Thursday, August 07, 2025

【原爆投下80年:日本人の植民地主義を問う】広島で開催された「朝鮮半島出身原爆被害者を追悼する会」での、広島被団協理事長による心ない言葉 Japanese Colonialism: Reflecting on a Japanese Hibakusha's Remark at the Memorial for Korean Atomic-Bomb Victims in Hiroshima

被爆後80年、広島県朝鮮人被爆者協議会による「朝鮮半島出身原爆被害者を追悼する会」が8月2日、広島で初めて開催されました。朝鮮新報の報道「被爆80年、広島で朝鮮人被爆者追悼会を初開催」をはじめ、マスコミ各社も報道しました。(共同、朝日、毎日、中国など)

8月2日広島で開催された「朝鮮半島出身原爆被害者を追悼する会」(Quena Kim Hrs さん提供)

朝鮮新報の報道を一部抜粋します:

広島県朝鮮人被爆者協議会(朝被協)が主催する「朝鮮半島出身原爆被害者を追悼する会」が2日、広島市留学生会館で行われた。朝被協主催の追悼会は初。ここに総聯広島県本部の呂世珍委員長、朝鮮人強制連行真相調査団の陳吉相事務局長をはじめとする同胞、日本市民など110余人が参加した。

朝被協の推計によると、原爆が投下された1945年8月6日当時、広島市内にはおよそ5万3千人の朝鮮人が居住しており、3万人が命を落とした。かれらは日本の植民地支配下の朝鮮から、生活の糧を求めて日本に渡ってきたか強制連行された人々だった。しかし、県内にはすべての朝鮮半島出身原爆被害者を追悼する碑は存在しない。平和記念公園内(広島市)には「韓国人原爆犠牲者慰霊碑」が存在するが、朝被協と総聯県本部はすべての朝鮮人被爆者を追悼する碑を建立し、そこで追悼会を開くことを目指してきた。しかし、未だ実現には至っていない。被爆者が高齢化するなかで、「これ以上先延ばしにできない」(朝被協・金鎮湖会長)という判断の下、被爆80年を迎える今年、初となる追悼集会の開催に至った。

★★★

残念なことに、このような意味深い朝鮮人原爆被害者追悼の会に招待された広島被団協(広島県原爆被害者団体協議会)の理事長による挨拶は、「心ない」としかいいようのないものでした。

これについて、広島にお住まいのQuena Kim Hrs さんがFacebook で公表したスライドショーここに紹介します。このブログ運営者、乗松聡子のコメントも使ってくれました。URLは: https://www.facebook.com/watch/?v=757526723330814 

Facebookをやっていない人は見づらいかもしれないので Quena さんから提供された動画をYouTube にアップしてあります。ご覧ください。音源からスタートします。
私はこの、広島被団協を代表して挨拶をした方だけを批判するつもりはありません。これは、「ヒロシマ・ナガサキ」や日本全体の平和運動を覆っている自国中心主義、被害者史観、植民地主義を象徴する事件だと思います。関係者皆さんに考えてほしいです。日本人の植民地主義は日本人が指摘しなければいけないと思います。

Facebook では以下の公開リンクでいろいろな人がコメントしたりシェアしたりしています。


Xでもここに公開しており、コメントや引用投稿がついています。

「被爆80年」の広島と長崎。当時広島にいた朝鮮人は、現在の韓国のハプチョン出身の人が多くいました。2019年にハプチョンに行きました。原爆被害を展示した資料館もあります。そこで被爆者、被爆二世の人たちから聞いた言葉の中でも忘れられないのは「自分たちは植民地支配で日本人から犬のように扱われた上に米国の原爆で被爆した。被爆者を考えるとき、まず朝鮮人被爆者を考えてほしい」という言葉です。その通りと思います。残念ながらこれまでの日本人の原爆投下についての記憶は「日本人ファースト」としか言い様がありません。これは過去の自分もそうであったと、自身反省していることです。下方に参考資料として示した記事で、ハプチョン訪問などについて詳しく書いています。

参考投稿




また、長崎人権平和資料館(注:2023年11月改名後の資料館の名前です)の館長であった高實康稔さん(故人)は毎年、8月9日早朝に爆心地公園にある朝鮮人被爆者追悼碑の前で開催される「朝鮮人原爆被爆者追悼早朝集会」で読み上げる「メッセージ」で、必ず、朝鮮民主主義人民共和国の被爆者への支援、日朝国交回復を訴えていました。生前最後の「メッセージ」が2016年でした。

BBCでも今年、特集が組まれていました。
【原爆投下80年】傷を負い、屈辱を受け、忘れられ……広島で被爆した朝鮮半島出身者たち

最後に、あちこちで引用していますが、2019年に釜山の国立日帝国強制動員歴史館を訪問したときに見た、広島・長崎原爆投下についてのパネルの文言(日本語訳)を紹介して終わります。この言葉を心に刻んでいます。
「1945年8月6日午前8時15分広島市、8月9日午前11時2分長崎市に、人類に向けた最初の原子力爆弾が3日間隔で投下された。その結果、死傷者が数十万名に至ったが、そのなかには日帝の植民地下に故郷を離れてきた数多くの朝鮮人農民と日本の軍需工場に動員された朝鮮人徴用工もあり、日本軍の捕虜として送られた連合軍の兵士もいた。朝鮮人原爆被害者は概ね広島5万人、長崎2万人に至ったが、そのなかで約4万人は1945年を越すことなく死亡し、残りの3万名中23000余名が帰還していたことが推測される。全体の原爆被害者の約1/10に該当する朝鮮人の死亡は57.1%であり、全体の33.7%に比して非常に高い。日本は二つの都市における惨状を大々的に広報し、反戦平和を全世界に訴えている。反戦平和は、人類共通の普遍的価値である。しかし、誰が言うかによりこの意味合いはかなり変わる。日本は反戦平和を叫ぶ前に戦争加害に対する痛切な反省と共にその事に対する責任を負う姿勢を見せなければならない。」

乗松聡子 @PeacePhilosophy

Tuesday, August 05, 2025

タイとカンボジア紛争の背景にある米国の関与:ブライアン・バーレティック氏の解説 Brian Berletic: U.S. Involvement in the Thailand-Cambodia Conflict (Japanese Translation)

