donald Trump (Japanese translation)

 2016年のアメリカ大統領選挙は、民主党のヒラリー・クリントンと共和党のドナルド・トランプの対決となる公算が強まってきた。この2人の対決は何を意味するのか。これは日本に住んでいると見えにくい。ブッシュを出した共和党は保守主義でタカ派の軍事主義者、オバマの民主党は自由主義(リベラル)でハト派の平和主義者なのだろうか?この先入観に反して、オバマ政権では軍事費が過去最高に増大し、世界を覆う基地のネットワークは強化され、ドローンを使った一方的な戦争が仕掛けられている。民主党であろうと共和党であろうと軍事力を使って世界を支配しようとする点で違いはなく、軍事主義に対抗する勢力は二大政党システムに存在しない。異端と見なされるトランプより、むしろクリントンの方が、アメリカに通底する例外主義(アメリカだけは他の国々と違い、何をやっても許されるという考え)を代表している。
 この世界の真実から人々の目をそらしておくために、まやかしが流布される。人々の生存を脅かす暴力に対抗していくためには、メディアによるチェックと民衆の直接行動が、かつて無いほどに重要性を増している。
 ジョン・ピルジャーがシドニー大学で「世界大戦は始まった」と題して行った講演を、オーストラリアの独立ニュースサイトであるニュー・マチルダが編集して掲載したものを、翻訳して紹介する。
 原文は、
https://newmatilda.com/2016/03/23/john-pilger-why-hillary-clinton-is-more-dangerous-than-donald-trump/
(前文、翻訳:酒井泰幸、翻訳協力:乗松聡子)



米大統領民主党候補ヒラリー・クリントン(画像: アメリカ大使館, Flickr)

なぜヒラリー・クリントンはドナルド・トランプよりも危険なのか

ジョン・ピルジャー、2016年3月23日


私はオーストラリアの北の、太平洋の真ん中に位置するマーシャル諸島で、映画の撮影をしている。私が行ってきた場所のことを話すと、人々はいつも「どこですか、それは?」と聞いてくる。手掛かりに「ビキニ」のことを話すと、「水着のことですね」と返ってくる。

ビキニ水着が、ビキニ島を破壊した核爆発をほめたたえるために名付けられたということを知っている人はほとんどいないように見える。1946年から1958年までの間にマーシャル諸島でアメリカの手により66の核爆発装置が起爆されたが、それは12年にわたり毎日1.6個の広島型爆弾が爆発したのに等しい。

現在のビキニは静かで、突然変異し、汚染されている。ヤシの木が奇妙な格子状に生えている。動くものはない。鳥は一匹もいない。古い墓地の墓標は放射能に充ち満ちている。私の靴をガイガーカウンターが「危険あり」と示していた。

私は砂浜に立って、太平洋のエメラルドグリーンが巨大な黒い穴へと落ち込んでいるのを見た。これは「ブラボー」と名付けられた水素爆弾が残したクレーターだった。その爆発は、人々と彼らが暮らしている環境を、何百キロ彼方まで、おそらく永遠に毒で汚染した。


そこからの帰路、私はホノルル空港に立ち寄り『女性の健康』というアメリカの雑誌に目をとめた。表紙にはビキニ水着を着た女性が微笑み、「あなたもビキニボディになれる」という見出しが躍っていた。数日前にマーシャル諸島で、私はかなり違った種類の「ビキニボディ」を持つ女性たちにインタビューしたばかりで、みな甲状腺がんなど命に関わるがんを患っていた。

その雑誌の微笑む女性とは違って、彼女らはみな貧しかった。史上最も危険で飽くことを知らぬ超大国の、犠牲者でありモルモットだった。

私はこの経験を、私たちのあまりにも多くを飲み込んでいるまやかし[distraction、注意をそらすもの]を挫くための警告として語る。近代プロパガンダの創始者であるエドワード・バーネイズはこの現象を、民主社会の「習慣と世論の、意識的で利口な操作」と表現した。彼はそれを「見えない支配」と呼んだ。

いったい何人が、世界大戦が始まったということに気付いているだろうか?今のところ、それはプロパガンダの戦争、嘘とまやかしの戦争だが、最初の誤った命令、ミサイルの一撃によって、これは瞬時に変化しうる。

2009年にオバマ大統領は、ヨーロッパの中心であるプラハの真ん中で、熱狂的な群衆の前に立った。彼は「核兵器のない世界」を作ることを誓った。人々は喝采を送り、泣き出す者もいた。メディアは陳腐な決まり文句を垂れ流した。オバマはその後、ノーベル平和賞を受けた。

全ては見せ掛けだった。彼は嘘をついていた。

US president Barack Obama. (IMAGE: whoohoo120, Flickr)
アメリカ大統領バラク・オバマ(画像: whoohoo120, Flickr)
オバマ政権が作ったのは、より多くの核兵器、核弾頭、核兵器運搬システム、核兵器工場だ。核弾頭への支出だけをとっても、オバマ政権下では他のどのアメリカ大統領よりも高く上昇した。[オバマが提唱する核兵器近代化計画のため]30年間で費やす費用は1兆ドル[約百兆円]以上になる。

ミニ核爆弾が計画されている。B61モデル12と呼ばれるものだ。そのようなものは今までなかった。元米統合参謀本部副議長のジェームズ・カートライト大将は、「小型化すれば[この核]兵器[の使用]はもっと考えやすくなる」と語っている。

この18ヶ月で、第二次世界大戦以後で最大規模の、アメリカが主導する軍事力増強が、ロシアの西部辺境沿いに起こっている。ヒトラーがソビエト連邦に侵攻して以来、外国の軍隊がロシアに対してこのように明白な脅威を示したことはなかった。

かつてソビエト連邦の一部だったウクライナは、CIAのテーマパークになった。キエフでのクーデターを画策したアメリカ政府は、ロシアのすぐ隣にあってロシアに敵対する政権を実質的に支配している。文字通りナチスで腐敗した政権だ。ウクライナの代表的な国会議員たちは、悪名高いOUN[ウクライナ民族主義者組織]やUPA[ウクライナ蜂起軍]のファシストたちの政治的子孫だ。彼らは大っぴらにヒトラーを賛美し、ロシア語を話す少数派を迫害し追放せよと叫ぶ。

