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Tuesday, August 25, 2020

福山市の医療機関で差別を受けたYさんに対する医師の「謝罪」と市の対応についてYさんからの報告

 ★8月26日追記。「下線④」となっていた部分は正しくは「下線③」でした。訂正しました。

7月29日投稿「福山市が市民に提供する無料風疹抗体検査を受けた福山市民のYさんが担当医師から受けた差別」、8月6日の投稿「福山市の無料風疹抗体検査で医師から差別を受けたYさんからの経過報告」の続きですが、被害者のYさんからのその後の報告です。大変怒りを感じる内容です。市の「人権」担当職員は、最初、医師が直接Yさんに謝罪する場を設けるという提案をしました。検査の結果を聞くためにもう一度この医師に会うことさえ非常に負担が大きかったのに、その後もう一度さらに会うということはYさんには耐えられないことでした。そこで文書での謝罪を求めたところ、医師はそれを受け入れ謝罪文を書きましたが、市はそれを渡すために被害者のYさんを市役所に出頭させ、男性2人対女性1人という構造で会合は2時間に及びました。市の職員は加害者である医師を擁護しながら、医師の謝罪を受け入れるようYさんを説得しようとし、Yさんは、自分の意思に反してこの謝罪を受け入れなければいけないという重圧を感じました。謝罪文は、Yさんがここに書いたように納得のいかない言い訳だらけのもので、率直に差別を認めて謝罪する内容ではありませんでした。それを問題視するYさんに対し、市の職員は「怒らないでください」と何度も言ったと言います。弱い立場、差別される立場の人が当然の怒りの声をあげると「感情的になるな」といってその声を抑えつけることを「トーンポリス」といいますが、これはまさしくトーンポリスと思いました。それなのに、Yさんの報告にもあるように、ご自分は声を荒げるときもあったとか。また、今回、市側は医師の謝罪文を全文公開はしないようにYさんに求めました。「事情も知らないのに好き勝手に書く人がいる、攻撃的なことを書く人がいる」からというような言い方だったそうです。私がいままでこの件について書いてきたことはすべてYさんのチェックを受け、Yさんの気持ちを反映する内容であることを確認しています。Yさんはこの報告を、当初の事件のときを上回る絶望感と苦痛の中で書きました。Yさんがここに書くように、率直に差別したことを認め謝罪する誠実な謝罪文であったらここに内容を記す必要もなかったでしょう。市役所の「人権」担当職員が本当に被害者の意向と気持ちを尊重する対応をしていたら、このような報告をしなくても済んだでしょう。私自身、謝罪文と市の対応の個々の項目については言いたいことはたくさんありますが、今回は保留し、まずは読者のみなさん、Yさんを支援する人たちに読んでもらいたいと思い、ここに掲載します。(前文 乗松聡子@PeacePhilosophy)


(ここから、Yさんの報告)

 812日、市職員から連絡あり。医院を訪問し事情を説明したとのこと。医師は、行き違いがあったようだ、直接謝罪したい旨話したとのこと。市役所での面会を提案される。一旦了承するも、連休明けに再度対面することを想像すると一睡もできない。

 813日、医師からの面前謝罪を断り、謝罪文による謝罪を提案する。819日、市職員より謝罪文が届いたので翌日市役所に来てほしいと伝えられる。

 820日、市役所で職員2名と2時間ほど会合する。

 謝罪文は市職員にメールで届き、プリントアウトされたものを受け取る。職員2名はすでに目を通していた。

824日、市役所職員(下記3.の発言者ではない)に電話する。謝罪は重要な点で不十分があり受け入れられないと医師に伝言し、20日の会合における職員の対応は不適切な点が多くあり、信頼していただけに絶望したと伝える。職員からは「申し訳ない」と謝罪を受ける。

 

1.謝罪文の概要

・傷つき不愉快な思いをさせたことへの謝罪

「言い訳に聞こえるかもしれませんが」との前置き後、受給資格として住民票が福山市にあるかを確認するため ①福山市への納税=住民票の有無を聞いた

国籍や婚姻等は無関係な質問であった

当日が土曜日であったため、本来であれば福山市へ問い合わせるべきところ、本人に口頭で確認した

※②後で検査要綱資料を確認したところ健康保険証での住所確認でよかったことがわかった。確認不足により、あとで考えれば不適切な質問をして申し訳なかった

・外国籍の患者は多く来るが差別をしたことはないし、自身の留学経験で幾度もつらい経験をしたこともあり、気を付けていた。差別する気持ちはまったくないにもかかわらず、発言で傷つけてしまった行為そのものが差別であると受け止めている

・意図と違う結果になってしまったのは自分の不徳によること、謝罪

 

