Friday, April 08, 2011

元原発技術者・菊池洋一『わたしにとっての広島と原発震災』 Former Reactor Engineer Kikuchi Yoichi: Hiroshima, and Nuclear Plant "Quake Disaster"

2008年10月10日発行の『地平線』43号に掲載された、元原発技術者、菊池洋一さんの論文を、編集者と著者の許可をいただき、転載します。原発技術者としての知識と生々しい体験、深い歴史的見識、そして現在福島で起こっていることを予言しているような内容は、読む人をうならせ、考え込ませるものと思います。現在起こっていることに特に関連が深い部分についてはこのブログの運営者が下線を引かせていただきました。(4月16日更新:菊池洋一さんが中部電力静岡支店に、浜岡原発停止を直訴したビデオのリンクとともに、現在の菊池さんの危機感を共有します。菊池さんの発言は『現代ビジネス』でも読めます。)

心からの叫び!元原発技術者菊地洋一さん中部電力靜岡支店で訴えた


わたしにとっての広島と原発震災


元原発技術者 菊地洋一

はじめに

 私が原発を建設するために、米国GE社の子会社GETSCO(ゼネラル エレクトッリク テクニカルサービス カンパニー・後のGEII)に就職したのは、仕事上の師でもあった先輩から「原発建設の仕事は原子力の平和利用なので、本当にやりがいのある男冥利な仕事である」と、強く説得されたからでした。
 その先輩の原発にかける情熱はとても強く、被爆都市広島の出身者ならではのものでした。
 GETSCOから勧誘されたのは、第1次オイルショックで石油の値段が倍増し、石油製品の床建材は市場から姿を消し、トイッレトペーパーの買占め騒動が起き、日本経済が大混乱をきたしていた時期のことです。
 石油資源をほとんど持たない日本が、石油の代替エネルギーを必要としていたのは当然のことでしたので、私だけではなく日本中の人たちが「原発の安全神話」を受け入れ易い時期だったのでしょう。
 「私にとっての広島」は、私を原発に誘った先輩の出身地であり、被爆の悲惨さ故に、人間の愚かさを常に考えさせてくれる都市でもあります。また、「私にとっての原発震災」というのは、日本中の原発及び関連施設ならどこでも起こり得るのですが、現時点で特に気になるのは東海地震による浜岡原発震災です。
 去年は、2回、浜岡原発裁判の裁判長を現場に案内しましたが、大事なところはどこも放射線レベルが高く、現場での十分な説明は出来ませんでした。私が、宮崎県から静岡県の浜岡にわざわざ出向いたのは、浜岡原発が全基ともGEの沸騰水型原発で、巨大地震時には巨大事故を起こす可能性が高いことを、電力会社や国の役人の誰よりも具体的に詳しく知っているからでした。
 「原発震災」という言葉は、神戸大学の地震学者である石橋克彦教授の造語です。巨大地震による震災に原発の放射能事故が重なると、非常線を張られますので、救助も思うようには出来なくなり、想像を絶する大惨事になってしまうことを言います。
 「広島と原発震災」というタイトルについて、この2つは特に関係はなさそうですが、そうとは言い切れないのです。「元広島市長平岡敬と原発震災」とすべきですが、その訳は後述いたします。

原発と原爆

 「原子力の平和利用」はまやかし言葉と思いたくなるほど、「核エネルギーの利用」には秘密が多く、危険に満ちています。危険なのは、原爆や原発の強力な破壊力と熱エネルギーに加え、悪魔が変身したかのように長命な放射性物質を生み出すからです。
 放射性物質は、α線(ヘリウムの原子核)β線(電子)γ線(電磁波)として肉体に作用して細胞を破壊し癌化させるだけではなく、遠隔操作で権力欲の強い政治家や軍人、学者や実業家の精神を狂わす能力をも合わせ持っています。
 そのような訳で、とても人類に平和をもたらすものとは思えないことを、核爆弾の例で見てみたいと思います。「日本は原爆を持つべきだ!」と考える政治家や軍関係者は多くいるのです。
 朝日新聞(2006年10月19日夕刊)によると、当時の外務大臣で次期総理大臣を目指している麻生太郎は、核保有に関しては「議論が大事」と国会で発言しました。被爆国の外務大臣が言うことかとあきれてしまいます。しかし、有事法制が閣議決定された翌年(2003年)の衆議院議員アンケートでは、「核武装を検討すべき」が17%で改憲派の3分の1を越していたのですから麻生発言も不思議ではないかも知れません。
 辞任したばかりの安倍晋三総理が副官房長官の時に、爺さんの岸総理の「戦術核を使っても、違憲ではない」(昭和35年の答弁)と同様の考えをもっていましたが、自民党の各派閥が押す次期総理候補の福田康夫氏も、「非核3原則」見直しに通じる発言をしていることを思うと、切なくなります。
 日本の核保有論者の代表的存在は、巣鴨プリズンから政界に復帰した元総理だった岸信介氏でしょう。
 「核兵器を持たない国は一流国ではないんだな…核兵器を持たん国は威信も発言力もない」。この発言は、「週間文春」昭和47年4月17日号に載った、岸氏と草柳大蔵氏との対談の1部です。
 かつて、「1発は原爆を持った方がいい」何故なら「持たないと他の国に対して睨みがきかない」と発言したのは、石原慎太郎東京都知事。しかし、岸氏も石原氏も原爆を実際に使用することまでは考えていなかったと思います。
 中曽根康弘元総理は、原発に初めて予算(1954年)をつけた人ですが、若き海軍主計中佐だった彼は、広島原爆投下のきのこ雲を対岸の四国から見て「これからは原子力の時代だと思った」(ほんとかな)そうです。
 日本で原発を建設するには、原爆と不可分だから米国との交渉が必要で、そこで動いたのが「読売」の正松松太郎氏です。日本の原子力の父と呼ばれています。
 
 今は廃炉になりましたが、日本初の商業用原発は東海原発1号炉で、英国から輸入された炭酸ガス炉です。建設はブリティッシュGEが監督にあたりました。軍事・平和両用の原発です。この炉で原爆が何個造れるかを極秘のうちに検討されていたことは、あまり知られてはいないようです。
 私が最初に取り組んだ東海2号炉は軽水炉ですが、だからといって原爆と無関係とは言い切れません。プルトニウムは軽水炉の使用済み燃料から取り出されるのですから。日本ではすでに原爆を大量に造れるだけのプルトニウムを所有しておりますし、英仏のみならず国内でも生産を続けています。
 今年の11月からは六ヶ所村の再処理工場が本格的に操業され、プルトニウムはどんどん増え続けます。北朝鮮はじめ東南アジア、中近東のイラン、イラク等の国々では到底考えられないことです。
 今年の夏、米国がインドとの原子力協定に合意し、使用済み燃料の再処理を容認しました。昨年3月に米国はインドの核保有を容認し、原子力の技術協力を行うことになりましたが、日本政府までもが経済関係を優先させてインドの核保有を容認するとは、全く情けなくなります。
 子供の頃に見た原爆の悲惨な絵や映画のシーンは強烈です。特に「父ちゃん母ちゃん ピカドンでハングリー ハングリー」と、米兵に物乞いする少年の姿は今でも忘れることができません。最近、テレビで『裸足のゲン』が上映されましたが、原爆や戦争の悲惨さを伝える努力は、これからは今まで以上にされなければならないと思います。
 話が少しそれてしまいましたが、30代の私は「原子力の平和利用」なる言葉について深く考えることもなく、単に、戦争目的に対する平和利用くらいにしか捉えられませんでした。しかし、今では、核保有国を例に出すまでもなく、原爆と原発の関係は世界の常識です。自分はなんと浅はかだったのだろうと強く反省しています。
 もし、日本の巨大原発や高速増殖炉や核燃料再処理工場が最悪の事故を起こせば、チェルノブイリ原発事故をはるかに上回る地球規模の大惨事となります。

 広島・長崎といえば原爆、原爆といえばどうしてもアインシュタインの顔が思い浮かびます。彼はナチスドイツを念頭に、原爆の製作に協力したのですが、日本に投下されたことを悔やみ、バートランド・ラッセル氏や湯川秀樹博士らと生涯にわたって、核廃絶に尽力しました。
アインシュタインは死ぬ前には、今度生れてくるときには、物理学者ではなく配管工がいいと話されたそうです。
 それにつけても、日本政府の核廃絶への意欲のなさには驚かされます。
 特に、原爆記念日の広島市長につづく首相の挨拶には、毎年のことながら幻滅させられます。なんで、米国に核廃絶や非核3原則を訴えられないのか、情けなくなります。
 近年、原発と関係が深い劣化ウラン弾の使用が世界的な問題になっていますが、被爆国である日本ではほとんど話題にならないのは不思議です。東京の「タンポポ舎」が熱心に取り組んでくれてはいるのですが…。
 チェルノブイリ原発事故もふくめて、放射能事故の悲惨さから目をそむけてはならない。私たち日本人が「他人事ではなかったんだ」という日が、確実に近づいている根拠がいくつもあるからです。

無知であることの怖さ

 このようないきさつで原子力発電所の建設に従事した私でしたが、「原子力の平和利用」なる言葉が持つ歴史的欺瞞性について学んだのは、GEの沸騰水型原発の現場を離れてからかなり時間がたってからでした。その前に戦争の話をさせいただきたいと思います。
 私の生れ故郷である岩手県釜石市には、八幡製鉄とならぶ富士製鉄があったため、街の中心は2度にわたる艦砲射撃と空襲で焼け野原になってしまいました。1回目は7月14日、2回目はなんと敗戦直前の8月9日でした。
 私の幼児記憶は空襲に始まるのですが、ここで言いたいのは、戦災の悲惨さについてではありません。製鉄の街釜石の空襲は戦争終結に必要だったと思ってきたのですが、どうも勘違いしていたようです。米国は、8月までに日本の戦闘能力はほぼ失われたことを知っていたはずです。制海権も制空権も失っており、特に日本周囲の機雷封鎖で、戦争続行に必要な原料輸入は途絶していたのです。
 八幡とちがって釜石は、製鉄に必要なコークスも鉱石の輸入もないので生産活動はなく、空襲される必要はなかった。ならば、釜石も日本殲滅を目的とした戦略に組み込まれていただけと言えそうです。戦闘能力がなくなっていた広島や長崎にも、原爆投下の必要はなかったはずです。
 久間元防衛大臣が「原爆投下はしょうがなかった…」と発言して失脚しましたが、同じ考えの政治家は多いと思います。
 特に、原爆投下の正当性を米国サイドから主張している『日本殲滅』(光人社 1995年)を読んだ人の中には多いのではないでしょうか。
 しかし、ノルマンディー上陸作戦で連合軍には放射能防護措置が取られておりました。放射能の恐ろしさを知っていた上での原爆投下は、自国での生体実験を大規模に行ったもので、正当化できるものではありません。
 広島・長崎の原爆は、水や大地など人間を含む生物にとっての生存条件を放射能で汚染しましたが、今、日本で巨大原発が事故を起こせば、チェルノブイリ原発事故からも分るように、原爆より広範囲にわたって大量の放射性物質をばらまきます。その可能性がダントツに高いのが、浜岡原発です。詳しく知りたい方は、『止めよう!浜岡原発』がお勧めです。
 『人間家族』の別冊としてスタジオ・リーフ(0558-62-4533)の発売です。
 今、もしも日本が現在のような生活を続けるならば、地球温暖化による環境異変も重大事ですが、核エネルギー利用の失敗による大惨事の方が先に起きてしまいはしないかと、私は非常に危惧しています。