このことは西側ではほとんどニュースにならないか、真実を隠すために反対のことが報道される。

ロシアの隣国ラトビア、リトアニア、エストニアでは、アメリカ軍が戦闘部隊、戦車、重火器を配備している。世界第2の核大国に対するこの極端な挑発は、西側では黙殺されている。

核戦争の見通しをさらに危険なものにしているのは、中国に対する同時作戦だ。

中国が「脅威」と呼ばれない日はほとんど無い。アメリカ太平洋軍司令官のハリー・ハリス海軍大将によれば、中国は「南シナ海で砂の長城を建設している」。

彼が指しているのは、中国が南沙諸島に飛行場を建設していることで、フィリピンとの間で論争の種になっているが、ワシントンがマニラの政府に圧力をかけて賄賂を渡し、ペンタゴンが「航行の自由」という名のプロパガンダ作戦を打ち上げるまで、これは優先度の低い論争だった。

これは本当は何を意味するのだろうか?それは、アメリカの軍艦が中国の沿岸水域を巡回し支配する自由を意味するのだ。中国の軍艦がカリフォルニア沖で同じことを行ったらアメリカがどう反応するか、想像してみるが良い。

私は『The War You Don't See』(見えない戦争)という映画を作ったが、その中で私は、アメリカとイギリスの著名なジャーナリストたちにインタビューした。CBSのダン・ラザー、BBCのラゲ・オマール、オブザーバー紙のデヴィッド・ローズのような記者たちだ。

彼ら全員が言ったのは、ジャーナリストと放送局がきちんと仕事をして、サダム・フセインが大量破壊兵器を持っているというプロパガンダに疑問を突きつけ、ジョージ・W・ブッシュとトニー・ブレアの嘘をジャーナリストが大声で繰り返すことがなければ、2003年のイラク侵攻は起きなかったかもしれないし、何十万人もの男女と子供たちは今も生きていたかもしれないということだった。

ロシアや中国に対する戦争の準備をするプロパガンダも要は同じである。私の知る限り、たとえばダン・ラザーのような西側の「主流」ジャーナリストの誰一人として、なぜ中国が南シナ海の飛行場を建設しているかを問う者はいない。

その答はまぶしいほどに明白だろう。アメリカは弾道ミサイル、戦闘部隊、核武装爆撃機を有する基地のネットワークで中国を取り囲んでいる。

この死を招く弧は、オーストラリアから太平洋の島々に沿ってマリアナ諸島、マーシャル諸島、グアム、そしてフィリピン、タイ、沖縄、韓国に延び、ユーラシア大陸を横切ってアフガニスタン、インドへと続いている。アメリカは中国の首に縄を結び付けたのだ。これはニュースにならない。メディアによる沈黙、メディアによる戦争だ。

2015年には極秘のうちに、アメリカとオーストラリアが「タリスマン・セーバー(Talisman Sabre)」と呼ばれる単一では近年で最大の海空軍事演習を実施した。その目的は、マラッカ海峡やロンボク海峡のようなシーレーンを封鎖し、中国が石油、ガスその他の重要な原材料を中東とアフリカから入手できないようにするAir-Sea Battle(空海統合戦略)計画をリハーサルすることだった。


Donald Trump speaking at the 2015 Conservative Political Action Conference (CPAC) in National Harbor, Maryland. (IMAGE: Gage Skidmore, Flickr).
メリーランド州ナショナルハーバーで開催された2015年の保守政治活動協議会(CPAC)で演説する
ドナルド・トランプ(画像: Gage Skidmore, Flickr)
アメリカ大統領選挙戦というサーカスで、ドナルド・トランプは変人、ファシストとして紹介されている。彼は確かに不愉快な人物だが、彼はメディアの憎悪対象でもある。このことだけでも、我々は怪しいと思うべきだ。

トランプの移民観は異様だが、デーヴィッド・キャメロン[第75代イギリス首相]の見解より異様というわけではない。最も精力的にアメリカからの強制送還を押し進めているのはトランプではなく、ノーベル平和賞受賞者のバラク・オバマだ。

ある重鎮リベラル派コメンテーターによると、トランプはアメリカで「暗黒の暴力的勢力を解き放とうとしている」そうだ。「解き放つ」だって?

この国はすでに、よちよち歩きの幼児が母親を銃で撃ち、警察が黒人に殺人的戦争を仕掛けるような国なのだ。この国は50を超える外国政権を(その多くは民主主義国家だったが)攻撃して転覆させようとしてきた。この国はアジアから中東までを爆撃して何百万もの人々の命を奪い、住む場所を奪ってきたのだ。

他のどの国も、この国の組織的暴力の歴史には太刀打ちできない。アメリカの戦争は(ほぼ全て無防備な国に対するものだが)ほとんどが共和党ではなく民主党のリベラル派大統領によって開始されている。トルーマン、ケネディ、ジョンソン、カーター、クリントン、オバマ。

1947年に、アメリカ国家安全保障会議の一連の命令は、アメリカ外交政策の主要な目的を「[アメリカ]自身のイメージに従って実質的に作り直された世界」と表現した。そのイデオロギーは救世主的アメリカ主義だった。人類はみなアメリカ人だ。さもなくば。異教徒は改宗させ、転覆させ、賄賂を与え、名誉を貶め、押し潰す。

ドナルド・トランプはこのようなアメリカ症候群の一つの現れではあるが、彼は異端者でもある。彼はイラク侵略が犯罪だったと言い、彼はロシアや中国と戦争したいとは思っていない。我々一般人にとっての危険はトランプではなく、ヒラリー・クリントンだ。彼女は異端者などではない。アメリカというシステムが誇りとする「例外主義」は、時折リベラルな顔を見せる全体主義なのであり、クリントンはそのシステムの根強さと暴力性を体現する存在だ。

大統領選挙の日が近付くにつれ、彼女の犯罪と嘘にもかかわらず、クリントンは初の女性大統領として歓呼されるだろう。ちょうどバラク・オバマが初の黒人大統領として賛美され、自由主義者が彼の「希望」についての戯言を鵜呑みにしたように。こうして口からよだれが流れ続ける。


new matilda, drone
アメリカの攻撃用ドローン(画像: Wikipedia)
ガーディアン紙コラムニストのオーウェン・ジョーンズが「楽しく、魅力的で、他のほぼ全ての政治家たちから身をかわすクールさを持っている」と評したオバマは、先日ドローンをソマリアに送り150人を虐殺した。ニューヨーク・タイムズによれば、彼はいつもドローンによる死の候補者リストが手渡される火曜日に人を殺す。何とクールな。