2.謝罪文への所感

 下線①について、質問は「あなた、税金ははらっているの」であり、「税金は福山市に払っているの」というような表現ではなかった。その後に住民票は福山市に移したかという質問が続いた。日本語として質問文の述語「払っているの」の主題は「税金は」であり、「福山市に」ではない。医師が住民登録の在りかを確認したい意思でこの質問をしたというのは疑問である。

 市職員によると、③国民健康保険であれば住民票の確認ができたが、Yさんは社保なので住所が記載されておらず、医師は住民票について質問したようだ。不明の場合、口頭で質問することになっている。

 下線③について、医師は、口頭で住民票も福山市にあるとの返答を得たにもかかわらず、その後自己負担にすると述べている。

 自己負担にしようと思ったのは社会保険被保険者だからだろうか。下線②によると、問診後、要綱を確認して初めて健康保険証で足ると知ったという。しかし、社会保険の被保険者でこの検査を受けたのは私が初めてであるとか、社会保険被保険者がこの種の検査を希望する場合、毎回住民登録の有無を福山市に問い合わせていたというのは、信じがたい。

 ちなみに、福山市のHPでは住所確認資料として、健康保険証のほかに運転免許証も候補に入っている。運転免許証は当日も携帯していたが、求められなかった。

 次に、無関係な質問であったという国籍や婚姻手続の有無などは、対象者であるかどうか判断する文脈で質問し、最後には「あなた(Y)は自己負担で」でと結論付けている。

 「韓国籍?朝鮮籍?」との質問、日本人である夫の「籍に入っている」か否か、夫(福山市で発行された国民健康保険を提出していた)の国籍まで聞いたり、「日本人だけど外国人と結婚しているということね」と述べたことからは、外国人は市民であっても無償検査の対象ではないと判断していることが伝わった。当日の医院は混雑しており医師はとても忙しく、これらは雑談という口調でもなかった。

 外国籍市民を市民として同等に扱わなかった点に差別発言の根源があるのに、住民票が福山市にあるか確認しようとした経緯を述べた部分は、「言い訳」として成立していない。

 

3.市側の反応

 会合における発言のほとんどは職員2名のうち上席の方からであった。以下は、その一部である。

・(謝罪文の感想を聞いたところ)言い訳はあるが、行為が差別であると認めている点は評価できる。

・医師からはすぐに謝罪の言葉が出た。事実を認めず悪びれない差別者が多いなか、医師はしっかりと反省している。Yさんもつらいと思うが、医師も自責の念に駆られ夜も眠れないそうだ。

・医師は、今まで対象ではない人に無償で検査を受けさせてしまい、求償するのに苦労した経験があるそうだ。

・当日クリニックは忙しく、思いついたことをポンポンと言ってしまったのだろう。そうであったとしても、彼の行いが差別であることに変わりはないが。

・(今回の件とは別に)人権教育を受けていなかったためにネットで差別を書きこんでしまった人は加害者であり被害者でもあるから啓発していきたい。

・医師のように差別をしてしまったが、しっかりと反省した人を差別と闘う人に変えるのが目標。

・謝罪文の全文をネット上に公開することは辞めていただきたい。

・医師は返事を待っており、放置はしないでほしい。

・Yさんの意思がわからなかったので、話せてよかった。

 

4.市側の対応への所感

 直接事実確認のためクリニックを訪ねてくれて、ありがたかった。

 会合では、話をよく聞いてくれた。

 しかし、医師を思いやる言葉に続き返事を促されたことから、謝罪文が受け入れられるかどうかは他者が決めることではなく、被害者自身が決めるということを理解しているのか、不安に感じた。

 また、市の職員は、医師の反省した様子や評価できる点を話す際に「怒らないでくださいね、あくまで客観的な話をしているのです」と何度も前置きする一方、私が「医師の発言は在日を二級市民として扱っている」と表現したときは、「それは絶対に違う。すぐに謝罪するような人が二級市民と思っているはずがない」と結構大きなトーンで反論され戸惑った。その後、医師が何を「思って」いようが、医師が行った差別的発言の影響に変わりはないことから、発言行為そのものをもって「二級市民としての扱い」と表現したと説明し、理解を得られた。

 

5.結語

 私が市に求めているのは再発防止の一点である。

 率直に差別行為を認める謝罪文であったならば、ここに引用するつもりはなかった。

しかし、謝罪文はのマークをつけたような言い訳や説明が全体の50%以上を占めているうえ、下線②にすら行動と内心が分離していたと捉えられる断り書きがついている。差別する「気持ち」は決してなかったが「行為」が差別になってしまったからそれを謝るというスタンスでは、もはや謝罪と言えるのか。少なくとも再発防止にはつながらないだろう。

また、市の職員の発言について引用することも悩んだ。職員の方たちは事実確認のため医院に赴くなど助けられている面も多いからである。しかし、人権侵害が起きた時、市のような公共機関がいかに対応したかという情報には公共の利益があり、とくに福山市民の読者の方には有用な内容であると思い、率直に書くことにした。