原発問題はこれからが本番

 1999年9月、東海村のJCO転換試験場で臨界事故なるものが起きてしまい、東海村は大パニックに陥りました。3人の被曝者の1人だった大内さんの死に至るまでの顔写真を見た人は、きっと目をそむけざるをえないと思います。原爆同様に中性子線被曝は悲惨極まりないものです。
 チェルノブイリ原発事故やスリーマイル島原発事故に次ぐ事故とまで言われたのですが、すっかり忘れ去られてしまいました。しかし、この事故で原発は終焉を迎えなければなりませんでした。そうならなかったのは、新聞やテレビなどのマスコミが事の真相を報道しなかったからです。
 この事故は、高速増殖炉「もんじゅ」の実験炉である高濃度ウラン燃料を製造中に起きました。「もんじゅ」の事故後になぜ「常陽」を大改造し、出力を40%も増強させたのか。ウラン濃縮工場から出る劣化ウランを核兵器級プルトニウムに変えられることなど、一般の社会人には知らされていない事だらけです。
 この臨界事故は、わずか2㍉㌘のウランが反応したものですが、最近の原発は、110万~130万㌔㍗と大きくなっており、燃料は10~130㌧のウランが詰まっています。核種の違いもあって、単純な比較は出来ませんが、巨大原発や再処理工場が最悪の事故を起こせば想像を絶する地球規模の災害になります。あえて事故に「最悪」とつけましたが、決して起こり得ないことではないのです。
 GEの原子炉メーカーサイドの技術者だったときには、多重防護システムがどのように働いて事故を未然に防ぐのかを信じていたとはいえ、よくも恥ずかしくもなく説明したりしていたものだと、自分ながら笑えてきます。もちろん笑い事ではないのですが…。
 チェルノブイリ事故のとき、国や電力会社は「日本の原発には最後の砦としての放射性物質を閉じ込めておく格納容器があるから安全です」と力説していましたが、実際には全く頼りにならない代物です。
 東海原発や福島原発の納容器(PCV)は、現場では紙風船と呼ぶ技術者もおり、黙っていても溶接線がひび割れしかねない程度のものです。
 福島第2原発3号機の重大ポンプ事故時に、亀裂を見つけて修理した溶接工から電話があったことを知らせてくれた知人は、被曝が原因で若死にしてしまいました。東電には内緒で直したとのことでした。
 しばしば、東京電力の事故隠しがニュースになりますが、建設中は東電も、下請企業にいつも隠し事をされて悩んでいたものでした。
 原発建設の技術はまだまだ未熟で、故障や事故を取上げていたら、全くきりがありませんので、現代の技術では絶対に安全な原発などは造れないのだということで先に進みます。

増大する原発の海外輸出

 現在台湾では、GEが135万㌔㍗の巨大原発を台北の東海岸に建設中です。敷地から半径80㌔の海底には、70以上の火山が存在しており、そのうち11個は活火山です。5㌔以内には巨大地震では動くかも知れない不気味な断層が6本も存在しています。当然のことながら、近隣住民の多くは不安を強く感じています。
 台湾は、日本と同じように地震が多発します。たまには1999年の921地震のような大地震も起きますので、住民が心配するのも当然のことです。
 特に台北県は人口も多く、昨年お会いしていただいた台湾県政府の副県長李鴻源博士は、台湾大学の土木系教授でもあるだけに、この第4原発については非常に心配しておりました。
 第4原発の建設地である貢寮は、日本軍が台湾統治の第1歩をしるした地です。台湾にとってのこの屈辱的な広場には、石造りの古い抗日記念碑が、建設中の原発を背にしてしっかりと建っています。ここの2基の原発は、原子炉が日立と東芝、タービンは2基分とも三菱が請負っています。現地の住民は、日本による第2の侵略と感じる人もいるようです。
 技術的なことですので深入りしませんが、台湾原発の耐震強度は日本に比べると、かなり低くて驚かされます。浜岡は1000ガルに耐えるように補強中ですが、それでも完璧とは言い切れません。台湾は300~400ガルに耐えれば十分とする台湾電力に、不安を覚えます。
 日本の技術もいい加減ですが、台湾の現場での品質管理は驚くほどプアーなのですが、それとは反対に、明らかに技術過信に陥っているようです。
 GEが元請といっても、原子炉とタービンを日本に下請けさせているだけで、土木工事や配管・配線工事等は台電が直接ばらばらに発注しています。GEとは別に、2003年には台電のコンサルタントとして全体を見ていた世界的なエンジニア会社が倒産してしまい、去年は現場から消えてしまっていました。台電が直接監督できるのでなんの問題もないそうですが、前回は逆の説明だったはずです。
 敷地内にある配管加工工場内での溶接検査については、「業者に任せているから見なくてもいいんだ」とのことで、驚きました。

 台湾について少し長く書いたのは、今後、日本は海外に、とは言っても東南アジアからインドにかけてですが、原発を大いに輸出しようとしているからです。
 米国のGEやウエスチングハウスは日本の日立や東芝と合弁会社を設立して、軽水炉を売り込むことは、マスコミでもしばしば報道されましたのでご存知の方も多いと思います。
 言うまでもなく、巨大原発を建設するには、優秀な技術を有するたくさんの会社が必要です。化石燃料による炭酸ガスの問題や石油不足に対応するためという理由で、中国はもちろん米国までもが、本格的に原発を造ろうとしています。しかし、日本ですら原発での被曝労働に従事する優秀な技術者が激減しているのですから、問題はかなり深刻です。
 
 原発からそれますが、「高性能兵器の生産と輸出が日本を救う」。これは、石原慎太郎が1998年5月号の「文芸春秋」に投稿した文章の小見出しですが、簡単には忘れられない記事です。世界が平和になるためには、核兵器はもちろんですが、武器そのものを捨てなければならないからです。
 「べトナム戦争時に米兵が使用していた世界一高性能な組立式機関銃はわが社のものです」と自慢する、「豊田工機」なる会社の窓用サッシュを使おうとする、社長と常務を九段会館の近くの喫茶店に呼び出して大喧嘩し、2人の施主に対する不正を正してから会社を辞めた、25歳の自分を思い出し、思わず書いてしまいました。
 関西の企業の中には、石原氏と同じ考えが多いとの記事を読んだことがありますが、原発同様許されないことです。

地震と原発

 近年、インドネシアに巨大な地震が続いています。スマトラ沖地震の津波はまだ記憶に新しいのに、また、M8.4とかM7.65などの大地震が続いて起きました。今に始まったことではありませんが、こんなすごい地震国に原発を建設しようとしているのですから、あきれてしまいます。韓国も含めると6カ国ほどが関心を持っているようですが、日本では三菱重工やGEと手を組んだ日立が意欲的に取り組みそうです。
 今年の7月、インドネシアから2名が来日され、原発を輸出しないでくれと、日本政府や企業(三菱重工、東芝、日立)へ申し入れをしたそうですが、東芝と三菱は門前払いで要望書も渡せなかったようです。新聞やテレビは取上げませんので、殆んどの日本人は知ることが出来ませんでした。
 インドネシアの原発予定地として5カ所が適地であると選定したのは、関西電力の子会社NEWJECです。
 日本政府が原発輸出に力を入れるのは、日本国内の原発建設低迷期に技術や人材の厚みを維持するためということになっています。しかし、日本の都合で原発を押しつけるのではなく、ポテンシャルの高い水力や地熱、バイオマスの利用などに協力すべきでしょう。
 地震国インドネシアよりもタイやベトナムの方が、むしろ可能性が高いのかも知れません。両国とも原発を望んでいますが、原発保有国が増えれば増えるほど事故の可能性が増えるのは当然ですが、原発は単純に事故だけの問題ではありません。日本の電力会社を見ればすぐ分るように、秘密主義が横行し出し、民主主義に反するようなことが次々と起きてきます。
 かつては原発からの撤退を宣言したことのある台湾でしたが、前記のように、大型原発を建設中です。昨年台湾に行ったときには、2003年にはとても考えられなかったような変化が起きていました。原発反対派の国会議員や環境大臣までもが原発推進に変わっていたのです。
 原因は、台湾出身のノーベル化学賞受賞者の李遠哲博士が「地球温暖化防止のためには、炭酸ガスを出さない原発もやむをえないのではないか…」と発言したことでした。日本に例えれば、湯川秀樹博士が言ったようなもので、国民への影響力は絶大だったのです。私は1時間ほど対談させていただきましたが、1936年生れの李博士は日本語が堪能で、人格的にも立派な方でした。驚いたのは、エネルギー問題に明るく、新しいタイプの地熱発電であるヒートパイプによる高温岩帯発電の現状や技術的な問題点、ヘリウムガスによる高温ガス炉に至るまで、その博学ぶりには驚かされました。
 残念なことは、博士が原子力の闇の部分についてあまりご存知なかったことです。それが普通といえば普通なのですが。
 私は「ウラン採掘現場の残土問題や定時検査時での被曝問題、使用済み燃料や高レベル廃棄物問題、トータルに見て原発が決して優れた発電方法ではない」と話しました。熱心に聞いてはくれましたが、原発に反対の立場に戻って貰うまでの時間がなかったのはとても残念でした。
 前記のJCO臨界事故の後でした。
「このような事故があったからと言って、原子力の研究開発をやめるようなことがあってはならない」。このような趣旨の特別寄稿が世界的に有名なNewsweekにありました。寄稿者は広島の平和市長として有名な平岡敬氏でした。「原子力の平和利用」への思いの強さが伝わってきますが、かつての自分の姿が思い出されます。  
 毎日、原発の現場を見ながら、口ずさんでいたのは出身校・日大工学部の校歌でした。

永遠の光を 現世に与うべく
限りなき奉仕と愛の心持て
科学の力と不屈の意志を
武器として進まん 若きエンジニア 

 しかし、古い原子炉本体と配管の接続部に発生した亀裂を外国人グループに修繕してもらい、炉内被曝作業の安全を担当していたころには、原子力への夢はすっかり冷めてしまっていました。東海2号、福島6号と新設の原発を建設している内に、「原発技術の未熟さ、人間の不条理さ」を痛感し、安全な原発など、とても出来るわけがないと思うようになってしまったのでした。
 1976年に米国のGEの3人の主任技術者が定年を待たずに辞職しました。彼らは「何時、何処でとは言えないが、原発の大きな事故は必ず起きる、もう協力出来ない」と言って去ったそうです。3年後にはスリーマイル島原発事故、1986年にはチェルノブイリ原発事故がおきました。
 GEの原発で巨大事故を起こす可能性が最も高いのは、東海地震が直下で起きた時の浜岡原発です。最悪の場合には、チェルノブイリ原発事故以上の被害になるかも知れません。東海地震被害の救援が思うように出来なくなることも大問題です。風向きによっては、青森近くまで高濃度汚染スポットが出来るかもしれません。

 私にとって、平岡敬元広島市長は、国際司法裁判所で、国の意向に反して「核爆弾は国際法に違反する」と証言した尊敬すべき人です。
 私は宮崎県の幸島の真向かいに住んでいます。幸島は、ケン・キース・ジュニア著の『百番目のサル』(昭和59 佐川出版)*やライアル・ワトソン著『生命潮流』にも出てくる、ニホンザルの住む小さな島です。(*「幸島に住む1匹の子ザルが、サツマイモについた砂を洗って食べることを覚え、それを真似たサルが100匹目になった時、芋洗い現象が時空を超えていたるところに伝播した」とあり、「あなたが世界を変える100番目のサルかも知れない」とメッセージする。)
 「平岡市長は講演会の最後によく『百番目のサル』の話をするんだそうですよ」と、9年前まで同居していた、今年93歳になる三戸サツエさんが語ってくれたことがありました。平岡氏は、ご主人が北朝鮮で学校の先生をしていた当時の教え子だったそうです。
 三戸さんの息子で今は米国にいるご長男を、学生時代に南氷洋で面倒を見たという元水産大学教授で、鯨博士の別名をもつ那須氏が、ある日の朝突然に訪ねてこられたことがありました。なんと、その方は社会人になってすぐのころに、北氷洋で私の父に世話になったことが分ってびっくりしました。那須氏は大学を定年退職後、なぜか宮崎に住みたくなって、家を建て、移住してきたそうですが、急に亡くなられたそうで再会できませんでした。人の縁の不思議さを感じます。
 原発はいつか必ず人類に大災害をもたらすと思えるだけに、敬愛する平岡元広島市長がこれ以上「核燃料サイクル」の広告塔にならないように祈らざるをえません。Newsweekで勇気付けられた政治家や学者がいたかもしれませんが、プルトニウム利用は人間の悪夢でしかないことをぜひ理解してほしいと思います。