2008年の大統領選挙戦でヒラリー・クリントンは、イランを核兵器で「完全に抹消する」と脅した。オバマ政権の国務長官として、彼女はホンジュラスの民主政府の転覆に参加した。2011年のリビアの破壊に彼女が関与したときは、楽しそうと言ってもいいほどだった。リビアの指導者カダフィ大佐が公開の場で肛門をナイフで突かれたとき(これはアメリカの計画で可能になった殺人だったが)クリントンは彼の死をさも満足そうに眺めて、こう言った。「我らは来た、見た、彼は死んだ」。

クリントンに最も近い盟友の一人であるマデレーン・オルブライト元国務長官は、「ヒラリー」を支持していないという理由で若い女性たちを非難した。これは、50万人のイラクの子供たちの死を、「それだけの価値がある」と忌まわしくもテレビで祝福したのと、同じマデレーン・オルブライトだ。

クリントンの大口支援者の中には、イスラエルの圧力団体と、中東での暴力に油を注ぐ兵器会社がいる。彼女と夫はウォール街から巨額の金を受け取った。それでもなお、公認の悪魔、邪悪なトランプをやっつけ、女性を代表する候補者として、彼女は任命されそうな勢いだ。彼女の支持者たちには著名なフェミニストもいる。アメリカのグロリア・スタイネムやオーストラリアのアン・サマーズのような人々だ。

一世代前、今は「アイデンティティ・ポリティックス」と呼ばれるポストモダンのカルト宗教のせいで、知性あるリベラルな多くの人々が、支持する主義や人を厳しく吟味することを止めてしまった。たとえばオバマとクリントンのいんちき、あるいは国民を裏切って敵と手を組んだギリシャの急進左派連合のような偽の革新運動などは、吟味されねばならなかった。

自己陶酔、つまり一種の「ミーイズム」[自己中心主義]が、特権的な西側社会での新しい時代精神になり、戦争や、社会的不公正、不平等、人種差別、性差別に反対した、大規模な集団的運動が終焉する前兆となった。

現在、この長い眠りは終わったのかもしれない。若者たちは再び奮起しつつある。徐々に。イギリスでジェレミー・コービンを労働党の党首に推した数千人の人々は、この目覚めの一部で、それはバーニー・サンダース上院議員を支持して結集した人々も同様だ。

しかし先週イギリスで、ジェレミー・コービンに最も近い盟友で、彼の影の財務大臣、ジョン・マクドネルは、海賊的な銀行の負債を支払い、実質的にいわゆる緊縮経済を継続することを、労働党政権に約束した。

アメリカではバーニー・サンダースが、もしクリントンが指名されたら、その時には彼女を支持すると約束した。彼も、「正しい」と思うときには他国に対しアメリカが暴力を使用することに、賛成票を投じた。サンダースは、オバマは「すばらしい仕事をした」と言っている。

オーストラリアでは、ある種の「墓掘り人の政治」が行われている。そこでは長く退屈な国会の駆け引きがメディアで繰り広げられ、その間にも難民と先住民は迫害され、不平等が広がるとともに、戦争の危険が増大する。マルコム・ターンブル首相の政権が1950億ドルの防衛予算と呼ばれるものを発表したところだが、それは戦争に向かって突き進むためのものだ。討論はなかった。沈黙だけだった。

政党の拘束を受けない民衆の直接行動という素晴らしい伝統に何が起きたのか?より良く公正で、平和な世界に向かう長い道のりを歩み始めるために必要な勇気と想像力、献身はどこにあるのか?芸術、映画、演劇、文学の世界で、反体制派はどこにいるのか?
沈黙を打ち破る者たちはどこにいるのか?それとも、我々は最初の核ミサイルが発射されるまで待つとでもいうのだろうか?
(以上、翻訳終わり)

John Pilger

著者のジョン・ピルジャー(John Pilger) は、1939年オーストラリア生まれ、ロンド ン在住のジャーナリスト、ドキュメンタリー映画作家。50本以上のドキュメンタ リーを制作し、戦争報道に対して英国でジャーナリストに贈られる最高の栄誉「ジャーナリスト・オブ・ザ・イヤー」を2度受賞、記録映画に 対しては、フランスの「国境なき記者団」賞、米国のエミー賞、英国のリチャード・ディンブルビー賞などを受賞している。ベトナム、カンボ ジア、エジプト、インド、バングラデシュ、ビアフラなど世界各地の戦地に赴任した。邦訳著書には『世界の新しい支配者たち』(井上礼子訳、岩波書店)がある。また、過去記事は、デモクラシー・ナウTUPなどのサイトにも多数掲載されている。


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ジョン・ピルジャー「今なぜファシズム台頭が再び問題になるのか」(2015年3月28日掲載)

http://peacephilosophy.blogspot.jp/2015/03/jon-pilger-why-rise-of-fascism-is-again.html


Friday, March 27, 2015

ジョン・ピルジャー「今なぜファシズム台頭が再び問題になるのか」John Pilger: Why the Rise of Fascism is Again the Issue (Japanese translation)

気鋭ジャーナリスト、ジョン・ピルジャー氏の大型記事の松元保昭氏による翻訳投稿を紹介します。第二次世界大戦70年、当時のファシズムとは形態の異なる現代の「民主主義」下におけるファシズムがいかに広がってきているかを目の当りにできる記事です。この米国を中心とする世界的ファシズムに日本が「集団的自衛権行使」によって加担を深めることをストップさせなければいけません。 @PeacePhilosophy (乗松聡子)(注:翻訳にはブログ運営人が多少手を入れているところがあります。また、投稿後に訳語を微修正することがあります。以下著者紹介は訳者によるものです。)

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John Pilger
著者のジョン・ピルジャー(John Pilger) は、1939年オーストラリア生まれ、ロンド ン在住のジャーナリスト、ドキュメンタリー映画作家。50本以上のドキュメンタ リーを制作し、戦争報道に対して英国でジャーナリストに贈られる最高の栄誉「ジャーナリスト・オブ・ザ・イヤー」を2度受賞、記録映画に 対しては、フランスの「国境なき記者団」賞、米国のエミー賞、英国のリチャード・ディンブルビー賞などを受賞している。ベトナム、カンボ ジア、エジプト、インド、バングラディッシュ、ビアフラなど世界各地の戦地に赴任した。邦訳著書には『世界の新しい支配者たち』(井上礼子訳、岩波書店)がある。また、過去記事は、デモクラシー・ナウTUPなどのサイトにも多数掲載されている。

