Thursday, August 21, 2025

アラスカでプーチンはBRICSを代表していた:ペペ・エスコバール In Alaska, Putin Represented BRICS: Pepe Escobar

西側からは見えない視点を常に提供し、多極化が進む世界を鋭く観察するジャーナリスト、ペペ・エスコバール氏による、トランプープーチンのアラスカ会談の意義を解説した記事の翻訳です。The Cradle の8月18日の記事です。米国は久々にロシアを対等な国としてリスペクトをもって迎えました。プーチン大統領はロシアだけではなくBRICSを代表してアラスカに来たのです。この重要な点を西側メディアは完全に落としています。「プーチンが停戦を拒否した」かのような西側メディアの喧伝にまどわされてはいけません。ロシア政府とその国民が求めているのは恒久的な平和です。ミンスク1,2合意のように、西側とウクライナが簡単に裏切るようなものは求めてはいません。トランプ大統領もやっとプーチン大統領自身からこの戦争の根本的背景について説明を受け、納得しているようです。

エスコバール氏は同時に、トランプがこの戦争に区切りをつけることは、軍産複合体に裏付けられたディープ・ステートと決別することではなく次の戦争(対中国)に乗り換えることを意味しているかもしれないとの警鐘もならしています。

8月21日のナポリターノ判事とのインタビューも、この記事をわかりやすく嚙み砕く内容となっています。インタビューの訳はここではしませんが、YouTubeの字幕の自動翻訳を使って見てみてください。

 

以下、The Cradle の記事の訳です。

アラスカ会談の核心

プーチンとトランプの会談によってベールが取り払われ明らかになったことがいくつかあった。それは、ワシントンがロシアを同等の大国と見なしていること、ヨーロッパはアメリカの便利な道具に過ぎないことだ。


ペペ・エスコバール

2025年8月18日

アラスカ会談の意味はウクライナ問題だけではない。アラスカ会談は主に、世界の二大核保有国が信頼を再構築し、制御不能な列車のように核衝突へと突き進む高速鉄道にブレーキをかけようとした場だった。

この高レベル会談は、米大統領ドナルド・トランプがロシア大統領ウラジーミル・プーチンと企画したものだ。トランプの気まぐれな性格を考えれば、うまくいくという確実な保証はなかった。しかし、新たなパラダイムが生まれつつある兆しがある。ロシアは事実上、アメリカから対等な大国として認められたのである。これは、少なくとも最も必要とされる場における高次外交が復活したということを意味する。

一方でヨーロッパは、無力な指導者たちを次々とワシントンに派遣し、「皇帝」にひれ伏している。EUの運命は決まった。地政学的無意味という名のゴミ箱行きだ。

モスクワ側が意味深に「アラスカ」を会談場所として提案する前から、トランプとプーチンがすでに個人的に話し合い決定していたことは秘密のままだ。その全内容が漏れることはないだろう。

しかしトランプ自身がアラスカを「10点満点の10」と評価したことは極めて重要だ。

ロシアの派遣団に直接アクセスが可能な情報筋によれば、当初5対5の形式で予定されていた会談は3対3に縮小されたが、シルアノフ財務相なども事前に意見を出していたという。そこから伝わった核心はこうだ:

「米国のウクライナへの直接的な武器供与をすべて停止することが、解決への重要な一歩として(プーチンから)強く提示された。アメリカ側は殺傷兵器の供与を劇的に減らす必要があることを受け入れた。」

その後、ボールはヨーロッパ側に渡る。上記の情報筋は次のように詳述している:

「ウクライナの予算800億ドルのうち、自国で賄えるのはせいぜい200億ドルにも満たない。ところがウクライナ国立銀行は『税収だけで620億ドルを集めている』と主張している。しかしこれは虚構だ。人口は約2,000万に減少し、戦場で100万人を超える取り返しのつかない人的損失を出し、産業は壊滅、支配下にあるのはマイダン前の領土の7割にも満たない。そんな状況でその規模の税収が成り立つはずがない。」

つまりNATO/EU連合には深刻なジレンマがある。「財政支援か軍事支援か、どちらか一方を選べ。両方同時には不可能だ。さもなければEU自体の崩壊が早まるだけだ。」

これと比較すべきは、トランプがTruth Socialに書いた一節だろう:
「ロシアとウクライナの恐ろしい戦争を終わらせる最良の方法は、停戦協定ではなく平和協定に直行することだと全員が判断した。停戦協定は多くの場合維持されない。」

これに元ロシア大統領メドベージェフの言葉を加えれば:

「ロシア大統領は米国大統領に対し、ウクライナ紛争終結の条件を詳細に提示した・・・最も重要なのは、戦闘終結交渉の成果を実現する責任を双方がキエフとヨーロッパに直接負わせたことだ。」

超大国同士の歩み寄りが進んでいると言えるだろう。ただし悪魔は細部に宿る。

アラスカに来ていたのはBRICSでもあった

アラスカでプーチンはロシア連邦だけでなくBRICS全体を代表していた。会談発表前にすでに中国の習近平国家主席と電話会談を行っており、ロシア・中国パートナーシップがこの「新グレート・ゲーム」の地政学的台本を書いているのだ。