このサイトでも紹介したことがある軍事・国際情勢アナリスト、ブライアン・バーレティック氏はタイ在住で、東南アジア諸国にたいする米国の内政介入に特に詳しい人です。今回のカンボジアとタイの衝突についての歴史的・政治的背景を解説している動画が大変役に立つものと思い、AIの力を借りてここに翻訳しました。これは、やはりこのサイトで紹介したことがあるグレン・ディーセン氏のチャネルで7月28日に公開された動画です。タイとカンボジアはマレーシアの仲介で29日に停戦協定が発効しました。8月4日の報道によると、「マレーシアは4日、タイとカンボジアの国防当局者をクアラルンプールに招き、停戦発効後も緊張状態が続く両国の国境問題を協議した」とあります。7日までの会議で、米国や中国の代表も最終日に加わる見通しであると。死者数についてはタイ国軍によるとこれまでタイ側で32人、カンボジア政府によるとカンボジアは少なくとも13人、とあります。引き続き注視が必要です。
(注:話し言葉で、冗長な部分などは割愛してあります。太字強調はブログ運営者によるものです。翻訳はアップ後修正することがあります。)

ブライアン・バーレティック氏の YouTube チャネルはここです。Xアカウントはここ。
 
ディーセン:ブライアン・バーレティックさんにご出演いただいています。元アメリカ海兵隊員であり、地政学アナリスト、そして動画チャンネル「The New Atlas」のホストでもあります。番組へようこそ、おかえりなさい。現在タイにお住まいですが、タイとカンボジアの間の国境紛争について、私自身も含め多くの人が十分に理解できていないのが現状です。この地域には二国間の緊張、または紛争がありますが、これにはよくあるような大国の関心があり、そうした大国はしばしばこのような地元の紛争を自国の利益のために利用することがあります。まず、この紛争の根本的な原因について説明してくれますか?この紛争は寺院を巡るものとして語られることが多いですが、どうなのでしょう?

バーレティック:これは国境を巡る争いです。その根源はフランスの植民地主義にあります。フランスは、世界中でイギリスと同様に、将来的な分断や紛争を引き起こすような「時限爆弾」を無責任にもしかけ、あるいは意図的に地図に描いて植民地から撤退しました。そして、タイとカンボジアの国境には係争地域が存在します。そこには古代の寺院があり、それ自体が争われている上に、寺院周辺の領土も争われています。これは、この問題が長年にわたり国際機関に持ち込まれてきたためです。西側諸国の機関が国際機関を装って関与してきました。彼らの判断は、国境紛争という未解決の「時限爆弾」を維持するため、意図的に曖昧にされてきました。そのため、寺院はカンボジアのものと認識され、寺院の周辺地域はタイのものと認識されるという状態になっています。このことから、これがいかに意図的に仕組まれ、放置されてきたかが分かります。本気で問題を解決しようとしている人間であれば、このような状況を残すことはなかったはずです。

しかしながら、今起きている紛争の理由はこれではありません。この問題は、1900年代初頭から存在する国境問題です。そして、特に21世紀に注目すべきですが、長い間、この地域は対立の原因ではありませんでした。この地域では、紛争よりも平和がはるかに多く保たれてきました。紛争が発生するのは、非常に特定の時期に限られます。それは、アメリカがタイに親米政権を樹立しようとしているとき、あるいはアメリカが支援する政権が排除されようとしているときに限って起こるようです。この国境問題に加えて、タイ南部における非常に醜い分離主義暴力、そして全米民主主義基金(NED)によって資金提供された団体による国内からの圧力があります。こうした要因が国内に圧力を生み出しています。アメリカは、タイに思い通りの対応を取らせたいとき、こうしたさまざまな圧力ポイントを使い始めます。

ここを理解しなければなりません。アメリカが完全に支配している国も存在します。たとえばウクライナは、アメリカの権力の延長そのものです。一方で、アメリカの影響力がほとんど及ばない国もあります。それはロシアや中国のような国です。そして、その間に位置する国々があります。アメリカがある程度の影響力を持つものの、国内には自国の主権を守ろうとする制度や政党、特定の利害関係者が存在している国です。アメリカの影響が入り込んでくることに対し、それを内側から押し返しているのです。タイは、まさにそのような国の一つです。軍、王室、そしてタイとその主権を守ろうとする特定の企業や利害関係者が存在しています。

アメリカは、それに対抗するため、政治的な野党グループや政党を育ててきました。現在、アメリカが支援しているのは、2人の億万長者が率いる2つの大きな政党です。タクシン・チナワット氏とタナトーン・ジュンルンルアンキット氏です。この2人の億万長者を政権に就け、タイ全体を支配させ、中国との非常に親密で成長している関係を断ち切らせようとしています。そして、フィリピンを中国に対する破壊の槌にしたように、ウクライナをロシアに対する破壊の槌にしたように、タイを中国に対する破壊の槌に変えようとしているのです。

ここを理解しなければいけません。単純に「カンボジアは中国の武器を使っているから中国の支援を受けている」「タイはF-16を使っているからアメリカの支援を受けている」というような構図ではありません。実際のところ、現時点では両国とも中国と親密な関係を持っています。両国とも中国から武器を購入しており、親密な関係にあります。ただし、タイと中国の関係はアメリカとの関係よりもはるかに大きく、また、カンボジアと中国の関係よりもはるかに深いものです。

ディーセン: それでは、タイの内部の仕組みとはどのようなものなのでしょうか?アメリカの影響力はどれほど強いのですか?それは主にNGOを通じたものなのか、それとも直接的なビジネス上の利益や、特定の政治指導者への資金提供などによるものなのでしょうか?影響力の源はどこにあるのでしょうか?

バーレティック: はい、それは「全米民主主義基金(NED)」および「USAID(米国国際開発庁)」によるものです。これらは、誤解されがちですが、資金が打ち切られたり解体されたりしたということはなく、いまだに台湾でも活動を続けています。彼らはアメリカが支援する政党に対して、政治的な支持ネットワークを構築しています。つまり、NEDを通じてアメリカはメディアネットワークを作り上げましたし、教育システムにもNEDの資金を通じて介入しています。そのため、メディアと教育に対して非常に強い影響力を持っているのです。そして、政治的な野党グループにも何百万ドルという資金を注いでいます。

タクシン・チナワット氏は、現在のタイの連立政権における事実上の与党の指導者である億万長者であり、また、タイ議会で野党として大きな勢力を持つタナトーン・ジュンルンルアンキット氏も関わっています。ただ、「事実上の」と申し上げたのは、タイ軍がここ数年、アメリカの傀儡となっているこれらの人物を排除しようとしてきたからです。2006年にはタクシン氏を追放するクーデターがありましたし、2014年には彼の妹を追放するためのもう一つのクーデターがありました。今では彼の娘が首相を務めていますが、彼自身がすべてを違法に運営していることは明白です。西側メディアはあまりこの点には触れません。