 知人の鎌仲ひとみ監督は、映画「ヒバクシャ…世界のおわりに」はイラクで罪もない何人もの子供たちが白血病や癌で死んで行くのに立ち会ったことで生れたと語っています。
 原因は、米国が湾岸戦争やアフガニスタンそして今度のイラン攻撃で大量に使用した『劣化ウラン弾』です。
 日本は濃縮ウランの80%以上を米国から輸入していますが、燃料にならなかった大量のウランは、米国の表現によると「すばらしい兵器」になっているのです。日本の核燃料のゴミが兵器として使われ(アフガニスタンや今度のイラクだけで2000トン)、大量に保管されています(嘉手納基地だけでも40万発)。

 日本が『核の平和利用』の名のもとに、これまで以上に人類を「ヒバク」させないように祈らずにはおれません。
 『ノーモアー広島&長崎‥ノーモアーヒバクシャ』と。

著者 プロフィール
 1942年岩手県釜石市に生れる。艦砲射撃と空襲で戦争の恐ろしさを知る。
 32歳まで建築コンサルタント。オイルショック後、米国GE社の原発技術者として、東海・福島原発建設に従事、原子力の闇の世界を知る。
 80年以降6年間、中近東のアブダビを中心に石油生産関連施設の現地法人GAMAの責任者。ペルシャ湾は流失した油で汚染され、戦争による環境破壊を体験する。
 帰国3年後東京を離れ、50ccバイクで全国を放浪。草花や昆虫の姿に命の尊さと美しさを感じ、撮影するようになる。
 この10年、鹿児島大学で地球環境エネルギー論を担当。脱原発社会を目指したボランティア活動をしている。

Wednesday, April 06, 2011

NYT紙に報道された米原子力規制委員会の報告:問題への解決策が新たな問題を生んでいる

(4月13日追記。この記事がもとにしているNRCの文書がここにありました。
http://www.scribd.com/doc/52467769/NRC-Rst-Assessment-26march11


4月5日付のニューヨークタイムズに重要な記事があった。"U.S. Sees Array of New Threats at Japan’s Nuclear Plant" (「米国は日本の原発に新たな数々の脅威を見出す」)という題で、James Glanz, William J. Broad 記者の共著である。先日、『福島第一原発の1号機(タービン建屋)に見つかった高い濃度の放射性塩素38の原因は何か?』という、再臨界が起こっている可能性を問う論文の解説文和訳を掲載したが、その論文の著者、モントレー国際大学不拡散研究所研究員のフェレンス・ダルノキ―ベレス博士もこの記事の内容を重要視し、コメントをつけて送ってくれた。日本でも共同通信が簡単に報道した。

米紙、水素爆発の危険を指摘 当局の内部文書に基づき
 
【ワシントン共同】福島第1原発事故で、米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は5日、原子炉が余震によって壊れたり、水素爆発が起きる危険性が高まるなど、新たな多くの問題が起きていると指摘する記事を掲載した。

 日本に派遣された米原子力規制委員会(NRC)の専門家らがまとめた3月26日付の内部文書に基づく情報として報じた。

 同紙によると、原子炉冷却のために注入している水によって、原子炉格納容器のストレスが高まり、余震によって容器が破壊される危険性が高まっている。同原発1号機は内部にたまった塩により循環が著しく妨げられており、原子炉の中には水がなくなっている可能性もあるという。

 また、原子炉内の水が分解されてできる水素によって水素爆発が再び起きる危険性も指摘した。

 こうした問題に対処するため、NRCは日本政府に水素爆発を防ぐための窒素注入などをアドバイスしたという。


これは内部文書をニューヨークタイムズが入手してその内容を報道する形になっている。そもそもどうして原子力規制委員会(NRC)の文書が内密でなければいけないのか理解できないし、日本のメディアが原文を入手しているのかもわからないが、以下、フェレンスさんの助言にもとづき、重要とされる箇所を要約して紹介する。(フェレンスさんのコメントはFDVコメントと表記する)

★3月26日付のNRCの評価では、放射能を帯びた冷却水で一杯になった格納容器にどんどん負担がかかり、余震によって破損しやすい状態になっている。NRC内部文書は、原子炉に注入された海水によって水素と酸素が発生し、格納容器内での爆発の可能性にも触れている。半溶融状態になっている炉心と堆積した塩分が、炉心を冷やすための淡水の流れを妨げていることも詳細に渡り説明している。

★効果的な冷却ができないために燃料の過熱と溶融が続いた場合、溶融したままの放射能を持つかたまりが長い間残ることになる、と専門家は語る。

★この文書はニューヨークタイムズが入手したもので、日本側の責任者たちが発表してきたものより、より詳しい技術的評価書となっている。しかしデータは日本側から米側に提供されたものに基づいているように見える。

★この文書は、本来の冷却システムが機能していない中、水を注入することが長期的に持続可能なものなのか、新たな疑問を投げかけるものである。原子炉が安定するまで何カ月も水を注入し続けなければいけないが、それが原子力業界今まで直面したことのない新たな試練を生みだしている。

★初期の水素爆発により、使用済み燃料プールの燃料の破片が「1マイル上空に」吹き飛ばされ、高濃度の放射性物質が二つの号機の間に落下し、作業員の安全のために撤去しなければいけなかった。初期の水素爆発で起こったとされるこういった核物質の放出は、非常に高い放射能を持つ使用済み燃料プールが、これまでに報告されてきた以上に破損している可能性を示している。

★この文書でNRCが勧めている対処策としては、爆発を起こす可能性がある水素と酸素を取り除くため、窒素(不活性ガス)を格納容器に注入することと、炉心が「臨界」と呼ばれる核反応を再び起こさないように、冷却水にホウ素を入れることを続けることなどがある。

★しかしこの文書を書いた技術者たちは、「臨界」の再発が今すぐ起こる可能性は低いと見ている。この評定に関わったElectric Power Research Institute のニール・ウィルムスハート氏は「自分は臨界が起こっているというデータは目にしていない」と言っている。

(注:1号機の溜まり水にあった高濃度の塩素38が再臨界の可能性を示しているという論文を見てほしい。このNRC文書は、ニューヨークタイムズが報告する限りにおいてはその点には触れていない。)

★NRCの文書では、1,2,3号機の損傷した炉心についての図表を使った詳細がある。1号機においては、損傷した燃料と、冷却水として使われた海水の塩が、おそらく冷却水の流れを塞いでいるとする。「炉心の水位はゼロである可能性がある」ため、「どれだけの冷却の効果があるかは不明である。」2,3号機にも同様の問題があるが1号機ほど深刻ではないだろうとされている。(FDVコメント:これは重要である。ホウ酸が届いていないことを示すから。)

★原子力の専門家によれば、海水から淡水への切り替えによって塩の一部は流された可能性がある。

★格納容器における水位を上昇させることは、燃料を浸して冷却する方法として説明されてきた。しかしNRC文書では、「格納容器を水浸しにする際には、水圧が格納容器の耐震能力に及ぼす影響を考慮すべき」と警告する。(FDVコメント:ホウ酸の注入が無理などころか、これ以上の注水もできないということだ。)

原子炉設計の専門家によれば、この警告は上昇する水位によって格納容器にものすごい重圧がかかるということである。格納容器に水が多ければ多いほど、余震によって壊れる可能性が高くなる。

★元GEの原子炉設計者、マーガレット・ハーディングも余震を警告して言った。「私が日本側の担当者だったら、地震の後にその構造的完全性を確認もできていない格納容器に何トンもの水を入れたままにしておくことはしない。」

★NRC文書はまた、高い放射性を持つ環境下での海水からの水素と酸素の放出のせいで、コンクリートと鋼鉄でできている格納容器に「爆発するかもしれないような危険性をはらんだ気体」を作りだしている可能性への懸念を表明している。(FDVコメント:海水の放射性分解のことを指していると思われるが、どうして他の水ではなく海水について言っているのか?)

★この災害の初期の何日かの間で起こった水素爆発がいくつかの原子炉建屋に大きな損傷を与え、1か所では格納容器自体に損傷があった可能性がある。水素が発生したメカニズムには、核燃料の金属被覆が関与している。この文書では、格納容器からこれらのガス(水素と酸素)を除去し、安定した窒素で満たす(地震と津波によって失われた機能)必要があるとしている。

★原子力の専門家は、炉心からの放射線は水の分子を二つに分離させ、水素を発生させ得ると言う。ウィルムスハースト氏は、3月26日の文書以来、技術者たちによる計算では発生する水素の量は少ないとされてきた。しかし、ノートルダム大学の物理学者、ジェイ・A・ラベルネ氏は、少なくとも炉心のそばでは水素が発生し、酸素と反応する可能性があると言う。「もしそうであるなら、炉心の側で爆発性のある混合物質があるということだ。」

★原子力の技術者たちは格納容器の外にある使用済み燃料プールの方が炉心溶融よりもさらに高いリスクをはらむと警告してきた。使用済み核燃料プールは原子炉建屋の上層部にあり、燃料を水に浸していなければいけないのだが、冷却システムは機能していない。

★NRCの報告書は4号機の使用済み燃料プールがこの危機の初期の段階で水素爆発を起こし、多量の放射性物質を大気中に放出したと示唆している。("major source term release" と呼ばれる)

★専門家が使用済み燃料プールについて心配しているのは、爆発によって屋根がなくなり、中にある放射性物質が露わになっていることである。それに比べ、原子炉そのものは強固な格納容器があり、炉心溶融から来る放射線を封じ込める可能性がより高い。

要点は以上である。元の記事はここにある。

これらの懸念から、1号機では7日未明から1号機への窒素注入をはじめ、2、3号機でも行う予定であるという(朝日7日報道)。1-3号機で水素爆発の可能性があり、炉心溶融と海水からの塩が冷却水の流れを妨げ、高水圧のため格納容器が余震に対してもろい状態にあり、汚染水の放出もまだ続けているという現状だ。問題の解決のためにやむを得ず行ったことが別の問題を生みだし、その問題を解決しようとしたら更なる問題が生じるという問題の連鎖が続いている。その間に、本来の問題の解決(冷却ポンプの復旧)はますます遠のく。

フェレンスさんはメールで、この記事によるとNRCの専門家は再臨界の可能性が低いと言っていることについてこのようにコメントした。「このニューヨークタイムズの記事の著者たちは自分の(再臨界の可能性を論じた)塩素38についての論文を読んでいるかは疑わしい。私の論文を批判する人たちの多くは、東電が正しい計測をしていないのではないかという主張をする。東電が出した塩素38の数値も信用していないのである。東電への不信感から、データを疑い、私の論文自体も疑うのだ。 ここからは私の偏った見方になるが、再臨界が本当に起こっていて東電がそれを知られたくないと思っているのなら、自分たちのデータの信ぴょう性に疑いを持たせることで逆に知られたくないという目的を達することができる。実際に東電がそういう意図を持つとは言わない。しかし塩素38の値が高すぎたならどうして再計測しないのか。そこが自分には理解できない。」

フェレンス・ダルノキ―ベレスさんの論文(日本語での解説文はここを参照)についてはたくさんのコメントや質問があり、返答もしている(論文の最後を参照)。そのやり取りも翻訳と、論文自体の翻訳ももうすぐ発表する予定である。

Tuesday, April 05, 2011

「日本の反核運動は原発を容認してきた」:田中利幸論文 日本語訳

以下は、『アジア太平洋ジャーナル:ジャパンフォーカス』に掲載された、田中利幸氏の論文 The Atomic Bomb and and "Peaceful Use of Nuclear Energy" の、前田佐和子さんによる日本語訳です。この論文は、これより短いものが Forein Policy 誌に掲載され、全文のドイツ語訳がBerliner Gazette に掲載されました。


原爆と「原子力エネルギーの平和利用」   


田中利幸(Yuki Tanaka)

3月11日、マグニチュード9.0という途方もない地震が、日本を襲った。地震に引き続いて大規模な津波がおしよせ、風光明媚な東北地方の海岸を完全に破壊した。数万人にのぼる命が失われ、数十万人の人々が避難民となった。