さらにBRICS首脳は連続的に電話会談を重ね、ブラジルのルラ大統領の言葉を借りれば「トランプ関税戦争」に対抗する統一的なBRICS戦線を形成していた。トランプ政権2.0の「混乱帝国」は、特に主要5カ国(ロシア・中国・インド・ブラジル・イラン)に対しハイブリッド戦争を仕掛けている。

この意味でプーチンが小さな勝利を収めたことは確かだ。トランプはこう述べたのだ。「ロシア産石油を買う国への関税は今のところ不要だ…今後2~3週間で検討するかもしれないが。」

もちろん不安定さは残るが、米国との高次対話の継続は、ロシアにとってBRICS仲間の利益を直接推進する窓口となる。たとえばエジプトやUAEのように、ユーラシア経済統合へのさらなる参入を、制裁や関税攻撃、そしてそれに伴う蔓延するロシア恐怖症によって阻まれている国々にとっても重要である。

しかし残念ながら、これらはいずれもイランには当てはまらない。ワシントンのイランに対する政策は、その隅々に至るまでシオニスト陣営の鉄の支配下にあるからだ。

トランプとプーチンが長期的な戦略を描いていることは明白だ。トランプはキエフの「小物役者」(注:ゼレンスキーのこと)を排除したいが、旧来型のクーデターや政権交代の手法は使わないつもりだ。彼にとって重要なのは、ロシアの鉱物資源や北極圏開発に関する将来の巨大取引なのだ。

プーチンもまた、いかなる譲歩も許さない国内批判に対応しなければならない。西側メディアが必死に流す『ザポリージャやヘルソンの前線凍結と引き換えにドネツク共和国全域を獲得する』という話は馬鹿げた話であり、それはロシア連邦憲法に反する。

さらに、国家的優先課題であり安全保障問題でもある二つの地域――北極圏と極東――の開発に米国企業をどう関与させるかも課題となる。これらは2週間後、ウラジオストクで開かれる「東方経済フォーラム」で詳細に論じられる予定だ。

結局のところ、「金の流れを追え」だ。米露双方のオリガルヒは一刻も早く利益あるビジネスに戻りたがっている。

敗北した豚に口紅を塗る

プーチンはセルゲイ・ラブロフ外相(あの CCCP ファッションで存在感を放ち、誰もが認める試合のMVP)に支えられながら、やっと 150 分もの時間をかけ、ロシアの「特別軍事作戦(SMO)」の根本的な理由を詳細に説明し、長期的平和の論理を提示することができた。その要点は、ウクライナの中立、ネオナチ民兵や政党の禁止と解体、そして NATO のこれ以上の拡大を認めないことだった。

地政学的に見れば、アラスカからどのような展開があろうとも、少なくともモスクワとワシントンが戦略的な時間的余地を確保したという事実は否定できない。それは両大国の勢力圏を互いに尊重する新たな試みにすらつながるかもしれない。

だからこそ、大西洋主義の陣営――ヨーロッパの古い財閥から成り上がりの成金政治家に至るまで――がパニックに陥っているのも不思議ではない。ウクライナは「ユーロゴミ」政治家たちにとって巨大なマネーロンダリング装置だからだ。カフカ的な(注:不条理な) EU 機構は、すでに加盟国や EU 納税者を破産させている。しかしそれはトランプの問題ではない。

「グローバル・マジョリティ」と呼ばれる世界の大多数の地域では、アラスカ会談は大西洋主義のほころびを、まざまざと示した。つまり、米国が望んでいるのは従順なヨーロッパであり、緊張戦略の下に従属させることだ。そうでなければ EU は軍事的増強に踏み切れず、持ってもいない金で法外に高いアメリカ製兵器を買うことはできない。

同時に、米国オリガルヒの私的な強欲がロシア・ビジネスに向けられているにもかかわらず、ワシントンの傀儡支配者たちが本当に望んでいるのは、ユーラシア統合の破壊であり、その延長として BRICS や SCO (上海協力機構)といった新しい多極的世界秩序を構想するあらゆる多国間組織の解体である。

もちろん、NATO の「降伏」など――戦略的に全面的敗北を喫しつつある今でさえ――受け入れがたいタブーだ。トランプは、せいぜい“豚に口紅”を塗るように、派手な演出で取り繕いながら、本来ならディープ・ステートからの脱却戦略になり得るものを、結局は次なる「永遠の戦争」へと仕向ける形で売り出そうとしている

プーチンも、ロシア安全保障会議も、BRICS も、そして「グローバル・マジョリティ」も、その点に幻想は抱いていない。


ペペ・エスコバールは、The Cradle のコラムニストであり、Asia Times の編集主幹を務めるとともに、ユーラシアを中心とした独立系地政学アナリストである。1980年代半ば以降、彼はロンドン、パリ、ミラノ、ロサンゼルス、シンガポール、バンコクで特派員として生活し、活動してきた。著書は数え切れないほどに上り、最新作は『Raging Twenties』である。

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