アメリカは情報空間および政治空間を通じて介入を行っているのです。タイ軍は独立した機関であり、タイ全体に対する完全な政治支配に対する抑制と均衡(チェック・アンド・バランス)の役割を果たしています。そのため、越えてはならない一線が存在します。そして、それが現在の国境問題が激化した原因なのです。

タクシン・チナワット氏、その娘は、タイ国民が同意しておらず議論する機会すら与えられていない領土に関する譲歩を、カンボジア政府に対し行おうとしていました。タイ軍はそのような領土の譲歩を受け入れるつもりはまったくありませんでした。その結果、かれらはカンボジアと共謀して、タイ軍が紛争を戦わざるを得ないような状況に追い込んだのです。これは戦う必要のない無意味な紛争です。

2008年ー2011年にも同様の状況がありました。タイの、いわゆる「ディープ・ステート」が、このアメリカ支援による政権を排除しようとした時期です。そして突然、暴力が激化しました。これはタクシン・チナワット氏とカンボジア政府の間で調整されたものです。フン・セン氏は現在カンボジア上院の議長であり、その息子がカンボジアの首相を務めています。彼らはタクシン・チナワット氏および彼の政治組織と親しい家族ぐるみの友人関係であり、政治的同盟者でもあります。

一部では、両者の間に亀裂があるとの主張もありますが、2008年および2011年には非常に親密な関係にあり、実際に暴力も発生しました。いずれにせよ、このタイミングは非常に疑わしく、アメリカが他国で使っている戦略と非常によく似たものをタイにも適用しているように見えます。

私は以前、「ランド研究所」が発表した“Extending Russia(ロシアへの圧力拡大)”という政策文書について話したことがあります。そこでは、地政学的、経済的、社会的、あらゆる面でロシア周辺に圧力をかける手段が挙げられていました。彼らは同じことをタイのような他国にも行っているのです。ただ、それがアメリカとロシアの対立ほど広く報道されていないだけなのです。

ディーセン:さて、アメリカと中国の主要な地政学的、あるいは地経済的な競争関係を考えたとき、アメリカがこの文脈でタイを必要とする主な目的とは何でしょうか?

バーレティック:アメリカが特別にタイだけを必要としているというわけではありません。アメリカは東南アジア全体を必要としているのです。それは、ヨーロッパをロシアに対抗するための「道具」に変えたのと同じように、東南アジアを中国に対抗する「道具」にしようとしているのです。フィリピンでは、その目的をすでに達成しています。もし標的となる国、たとえばタイの西にあるミャンマーのような国を政治的に掌握できない場合には、暴力的な混乱を引き起こして、その国をほぼ機能不全の状態にし、中国と貿易したり投資を受けたり、「一帯一路」構想のインフラ整備に参加したりするような、建設的なパートナーとして使えないようにするのです。これがアメリカが東南アジア全体に対して、そしてここタイに対しても採用している戦略です。

ディーセン:ところで、これまでに判明している被害の規模や死傷者について、どのような情報がありますか? どちらか一方が優勢になっているのでしょうか? タイの方が軍事的にはある程度優位に見えますよね。少なくとも軍隊の規模や技術的な――つまり装備面で――タイの方が強そうに見えますが、現地の状況は実際どうなっていて、この衝突が長期化する可能性はどれくらいあるのでしょうか。

バーレティック:歴史的に見て、こうした衝突は長く続くことはあまりありません。ただ、今回の件はかなり深刻で、激しさも増しています。ご存知のとおり、タイはカンボジアよりもずっと大きな国です。人口はカンボジアの4倍、軍隊の規模はおよそ3倍で、戦力的には3〜5倍強いです。GDPはカンボジアの12倍です。タイには約7,000万人の人々が住んでおり、カンボジアには約1,700万人が住んでいます。ですから、数の上ではタイが圧倒的に有利です。軍事力を数字で見れば、タイに大きく傾いていると言えます。とはいえ、タイ軍としては事態をエスカレートさせたくないのです。そもそも、この紛争には半ば巻き込まれる形で関与させられましたし、カンボジアに対しても非常に抑制的に対応しています。

ただし、民間人の死傷者はタイ側の方が多いです。というのも、カンボジアが使用しているのはBM21と呼ばれる多連装ロケットシステムで、いわゆるグラッド・ロケットです。これらは誘導機能を持たない無誘導ロケットで、広範囲に被害を与える兵器です。つまり、特定の標的に正確に当てることはできず、あるエリアを狙って撃ち込むことで、そのエリア内のすべてが破壊され、人々が傷つき、命を落とすという性質のものです。カンボジアはこれを主に使用しており、タイ側はそれに対して、ロケット発射機を狙った反撃(カウンターバッテリー攻撃)を行っています。

国境沿いでは陣地戦が展開されており、両軍とも塹壕を築いて戦っています。そのため、タイ側の民間人の死傷者の多くはこうした戦闘によって出ており、一方でカンボジア側の軍人の死傷者は、タイが行う砲撃や空爆によってロケット発射機を狙った攻撃によるものです。そして再び言いますが、カンボジア側が無差別にロケットを撃ち込んでいるため、それが一般市民の家を直撃しています。7イレブンやガソリンスタンド、さらには病院2カ所がこのロケット攻撃で甚大な被害を受けている映像も確認されています。10万人以上の人々が避難を余儀なくされ、実質的には難民キャンプへ移動しています。

具体的な数字で言うと、私が最後に確認した時点では、タイ側で死亡した民間人は14人でした。カンボジア側は死者数について公式に発表していませんが、軍人の損失については報告しており、その中には過去数日間のうちに死亡した将官も含まれています。ですので、民間人の死傷者については、カンボジアの無差別なロケット攻撃によってタイ側が大きく偏って多くなっているようです。軍人の死傷者に関してはカンボジア側の方が多いと見られます。実際の戦闘や領土の奪い合いについては、現在のところ膠着状態にあるように見えます。

ディーセン:そうですね。あなたが再投稿していたBBCの報道についての投稿ですが、カンボジアへの空爆を取り上げながら、タイへの攻撃の写真を添えていましたよね。ちょっと興味深い印象操作だと思いました。でも、アメリカ以外の欧米諸国はこの紛争にどのような立場を取っているのでしょうか?アメリカと同じくらい深く関与しているのでしょうか?