【訳者注記:原文に小見出しはないが、長文のため訳者が挿 入した。原著者が文中で( )に挿入したところはすべて[ ]に、訳者が挿入したところはすべて( )とした。また人名はかならずしも原音表記とは なっていない。】

Why the Rise of Fascism is Again the Issue
今なぜファシズム台頭が再び問題になるのか

URL of this article:
http://www.informationclearinghouse.info/article41117.htm
ジョン・ピルジャー(松元保昭訳)

2015年2月27日

インフォメーション・クリアリング・ハウス(ICH)誌

先のアウシュビッツ解放70周年記念は、私たちの意識に深く刻み込まれているナチの象徴と共にあらためてファシズ ムの巨大な犯罪を想起させるものであった。ファシズムは、チラチラする古い映像で黒シャツ隊がガチョウ足行進しているような歴史として保存され、その犯罪性は極まりなく疑いようもないものだ。しかし今、この同じ自由社会では戦争をつくり出すエリート集団がわれわれにけっし て歴史を忘れないよう促しながらも、加速する現代のファシズムの脅威は隠されている。それが彼ら自身のファシズムであるゆえに。

1946年にニュールンベルク裁判の判事は語った。「侵略戦争を 始めることは国際的な犯罪というだけではない。それ自体の中に蓄積された全体の邪悪が含まれておりもっぱら他の戦争犯罪と異なる点でそれは究極の国際犯罪である。」

ナチスがヨーロッパに侵略しなかったら、アウシュビッツ とホロコーストは起こらなかった。アメリカ合州国とその取り巻きが2003年のイ ラク侵略戦争を始めなかったら、ほぼ100万人の人々は死なずにすんだだろう。そして、イスラム国あるいはISISがわれわれをその野蛮の虜にしなかっただろう。これらすべては、爆撃と、殺戮と、「ニュース」と呼ばれる現実とはかけ離れた劇場が醸しだす嘘とで育てら れた現代ファシズムの所産なのである。

現在、1930年 代と1940年代のファシズムのときのように、メトロノームのような正確さでデマ 宣伝が届けられている。偏在し反復するメディアとその不作為による悪意に満ちた検閲のおかげだ。リビアの破局がいい例である。

《リビア》
2011年にNATOは、リビアに対し9700回の「空爆出撃」を行った。うち三分の一以上が民間人に向けられた。劣化ウラン弾頭のミサ イルが使われた。ミスラータやシルテの町々が絨毯爆撃にさらされた。赤十字は多くの遺体置場を確認し、ユニセフは「殺害された子どもたち の大半は10歳以下だった」と報告した。

「反体制派」の銃剣により公衆の面前でソドミー(性器に異物 を挿入)をされたリビアのムアンマル・アル=カッザーフィー(カダフィ)に対する 当時の米国務長官ヒラリー・クリントンの言葉はこうであった。「われわれは来た、われわれは見た、彼は死んだ。」彼の殺害は、彼の国の破壊と同様に、自 国民に対して「ジェノサイド」を計画していたという聞き覚えのあるデマ宣伝で正当化された。オバマ大統領はこう語った。「もしわれわれが もう一日待っていたら、シャーロット(米ノースカロライナ州最大の都市)の大きさのベンガジは、その地域一帯に響き渡った大虐殺に見舞わ れたにちがいない。それは世界の良心に汚点を残しただろう。」

これは、リビア政府軍によって敗北に直面していたイスラ ム主義民兵の作り話だった。彼らはロイターに、「ルワンダで見たような文字通りの大虐殺」になるだろうと語った。2011年3月14日に報道されたこの嘘は、NATOの地獄絵図に最初の火花を送り、デビッド・キャメロ ンによって「人道的介入」と説明された。

密かにイギリス特殊部隊[SAS]に供給され訓練された多くの「反体制派」がISISとなっていた。彼らの最新のビデオ は、スルトで捕えられた21人のコプト・キリスト教徒労働者の打ち首を見せてい る。その都市スルトは彼らのためにNATO爆撃によって破壊されていた。

オバマ、キャメロン、そしてオランドにとって、カダフィの本当の罪は、リビアの経済的自立 およびアフリカ最大の石油備蓄をUSドルでの売却を停止するという公然とした意志であった。オイルダラーは米帝国権力の支柱である。カダフィは大胆にも、オール・アフリカ銀行を設立して金で保証される共通のアフリカ通貨に同意し、また価値ある資源がありながら貧しい 国々のあいだで経済統合を促進する予定でもあった。これが生じようと生じまいと、アフリカに「参入」し軍事「提携」でアフリカ諸国の政府 を買収しようとしている米国にとっては、まさにこの考え方が耐え難いものだった。

NATO攻撃に続き国連安保理決議を隠れ蓑に、オバマは(アフリカのツイッターサイト)Garikai Chenguにツイートした。「リビアの中央銀行から、アフリカ中央 銀行設立とアフリカ金が裏書きするディナール通貨のためにカダフィが取っておいた300億 ドルを押収した。」

《ユーゴスラビア》
リビアに対する「人道的戦争」は、欧米の自由主義精神に近いモデルをとくにメディアで生か した。1999年、ビル・クリントンとトニー・ブレアはNATOをセルビア爆撃に 送り込んだが、分離主義者のコソボ自治州で少数民族のアルバニア系住民に対してセルビア人が「ジェノサイド」を犯していたと、彼らは嘘をついた。

戦争犯罪のための米無任所大使[原文のママ]デヴィッド・シェファーは、「少数民族アルバニア人の14歳から59歳までの男たち225000人」もの人々が殺害されたかもしれないと訴えた。クリントンとブレアの二人 は、ホロコーストと「第二次世界大戦の精神」を引き合いに出した。欧米の英雄的な同盟相手はコソボ解放軍[KLA]だったが、彼らの犯罪的 な経歴は脇に置かれた。イギリス外務大臣ロビン・クックは、彼の携帯電話にいつでも電話するよう彼らに語った。