 (以上)

7 comments:

  1. 成澤宗男3:29 pm

    謝罪になっていません。差別しておいて、「差別する気はなかった」と後で弁解するのは差別者の常とう手段です。自分が差別というひどい行為をしたのだという完全な自覚がない限り、被害者が納得するはずもないでしょう。「謝罪文が来たので、市役所に来い」とは何ですか。こんな木っ端役人に、期待できるものはないでしょうね。

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  2. そのとおりです。
    その役所の人は、自分の職務の内容をしっかり把握していないのでは?
    どっち側に立つのではなく、被害者側に立つべきです。なのに、全く加害者側の弁護しているのではありませんか。

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  3. 謝罪というのは、被害者が受けた被害について共感し、謝罪し、そして今後からは2度とそのようなことはない、という内容が中心になるべきです。今の謝罪文はどうみても加害者の立場が中心で、差別の気がなかった、こういう事情があった、とのような言い訳にしか聞こえません。どんな悪行にも絶対にある程度の言い訳はあるはずです。なので謝罪文に言い訳は入りません。また、事実確認はしたものの、医師のいうことをそのまま、しかも権威的な態度で被害者に伝える市役所の対応も、被害者の立場を十分配慮していない行為であり、人種差別に対する公共機関の適切な対応とはどうしても考えられません。絶対に改善すべきです。

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  4. 長谷川澄6:58 pm

    医師の謝罪は、詭弁を弄した言い訳であり、謝罪とは認められません。
    まず、「あなた、税金は払っているの」という質問から、住民票の有無を聞いていると理解できる日本語話者は居ないと思います。
    住民票を辞書やウィキで調べても、税金のことは出てきません。それに、Yさんが社保を持っているのだから、税金を払っていないことなどあり得ないのです。この一言だけでも医師の発言は差別発言で、言い訳の余地はありません。その後に続く質問の全てが、無料抗体検査とは、何の関係もない、一連の差別発言です。それを全面的に認めて、謝罪する以外の謝罪はあり得ません。人権の専門家ではない私にも以上のようなことは、すぐに読み取れます。人権問題を担当している市職員にそれが分からないとしたら、失礼ながら、人権感覚が極端に鈍麻している人が人権を担当しているのではないかと怖くなります。このまやかしの謝罪文をY さんに受け取らせて、一件落着としたい態度があからさまで、この件を他に公表するななどと、市職員が発言する権利のないことを言っていることも大問題です。この医師が以前に対象にならない人を無料で検査した経験があるという言い訳も、そんなことは、医師の本分である、必要な人に必要な医療を適切に行うこととは関係ない些細なことで、勿論、それを避けるために差別的質問をしてよい理由には全くなりません。要するに、詭弁の言い訳は、信憑性にも乏しいのです。

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  5. 久保田竜子7:32 pm

    謝罪になっていないことに同感です。海外のレイシズム研究では「差別するつもりはなかった」と弁解するのは、加害者の常套手段であることが実証的に明らかにされています。被害者の立場に立って真摯に謝罪し、再発防止を誓うことが求められています。また、人権担当の職員が被害者一人(女性)を二人(男性)で役所に呼びつけ謝罪文を渡すのは、権力関係の不均衡の点でも大問題です。もっと適切な場と方法で謝罪を伝えるのが人権擁護の点で不可欠だと思います。

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  6. Kay Hwang2:43 pm

    皆さんが云われるように医師の「謝罪」は言い訳に始終しているだけですね。
    市役所の担当者も五十歩百歩で「何とか穏便に処理」という気持ちが見えみえです。

    当該医師、人格の低劣さも去ることながら専門職としての注意義務にも反していると思います。
    受診資格(住民票)を云うのであれば保険証なり必要なら免許証などで充分なのであり、それは医師の業務でもなく受付のところで確認できる筈。
    また納税の有無は受診・検査などには何の関係もありませんし市役所に問い合わせる例などある訳もありません。
    すべてにわたってここに表れているのは不誠実さそのものですね。

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  7. 渡辺孝8:35 pm

    欺瞞に満ちた謝罪文であり、気分が悪くなりました。Yさんは、この医師と直接会うこともできないほど、精神的苦痛を受けていることを医師はもちろん、市職員さえ理解していません。一連の医師の発言全てが差別意識がないと出ない言葉ばかりで、謝罪文なるものを誰が読んでも自己弁護にしか捉えられないですし、また市職員らは、人権担当としての適格性に欠けていると言わざるを得ません。市職員も自分の身内が医師にこのような対応をされた場合、同じように医師を庇う発言をするのか。被害を受けた人に寄り添う気持ちを持っているのかを今一度、真剣に自問自答してもらいたいと思います。

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