バーレティック:この段階では、それを判断するのは難しいですね。ご存じの通り、西側メディアはよく情報操作を行います。たとえば、「アラブの春」の初期にも、多くの西側メディアはそれ以前に国務省と協力して抗議活動の準備を進めていたにもかかわらず、いざ抗議が始まると何も知らなかったかのように装っていました。そういう例はたくさんあります。

今回の件でも、西側メディア全体で「タイはアメリカの支援を受けており、カンボジアは中国の支援を受けている」とするような物語(ナラティブ)が形成されつつあるのを感じます。中には「カンボジアが先に攻撃した」と報道しているところもあり、それによってこの攻撃が中国の支援によるものだと示唆しようとしているのです。そしてさらに、タイの人口密集地域への無差別ロケット攻撃も利用されて、中国が関与しているという印象を強めようとしているようです。

つまり、混乱を招こうとしているわけです。彼らは状況を整理して説明することはしていません。広い視野で全体像を捉えようとしていません。タイ国内に存在する軍と文民政府の対立構造にも触れていません。アメリカがこの文民政府、つまりある大富豪とその政治勢力を、21世紀の初めからずっと支援してきたという事実にも言及しません。彼(タクシン・チナワット)は2001年にはすでに首相を務めていて、当時からアメリカは全面的に彼を支持していました。

ですから、状況は非常に混沌としており、人々が理解するのは難しいと思います。だからこそ私は、たとえ情報量が多くても、こうした背景を投稿して共有しているのです。人々にはこの背景を理解してもらう必要があります。

これは、たとえばウクライナのように、アメリカの代理勢力とロシアとの明確な代理戦争になっているケースよりも、もう少し複雑です。そして目的も少し曖昧でわかりにくい。私が思うに、アメリカはただ単に「対立を生み出したい」だけなのです。そうすればこの地域全体が停滞します。

今はアジア全体が、中国とともに協力しながら一緒に成長しつつある時期です。私たちは、米国務省の「国務省歴史部門(Office of the Historian)」のウェブサイトで、無数の政策文書を読むことができますが、そこには文字通り「アジアを貧しいままに保つことが我々の目標だ」と書かれているのです。では、それをどうやって実現するのでしょうか?内部に介入し、国の内部を分断し、隣国との対立を煽る――まさにそれが今起きていることであり、アメリカがこの地域で使っている戦略なのです。

ディーセン:それで、これはタイでは実際うまくいっているのでしょうか?タイの人々はこれをどう見ているのでしょうか?もちろん、全員を代表して語るのは難しいとは思いますが、メディアではどのように描かれているのでしょうか?アメリカが言うように「中国が支援するカンボジア」という構図で伝えられ、それが中国に対する否定的な感情をあおっているのでしょうか?それとも、アメリカが黒幕だと見られているのでしょうか?この紛争は主にカンボジアとタイの二国間の争いとして見られているのでしょうか?それとも自国の政治的指導者の欠陥として見ているのでしょうか?タイ側ではこの問題はどう受け止められているのですか?

バーレティック:良い質問ですね。私は、この紛争は二国間の争いとして見られていて、タイ国民とカンボジア国民の間に分断を生んでいると思います。それは両国においてそうです。私は両国のメディアをチェックしていますが、そこでは互いの国に対する敵意を煽るような意図的な報道が見受けられます。これは、中国にとっても、アジア全体にとっても地域の進展を妨げるものであり、こうした紛争の意図された目的の一つです。

タイには、現在の政府がアメリカに支援されていることを知っている人が多数います。実際、最近そのアメリカ支援の現政府に対して抗議デモが起きました。多くの人がニュースを見て「これはNED(全米民主主義基金)に支援された抗議なのか?」と思ったかもしれませんが、そうではなく、NEDに支援された政党が政権を握っていることに反対する人々によるデモなのです。

タイではNEDの支援による「カラー革命」が起きてきました。そして、それに対するタイ側の「カウンター・カラー革命」も存在します。ですから、抗議活動を見るときには、誰が誰なのか、何が起きているのかをきちんと整理することがとても重要です。

この問題にはもっと深い背景があることを理解している人は、タイ国内に相当数存在します。もちろん、カンボジア政府も今回の事態を引き起こすうえで役割を果たしたのは確かですが、タイの現政権もそれに加担していると見ているのです。だから、国民がこの政府を一丸となって支持しているわけではありません。

いずれにせよ、たとえば7-イレブンでタイ人が焼き殺されるような出来事や、ただ人生を始めようとしていた若者たちが犠牲になるような無意味で回避可能だったはずの紛争を目の当たりにすれば、人々が激怒するのも当然です。

ディーセン:さて、現在は停戦協議が行われており、マレーシアで会合が開かれています。これはおそらく、マレーシアがASEANの議長国を務めているためだと思われます。ただ、どちらの側にもこの戦争を長期化させることで得るものがあまりなさそうに見える中で、この協議はどの程度前に進んでいるのでしょうか?

バーレティック:そうですね。最終的には、タイ軍が「非公式な拒否権」を持っていると思います。つまり、もし軍が「軍事的に何かを達成する必要がある」と感じていれば、戦闘を継続するでしょう。そして軍はこの文民政府とは対立しています。そもそもこの文民政府には正統性がありません。というのも、これは外国勢力によって構築され、権力の座に据えられた政権だからです。

その文民政府の代表者たちがマレーシアに出席しています。あなたの言う通り、それはマレーシアがASEANの議長国であるためです。中国の代表者も参加していますが、アメリカの代表者もいます。そして、人々は疑問に思うべきです。「なぜ中国がいるのか?」それは当然です。中国はこの地域の国ですから。しかし、「なぜアメリカがそこにいるのか?」人々はなぜアメリカがこの協議に招かれ、席を得ているのかを自問すべきです。それは非常に怪しく、そして非常に意味深いことです。

私は、これまでと同様に、この問題は最終的には二国間で解決されると思います。しかし、それはそもそもこの対立を引き起こした目的が何であったかにかかっています。もしアメリカや、彼らが権力に据えた傀儡政権、あるいはカンボジアのフン・センと結んだ何らかの取引の目的がまだ達成されていないとすれば、マレーシアでの協議がどうなろうと、事態は続く可能性があります。ですので、私たちはこの件について非常に注意深く見守る必要があります。

ディーセン:なるほど。トランプ氏もこの件に関与しており、両国に停戦を受け入れるよう呼びかけていますね。ただ、実際に何が起きているのかはいつも少し不透明です。彼はインドとパキスタンの紛争を止めたと自画自賛していますが、私がインドやパキスタンから聞いた話では、彼はまったく関与していなかったようです。ですから、すべては話半分に聞くべきかもしれませんが、それでもアメリカの現在の立場はどうなのでしょうか?アメリカはこの対立を緩和しようとしているのでしょうか?あるいは、実際にこの紛争を終わらせるために何をしているのでしょうか?