NATO爆撃が終わり、セルビアのインフラの大部分、加えて学校、病院、修道院、そして国 家TV局が廃墟と化したなかで、国際犯罪調査団が「ホロコースト」の証拠を掘り出すためにコソボを訪れた。FBIはたったひとつの大量墓地も発見できず、彼らは帰国した。スペインの法医学調査団も同じことをした。そのリーダーは憤慨して「プロパガンダ機構による意味の捻じ 曲げだ」と公然と非難した。1年後、ユーゴスラビア国連法廷は、コソボの最終的な 死者数を 2788人と公表した。これは双方の戦闘員およびKLAによるセルビア人 とロマ人の殺害も含んでいた。ジェノサイドではまったくなかった。「ホロコースト」は嘘だった。NATO攻撃は不正な詐欺行為だった。

嘘の背後に重大な意図があった。ユーゴスラビアは冷戦下 の政治的経済的な橋渡しをする立場にある多民族連邦政府として独特の仕方で自主独立していた。公共事業体と主要な製造業の大部分を公共が 所有していた。これは拡大するヨーロッパ共同体にとって好ましくない。とくにユーゴスラビアのクロアチア州とスロベニア州の「手つかずの 市場」を確保するため、東部に向かい始めた新たな統一ドイツにとっては許容できなかった。ヨーロッパが1991年のマーストリヒト条約を結んだころには、損失を招くユーロ圏に彼らの計画を準備 するため秘密取引が結ばれていた。ドイツはクロアチアを承認するだろう。そのとき、ユーゴスラビアは破滅の運命にあった。

ワシントンでは、もがいているユーゴスラビア経済が世銀 の融資を拒否されたことを見ていた。当時ほとんど休眠し冷戦の遺物となったNATOが、帝国の用心棒としてモデルチェンジされた。フラン ス、ランブイエの1999年コソボ「和平」会談で、セルビアはその用心棒の二枚舌 の戦術の下に置かれた。ランブイエ合意は、米国代表団が最終日に挿入した秘密の付属文書Bを含んでいた。これは、ナチ占領の苦々しい記憶 を持つ国であるユーゴスラビア全体の軍事占領の要求であり、また「自由市場経済」の実行とすべての政府資産の民営化の要求であった。主権 国家がこのようなものに署名するわけがない。すばやく懲罰がやってきた。無防備の国にNATO爆撃が襲いかかった。それは、アフガニスタンとイラク、シリアとリビア、そしてウクライナにおける破局の前兆だった。

1945年以来、国連加盟国の三分の一以上の69か 国が、アメリカの現代ファシズムの手によって以下に述べるようなやり方で一部ないしは全部が被害を被ってきた。これらの国々は侵略され、 政府は転覆され、民衆運動は鎮圧され、選挙は妨害され、国民は爆弾に曝され、経済的な保護を剥奪され、社会はいわゆる「制裁」の包囲に よって不自由な条件下に置かれた。イギリスの歴史家マーク・カーティスは、それらによる死者を数百万人と見積もっている。いかなる場合にも、大きなデマ宣伝が繰り広げられてきた。

《アフガニスタン》
「今夜、9・11以降はじめて、アフガニスタンにおけるわれわれの戦闘任務は終わった。」 これが、オバマの2015年一般教書演説の冒頭の言葉だった。実際には、約10000人の部隊と20000人 の軍事請負業者[傭兵]が アフガニスタンに期限は設けない形で留まっている。「アメリカの歴史でもっとも長い戦争が賢明な結末を迎えている。」とオバマは語った。 事実は、アフガニスタンでは2014年、国連が統計をとりはじめて以来どの年より も多くの民間人が殺害された。過去にアフガニスタンで殺された人々の大多数は―民間人も兵士も含み―オバマの大統領任期中に殺害されてい た。

アフガニスタンの悲劇はインドシナ半島のとてつもない犯罪に匹敵する。アメリカの卓越した 戦略地政学の権威、アフガニスタンから現在に至るまでの米基本方針のゴッドファザー、ズビグネフ・ブレジンスキーは、その称賛され非常によく引用された著書『壮大なチェス盤』で、もしアメリカがユーラシアを支配し世界を牛耳るというなら大衆民主主義を維持することはできな いと書いた。なぜなら「覇権の追求という目的は大衆の熱烈な支持を集めることはないのだから、…デモクラシーは帝国の動員に対立するの だ。」彼は正しい。ウィキリークスとエドワード・スノーデンが暴露したように、監視・警察国家はデモクラシーを侵害する。1976年、カーター大統領当時の国家安全保障補佐官ブレジンスキーは、アフガニスタンの 最初にして唯一のデモクラシーに致命的打撃を与えて彼の論点を証明してみせた。この重要な歴史を誰が知ろう?

1960年代、地球上の最貧国アフガニスタンに民衆革命が瞬く間に広がった。やがて1978年には封建貴族体制の残存政権が打倒された。アフガニスタン人民民主党 [PDPA]が政府を結成し、封建 制度の撤廃、すべての宗教の自由、女性の平等な権利、そして少数民族の社会的公正を含む改革プログラムを宣言した。 13000人以上の政治犯が解放され、警察の犯罪ファイルが公然と焼却された。

新政府は、極貧層のために無料診察を導入し始めた。日雇労働の身分は廃止され、大規模な基 礎教育プログラムが開始された。女性にとっての進歩は前代未聞だった。1980年 代後半には大学生の半数は女性だった。またアフガニスタンの医師の半分、公務員の三分の一、そして大多数の教師が女性で占められていた。 女性外科医セイラ・ノーラニィが思い出を語った。「全ての女子が高校にも大学にも行くことができました。私たちは好きなものを着て行きた いところへ行くことができました。いつもカフェに入り、金曜日には新しいインド映画を観に劇場に行き、新しい音楽を聴いていました。ム ジャヒディーンが勝利し始めたときすべてが悪くなり始めました。彼らは教師たちを殺して学校を燃やしたものです。私たちはとにかく怖かっ たのです。これらの人々が欧米が支援した連中だと考えると、腹が立って悲しくなったのです。」

PDPA政府はソ連に支援されたが、元国務長官サイラ ス・ヴァンスが後で認めたように、「[革命における]どんなソ連の共謀もまったくその証拠はなかった」。世界の至るところで解放運動への信頼 性が高まっていることに不安を覚えたブレジンスキーは、もしアフガニスタンがPDPAのもとで成功した場合、その独立と進歩は「前途有望 な実例となる脅威」を提供することになろうと判断した。

1979年7月3日、ホワイトハウスは、米国兵器とその他の援助で年間5億ドル以上にもなるプログラムで部族の「原理主義者」グループいわゆるムジャヒディーンへの支援を密かに認可した。そのねらいは、アフガニスタンで初めてとなる世俗的(非宗教的)な改革派政府を打倒することだった。