地震と津波で完全に破壊されたこの地域には、約200キロに渡って4つの原子力発電所が集中し、全部で15の原子炉が存在する。これらのうち、東京電力(TEPCO) が経営する福島第一原子力発電所が最大規模で、6つの原子炉を持っている。日本最大の電力会社である東京電力(東電)は、これまで、原子炉格納容器の堅牢さを誇らしげに自慢してきた。原子炉格納容器は、旧日本帝国海軍の誇る戦艦大和に搭載された世界最大級の頑強な巨砲を製造するために開発されたものと同じ技術を用いて作られたと、喧伝されてきたのである。戦艦大和とは、アジア太平洋戦争末期に、アメリカ海軍による爆撃で沈没したものである。東電は、地震が発生した場合の原子炉の安全性について、原子炉は安全に停止し、引き続いて自動的に冷却され、放射性物質は容器内に閉じ込められるとして、深刻な原子力事故を引き起こす危険性はないと主張してきた。 しかし、原子炉の地震にたいする脆弱性は、すでに明らかになっていた。2007年7月、日本の北西岸を襲ったマグニチュード6.8の地震は、東京電力柏崎刈羽原子力発電所で、変圧器の火災と少量の放射性物質を海や大気中に漏洩させるなどの故障を引き起こしていたのである。この重大な事故にもかかわらず、東電の役員たちは相変わらず、傲慢に「世界最高の原子力発電技術」を有していると豪語していた。

もはや、東電はこれを自慢できなくなった。 地震による猛烈な衝撃が福島を襲い、そのあと津波が押し寄せた。地震と津波が原子力発電所の多くの建物を壊したことで、「安全かつ耐久性のある原子炉」という神話、これまで東電が喧伝してきた安全神話は、たちまちにして木っ端微塵に粉砕された。そのことが、電力の30%もが原子力発電によって賄われるという、日本の政策に対する疑念を呼び起こした。この原稿を書いている(3月21日の)時点では、福島第一原発の6つの原子炉のうち3つ(1号炉から3号炉)までが、今にも炉心溶融しそうな危険性な状態にあり、4号炉では、使用済み核燃料棒の燃焼により火災が発生した。発電所の周囲の放射能レベルは非常にたかく、すでに東京や横浜あたりまで放射性物質が拡散している。原子炉の損傷が、最終的に抑えられるかどうかに係わらず、予期せぬ核の大惨事であることが明らかになった。これにより、放射能に幾重にもまつわる問題が浮き彫りになった。

日本の原子力産業は、どこで道を間違えたのか? 日本人は核による大量殺りくの経験から、核問題については非常に敏感であると言われてきた。 敏感にならずにいられるはずがないだろう。 1945年8月6日の朝、広島に原爆が投下され、たちまちにして7万人から8万人の市民が殺され、その年末までに14万人が原爆によって死んだ。長崎では、原爆投下で7万人が殺された。 それ以降も、多くの人々が、生涯にわたって爆風、火災、被爆による様々な病気に苦しみ、亡くなっていった。しかも今なお、苦しんでいる人たちがいる。

しかし、これまでのところ、日本で原子力エネルギーに対する反対運動は強くなかった。 なぜか? たしかに、日本、特に広島、長崎の市民は、核兵器の危険性をつよく意識している。 原爆で生き残ったひとびとは、原爆の恐怖と、長く続く放射能の影響を良く知っているがために、核兵器に反対するキャンペーンの先頭に立ってきた。しかし、被爆者と核兵器に反対する活動家たちの多くは、これまで、原子力エネルギーの問題に無関心できている。 数多くの地域で原子力発電所の建設に敏感に反応し、反対する活動がなされてきたにもかかわらず、反原発の活動家たちは総体的には、長年疎外されてきた。

一例をあげると、広島から80キロ離れた、瀬戸内海の美しい漁村地域である上関に、中国電力(CEPCO)が原子力発電所を建設しようとしてきた。これに反対する運動に、広島の小さな反核運動のグループが積極的に係わってきた。しかし、彼らは上関の地元の漁師たちと密接に連携する一方で、被爆者団体からは実質的には何の支援も受けていない。 また、強固な核兵器廃絶論者として広く知られている広島の元市長、現市長のいずれもが、これまで、上関の反原発運動を支持してこなかった。 実際、かれらは、原発事故の危険性について懸念を表明したことはない。このことが、上関の漁民と強く連帯する反原発活動家の強い反対を押し切って、中国電力が今年初めに工事の強行を開始することをより容易にしたのである。 (同社は、今回の地震当日、上関原発の建設工事を一時的に中断することを余儀なくされた。このことは、今回の災害のあと、原子力産業界と政府が原子力発電の事業を再開することに大きな困難を抱えたことの重要な証である。)

日本の反核運動におけるこの奇妙な分離(核兵器反対、原発容認)には多くの理由がある。 そのひとつは、戦後、日本政府が核科学を強く推進してきたことである。とりわけ米大統領ドワイト・D・アイゼンハワーが、1953年、「原子力の平和利用」計画を強調したことにより、日本政府はより強く核科学を推進するようになった。 東京の政治家の間には、科学者においても同様であるが、戦時中に日本で科学研究が無視されてきたという気持が強く共有されていた。 実際、多くの人が、自分たちの国は、第二次世界大戦で、アメリカの技術力、なかでも核物理学において明らかに優位に立つアメリカに、敗北したと信じていた。

日本は消費する石油を100パーセント輸入し、世界最大の石炭輸入国である。上で述べた核物理学に対する考え方とともに、自然エネルギー資源が不足していることについての深い恐怖心が、日本をして原子力エネルギーを推進することに導いた。 特に1960年代後半から、日本政府は、遠隔地に原子力発電所を建設する目的で、その地域住民の同意を得るため、その地域に特別の利益があるような政策を採ってきた。 その結果、政府が原子力発電所を受け入れた地域に図書館、病院、レクリエーションセンター、体育館、プールなどの公共施設を建設するための巨額の資金が割り当てられた。 一方、電力会社は、地主が地権を、漁業従事者が漁業権を放棄することを強要し、そのために多額の金銭を支払った。 当然のことながら、政治的腐敗はすぐに原子力関連産業の一部となった。 たとえば、建設会社は、上記の地域の公共施設を建設する請負契約を結ぶ見返りに、政治家に大きなリベートを与えた。 この間ずっと、政府と電力会社は、反核エネルギーの動きを弱体化するために、原子力発電はクリーンで安全だという神話を広めていった。

1986年、100万人が居住する地域の近くでチェルノブイリ原発事故が起こった。その後しばらくは、日本の反原発の運動は全国的な支持を得られたが、すぐに、政府と電力会社によるキャンペーンでその運動も消えていった。 それ以来、多くの事故にもかかわらず、データ記録を改竄し、政府に提出する報告書を偽造することで、その深刻さはうまく隠されてきた。 その結果、地震が発生しやすい危険な日本列島に、54の原子炉から成る17の原子力発電所ができ、日本の総発電能力の30%を提供するまでになったのである。

反核運動は、長年にわたって、原発事故による国土の荒廃の危険性を警告してきた。しかし、原子炉の安全性は、いつも電力会社と政府によって保証されてきた。 福島原発の事故は、これまで警告されてきたあらゆる恐怖と予測を現実のものとしてしまったのである。 原爆が無差別に数十万の民間人を殺したのと同じように、この原子炉事故は、無差別的な被害と、今の時点では予測できない多数の死をもたらすだろう。そして、今後数十年以上に渡って、放射能汚染をひきおこすだろう。 このような理由から、原子力発電の事故は、「無差別大量破壊行為」と呼ぶことができる。この意味で、日本と日本人は、65年間に2度までも「核の大量破壊」の犠牲者になると思われる。

オーストラリアとカナダは日本にウランを供給する2大国である。 日本のウランの33パーセントはオーストラリアから、27パーセントはカナダから輸入されている。自国では原子力発電の導入という危険をおかすことはとてもできないと主張する政治家がいる一方で、オーストラリアはウランを今後も輸出し続けるかどうかを決定する問題に直面している。 実際、この災害を引き起こしたものを輸出することで利益を得ながら、自分の国では原発を全く作らずに危険性を避けるというのは偽善的である。これらの政治家たちは、核兵器廃絶の必要性を唱導しながら、ウラン採掘の禁止を拒否するという偽善行為を続けている。

日本は現在起こっている原子力災害について責任を負うべき唯一の国ではない。 原子炉を製造したアメリカのGeneral Electric社から、カナダ、オーストラリアなどウランを供給した国々まで、多くの国家が関与している。 我々は皆、この悲劇的な事故から、武器か電気かの如何に関わらず、人間は核と共存できないということを学ばなければならない。 原発事故にしろ、依然として未解決の使用済み燃料の問題にしろ、人間と環境の双方の破壊に対して予測される金額的リスクとコストは、膨大なものである。

この破滅的な事故は、日本の既存の社会経済構造や生活の仕方を劇的に改革するための触媒となり得る可能性を秘めている。 肯定的な結果としては、これが覚醒的な役割を果たして、グリーンエネルギーを開発し、原子力に依存することをやめ、主要なエネルギー源として石油や石炭を消費することを段階的になくしていくという新しい道に、国家をみちびくことになるかもしれない。 第二次世界大戦の廃墟のなかから日本独自の平和憲法が生まれたのと同じように、この災難から、これまでは不可能であった、まったく新しい、平和で環境と調和のとれた社会をつくることが始まるかも知れない。 このような楽観的な結果が導かれるかどうかは、日本を取り巻く人々の心をこめた援助に支えられて、日本人が決意し、行動するかどうかに懸かっている。

2011年3月21日

これは、Foreign Policy に掲載された記事を加筆、改訂したものである。
(前田佐和子訳)

Yuki Tanaka is Research Professor, Hiroshima Peace Institute, and a coordinator of The Asia-Pacific Journal. He is the author most recently of Yuki Tanaka and Marilyn Young, eds., Bombing Civilians: A Twentieth Century History as well as of Japan's Comfort Women and Hidden Horrors: Japanese War Crimes in World War II.

田中利幸
広島市立大学平和研究所教授。アジア太平洋ジャーナル:ジャパンフォーカスのコーディネーター。近編著書として Bombing Civilians: A Twentieth Century History (『市民の無差別爆撃:20世紀の歴史』、マリリン・ヤングと共同編著)、Hidden Horrors: Japanese War Crimes in World War II (『隠された残虐:第二次世界大戦における日本の戦争犯罪』)がある。

このブログの過去の田中利幸さんの論文・記事はこちらをご覧ください。

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Monday, April 04, 2011

ドイツ放射線防護協会から:チェルノブイリの経験に基づき、野菜、飲料等についての提言

ドイツ放射線防護協会の提言を、松井英介(岐阜環境医学研究所所長)、嘉指信雄(NO DUヒロシマ・プロジェクト代表)他の方々が翻訳なさったものを転載します。大事なのは最初の3点で、その後はその3点の「考察と算定」となっています。最後の訳者の付記が重要と思いますのでここに一部引用しておきます。

「付記:チェルノブイリ原発事故後の経験に基づいてなされた本提言の厳しい内容と比べると、日本政府によって出されて来ている様々な指針・見解は、いかに放射線リスクを過小評価したものかが際立ちます。本提言は、3 月20 日の時点で出されたものであり、また、日本での地域的な違いが考慮されていないなどの制約があるかと思いますが、内部被曝を含めた放射線リスクの見直しの一助となることを心より願います。」

 ***********************************************************************

ドイツ放射線防護協会                                                                                        http://www.strahlentelex.de/

2011 年3 月20 日

日本における放射線リスク最小化のための提言

ドイツ放射線防護協会と情報サービス放射線テレックスは、福島原発事故の発生後の日本において、放射線核種[いわゆる放射性物質:訳者注]を含む食物の摂取による被ばくの危険性を最小限に抑えるため、チェルノブイリ原発事故の経験をもとに下記の考察・算定を行い、以下の提言を行う。

1.放射性ヨウ素が現在多く検出されているため、日本国内に居住する者は当面、汚染の可能性のある*サラダ菜、葉物野菜、薬草・山菜類の摂取は断念することが推奨される。

2.評価の根拠に不確実性があるため、乳児、子ども、青少年に対しては、1kgあたり4 ベクレル〔以下 Bq:訳者注〕以上のセシウム137 を含む飲食物を与えないよう推奨されるべきである。成人は、1kg あたり8Bq 以上のセシウム137 を含む飲食物を摂取しないことが推奨される。