バーレティック:ええ、アメリカが支援している政党を見てみると、現在与党となっている政党[注:プアタイ党]と野党になっている政党[注:人民党]の2つがあります。彼らはこれらを意図的に分けて「グッドコップ・バッドコップ(良い警官・悪い警官)」戦術のように使っており、現在政権にある方はより穏健で、タイの国益と歩調を合わせようとする姿勢を見せています。もう一方の政党は軍と王室の打倒を望んでいます。そうしてアメリカは自分たちのアジェンダを進めようとしているのです。

野党側のアメリカが支援する政党は「ピープルズ・パーティー(人民党)」と呼ばれています。トランプ大統領が発言をした途端、彼らもすぐにその発言を繰り返し、「この紛争は終わらせるべきだ。アメリカとの貿易関係を守らなければならない」と主張しました。そして、関税交渉を急いで進めたいと考えています。

しかし、私たちが他国との事例で見てきたように、アメリカが提示する関税交渉というのは実質的には「恐喝」です。一方的な条件で、アメリカだけが恩恵を受け、相手国には何の利益もありません。アメリカの製品に対する関税はそのままで、相手国はあらゆる貿易障壁を撤廃しなければならず、アメリカからの輸入品に対して自国の基準すら適用できないのです。

タイに対して今言われているのは、「この紛争を早く片付けて、その貿易交渉を進めろ」ということです。つまり、意図的かどうかは別として、この紛争はその貿易交渉から国民の関心をそらす「目くらまし」として機能しています。そして、この関税交渉は、紛争が起きているのと同時進行で強引に進められており、正当な議論や抗議の機会すら与えられていないのです。

ディーセン:それで、中国の役割はどうなのでしょうか?マレーシアでの和平協議の写真を見ていて面白いと思ったのは、アメリカと中国が後ろの席に並んで座っていたことです。ですが、この一連の出来事において中国はどのような立場にあるのでしょうか?というのも、中国はブロック政治のような野心を持っていないわけですよね。では、彼らはここでどのような貢献をしているのでしょうか?

バーレティック:断定するのは難しいですが、中国はいつもどおりの立場を取っています。どちらか一方に肩入れすることはなく、両国に対して「戦闘をやめて和解するように」と呼びかけています。中国の基本的なメッセージは、「二国間で解決すべきだ」というものです。西側諸国が支配するような国際機関や組織に頼ろうとはしていません。

このような協議の場に中国が出席しているのを見るのは当然のことです。なぜなら、これはアジアで起きている問題であり、中国はアジア最大の、そして最も影響力のある国だからです。しかも、この問題は彼らに直接影響します。なぜなら中国はタイとカンボジアの両国と貿易を行っており、タイでは「一帯一路」のインフラ整備を進めており、近年はカンボジアとも関係を強化してきたからです。

このような衝突は、そうした経済活動にとって障害となります。ですから中国の関心は、この対立を解決し、平和と安定を取り戻すことにあります。そうすれば、すべての国が協力して繁栄を追求するという本来の道に戻ることができるのです。

ディーセン:ところで、中国はタイで何を失うリスクがあるのでしょうか?今のところ中国の一帯一路全体の中で、タイはどれほど重要な位置を占めているのでしょうか?

バーレティック:まずタイと中国の関係について全体像をお伝えします。多くの人がこの関係について誤解しています。中国はタイにとって最大の輸出入相手国であり、年によっては最大の投資国でもあります。また、タイを訪れる観光客の中で最も多いのは中国人で、西側諸国すべてを合わせた数よりも多いのです。その次に多いのもアジア諸国からの観光客です。

ですから、タイと中国は二国間関係だけでなく、地域の安定にも強い関心を持っています。というのも、両国の経済はそれに大きく依存しているからです。また、高速鉄道の建設も進められており、数年前からすでに建設が始まっています。バンコクには新しい「グランド・セントラル駅」が建設され、これはその高速鉄道の第一段階の終着駅となります。この路線は、すでに運行しているラオスの高速鉄道と接続される予定です。ラオスはタイの北の隣国であり、これが完成すればバンコクからラオス経由で中国の高速鉄道網とつながることになります。

F-16戦闘機を見て、「アメリカ製の兵器を使っているじゃないか」と言う人もいますが、ここ10年でタイは中国製の兵器や軍需品をはるかに多く購入しており、中国と共同で兵器の開発まで行っています。これは通常、アメリカが他国とは行わないことです。

タイは、旧式のアメリカ製装備を中国製の新しい装備に置き換えてきました。たとえば主力戦車、歩兵戦闘車、装甲兵員輸送車、防空システム、艦船、そして高速鉄道などです。また、タイにとって初の現代型ディーゼル電気潜水艦となる予定だった潜水艦契約もありました。

しかし、これらすべてに反対しているのが、アメリカに支援された政党です。タクシン・チナワット氏に支援された政党と、もう一人の大富豪であるタナトーン・ジュンルンルアンキット氏の政党です。

特に後者のタナトーン氏は、タイ・中国間の高速鉄道計画に公然と反対しています。彼はこのプロジェクトは中止すべきだと発言し、存在しない「ハイパーループ」構想を提唱しています。彼は明確に「タイは中国に近づきすぎている。もっとアメリカ、ヨーロッパ、日本とバランスを取るべきだ」と主張しています。しかし、それらの国々は中国が提供しているような機会にまったく匹敵するものを持っていません。

ですから、タイと中国の関係は非常に大きく、今も拡大しています。そして現在のタイとアメリカの関係よりもはるかに深く、重要なものです。カンボジアと中国の関係と比べても、タイの方が人口やGDP、政治体制の観点からずっと大きな意味を持っています。カンボジアは一つの家族が国を支配しており、抑制と均衡(チェック・アンド・バランス)の仕組みも存在しません。その結果が国の様子にも如実に表れています。

ですから、これは現在、21世紀の現実に即したタイと中国の関係を正しく理解するための概要になると思います。多くの人がまだ、50年前のベトナム戦争の頃にタイがアメリカ軍を駐留させていた時代の認識のまま止まっているのです。

ディーセン:これが最後の質問ですが、これまでの経緯や関係する当事者たち、過去の流れを踏まえて、今後の展開はどうなると見ていますか?比較的早く収束すると思われますか?それとも、タイを中国から切り離すというような目標がある程度達成される可能性はあると思いますか?