1979年8月に、カブールの米国 大使館は、「合州国のより大きな利益のためには、…アフガニスタンにおいては将来の社会的経済的改革を意味するかもしれないが、これがどんなに後退しようとも[PDPA政府]の打倒が得策 となるだろう。」と報告した。イタリック体は私のもの。

ムジャヒディーンはアル=カイダお よびイスラム国の原型となった。彼らの中には、CIAから現金で何千万ドルも受け取っていたグルブディーン・ヘクマティアルがいた。ヘク マティアルの専門は、アヘンの密輸売買とベールをかぶることを拒否した女性の顔に酸を投げつけることだった。ロンドンに招かれた彼はサッ チャー首相に「自由戦士」と称賛された。

もしブレジンスキーが、世俗的・政治的解放運動を弱体化しソ連を「不安定化」させる目的 で、その自伝で書いたような「過激化されたイスラム教徒何人か」を生み出すことによって中央アジアでイスラム原理主義を促進する国際的運 動を始めていなければ、このような狂信的な人間たちはそれぞれの部族的世界に留まっていたであろう。彼の壮大な計画は、パキスタンの独裁 者で地域を支配しようとする将軍ジア・ウル・ハクの野心と一致した。1986年に CIAとパキスタン諜報機関ISIは、アフガニスタン・ジハードに参加させるため世界中から人々をリクルートし始めた。サウジの大富豪ウ サマ・ビン・ラディンはそのうちの一人だった。

やがてタリバーンとアル=カイダに 加わった工作員たちは、ニューヨーク・ブルックリンのイスラミック・カレッジに徴募されヴァージニアのCIAキャンプで準軍事的な訓練を 受けた。これは「サイクロン計画」と呼ばれた。1996年、アフガニスタン最後の PDPA大統領(国連総会に助けを求めていた)ムハンマド・ナジーブッラーがタリバーンによって街頭で首をつるされたとき、この計画は成 就された。

サイクロン計画とその「過激化されたイスラム教徒何人か」の「反動」が、2001年9月11日であった。サイクロン計画は、アフガニスタンからイラク、イエメン、ソマリア、そし てシリアと、ムスリム世界の至るところで無数の男たち、女たち、子どもたちの命を奪う「対テロ戦争」となった。戦争執行者のメッセージは 当時も今も変わらない―「あなたは米国の味方か、そうでなければテロリストの味方だ。」

《現代のファシズム、またはアメリカ》
過去も現在も、ファシズムの共通の特徴は大量虐殺である。アメリカのベトナム侵略でも「無 差別爆撃地帯」、「戦死者カウント」、および「付随的被害」はあった。私が報道したクアンガイ省(ナパーム弾、枯葉剤およびソンミ村虐殺事件などでとくに甚大な被害があった地域)では、米国によって何千人もの民間人[侮 蔑的にgooks(ベトコン)と呼ばれた]が 虐殺された。しかし記憶されているのはソンミ村虐殺だけである。ラオスとカンボジアでは史上最大規模の空襲が行われ、今でもその爆撃後の クレーターが連なった様子が上空からネックレスのような形で見える。テロ時代の幕開けを象徴する光景だ。その猛爆は、ポル・ポト率いるカ ンボジア版イスラム国をもたらした。 

今日、世界の大規模なそれぞれの対テロ作戦は、家族、結婚式の招待客、葬儀の会葬者、彼ら 全員の処刑を伴っている。これらの人々はオバマの犠牲者である。ニューヨーク・タイムズによれば、毎週火曜日、ホワイトハウス・シチュエーションルーム(ホワイトハウスの地下にある国家安全保障会議の機密相談室で世界大に展開する米軍の指揮管理を維持する)でCIAが提 示した「殺害リスト」からオバマ自らが選抜している。そこで彼は、一片の法的な根拠もなく、ある人物の生殺与奪を決定する。その処刑兵器 は、パイロットなしの航空機いわゆるドローン[無人機]から発射されたヘルファイア・空対地ミサイルが実行する。焼かれた犠牲者の遺体がその地 に花綵のように連なる。各々の「命中」が、まるで「虫をつぶす」ように遠くからコンソール・スクリーンに記録される。 

歴史家ノーマン・ポラックが言うには、「ナチ式軍隊行進に代わり一見無害な文化全体の軍事 化が進む。大言壮語を吐く指導者に代わって、改革者の出来そこないが無邪気に働き、ずっと笑いながら暗殺を計画し実行するのだ。」

古いファシズムと新しいファシズム を結びつけるものは、優越性のカルトである。「私は、細胞の隅々まで私の全存在をかけてアメリカの例外主義を信じている」とオバマは語っ て、1930年代以来の国家的フェティシズム宣言の数々を喚起させた。歴史家 アルフレッド・W・マッコイが指摘したように、ヒットラー愛好者だったカール・シュミットは語った。「支配者は、例外を決定する者である。」これが世界を睥睨するイデオロギー、アメリカニズムを要約している。それが略奪イデオロギーと気づかれないでいることは、同様に気 づかれない洗脳の到達点である。公式に宣言されず欺瞞に満ちた行進曲で軽妙に啓発教化されるように、そのうぬぼれは常に欧米文化によって 巧みに粉飾されている。私もおなじみの栄光のアメリカ映画を観て育ったが、そのほとんどすべてが歪曲であった。1300万人以上もの兵士の犠牲をもってナチ戦争機構のほとんどを滅ぼしたのは、赤軍 だったことを私は考えもしなかった。それに対して、米国の損失兵は太平洋戦争を含めて40万 人だった。ハリウッドはこれを逆にした。

現在何が異なるかといえば、映画の観客がいつも遠いところで人々を殺していなければならな いアメリカ的精神異常の「悲劇」に両手を握りしめるよう招かれているということだ―ちょうど大統領自身が人々を殺すように。ハリウッド暴 力の権化、俳優にして監督のクリント・イーストウッドが、殺人ライセンスを持つ異常な狙撃手を描いた映画「アメリカン・スナイパー」で今 年もオスカーにノミネートされた。ニューヨーク・タイムズは、「公開直後にすべての入場記録を破った愛国的で家族中心の映画」と評した。  