3.日本での飲食物の管理および測定結果の公開のためには、市民団体および基金は、独立した放射線測定所を設けることが有益である。ヨーロッパでは、日本におけるそのようなイニシアチブをどのように支援できるか、検討すべきであろう。

考察と算定

以下の算定は、現行のドイツ放射線防護令の規定に基づいている。

飲食物を通じた放射性物質の摂取は、原子力災害後、長期間にわたり、身体にもっとも深刻な影響を与え続ける経路となる。日本では、ほうれん草1kg あたり54,000Bq のヨウ素131 が検出されたが、こうしたほうれん草を100g(0.1 ㎏)摂取しただけで、甲状腺の器官線量は次のとおりとなる(*1)。

乳児(1 歳未満):甲状腺線量20 ミリシーベルト〔以下 mSv:訳者注〕(*2)
幼児(1~2 歳未満):甲状腺線量19.4mSv(*3)
子ども(2~7 歳未満):甲状腺線量11.3mSv(*4)
子ども(7~12 歳未満):甲状腺線量5.4mSv(*5)
青少年(12~17 歳未満):甲状腺線量3.7mSv(*6)
大人(17 歳以上):甲状腺線量2.3mSv(*7)

2001 年のドイツ放射線防護令第47 条によれば、原子力発電所通常稼働時の甲状腺器官線量の限界値は年間0.9mSV であるが、上に述べたような日本のほうれん草をわずか100g 摂取するだけで、すでに何倍もこの限界値を超えることになる。原発事故の場合には、同第49 条によれば、甲状腺線量は150mSv まで許容されるが、これはいわゆる実効線量7.5mSv に相当する(*8)。

それゆえ日本国内居住者は、当面、汚染の可能性のある*サラダ菜、葉物野菜、薬草・山菜類の摂取を断念することが推奨される。

ヨウ素131 の半減期は8.06 日である。したがって、福島原発の燃焼と放射性物質の環境への放出が止まった後も、ヨウ素131 が当初の量の1%以下にまで低減するにはあと7 半減期、つまり2 ヶ月弱かかることになる。54,000Bq のヨウ素131 は、2 ヵ月弱後なお約422Bq 残存しており、およそ16 半減期、つまり4.3 ヶ月(129 日)後に,ようやく1Bq 以下にまで低減する。

長期間残存する放射性核種
長期的に特に注意を要するのは、セシウム134(半減期2.06 年)、セシウム137(半減期30.2 年)、ストロンチウム90(半減期28.9 年)、プルトニウム239(半減期2 万4,400 年)といった、長期間残存する放射性物質である。

通常、2 年間の燃焼期間の後、長期間残存する放射性物質の燃料棒内の割合は、
セシウム137:セシウム134:ストロンチウム90:プルトニウム239=100:25:75:0.5
である。

しかしチェルノブイリの放射性降下物では、セシウム137 の割合がセシウム134 の2 倍にのぼるのが特徴的であった。これまでに公表された日本の測定結果によれば、放射性降下物中のセシウム137 とセシウム134 の割合は、現在ほぼ同程度である。ストロンチウム90 およびプルトニウム239 の含有量はまだ不明であり、十分な測定結果はそれほど早く入手できないと思われる。福島第一原発の混合酸化物(MOX)燃料は、より多くのプルトニウムを含んでいるが、おそらくそのすべてが放出されるわけではないだろう。ストロンチウムは、過去の原発事故においては、放射性降下物とともに比較的早く地表に達し、そのため事故のおきた施設から離れるにつれて、たいていの場合濃度が低下した。したがって、今回の日本のケースに関する以下の計算では、

セシウム137: セシウム134: ストロンチウム90: プルトニウム239 の割合は、
100:100:50:0.5
としている。

したがって、2001 年版ドイツ放射線防護令の付属文書Ⅶ表1 にもとづく平均的な摂取比率として、1kg につき同量それぞれ100Bq のセシウム137(Cs-137)とセシウム134(Cs-134)、およびそれぞれ50Bq のストロンチウム90(Sr-90)と0.5Bq のプルトニウム239(Pu-239)に汚染された飲食物を摂取した場合、以下のような年間実効線量となる――

乳児(1 歳未満):実効線量6mSv/年(*9)
幼児(1~2 歳未満):実効線量2.8mSv/年(*10)
子ども(2~7 歳未満):実効線量2.6mSv/年(*11)
子ども(7~12 歳未満):実効線量3.6mSv/年(*12)
青少年(12~17 歳未満):実効線量5.3mSv/年(*13)
成人(17 歳以上):実効線量3.9mSv/年(*14)

現行のドイツ放射線防護令第47 条によれば、原子力発電所の通常稼働時の空気あるいは水の排出による住民1人あたりの被ばく線量の限界値は年間0.3mSv である。この限界値は、1kg あたり100Bq のセシウム137 を含む固形食物および飲料を摂取するだけですでに超過するため、年間0.3mSv の限界値以内にするためには、次の量まで減らさなければならない。

乳児(1 歳未満):セシウム137 5.0Bq/kg
幼児(1~2 歳未満):セシウム137 10.7Bq/kg
子ども(2~7 歳未満):セシウム137 11.5Bq/kg
子ども(7~12 歳未満):セシウム137 8.3Bq/kg
青少年(12~17 歳未満):セシウム137 5.7Bq/kg
成人(17 歳以上):セシウム137 7.7Bq/kg

評価の根拠に不確実性があるため、乳児、子ども、青少年に対しては、1kg あたり4Bq 以上の基準核種セシウム137 を含む飲食物を与えないよう推奨されるべきである。
成人は、1kg あたり8Bq 以上の基準核種セシウム137 を含む飲食物を摂取しないことが推奨される。

国際放射線防護委員会(ICRP)は、そのような被ばくを年間0.3mSv 受けた場合、後年、10万人につき1~2 人が毎年がんで死亡すると算出している。しかし、広島と長崎のデータを独自に解析した結果によれば(*15)、その10 倍以上、すなわち0.3mSv の被ばくを受けた10 万人のうち、およそ15 人が毎年がんで死亡する可能性がある。被ばくの程度が高いほど、それに応じてがんによる死亡率は高くなる。

(注)
*1 摂取量(kg)x 放射能濃度(Bq/kg)x 線量係数(Sv/Bq)(2001 年7 月23 日のドイツ連邦
環境省によるSV/Bq の確定値に基づく)=被ばく線量(Sv)。1Sv=1,000mSv。たとえば
E-6 とは、正しい数学的表記である10-6(0.000001)の、ドイツ放射線防護令で用いられて
いる行政上の表記である。
*2 0.1 kg x 54,000 Bq/kg x 3.7E-6 Sv/Bq = 20mSv
*3 0.1 kg x 54,000 Bq/kg x 3.6E-6 Sv/Bq = 19.4mSv
*4 0.1 kg x 54,000 Bq/kg x 2.1E-6 Sv/Bq = 11.3mSv
*5 0.1 kg x 54,000 Bq/kg x 1.0E-6 Sv/Bq = 5.4mSv
*6 0.1 kg x 54,000 Bq/kg x 6.8E-7 Sv/Bq = 3.7mSv
*7 0.1 kg x 54,000 Bq/kg x 4.3E-7 Sv/Bq = 2.3mSv
*8 ドイツの放射線防護令の付属文書ⅥのC 部2 によれば、甲状腺は重要度わずか5%とされ
ている。甲状腺の重要度がこのように低く評価されているのは、甲状腺がんは非常に手術
しやすいという理由によるものである。
*9 325.5 kg/年 x [100 Bq/kg x (2.1E-8 Sv/Bq Cs-137 + 2.6E-8 Sv/Bq Cs-134) + 50 Bq/kg
x 2.3E-7 Sv/Bq Sr-90 + 0.5 Bq/kg x 4.2E-6 Sv/Bq Pu-239] = 6mSv/年
*10 414 kg/年 x [100 Bq/kg x (1.2E-8 Sv/Bq Cs-137 + 1.6E-8 Sv/Bq Cs-134) + 50 Bq/kg
x 7.3E-8 Sv/Bq Sr-90 + 0.5 Bq/kg x 4.2E-7 Sv/Bq Pu-239] = 2.8mSv/年
*11 540 kg/年 x [100 Bq/kg x (9.6E-9 Sv/Bq Cs-137 + 1.3E-8 Sv/Bq Cs-134) + 50 Bq/kg
x 4.7E-8 Sv/Bq Sr-90 + 0.5 Bq/kg x 3.3E-7 Sv/Bq Pu-239] = 2.6mSv/年
*12 648.5 kg/ 年 x [100 Bq/kg x (1.0E-8 Sv/Bq Cs-137 + 1.4E-8 Sv/Bq Cs-134) + 50
Bq/kg x 6.0E-8 Sv/Bq Sr-90 + 0.5 Bq/kg x 2.7E-7 Sv/Bq Pu-239] = 3.6mSV/年
*13 726 kg/年 x [100 Bq/kg x (1.3E-8 Sv/Bq Cs-137 + 1.9E-8 Sv/Bq Cs-134) + 50 Bq/kg
x 8.0E-8 Sv/Bq Sr-90 + 0.5 Bq/kg x 2.4E-7 Sv/Bq Pu-239] = 5.3mSv/年
*14 830.5 kg/ 年 x [100 Bq/kg x (1.3E-8 Sv/Bq Cs-137 + 1.9E-8 Sv/Bq Cs-134) + 50
Bq/kg x 2.8E-8 Sv/Bq Sr-90 + 0.5 Bq/kg x 2.5E-7 Sv/Bq Pu-239] = 3.9mSv/年
*15 Nussbaum, Belsey, Köhnlein 1990; 1990 年10 月4 日付Strahlentelex 90-91 を参照。

[付記:チェルノブイリ原発事故後の経験に基づいてなされた本提言の厳しい内容と比べると、日本政府によって出されて来ている様々な指針・見解は、いかに放射線リスクを過小評価したものかが際立ちます。本提言は、3 月20 日の時点で出されたものであり、また、日本での地域的な違いが考慮されていないなどの制約があるかと思いますが、内部被曝を含めた放射線リスクの見直しの一助となることを心より願います。なお、*イタリック部分は、原文の意図を表現するため、ドイツ側関係者の了承のもと訳者が追加したものです。

この日本語訳は、呼びかけに直ちに応じてくださった以下の方々のご協力で完成したものです。心よりお礼申し上げます。ただし、翻訳の最終的責任は松井(英)と嘉指にあります。
(敬称略・順不同)内橋華英、斎藤めいこ、佐藤温子、杉内有介、高雄綾子、中山智香子、本田宏、松井伸、山本堪、brucaniro、他二名。

松井英介(岐阜環境医学研究所所長)
嘉指信雄(NO DU ヒロシマ・プロジェクト代表)]

Sunday, April 03, 2011

大気中と海水の放射線についての二つの疑問

一人の市民として、母親として、素朴な疑問を二つ提起します。

★4月4日追記: この質問は3月31日に書いたものですが、報道されている通り、東電はタービン建屋に溜まる高汚染水を移動させる場所を移すために比較的汚染度の低いとはいっても法令基準の500倍にあたる放射能を含む水を、漁業関係者をはじめ世論の厳しい批判をあびながらも1万1500トンも海に流す手続きをしました。また、第一原発から30キロの福島県浪江町では3月23日から4月3日の累積放射線量が10.34ミリシーベルト、屋内退避の10ミリシーベルトを超えたとの報道がありました。茨城産のコウナゴから放射性ヨウ素(4080ベクレル/キログラム、政府は暫定基準値を持たず、野菜は2000)、放射性セシウムも、基準が500のところ447ベクレル/キログラム出たという。この質問を書いたときよりもさらに海、空気、土壌の放射線汚染がより心配になってきています。

沖縄の作家、浦島悦子さんにいただいたメールに、深く響く言葉があり、許可をいただいてここに引用します。

なんという世界を私たちは作ってしまったのか。水も空気も土壌もすべて汚染され、命を育むはずのものが命を脅かすものになってしまった・・・ 未来の子どもたちに私たちが犯してしまった罪を思うと身震いします。