バーレティック:これもやはり簡単には言えません。というのも、これはアメリカの戦略の一部として、どのような目的を持って動いているのかに大きく左右されるからです。

通常、タイ側はアメリカの圧力をある程度理解しており、軍としても平和と安定、そして現状に近い形へと戻すために、何らかの譲歩をせざるを得なくなると思います。そして、軍もこうした譲歩は「長期的に見れば時間はタイや東南アジア、ひいては中国を含むアジア全体の味方である」という考えのもとで行うと思います。

短期的にはアメリカに譲歩したとしても、長期的には状況が今の方向性で進めば、それらを逆転させることができると考えているのです。

もしこの対立が続くとすれば、それはアメリカがそれを望んでいるからか、あるいはアメリカがカンボジアを説得した結果かもしれません。というのも、カンボジアはこの作戦を開始する前に数週間をかけて準備していたからです。

今回の件は、過去の対立よりもずっと深刻です。どこまでエスカレートするかは予測が難しい状況です。多くの点で、これは2008年にジョージアがロシアの平和維持部隊を攻撃し、それを利用してアメリカがロシアに圧力をかけ不安定化させようとした構図に似ています。

願わくば、これが数日中に終わることを望んでいます。しかし、今日の地政学的状況は前例がなく、世界がアメリカ主導の体制から離れていく中であるため、今後どうなるかは引き続き注視していかなければなりません。

(以上)

参考投稿

「全米民主主義基金(NED)のファクトシート」

「全米民主主義基金(NED)とは何か、そして何を行っているのか」


Sunday, August 03, 2025

落合栄一郎さん講演:「ヒロシマ・ナガサキ」80年:「核時代」を語る Dr. Eiichiro Ochiai Explains Why Nuclear Power Won't Solve the Climate Problem: 80 Years Since Hiroshima and Nagasaki -- Reflecting on the Nuclear Age

8月27日追記:以下の講演の録画をアップします。多くの方に広めてください。

  

 

カナダ9条の会主催・Peace Philosophy Centre 共催
第二次世界大戦終結80年 ハイブリッド講座(Zoom&会場)


「ヒロシマ・ナガサキ」80年:「核時代」を語る

講師:落合栄一郎
(ジュニアータカレッジ名誉教授) 

司会:乗松聡子(カナダ9条の会)


開催日:
 日本時間 8月23日(土)午前10時―12時
(カナダでは8月22日(金)バンクーバー時間午後6時―8時;
トロント・モントリオール時間午後9-11時)


申し込み:以下のURLより「登録」をお願いします。
https://us02web.zoom.us/meeting/register/lqXSIvgnSliz_WjdP-63Bg

第二次世界大戦終結80年の夏。当時、アジア太平洋全域に拡張していた大日本帝国ファシズムに対する勝利が明白であったときに米国は敢えて原爆を使用し、民間人の大量殺戮を行いました。あれから80年。人類は、核兵器競争と核実験、「原発」つまり核発電により世界中に「ヒバクシャ」が大量生産される「核時代」にあります。化学者の立場から長年「核と人間は共存できない」と訴えてきた落合栄一郎氏を迎え、「核時代」をともに考えましょう。とくに、「原発こそ、気候危機を乗り越えるのに有用だ」という観念を、問題として取り上げます。世界中からどなたでもご参加いただけます。
 
★バンクーバーでの会場参加をご希望の方は article9canada@gmail.com にメールください。
★言語は日本語です。(ズームの自動字幕機能が使えます)登録した人には事後に録画配信リンクを送ります。

問い合わせ先:article9canada@gmail.com

落合栄一郎プロフィール:
1936年東京生まれ。ペンシルバニア州のジュニアータカレッジ名誉教授。東京大学工業化学科卒、同大博士課程修了、工学博士。カナダ、アメリカ、スウェーデン、ドイツなどの大学で化学の研究教育に携わる。現在はカナダ・バンクーバー在住。『放射線被ばくの全体像:人類は核と共存できない』(明石書店、2022)、『放射能と人体: 細胞・分子レベルから見た放射線被曝』(講談社、2014)他、日本語、英語での著書多数。




Saturday, August 02, 2025

「ノーモア沖縄戦 命どぅ宝の会」の声明: 日米「核使用協議」、「核威嚇要求」、「長射程弾配備」に抗議し中止を求める声明 Japan and the U.S., Stop Warmongering Against China!

沖縄を二度と戦場にさせない、米日による対中戦争を止めさせるための活動を続けている「ノーモア沖縄戦 命どぅ宝の会」が、7月31日、沖縄県庁で会見を開きました。日本中、アジア中の人々が知るべき、声を上げるべき内容と思いますのでここに転載します。

新垣邦雄さんからの最新のメールより:

日米核使用シナリオ、核威嚇要求、長射程弾配備に抗議し中止を求める声明」発表の記者会見記事が沖縄タイムスに載りました。自衛隊那覇基地広報を通して西部方面総監(方面隊)から石破茂首相、吉田圭秀統合幕僚長、伊藤晋哉沖縄防衛局長に届いたはずです。シビリアンコントロール逸脱した吉田統合幕僚長の更迭、熊本への中国に届く長射程ミサイル配備に絶対反対です。
けさのNHKニュースは、近く日米演習の石垣島訓練で米海兵隊が無人機ミサイルシステム「NMESIS」を初配備と報道しました。台湾有事「日米共同作戦」で米海兵隊が洋上の中国艦船を駆逐するため投じるハイマースと並ぶ無人ミサイルです。「無人なのは米兵死なせぬため」と報じられました。日米のミサイル、無人機、ドローンが配備される南西諸島、沖縄住民の存在、命は無視されてます。

 米国の利益を守るため、トランプ大統領が核のボタンを握り、米軍の指揮で自衛隊が「中国から台湾を守る」ために核ミサイル大国の中国と戦争をするはめになる。こんな愚かな戦争準備、絶対に認められません。

 



2025年7月31日


日米「核使用協議」、「核威嚇要求」、「長射程弾配備」に抗議し中止を求める声明


石破茂内閣総理大臣

吉田圭秀統合幕僚長

中谷元防衛大臣

伊藤晋哉沖縄防衛局長

                  ノーモア沖縄戦 命どぅ宝の会


 共同通信が「核使用シナリオ」「自衛隊が核の脅し要求」「長射程弾熊本へ 勝連も視野」と報じました。「中国に届く長射程ミサイル」を年度内に配備。日米間で「核使用のシナリオ」を協議し、中国を敵国と想定する実戦想定の統合演習で自衛隊トップの吉田圭秀統合幕僚長が米軍側トップのインド太平洋軍司令官に「核の脅し」を再三要求し、米司令官が同意したとする報道内容です。中国に対する核兵器使用の想定は核による威嚇、挑発にほかならず、中国側の核による対抗を招き、戦争が現実となる危険性を一段と高める暴挙であり絶対に許されません。制服組トップの統合幕僚長が米側に「核の脅し」を求めたことは、文民統制に反する暴走であり強く糾弾します。特に沖縄は日米「核密約」で「核配備」が約束され、米軍の「核共有」による「拡大核抑止」は沖縄を再び「核攻撃の拠点化」し「沖縄が核攻撃されるリスク」を高め、断じて容認できません。一連の報道内容に抗議し、すべて廃棄、中止するよう要求します。