アメリカのファシズム受容についての英雄的な映画はまったくない。第二次大戦期間中、アメ リカ[とイギリス]はナチ ズムと英雄的に戦いギリシャ・ファシズムの台頭に抵抗していたギリシャに対して戦争を仕掛けた。1967年、 ―ブラジルとラテンアメリカの大部分でそうだったように―CIAはアテネのファシスト軍事政権に権力を奪取するよう援助した。ナチの侵略 と人道に対する罪に共謀したドイツと東欧の人々は、米国に安全な避難場所を与えられ多くは甘やかされて彼らの才能は報われた。ヴェル ナー・フォン・ブラウンは、ナチV-2テロ爆弾と米国宇宙計画の双方の「父」で あった。

《結び―ウクライナと現代のファシズム》
1990年代、元のソビエト共和国、東欧とバルカン半島は NATOの前哨基地となり、ウクライナにおけるナチ運動の後継者たちが機会を与えられた。ソビエト連邦のナチ侵略の期間中、何千、何万人 ものユダヤ人、ポーランド人、ロシア人の死に責任があるウクライナのファシズムが復権された。その「ニューウェーブ」は「ナショナリス ト」として(NATOの)用心棒に迎えられた。

復活したウクライナのファシズムが絶頂に達したのは、2014年、選挙で選ばれた政府に敵対するクーデターに、オバマ政権が50億ドルを派手にばらまいたときであった。突撃部隊は右翼セクターおよびスヴォボダとし て知られるネオナチだった。「モスクワのユダヤ人マフィア」とゲイ、フェミニスト、そして政治的左派に参加している者を含む「その他のク ズ」どもの追放(パージ)を求めたオレフ・チャフニボクが彼らのリーダーに含まれている。

【ご参考(訳者より):下記の 「マスコミに載らない海外記事」には、オレフ・チャフニボクがナチ党の敬礼をして演説し、米上院議員ジョン・マケインとも会談している様 子が載っているチョスドフスキィの記事(2014年2月24)を紹介している。
http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2014/02/post-9d10.html

これらのファシストは、現在、キエフ・クーデター政府のメンバーになっている。ウクライナ 議会の初代副議長で与党リーダーのアンドリー・パルビーはスヴォボダ(自由党)の共同創設者である。(2015年)2月14日、パルビーは、「高度な精密近代兵器を米国に与えて」もらうようワシントンに行く予 定であることを明らかにした。もし彼が成功したなら、それはロシアから見たら戦争行為(不法侵略行為)と見なされるだろう。

欧米の指導者は、ヨーロッパの中心部におけるファシズムの復活について誰もはっきりとは語 らなかった―ウクライナ国境地帯の至るところに現れたナチ侵略のために2200万 人の国民を失ったウラジミール・プーチンを除いては。最近のミュンヘン安全保障会議で、オバマの国務次官補でありヨーロッパ・ユーラシア問題補佐官のヴィクトリア・ヌーランドは、米国がキエフ政権を武装化することに反対するヨーロッパの指導者たちに罵りわめいた。彼女はド イツ防衛大臣に「敗北主義の大臣だ」と名指した。キエフのクーデターを立案し指揮したのはヌーランドだった。「ネオ-コン」の権威で過激右翼の「アメリカの新世紀プロジェクト(PNAC)」の共同創設者ロ バート・D・ケーガンの妻、彼女はディック・チェイニーの外交政策顧問だった。

ヌーランドのクーデターは計画通りにはいかなかった。 NATOは、ロシアの歴史的、合法的なクリミアの不凍港海軍基地を奪取することはできなかった。 1954年 にニキータ・フルシチョフによってウクライナに不法に併合されたクリミアの大部分のロシア住民は彼らが1990年代にしたように、ロシアに戻るため圧倒的な賛成票を投じた。一般民衆と国際的な 監視のもとで、住民投票が自発的に行われた。なんの侵略もなかった。

それと同時に、キエフ政権は民族浄化の残忍さで東部の少数民族ロシア人住民を攻撃し始め た。ネオ-ナチ民兵がナチ武装親衛隊のやり方で配置につき、彼らは爆撃しながら各 都市や町々の包囲に向かった。彼らは、電力を切断し、銀行口座を凍結し、社会福祉と年金を停止し、これで生じた大規模な飢餓状態を兵器として利用した。100万人以上の難民が国境を超えてロシアに逃れた。

欧米のメディ アでは、「ロシアの侵入」が引き起こした「暴力行為」から逃れるため住民がいなくなったと報道された。NATO司令官、ブリードラブ将軍 ―その名前と異常な行動は米映画監督スタンリー・キューブリックの「ドクター・ストレンジラブ」に影響を受けたのかもしれないが―彼は4万人のロシア部隊が「集結した」とアナウンスした。衛星写真による証拠が必要な時代に あって、彼は何の証拠も示さなかった。

この、ウクライナ人口の三分の一をしめるロシア語も話すバイリンガルの人々は、この国の民 族的多様性を反映し、またモスクワからも自治と独立の双方を願って久しく連邦化を求めてきた。その大部分は「分離主義者」ではないが、市民たちはキエフの権力横領に反対して郷土で安全に暮らしたいと思っている。彼らの反逆と自治「州」創設は、彼らに向けられたキエフの攻撃 に対する反動である。欧米の聴衆には、このことはほとんど何の説明もされなかった。

2014年5月2日、オデッサの労働組合本部では、警官がそばで傍観していながら41人のロシア系住民が生きたまま火あぶりにされ虐殺された。右派セクターの指導者ドミト ロー・ヤロシュは、「わが国民の歴史におけるもう一つの輝ける日だ」と大虐殺を絶賛した。アメリカとイギリスのメディアでは、「ナショナ リスト」[ネオ-ナチ]と「(親露派)分離主義者」[ウ クライナ連邦をめざす国民投票のために署名を集めていた人々]との「衝突」から生 じた「暗い悲劇」と報じられた。

ニューヨーク・タイムズは、ワシントンの新たな手下がファシズム的な反ユダヤ政策を取って いるという警告を、ロシアのプロパガンダであると退けその話を葬り去った。ウォール・ストリート・ジャーナルは、「ウクライナ火災死亡事件は親露派による放火か:政府見解」と、犠牲者側を非難した。オバマは、ウクライナ政権側の「節度」を評価した。