★幸いに、専門性を持ち、幅広い見識を持つ3人の知人(岡田さん、三宅さん、落合さん)からコメントをいただきました。下方をご覧ください。

1) 大気中の放射線について

文科省の定める、一般人の年間被ばく限度量は、医療を除いて1000マイクロシーベルトです。随所で見かける日本政府の「日常生活と放射線」のチャートをご覧ください。(モニタリングチャートなどの最終頁に必ず出ています。たとえばこのリンクの最終頁をご覧ください。)画像をクリックすると拡大できます。


(ちなみに、このチャートを見て、カナダ人の友人は、「これらのイラストでは皆スマイルしており、放射線を受ける行為がとても楽しいことのように描かれていて異様だ。」と言っていました。その通りと思います。)

ここには明記してませんが、この1000マイクロシーベルトは、おそらく内部被ばくは考慮していません(体の外面から被ばくするのではなく、吸入、食物、等からの内面からの被ばく)。この被ばく量チャートに出ている例が全部、外部被ばくのものだからです。(例外として、「世界平均の1人あたりの自然放射線」2400マイクロシーベルトに、「空気中のラドンから」吸入しているイラストと、「食物から」という記載があるので、この国際平均は内部被ばくを想定しているように見えます。)

この政府の基準と、現在各地で計測されている放射線量を比べて議論しているのを全く聞いたことがありません。政府基準なのだから、政府はこれに準拠し説明するのが当然なのではないですか。年間1000マイクロシーベルトは、時間あたりに直したら(365X24で割ったら)0.114マイクロシーベルトです。ということは、毎時0.114マイクロシーベルトを超えたら、その状態で1年間そこに暮らしたら、政府の基準を超えるということです。そういう基準で見ると、東北、関東地方はこの基準を超えているところがたくさんあることがわかるでしょう。たとえば3月30日午後13時52分、福島第一原発北西40KMの地点では、毎時8.5マイクロシーベルト、茨城県東海村では、3月30日、毎時1マイクロシーベルトを超える数字が多数回出ています。東京でも、3月29から30日にかけて、時間にして0.2、0.3マイクロシーベルトといった値が出ています。

今のところ、どんな値が出ても政府は「ただちに健康に影響はない」と言い続けていますが、どの水準から「健康に影響がある」と考えているかの説明がありません。しかし影響のある水準が念頭にないと、「影響はない」とは言えないはずです。政府は、その基準を発表するべきと思います。文科省による「医療以外で年間1000マイクロシーベルト」を基準としているのだったら、毎時0.114以上の値が出ているときに「影響がない」と言った場合、それを一年分に換算した場合、矛盾するからです。「ただちには影響がない」が、「長期的に影響がある」と思うのなら、それはどれぐらいなのか。また、この基準が、大気中の放射線から受ける外部被ばく量だけではなく、吸入、水、牛乳をはじめとする食品から受ける内部被ばく量も考慮しているのか、を明らかにしてほしいです。

2)海水の汚染について

福島第一原発の放水口等から非常に高い放射線が検出されています。29日には、濃度基準値の3355倍に当たる放射性ヨウ素131が検出されたと各地で報道されました。翌日の30日には、4385倍のヨウ素水深83メートルでもヨウ素を検出、セシウム134は783倍、セシウム137は527倍と報告されました。土壌では、23日に原発から40キロ離れた飯館村の土壌から高濃度のセシウム137が検出されています。

報道によると、海では放射性物質は薄まるとか、底に沈むとか、影響がないとか言われていますが、原子力安全委員会は30日、「(魚介で食物連鎖による)生物濃縮の懸念がある」と述べています。ニューヨークタイムズ3月27日記事を見ると、キンバリー・カーフォット(ミシガン大学核工学、放射線科学教授)は、海産物のモニタリングの強化を訴えており、「放射線核種は自然環境に凝縮されます。」「例を挙げれば、ヨウ素は昆布とエビに凝縮します。」「ヨウ素、セシウム、ストロンチウムは他の海産物に凝縮されます。」と言っています。

福島県海域では魚を採っていないといいますが、野菜と違い、魚は一か所にいるわけではありません。海に県境があるわけでもないし、どこかで線を引いたからといって汚染された水がそこで止まったり魚がその先に行かないという保証はないのではないでしょうか。

今進んでいる海水汚染のせいで、海産物が本当に安全なのか、納得のいく説明がありません。「風評被害」を防ごうという話ばかりを聞きますが、消費者が納得できないことを問うことは、「風評」を拡げることとは違います。消費者はもちろん、生産者の不安には生活がかかっており、あいまいな説明はかえって不安を増します。わかっていることは伝え、わからないことは「わからない」と言って欲しいです。

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これらの質問にコメントをいただきました。太線は PeacePhilosopher がつけました。


★岡田さん(産業振興コンサルタント 東大 生命科学 PhD.)

この疑問2つは非常に的確にポイントを突いています。

1)大気中の放射線について。

内部被ばくと大気中の線量を比較するのはそもそも間違いで、それは分かっていてしている事に違いありません。(風評やパニックを防ぐためという名目で、本当は危機管理の失策を隠すため)自分はこのインチキを気にしながらずっと報道を見ていますが見ている範囲では、NHKがこの相違に留意して報道してます。年間の蓄積危険量と毎時の危険量は単純な掛け算とは成らぬ事は科学的な妥当性/合理性が有るので、直ぐに「毎時0.114以上の値は影響がある」とは言わないまでも、予防的な措置を取るために「影響があるかもしれない」と政治的判断では考えるべきと思います。予防措置を取る為には法的根拠などは必要ないから。

2)海水の汚染について。

今の汚染の数値で海産物が安全とは全く考えるべきではないと思います。「汚染物質の生物濃縮」は良く知られている事で、食物連鎖の上位に行くほど濃縮され、従って大型の魚の方がより危険に成ります(小型の魚は海草を食べ、大型の魚は小型の魚を食べる)。もちろん海水中で薄まりますが、例えば水俣病などの場合にも水銀は湾の中に蓄積していて外海にはあまり出ていなかった。
海流とはそんなものだと思います。黒潮や親潮に乗る前の沿岸で漂っている筈で、しかもほとんどの漁業や海産物、とりわけ養殖物は沿岸が問題です。

総論安全性を説明しないのは、到底安全とは言えないからです。自分はそう理解しています。
「ただちに健康に影響はない」としか言わないのは、国が保証という話になったら困るからに過ぎないでしょう。全くばかな話です。

日本は国が個人の被害を補償する事をほとんどしないで来ましたが(あらゆる分野で)、基準と対象を決める煩雑な作業を避けて来たからに過ぎません。やれば出来る事をしないのは怠慢。よその国のやり方が良いとばっかりは言わないですが、この点は日本の仕組みの無責任体制、責任の分掌の不在、決定能力の機能不全は目を覆う場から。

従って、自分は仕事上でも市民としても、「社会や組織のルールは時に無視するのが自分の様な人間の役割」、と考えていますひとまずここまで。


★ 広島被ばく者 三宅信雄さん

私もご質問にかかわることについては素人ですから、推測の域をでませんが、私見ではつぎのとおりです。

○人体への許容限度の1,000μシーベルトは、外部被爆のみで、内部被曝は考慮していないと思います。

内部被曝による障害は、ただちに発症するのではなく、長年の被爆によって、しかも他の原因と複合して発症するようです。

○レントゲン検査とは、放射線の種類が違うので、政府発表にそれを考慮している説明しているのか、分かりません。

○海洋汚染について、魚等の食物連鎖による放射性物質の濃縮は十分考えられます。しかし、ただちに起こることでなく、長期的スパンの問題ですから、現時点での実証はなかなか難しいです。

―原爆症認定において、内部被爆が健康に与える影響は僅少で、考慮していない、と裁判では言っています。


★落合栄一郎さん(化学者、バンクーバー九条の会会長)

質問1)

 先ず、これらの基準値には内部被曝については考慮されていないでしょう。ただ、水や食物内の放射能は、内部被曝になるわけで、これは別。しかし、これ以外の環境でも、チリ、ほこりなどに付着した放射線物質が体内に入る可能性はあるので、それも本当は考慮しなければならないが、そんなことを計測できるわけがない。いずれにしても、暫定値は一応の目安という程度の意義しかない。その上、他の様々な要素も特定されなければ、放射線の人体への影響は予測できない。まず、測定値だが、それがどの地点のどの時間のものであり、それが時々刻々変化していると思われるから、その時間を追ったデータを見なければ何とも言えない。今のこの瞬間に10000ミクロあったとしても、1時間後、1日後にはかなり変化しているでしょう。また外部被曝に関しては、核種(ヨードかセシウームかその他か)はあまり問題がないが、内部被曝にかんしては、核種を特定することは重要です。私は、日刊ベリタへの投稿にも書いたが、十分に意味のある放射能データは、かなり組織的に測定し(場所;例えば2kmおきとか、時間2時間おきとか;放射線量と放射線を出している核種)、それを総合的に集積して、分析、それから分布図とその時間変化から、ある程度の予測できる程でなければ、十分なことは言えないと思っています。しかし、現実にはそんなことはできないでしょうから、どうするか。私はあまりこれ以上のことは言えない。おそらく、経験者で本当のことを言る人の判断に任せるしかないでしょう。

 今政府が言っている、ある特定の時点での数値で、それが低く健康に影響はないだろうというのは、まずその測定値が今後もそのまま継続することを想定していないのでしょう。あなたが言うよう
に、今の測定値が低くても、それに24時間、365日晒されていれば大きな数値になることは明らかですが、今の事態では、誰も、今後放射線量がどのように変化するのかわからないはず(放送では、放射能測定値が徐々に減少傾向にあることを強調している) なので、これからの1年間、半年間で、どの人がどの程度の被曝をするかなどはとても予測しえない。だから、現在は、このあたりは、かなり放射線量が大きいから、退避すべき、屋内になるべきいるべきとかのことしか言えないのだと思います。こちらはいいとしても、逆にこの線量だから、健康に影響はないとはいえない。ただし,そう強調すると、だれも安心して生きていられない。おそらく注意深く、放射線量の発表に注意して、なるべく、放射線にさらされないような生活をする(どのようにか?)しかないのではないかと思う。こんな不安の生き方を人々に強いるのは、原発があり、それが故障しかねないからなのです。だから、安心して生活が出来るようにするには、原発はまず廃止しなければならない。

質問2)

 私は、海での放射性物質の問題は、あまり重要視していない。という意味は現実問題としてであり,放射性物質を海に垂れ流すことは容認されるという意味ではない。放射性物質は海に入ったからといってなくなるわけではないし、半減期にしたがって、ずっと滞留しているはずです。放射性物質を海に流しつづけれは、どんどん溜っていく(特に半減期の長いものは)、海中濃度が上がる。
 さて、海は流動している、潮の満ち干だけでもかなり動いている。一度放出された放射性物質は、それによりかなり速やかに、広範囲に拡散していくでしょう。もちろん、これも一概にはいえな
い。湾などで、外海との水の流通があまりないところでは、拡散しないで滞留するでしょう.