 「有事に米軍の核兵器の使用を想定するシナリオ」の協議を、国民への説明も同意もなく、日米政府間で行うこと自体、許されません。被爆国日本の国民は核兵器を強く拒絶し、米軍核の「拡大抑止」はじめ、いかなる核兵器の使用にも反対です。広島県原爆被害者団体協議会などが「被爆者の思いを踏みにじる。(核使用の議論に)日本政府が関わること自体が許せない」と猛反発し、「日本も核武装や核共有をもくろんでいるのではないか」と疑うのも当然です。核の使用は憲法、非核三原則に反することも明白です。国民が反対する「拡大核抑止」「核使用想定シナリオ」をただちに廃棄するよう要求します。

 日米の軍事一体化は米軍指揮が明白です。米軍による「拡大核抑止」の「ガイドライン」は「米側が日本に情報提供」する手順です。トランプ米政権は「核兵器の近代化」、使える核「小型核・戦術核」開発を急いでいます。米国核の「拡大核抑止」は、「アメリカ・ファースト」のトランプ大統領が核のボタンを握ります。トランプ米大統領は、イスラエルに加担してイランへの「先制攻撃」を行ない、「広島や長崎と同じだ」と正当化しました。トランプ大統領が核のボタンを握れば、アジアで米国核が使用され、日本が核戦争に巻き込まれかねません。無謀な「核の拡大抑止」をトランプ米政権に委ねることはできません。

 中国を敵と名指す日米演習の台湾有事シミュレーションで、米軍が「中国が核使用を示唆」とでっち上げ、防衛省制服組トップの吉田圭秀統合幕僚長が「米も核の脅しで対抗を」と再三要求し、米軍トップのインド太平洋軍・アキリーノ司令官が「最終的に同意した」。防衛省制服組トップの文民統制を逸脱する暴走であり絶対に許されません。吉田統合幕僚長の更迭を要求します。統合幕僚長が独断で「核の脅し」を米インド太平洋司令官に同意させ得たことが大問題です。現実の戦争で制服組の暴走が起こり得るシステム上の欠陥が明らかです。制服組の暴走で核戦争に陥ることがあってはいけない。吉田幕僚長の「米軍への核の脅しの要求」は岸田文雄首相(当時)の指示を得ていたのか。国民は台湾有事ほかいかなる事態でも「米軍核の使用」を容認しません。「いかなる事態でも絶対に核を使用しない」ことの確認を政府に要求します。

 中国に届く長射程「12式地対艦ミサイル能力向上型」が本年度(25年度)に熊本・健軍、次いで大分・湯布院、沖縄の勝連分屯地にも配備予定と共同記事は明記しました。ミサイル配備地や弾薬庫が有事下で攻撃目標となることは、ウクライナやイスラエルのイラン攻撃で明らかです。名前で沖縄配備が明らかな「島嶼防衛用高速滑空弾」や「極超音速誘導弾」など長射程ミサイルが次々と日本各地に配備されようとしています。私たちはミサイルや弾薬庫と一緒には暮らせません。配備済みミサイルの撤去、新たなミサイル配備、とりわけ中国に届く長射程ミサイルの配備に断固として反対です。「ミサイルよりおむすびを」「ミサイルより命を」と訴え、住民説明会を要求します。

 一連の共同通信報道、台湾有事を中心に日米の戦争準備がいよいよ「戦争前夜」に達する中で「米軍核の使用」が急浮上しています。復帰前の沖縄に米軍の核兵器が約1300発も置かれ、復帰時に日米首脳が「緊急時に核兵器を沖縄に配備」する「核密約」を交わしました。沖縄は、米軍が「朝鮮有事」「台湾有事」に対処する「アジア最大の核攻撃拠点」でした。米軍は朝鮮戦争、台湾海峡危機、ベトナム戦争で核攻撃を検討、相手国を威嚇しました。故安倍晋三元首相、石破茂首相の「核共有論」が現実となれば、密約で「核貯蔵庫を維持」する沖縄に再び米軍の核兵器が持ち込まれかねません。沖縄は断じて受け入れません。沖縄県民は沖縄が再び米軍の「アジアの核攻撃拠点」となること、日米の「核共有拠点」となることを拒否します。

【要求・質問事項】

①「日米の核使用シナリオ」、「自衛隊による米軍への核の脅しの要求」に反対し、シナリオの廃棄、核使用の協議の中止、自衛隊から米軍への「核の脅し」の撤回を要求する。

②「核使用シナリオ」「米軍への核の脅し要求」の内容の詳細な情報開示を要求する。

③吉田圭秀統合幕僚長は、どのような権限で米インド太平洋司令官に「核の脅し」を要求したのか。戦争時、有事下で統合幕僚長、制服組、自衛隊は独断で米軍に「核の脅し」を要求し、「核の使用」を承諾することができるのか。岸田文雄首相は吉田統幕長の「核の脅し要求」を事前に把握し、承諾していたのか。

④台湾有事の日米演習で自衛隊が米軍に「核の脅し」を要求した。事態が進展すれば「核の使用」も要求するのか。台湾有事は「日本の存立危機事態」と吉田統幕長は認識しているのか。石破茂首相、政府は「台湾有事は日本の存立危機事態」との認識か。国民に対し、丁寧な説明を求める。

⑤台湾有事は日本有事ではない。台湾有事は日本の存立危機事態ではない。台湾有事「中国の武力侵攻から台湾を守る」ための米軍核の使用は憲法、国際法、国内法に反し、正当性がなく、断じて認められない。台湾有事「日米共同作戦計画」の廃棄を要求する。

