海外にいるせいか、「東電や政府を今批判してはいけない」的な「批判自粛」の空気が日本にあることを一昨日ぐらいまで知らなかった。全く理解できない。市民の、権力を見張り批判する義務は非常時であろうが戦争中であろうがお休みになったりはしない。逆にこういう時の方が大事なのである。特に、メディアがその義務をほとんど放棄しているような時勢においては尚更である。政府や官僚、企業を批判しないことは自分を批判しないことにもつながる。政府は自分たちが選んでいるし、官僚は自分たちが雇っているし、企業は自分たちが雇用、消費、投資といった形で深く関わっているからだ。全部、自分たちそのものなのである。そういう意味では「他者」ばかり批判して自らを批判しないのもおかしい。「批判自粛」している人たちも、「他者批判」しかしない人たちは、実は自らを省みることを避ける心地よさ、思考停止の楽さに安住しているのではないか。
また、「外国の人は騒ぎすぎ」「外国のメディアは大げさすぎ」という見方が日本で随分広がっているようである。外国のメディアが一部センセーショナルに報道したのは確かだが、日英語でニュースをずっと追ってきた人間として、日本では隠されていることが外国では率直に報道されてきていることも事実だとわかっている。たとえば、3号機にプルトニウムを含むMOX燃料が使われていることは外国メディアでは随分書かれているが、日本の主要メディアではほとんど見ない。日本のある報道機関の同じ記事が日英語で書かれているものを見たら、日本語の方にはMOX燃料の記述がなかったら、英語版にはあったのだ。そういうことは数えきれないほど行われてきている。原子炉の建屋の爆発の瞬間や火災の映像なども、外国では動画が随分報道されたが日本では静止画がほとんどだ。「外国が大げさに報道している」という見解自体が、日本を情報の孤島にしようとの企ての一部ではないかと思う。
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「福島」は、「広島」、「長崎」に続き、日本の3つめの大規模核被害地となった。違うといえば、今回は自らが落としたものであるということだ。安全性に問題のあるとわかっていた原子炉を米国が無理に認可し押し付けたとか、米国の責任にする捉え方もあるが、日米同盟と同じ、やはり自分たちが、労働者や周辺住民の被ばくなしでは成り立たない原発という産業自体をを許すことによって、そしてずさんな安全管理を見逃してきたことによって招いたことである。自分たちの責任である。
平和憲法を掲げ、非核三原則をとなえて歩んできた66年の結末。今までやってきたことは一体何だったんだという根本的な問いに面している。
長い長い期間をかけて、被害者の人たちに、子どもたちに、孫たちに、海に、山に、畑に、償っていかなければいけない。
大江健三郎さんが「ニューヨーカー」に寄稿した文を読んだ。一部を翻訳する。
日本の近代史を3つのグループからの視点で考察してきた。広島長崎の原爆で死んだ人たち、ビキニ環礁での水爆実験で被ばくした人たち、そして原発事故の被害者たち。・・・日本は歴史においてまた新しい時代に入った。今こそまた、原子力の被害者の目から見ていかなければいけない。広島の原爆慰霊碑には、「安らかに眠ってください。過ちは繰り返しませんから」という言葉が刻んである。大江さんは、人命軽視の原発自体が、広島長崎の過ちの繰り返しであり、広島長崎の被曝者への裏切りであると言っているのである。
日本人は経済効率だけで原子力を考えてはいけない。広島の悲劇から経済成長の『処方』を引き出してはいけない。地震、津波、他の自然災害のように、広島の悲劇は人間の記憶に刻み込むべきものであるが、自然災害と違い、これは『人災』であったからこそよりその悲惨さが際立った。
原子炉の建設はこのような(原爆の)人命軽視の過ちを繰り返すことであり、広島の犠牲者への最大の裏切りである。
重く受け止める。
昨日、沖縄の作家、目取真俊さんのブログで、原発労働者の現実を描いたドキュメンタリーを知った(イギリス、1995、日英二ヶ国語)。
ブログより引用
「福島第一原発の事故対策で、自衛隊や消防隊の活動が華々しく報じられる一方で、危険な作業に従事させられている民間労働者、特に下請け労働者の実態はほとんど報じられない。3月24日にはずさんな安全管理のもとで労働者が放射線を大量被曝する事故も発生している。マスメディアは彼らの肉声と作業の実態をもっと報道すべきだ。http://www.youtube.com/watch?v=92fP58sMYus&feature=related
1995年にイギリスで制作・放送された『隠された被曝労働~日本の原発労働者~』という番組がユーチューブで見られる。多くの人に見てほしいので紹介したい。」
http://www.youtube.com/watch?v=pJeiwVtRaQ8&feature=related
http://www.youtube.com/watch?v=mgLUTKxItt4&feature=related
引き続き、このブログの右上のツイッターフィードか、
ツイッター Twitter @PeacePhilosophy
フェースブックFacebook "Peace Philosophy Centre"
で、日英語で原発事件情報を発信していますので見てください。
PP
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