 通常、すなわち海流の激しい場所では、放射性物質の海中濃度は、すぐに非常に小さくなるでしょう。これが一つと、別の問題は、それでも、海に住む生物には、低濃度であれ、吸収されること
は事実です。問題は、その体内の濃度がどう変化するかですね。吸収速度と排泄速度のかねあいです。それは核種とその化学的状態(化合物形態)にもよるし、生物の種類にもよるでしょう。モノによっては(すなわち排泄しにくいもの)食物連鎖を上がるに従って、濃縮されることは事実ですが、どの化合物が、そうなのかは簡単には言えない。これからは、私の推測ですが、おそらく、セシウームは、化合物形態として食塩などと同じでしょうから、比較的早く出ていくでしょう。また、ヨードは、水中では、やはりヨードイオンの形で、体内に長く留まることはないと思う。ということは、これらは食物連鎖で濃縮される(としても)率は低いと思われる.ストロンチウームは、骨にカルシウームと同様にとりこまれるので,非常に出にくい。したがって濃縮される。

 いずれにしても放射能物質の拡散は,海に限らず空中を通して他国にまで影響を及ぼすわけで、国際信義上も、なるべく出さないようにするべきである。

 余談だが,地上で、ヨード-131とセシウーム-137が特に問題なのは,前者は、ヨードが,甲状腺ホルモン(チロキシン)の一部で、体は、放射性であるかないかは区別せず(できない)にヨードを取り込む(だから放射性ヨードも)、それが甲状腺組織を破壊する。セシウームの場合は、土壌などに取り込まれ、そこに留まり、それが農作物に吸収されて、人間の体内に入る。入ったセシウームは、かなり速やか(60日ぐらいと言われている)に出て行くにしても、その期間にダメージを与えるし、後から後から食物を通して入って来るのだから、排泄が速くとも、どんどん溜っていくでしょう。その体内被曝が恐ろしい結果をまねく。

Saturday, April 02, 2011

京大原子炉実験所 小出裕章インタビュー「圧力容器が破損している」 Interview with Koide Hiroaki, Kyoto University Research Reactor Institute

(4月13日追記)
小出さんがいろいろなメディアに出て話している内容やリンクをまとめるブログを見つけました。大変役に立ちます→小出裕章(京大助教)非公式まとめ http://hiroakikoide.wordpress.com/

(4月10日追記)
岩上さんによる小出さんの最新インタビューを追加します。(ジャーナリスト岩上安身さんは、東奔西走し、福島原発問題で主要メディアには出てこない貴重な報道をしてきています。企業利益にしばられる政治な大手メディアに比べ、代替メディアこそが市民の声を代弁し民主主義を実現します。代替メディアは市民が経済的に支えなければ成り立ちません。岩上さんのような優秀な独立ジャーナリストを支持したいです。カンパはこちら。)

京都大学原子炉実験所 小出裕章氏に聞く



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京大原子炉実験所 小出裕章氏インタビューの録画(3/31) (ジャーナリスト岩上安身氏によるもの。)

anatakara.com さんが要点を聞き起こしてくれました。ビデオリンクの下をご覧ください。大事と思うところを太字にしてあります。そこだけ抜粋すると、

「何より大切なことは電源復旧。ところが水没しているポンプが動かない。それを動かそうとした作業員が現場に行けない程の膨大な放射能。それを外に出さなければポンプも動かせない。もう、どんなことをしてもだめ。なぜかといえば、実は原子炉圧力容器自体が破損している。(根拠は)今ポンプ車を使って水を大量に入れているのに、水位がまったく増えない。1,2,3号機とも燃料棒が常に露出しているというデータがある。それは圧力容器に穴があるから。それを東電は「圧力容器の下部に穴があいたイメージだ」という。いずれにしても、圧力容器に穴があいている。いくらポンプが動いても漏れるだけで水をいれても正常な水位にならない。今は動いていないが、今後たとえポンプをいくら動かしてもだめ。冷却のシステムは使えない。一次系も(原子炉に水を入れる冷却システム)もだめ、二次系(ポンプ)でも、水位はあがらないということ。冷却ができない、ということに気がついたのは、昨日か一昨日。電源がきても正常な冷却はできない。どうしてもだめ。ほかに解釈のしようがない。だから外部から海水でも何でも送って冷やすしかない。外部から水を送れば、格納容器の破損箇所から放射能まじりの水が放出されていく。それがトレンチなどに溜まる。しかし今後もそれをやり続けるしかない。」


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’68年に東北大学工学部原子科工学科に入学。原子力発電をどうしてもやりたいと思ってその学科を選んだ。宮城県仙台市。当時女川町に原発建設の動き。原発はすばらしいと思っていたので、宮城で一番電気を使う仙台市に建てればいいと思っていたら、東北電力は70km離れた女川に。それに疑問を持ち、その答えを探し求めた。そして原発は都会にはつくれない危険なもの、だから過疎地から送電線を引くのだということが分かった。それは自分の生き方には相容れないもの。それで180℃、態度を変えたのが1970年の秋。その頃敦賀、美浜ができた。

76年から京大で、原子力というのはどのような危険を内包しているのかを明らかにする仕事をしてきた。原子炉実験所は原発推進とはまったく違う。中性子利用を考えるための道具としての原子炉を作った。原子炉そのものは目的ではなくて、道具で、それを使って自分たちが実験をする。この実験所にいる200名のうち80名が教員、それも物理学、化学、生物学、医学などで、原子力を知らない人が多い。自分は原子力を廃止したいと思って研究している。
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原子力発電はウランを燃やす、すると必ず核分裂生成物(放射性物質=死の灰)ができる。原発をやれば、沢山の放射性核種、膨大な放射能を生み出す。広島のときはウランの重量は800g。原発では中規模の100万Kwのもので1日3kgのウランを燃やす。一日で広島の3倍~4倍。1年稼働させれば広島原爆の1000発分を、原子炉内にため込む。それが毎日でも環境にでれば大変だと、(関係者は)みんな知っていたので、だからこそ都会には建てない。日本にある54基は、大小があるが、基本的に大体100万Kw。この全国の原発の合計が生むのは、毎年毎年、広島に落ちた原発のほぼ5万発(正確には4800発)分。1966年に東海が稼働し始めて45年。その45年間に生んだ核分裂生成物は広島原発の120万発分。
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原子炉はウランを核分裂させてエネルギーをとりだす。100万Kwの原発とは、電気になる分だけ。炉心の中には300Kwの熱があり、その3分の1が電気になるだけで、残りは海に捨てるしかない、つまり海を暖めるだけの、実に非効率な装置。200年前にG.ワットが蒸気機関を発明した当時のまま、今でもそれを使っていて、熱効率は3分の1。66%は捨てるしかない。1秒間に70トンの海水を引き込んでその海水を暖めて海に戻す。海水の温度を7℃上げる。荒川や多摩川は1秒間に30~40トン。関西一の淀川は1秒間に150トンの流量。1秒間に70トンを超える大河は日本全国で30くらい。いつも入る風呂の温度を7℃上げた場合を考えてみればわかるが、そのような風呂には決して入れない。海の生き物は普通には生きられない。暖かいのが好きな生き物が新たに来るかもしれないが、少なくとも生態系は破壊される。世界平均の海水温度の上昇度にくらべると日本近海は何倍も温度があがっている。厳密な立証はない。今日の原発が一年間に出す温排水は.....(...テープが途中で切れる)
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54基の日本の原発が1年間でどれくらい温排水をだすことか。放射性物質はあらゆる意味で人体に危険。環境や人体に影響がないというのは一切誤り。ただし、先日検出されたプルトニウムは大変少ない。今現在あまりにも膨大な量の放射性物質がでているので、プルトニウムが出たとしても、比較の問題としては大変な量ではない。ただ、プルトニウムが出たというのは、原子炉のウラン(燃料ペレット)の成分が溶けた、と言う証拠。その意味では大変なこと。心配しているのは、原子炉(炉心)が溶け落ちること。今溶けているのはごく一部。大量に溶けると固まりになってメルトダウンという状況になり、最悪の場合で水蒸気爆発をする。そうすると圧力容器が破壊され、比較的ぺらぺらな格納容器も壊れる。そうすると放射能を閉じ込めるすべての防壁がこわれ、今の放出にくらべて桁違いの放出となり破局的事態となる。そこには何としても行かしたくない。
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東電などの関係者は理解している。「溶けている」と認めているが、それが大変とは彼らは言わない。彼らは「損傷」というが、それは「溶けている」のとは違う。今はウランの燃料ペレットが溶けている。(ペレットが損傷しているのとは違う)。本当は「炉心が溶けている」。
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地震と津波によりすべての電源が断たれた。東電は電源車を何十台も持ってきたが、発電所内の系統への接続箇所が水没していたため、次ぎに消防のポンプ車を連れてきて、そこから原子炉に水を送ろうとして、海水を入れた。何より大切なことは電源復旧。ところが水没しているポンプが動かない。それを動かそうとした作業員が現場に行けない程の膨大な放射能。それを外に出さなければポンプも動かせない。もう、どんなことをしてもだめ。なぜかといえば、実は原子炉圧力容器自体が破損している。(根拠は)今ポンプ車を使って水を大量に入れているのに、水位がまったく増えない。1,2,3号機とも燃料棒が常に露出しているというデータがある。それは圧力容器に穴があるから。それを東電は「圧力容器の下部に穴があいたイメージだ」という。いずれにしても、圧力容器に穴があいている。いくらポンプが動いても漏れるだけで水をいれても正常な水位にならない。今は動いていないが、今後たとえポンプをいくら動かしてもだめ。冷却のシステムは使えない。一次系も(原子炉に水を入れる冷却システム)もだめ、二次系(ポンプ)でも、水位はあがらないということ。冷却ができない、ということに気がついたのは、昨日か一昨日。電源がきても正常な冷却はできない。どうしてもだめ。ほかに解釈のしようがない。だから外部から海水でも何でも送って冷やすしかない。外部から水を送れば、格納容器の破損箇所から放射能まじりの水が放出されていく。
それがトレンチなどに溜まる。しかし今後もそれをやり続けるしかない。
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環境に出るがままになる。言葉を失う。今の状態が続くのであれば、これから何ヶ月もこのまま続く。
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揮発性のヨウ素やセシウムは、原子炉の全体のうちで、まだ今までで数%しかでていない。水蒸気爆発とかが起こると一気に数十パーセントが放出される。
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これまでは数パーセント流れ出た。期間が長くなれば数十~100パーセントに近づいていく。揮発性でないプルトニウムなどは、今のところ燃料ペレットの中にあるので。水を入れ続ければ冷やすことができ、そういう重い放射性核種の大量放出は避けられる。
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ペレットが溶けたのは確かだが、どの号機から出たのかわからない。突き止めることもできない。もっと溶けると水蒸気爆発を伴う破局になるので、それは何とかしても避けねばならない。仮に水蒸気爆発が起こらなくても、長期にわたり冷却しつづけなければならない。正常な冷却回路は復帰できない。水を入れて冷やし続け、入れた分は捨てねばならない。それがもし可能ならば、プルトニウムを含めた、揮発性でないものを何とか閉じ込めることができるかもしれない。月とか年の単位の作業。

崩壊熱とはそこに存在する放射性物質そのものがだすもの。何百種類もあり寿命に長短がある。原子炉を止めても7%の放出はとめられないが、それでも止めたその時に短いものは極端に減っていく。ある程度減ると減らなくなるが、また1年経つと減り始める。だからある程度経てば燃料ペレットが溶けなくなるかも知れない、それは形状による。いつまで冷やせばいい、とかは言えない。外界に水が流れ出るのを防ぐ手立てはない。
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タービン建屋でも大変な放射線量だから、格納容器に近づくことは何ヶ月という単位でできない。ロボットというのは決まった仕事をやるものだから、今回のような想定外の事故による進行状況では多分何の役にも立たないだろう。
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1986年のチェルノブイリのときには原子炉が爆発。プルトニウムを含めた.揮発性でない放射性核種も多く出たが重いものは遠くまでは飛ばず、揮発性のものが世界を汚染した(地球被ばく)。政府は周辺30kmの住民を避難させたが、その後数ヶ月たって200km、300kmの地域で濃密な汚染がわかり、20数万人を避難。それは放射能が風に乗ってながれ、その地域で雨が降ったための汚染。合計で40万人が避難したが、そのうちにソ連が崩壊。汚染はその地帯にとどまらず米国にも日本にも届いた。チェルノブイリの発電所から700km先まで、あるレベル以上の汚染。その「あるレベル」とは、日本の法律に照らすと「放射線の管理区域」(専門家がどうしても仕事上入らないときにだけ入る区域で、そこに入ると、飲食はだめ、タバコを吸えない、そこで寝ることはできない、子供は連れ込めない、妊娠可能性のある女性は医者と相談が必要)に指定される区域。ソ連が崩壊しているため、避難させる国力がなく、いまだにその地域の人たちはそこで生活しているだけ。

その区域の面積は、日本の法律上の管理区域となるような危険地域だけで145,000平方Km、本州の6割。放射状ではないが、危険地域だけでその範囲。同心円ではなく、風向きで決まる。
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日本ではダメージは吸収しきれず、国家体制が破綻する。何十、何百兆円払ってもあがなえきれない。この状態が続けば、揮発性のものがだらだら出続ける(チェルノブイリのときは30%)。そうれば、チェルノブイリと同じだけ出てしまうだろう、そうするとチェルノブイリと同じくらいの汚染区域となるだろう。
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日本はスピーディ(SPEEDI)をもっていて事故発生時から観測しているが、それを公表しなかった、パニックを煽るだけと。本当は時々刻々そうしなければならないのに。日本原子力研究機構が出していない。いま情報をださなくて何なのだろう。
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日本の政府が恐れているのは、住民被ばくではなく、パニック。私はパニックをおさえるには唯一の方策として情報を公開すべし、というもの。日本の政府はよらしむべし、知らしむべからずという、従来のやり方が今もある。
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(Q: 放射能の危険性について書いたアエラが謝罪させられた。この状況をどう思いますか?)
大変危険な状況と思います。「原子力」と「核」は違うものと人々は思い込まされているが、本当は同じもの。日本の国が原子力を推進してきた、その根本に核開発、核兵器所有の希望があったことはNHKの番組でもあった(「核を追い求めた日本」)。 原子力では事故が起こるが、その恐怖を超えて、さらに政治的に社会的に、そういう問題が根底にあり、今後、自民と民主の大連立になったときに、ますます強化の方向に向かうと思われるし、危険な時代に滑り落ちていくことになるのだろうと思われる。
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(Q:我々はどれくらい避難すればよいのですか?)
日本という国から見ると、海に囲まれ偏西風があるため、大抵の核種は太平洋に流れる。トレンチというものは、放出する構造であるから、膨大なものがトレンチから海に流れる。日本人は海は広いから薄まると考えるが、薄まるということは汚染を広げることで、原子力から何の恩恵もなかった国にまで、世界に汚染を広げること。程度がどれくらいかというのは、今は予測不可能。(終)
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Friday, April 01, 2011

米新論文:「意図しない再臨界」が起こっているのか。Is Unintended Recricality Ocurring?