もしプーチンが彼らの援助に駆けつけ刺激させていたなら、欧米であらかじめ決められた「の け者[パーリア]」という 彼の役割は、ロシアはウクライナを侵略しているという嘘を正当化するものとなっただろう。1月29日、ウクライナ軍司令長官ヴィクトール・ムチェンコ将軍は、記者会見で彼が次のことを 強調して語ったとき、ほかならぬ米国とEUの対ロシア制裁の土台をうっかり否定してしまった。「ウクライナ軍はロシアの正規部隊とは戦っ ていない」と言ったのだ。これらは「非合法の武装グループ」のメンバーである「個々の市民」であったと。ロシアの侵入はまったくなかっ た。これはニュースにならなかった。キエフの副外務大臣ヴァディム・プリスタイコは、核武装したロシアとの「全面戦争」を求めた。

2月21日、 オクラホマ選出の共和党員、ジェイムズ・インハーフ米上院議員は、キエフ政権のためにアメリカの兵器を認可する法案を提出した。上院の趣 旨説明でインハーフは写真を利用した。彼が証拠と主張した写真はウクライナに侵入するロシア部隊であったが、ずっと以前に偽物と暴かれて いたものだった。それは、ニカラグアのソビエト軍施設とされたロナルド・レーガンの偽造写真、そしてコリン・パウエルが国連に提示したイ ラクの大量破壊兵器のでっち上げ証拠を思い出させた。

ロシアに対する徹底的な中傷キャンペーンの激しさと茶番劇の悪役としての大統領の描写は、 私の報道記者人生の中でも類を見ない。アメリカのもっとも著名な調査報道ジャーナリストの一人ロバート・パリー、イラン・コントラ・スキャンダルを暴いた彼が最近書いている。「アドルフ・ヒトラーのドイツ以来、自国民に戦争をしかけるためにナチ突撃騎馬隊を送り込むなど と考えたヨーロッパの政府はなかったが、キエフ政権はそれを知りながら故意にそのようにした。しかし西側のメディアや政治勢力は右から左 までおしなべてこの現実を隠すため、ひいては確固とした事実まで無視するに至る入念な取り組みをしていた。…もし、どうして世界が三度目 の世界大戦に入り込もうとしているのか疑問に思うなら―同様に1世紀も前に最初の 世界大戦に突入したのだが―すべての人は事実や道理が通じないことを証明したウクライナをめぐる狂気を見ることだ。」

1946年、ニュールンベルク裁判の判事は、ドイツのメディアに ついて次のように語った。「ナチの共謀者たちによる心理戦の利用はよく知られている。利己的な得策に基づく少数の例外を除いては、それぞ れの重要な攻撃の前段に、彼らは計算づくで攻撃相手を弱めるため、またドイツ国民に攻撃への心理的準備をさせるため、報道キャンペーンを 開始した、…ヒットラー国家のプロパガンダ・システムでは、もっとも重要な兵器が毎日の新聞とラジオであった。」2月2日付のガーディアン紙で、 ティモシー・ガートン・アッシュは、事実上、世界大戦を提唱した。見出しには「プーチンを止めなければならない」とあった。「ときには銃 だけが銃を止められる。」彼は、戦争の脅威により「包囲されているとのロシアの被害妄想を助長する」かもしれないと譲歩した。しかしそれ でいいのだと。彼は「仕事」のために必要な軍装備品の名前を挙げ、新聞の読者に「アメリカには最良の装備がある」と示唆した。

2003年、オックスフォード大学教授であるガートン-アシュは、イラクに大虐殺をもたらす結果となったプロパガンダを繰り返した。サッダム・ フセインは、「持っている、[コリン・]パ ウエルが立証したように、相当大規模な恐るべき生物・化学兵器を備蓄しそれらの残りのものも隠している。彼は依然として核兵器をもとうと している。」とガートン-アシュは書いた。また彼はブレアのことを「グラッドスト ン主義者、キリスト教的、自由主義的介入主義者」と讃えた。2006年には、「現 在、われわれは西側にとってイラク戦争後の大きな試練に直面している。イランである。」と彼は書いた。

このような考えの噴出-ガートン-ア シュが好む表現に言い換えれば「自由主義の葛藤(アンビバレント)の苦渋」は、ファウスト的(悪魔との)取り引きを行った欧米の自由主義 派エリートの典型的な考え方である。戦争犯罪人ブレアは彼らの敗北した指導者である。ガートン-ア シュの記事を掲載したガーディアン紙は、アメリカのステルス爆撃機の全面広告を掲載した。ロッキード・マーティン社が開発したその威嚇的 爆撃機の画像の上には、「F-35 イギリスに最適」だった。イギリスの納税者が13億ポンドを支払うことになるこのアメリカの「装備」、その前のFモデル・シリーズは世 界中で殺戮の限りを尽くした。その広告とうまく噛み合うように、ガーディアンの社説は軍事費の増大を要求していた。

もう一度確認するが、ここに深刻な意図がある。世界の支配者たちはウクライナのミサイル基 地だけでなくその経済が欲しいのだ。キエフの新財務大臣ナターリワ・ヤレスコは、米国の海外「投資」を指揮する元国務省の上級高官である。彼女にはウクライナ市民権が急きょ与えられた。狙いはウクライナの抱負なガス資源だ。米副大統領ジョー・バイデンの息子は、ウクライ ナ最大の石油・ガスおよび宣伝企業の現職役員だ。悪名高いモンサントのような遺伝子組み換え種子のメーカーは、ウクライナの豊かな農業土 壌を欲している。

とりわけ、彼らはウクライナの強力な隣国ロシアが欲しい。彼らは、ロシアの国土をバルカナ イズ(バルカン諸国のように敵対する小国に分裂させる)、つまり分割することを欲し、地球上で最大規模の天然ガス資源を搾取したいのだ。北極氷河が融解するこのとき、北極海とそのエネルギー資源、そしてまたロシアの長い北極圏境界線を支配したいのだ。モスクワの彼らの家臣 ボリス・エリツィンは、かつて自国の経済を西側に売り渡した酔っぱらいだった。彼の後継者プーチンはロシアを主権国家として再建した。そ れが彼の罪だった。

われわれの責任は、はっきりしている。戦争挑発者の無謀な嘘を確定し暴くこと、そして彼ら とけっして結託しないことだ。現代の数々の帝国国家に脆弱ではあるが文明をもたらしてきた偉大な民衆運動を再び呼び覚ますことだ。もっとも重要なことは、われわれ自身が―その精神、人間性、自らの尊厳―征服されないようにすることである。もし沈黙したままなら間違いなく打ち負かさ れてしまう。そしてホロコーストが招き寄せられるであろう。

(以上、翻訳終了)