NEW!

★★★この論文はここで解説文のみ和訳しましたが、本文の和訳ができました。関連リンク集もあわせてここで紹介していますのでこちらをご覧ください。
http://peacephilosophy.blogspot.com/2011/04/full-japanese-translation-of-dalnoki.html


(★翻訳の修正も終わりました。転載していただいて大丈夫です)
(★ダルノキ―ベレス論文を訳していただける方が見つかりました。もうすぐ発表します)

アジア太平洋ジャーナル:ジャパンフォーカスに昨日(3月31日)発表された、モントレー国際問題研究所不拡散研究センターの研究員、フェレンス・ダルノキ―ベレスによる論文の解説文(解説はIEERエネルギー環境研究所所長アージャン・マキジャーニによる)を翻訳し、配布します。この論文は『ネイチャー』誌ウェブサイトにさっそく取りあげられアジア太平洋ジャーナル(APJ)のウェブサイトにも今アクセスが集中しています。このピース・フィロソフィー・センターのブログの運営者はアジア太平洋ジャーナルの編集委員も務めており、この論文の解説文を翻訳・発表する経緯となりました。解説文の翻訳については正確を期したつもりですが、英語版が唯一の正式な文書であり、英語版と日本語版の間に意味や解釈に違いが生じた場合は、英語版を優先してください。転送転載は自由ですが、全文が条件、そしてこのサイトへのリンクを明確に記してください。解説の翻訳文に問題がある場合、info@peacephilosophy.com に連絡ください。また、この論文の本文を至急訳してくれる人―物理化学系の方が望ましい―を募集します。その場合もinfo@peacephilosophy.com に連絡ください。また、この論文の内容自体について質問やコメントがある場合は、英語で info@peacephilosophy.com に送ってくれれば著者たちに転送します。その場合は、議論を広く共有するために、質問やコメントもウェブサイト等で公表する可能性があることをご承知ください。日本語でコメントや質問を送っていただいた場合は、受け取りますが、翻訳の人手が足りず、著者に届けるのは現時点では難しいことをご了承ください。

ピース・フィロソフィー・センター



福島第一原発の1号機(タービン建屋)に見つかった高い濃度の放射性塩素38の原因は何か?

F. Dalnoki-Veress with an introduction by Arjun Makhijani
F.ダルノキ―ベレス
解説文 アージュン・マキジャーニ

(掲載誌 アジア太平洋ジャーナル:ジャパンフォーカスによる導入文)
This is a first for The Asia-Pacific Journal: publication of a technical scientific paper addressing critical issues pertaining to the leakage of radioactive water at the Fukushima reactors. Our goal is to make this information available to the Japanese and international scientific communities, to Japanese government authorities, and TEPCO as they address the formidable issues of cleanup and safety. But we also believe that the information is of importance to informed citizens and the press in the face of further dangers that have gone unmentioned not only in government statements, but also in the press. Arjun Makhijani’s introduction provides a lucid explanation of the problem and the issues, followed by F. Dalnoki-Veress’s paper. Asia-Pacific Journal
アジア太平洋ジャーナルは今回初めての試みをした。福島第一原発の原子炉において、高い濃度の放射性物質を含む水が漏れたことに関連する重要な事柄を議論する科学技術論文の掲載である。この論文が、汚染水の除去と作業員の安全確保という大変な課題を扱うものであり、私たちは、日本の、そして世界の科学技術学界、日本政府当局、東京電力にこの論文を提供したいという目的をもって掲載に至った。また、この論文の内容は、政府関係の書類や報道ではまだ触れられていない危険性について論じており、一般市民やメディアにとっても重要であると信ずる。まずアージュン・マキジャーニ博士の解説文によりこの論文の扱う問題を明らかにした後、F・ダルノキ―ベレス博士の論文を紹介する。(アジア太平洋ジャーナル)

解説文(IEERエネルギー環境研究所 所長 アージュン・マキジャーニ)

The presence of highly radioactive water in three turbine buildings at the Fukushima Daiichi nuclear plant is widely understood to be from the damaged fuel rods in the reactors. This has rightly raised concerns because it indicates several problems including extensive fuel damage and leaks in the piping system. Less attention has been paid to the presence of a very short-lived radionuclide, chlorine-38, in the water in the turbine building of Unit 1. The following paper evaluates whether its presence provides evidence of a serious problem – one or more unintended chain reactions (technically: unintended criticalities) – in the reactor. Such chain reactions create bursts of fission products and energy, both of which could cause further damage and aggravate working conditions that are already very difficult.
福島第一原発の3つのタービン建屋(訳者注:1号機から3号機のタービン建屋)の溜まり水の高放射線の原因は、原子炉の炉心が損傷を受けていることであると広く理解されている。これは炉心の損傷が進んでいることと、配管システムに漏れが生じていることをはじめとする数々の問題を示唆しており、懸念が高まるのは当然である。しかし1号機のタービン建屋の溜まり水に、塩素38という短命の放射性核種があることにはあまり関心が注がれていない。この論文は、この物質の存在が深刻な問題、つまり、意図しない連鎖反応が1回か複数回起こっている(技術的には、「意図しない再臨界」といえる)ことの証拠になっているかどうかを検証する。このような連鎖反応は、核分裂生成物とエネルギーの急速な放出をもたらし、その両方が損傷を悪化させ、すでに非常に困難な作業環境をさらに悪化させる可能性がある。

Chlorine-38, which has a half-life of only 37 minutes, is created when stable chlorine-37, which is about one-fourth of the chlorine in salt, absorbs a neutron. Since seawater has been used to cool, there is now a large amount of salt – thousands of kilograms – in all three reactors. Now, if a reactor is truly shut down, there is only one source of neutrons, namely, the spontaneous fission of some heavy metals which are created when the reactor is working and remain present in the reactor fuel. The most important ones are two isotopes of plutonium and two of curium. But if accidental chain reactions are occurring, it means that the efforts to completely shut down the reactor by mixing boron with the seawater have not completely succeeded. Periodic criticalities, or even a single accidental one, would mean that highly radioactive fission and activation products are being (or have been) created at least in Unit 1 since it was shut down. It would also mean that one or more intense bursts of neutrons, which cause heavy radiation damage to people, have occurred and possibly could occur again, unless the mechanism is understood and measures taken to prevent it. Measures would also need to be taken to protect workers and to measure potential neutron and gamma radiation exposure.
塩素38は半減期が37分と短く、天然の塩素に4分の1ほど含まれる塩素37が中性子を吸収するときに作られる。海水が冷却に使われたために、3つの原子炉すべてに何千(何万)キロもの大量の塩がある。原子炉が本当に停止しているのなら、中性子の出所は1つしかないはずだ。それはすなわち、原子炉が稼働しているときにつくられ、炉心の中に存在し続けるいくつかの重金属(訳者注:超ウラン)の自発的な分裂のことである。一番重要なものとして、プルトニウム2つ、キュリウム2つの同位体がある。しかし、もし予想外の連鎖反応が起きているとしたら、ホウ素を混ぜた海水で原子炉を完全に停止しようとする努力は、完全には成功していないということになる。断続的な臨界が起きているとしたら、いや、1回だけ偶発的に起きたにせよ、高い放射能を持つ放射性核分裂生成物と放射化生成物が、原子炉停止後も(少なくとも1号機では)生成され続けている(もしくは生成された)ということを意味している。それはまた、人に多大な放射線被害をもたらす中性子の集中的な発生が、1度かそれ以上起きていたという意味であり、その仕組みがわかり、もう起こらないような予防策が取られない限り、さらに起こる可能性があるということである。作業員を安全を確保し、発生している可能性がある中性子とガンマ線被ばくを測定するための対策を取るべきである。

This paper examines whether spontaneous fission alone could be responsible for the chlorine-38 found in the water of the turbine building of Unit 1. If that could be the only explanation, there would be less to be concerned about. However, the analysis indicates that it is quite unlikely that spontaneous fission is the sole or even the main explanation for the measured concentration of chlorine-38. Presuming the reported measurements are correct, this leaves only one other explanation – one or more unintended chain reactions. This paper is presented in the spirit of encouraging discussion of whether further safety measures might be needed, and whether supplementary measures to bring the reactors under control should be considered. It is also presented as a preliminary analysis for scientific discussion of a terrible and technically challenging nuclear crisis at the Fukushima Daiichi plant.
この論文での分析結果は、1号機の溜まり水から検出された塩素38の原因として考えられるのは自発的な核分裂だけなのかということである。それしか説明として考えられいのであれば、それほど心配することではない。しかし、この論文の分析では、計測された塩素38の濃度は、自発的な核分裂が唯一の原因であるどころか、主要な原因でさえない可能性が高いということを示唆する。報告されている計測値が正確であると仮定すると、残された可能性は一つしかないことになる。それは、1回かそれ以上の連鎖反応である。この論文は、安全策のさらなる強化が必要なのか、また、原子炉を安定させるための追加策が必要なのかという問題意識のもとで提示している。また、福島第一原発における、悲惨で、技術的にも困難な核の危機の、科学的議論の予備的分析を提供するものである。

(解説文 以上)
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リンク: http://www.japanfocus.org/-Arjun-Makhijani/3509


解説者・著者紹介

アージュン・マキジャーニ
エネルギー環境研究所所長。カリフォルニア大学バークレー校工学博士(専攻は核融合)。過去20年間、核兵器製造、実験、核廃棄物等、核燃料サイクルの分野で多くの研究業績と論文がある。著書のCarbon-Free and Nuclear Free: A Roadmap for U.S. Energy Policy (『CO2と核からの脱却:米国エネルギー政策のロードマップ』)では、化石燃料や核エネルギーに一切依存せず、米国経済を完全に再生可能エネルギーに移行させる初めての分析を行った。Nuclear Wastelands(『核廃棄物の土地』)のの共編者、Mending the Ozone Hole (『オゾン層の穴を治す』)の主著者でもある。メールアドレス: arjun@ieer.org 

フェレンス・ダルノキ―ベレス
モントレー国際問題研究所、ジェームズ・マーティン不拡散センターの研究員。核軍縮・廃絶と核分裂物質の世界的拡散についての専門家である。カナダ・カールトン大学で高エネルギー物理学の博士号取得(超低レベル放射線バックグラウンド測定器の研究)メールアドレス:ferenc.dalnoki@miis.edu 電話番号:831-647-4638.

著者注:この論文を注意深くレビューしてくれた、モントレー国際問題研究所不拡散センターのパトリシア・ルイス博士、IEERのアージュン・マキジャーニ博士に感謝する。ルイス博士の連絡先: patricia.lewis@miis.edu 

(Translation by Satoko Norimatsu)