⑥いかなる事態、有事であれ「核兵器の使用」に反対する。米軍核による「拡大核抑止」に反対する。核を含む「拡大抑止」について政府は国民に丁寧に説明せよ。

⑦中国に届く「長射程ミサイル」の熊本、大分、沖縄他への配備に反対する。沖縄県、玉城デニー知事は「長射程ミサイルは専守防衛を逸脱し憲法違反の疑いがあり、沖縄が攻撃目標となるリスクを高める。沖縄配備に反対する」と政府に表明し、知事を会長に基地所在市町村長が加入する「沖縄県軍用地転用促進協議会」も全会一致で「反撃能力を有する装備の沖縄配備反対」を決議し政府に通告している。長射程ミサイル沖縄配備への反対は沖縄県民の総意であり、絶対に拒否する。

⑧「核共有」による米軍核の沖縄配備に反対する。沖縄市の自衛隊施設の弾薬庫建設、米軍嘉手納弾薬庫の自衛隊との共用について住民説明会を開き、詳細を明らかにせよ。

(声明以上)

Wednesday, July 23, 2025

Webinar: Resisting Pacific War Preparations: Talisman Sabre  軍事演習「タリスマン・セイバー」:太平洋での戦争準備に抗う(ウェビナー)

日本語は下方を見てください

 A webinar organized by Canadian peace groups:

A Special Webinar: All are welcome!
Resisting Pacific War Preparations: Talisman Sabre
Wednesday, July 30 (4 PM Pacific/7 pm Eastern)
IPAN (Independent and Peaceful Australia Network) and the Pacific Peace Network are leading opposition to US-Led military war exercises, code-named Talisman Sabre, that began on July 14 and will continue for over two weeks. Over 35,000 military personnel from 19 countries, including Canada, are carrying out war preparations on the ground, air, sea, and in cyberspace. Join IPAN representative Annette Brownlie and others from the Pacific Peace Network to discuss resistance to the war preparations and the fight for a nuclear-free, peaceful, and sustainable Pacific. Moderated by Midori Ogasawara, University of Victoria.
Hosted by Canada-China Focus, in collaboration with Just Peace Advocates, Pacific Peoples Partnership, and the Canadian Foreign Policy Institute.

【英語ウェビナーです】
カナダの平和団体によるウェビナーのお知らせ(どなたでもご参加いただけます)


特別ウェビナー:軍事演習「タリスマン・セイバー」:太平洋での戦争準備に抗う
📅 開催日:7月30日(水)
🕓 太平洋時間 午後4時 / 東部時間 午後7時
(日本時間 7月31日 午前8時)
**内容:**
IPAN(独立・平和なオーストラリア・ネットワーク)およびPacific Peace Networkは、7月14日から約2週間にわたって実施されるアメリカ主導の軍事演習「タリスマン・セイバー」に反対の声を上げています。この軍事演習には、カナダを含む19カ国から35,000人以上の兵士が参加し、陸・海・空・サイバー空間で戦争準備が行われています。
本ウェビナーでは、IPANの代表アネット・ブラウンリー氏をはじめ、Pacific Peace Networkの関係者が登壇し、戦争準備への抵抗運動や、核のない平和で持続可能な太平洋地域を目指す闘いについて語ります。
司会進行:小笠原みどり(ビクトリア大学)
主催:Canada-China Focus
共催:Just Peace Advocates、Pacific Peoples’ Partnership、Canadian Foreign Policy Institute
👉 **参加登録はこちらから:**
[登録リンク]

Saturday, July 12, 2025

『朝鮮新報』より転載-ふたつのセトラー・コロニアリズム Settler Colonialism of Israel, and Canada: Repost from Choson Shinbo

第二次世界大戦終結から80年のこの年、「やられた側から戦争を記憶する」というテーマで、日本はもちろん、中国東北部、フィリピンや、沖縄、香港の旅をしていました。5月後半以降、旅ばかりが続き、ピースフィロソフィーのサイト更新ができていませんでした。旅の合間に、過去2回(25年4月と、6月)の『朝鮮新報』連載記事を2本、転載します。

イスラエルによるジェノサイドは今も続いています。それも食料配給所に集まった人たちを狙い撃ちするという卑劣な方法で。殺されたジャーナリスト、ホッサム・シャバットさんのアカウントは今も仲間たちの手で、ガザの子どもたちが殺され続けている残酷な状況を発信し続けています。https://x.com/HossamShabat 

カナダもイスラエルと同様、セトラー・コロニアリズムの国です。2つめの記事は、「タートル・アイランド」で起こり続けている先住民族女性殺害失踪 Missing and Murdered Indigenous Women and Girls についてです。


〈私のノート 太平洋から東海へ 3〉

パレスチナ人ジャーナリスト殺害 明けない夜はない

乗松聡子

2025年04月01日 

原文リンク→https://chosonsinbo.com/jp/2025/04/31sk-13/

ガザでまたジャーナリストが殺されました。3月24日、カタールのTV 局「アル・ジャジーラ」のレポーター、ホッサム・シャバットさんが乗っている車をイスラエル軍が銃撃し、23歳の若さで命を奪われました。シャバットさんはガザ北部に残って取材を続けた数少ないジャーナリストの一人でした。死後、シャバットさんの「最後のメッセージ」が、仲間によって、17万人のフォロアーがいるかれのXに投稿されました。


ホッサム・シャバットさんを悼むパレスチナのジャーナリストたち(ホッサムさんのXより)

 

「あなたがこれを読んでいるということは、私は殺されたということです。おそらくイスラエル占領軍に標的にされたうえで。これが始まったとき私はたったの21歳でした。他のみなと同じように夢に満ちた大学生でした。過去18ヵ月間、私の生活のすべてを私の民族に捧げてきました。闇に葬り去られようとしている真実を世界に伝える決意で、北ガザの惨状を刻一刻と記録しました。道ばたでも、学校でも、テントでも、寝られるところならどこでも寝ました。毎日が生き延びるための闘いでした。何ヵ月も空腹の日々でしたが、民族のもとを離れることは決してしませんでした。私は神にかけて、ジャーナリストとしての務めを果たしました。真実を伝えるためならどんなリスクも厭うことはしませんでした。そして今、私はやっと休息を得ています。18ヵ月の間知らなかった休息です。パレスチナの大義を信じていたからこそやってきました。この土地は私たちのものです。この土地を守り、民族に仕えた上で死ぬことは人生で最高の栄誉でした。お願いです。ガザについて語ることをやめないでください。世界がそっぽを向くのを許さないでください。闘い続け、私たちの物語を語り続けてください。パレスチナが自由を得る日まで。最後に、ホッサム・サバット、北ガザより」

同日には朝日新聞通信員も務めていたムハンマド・マンスールさんもハン・ユニスの自宅で殺されました。これで、23年10月7日のハマス蜂起以来イスラエルによって殺されたジャーナリストは208人となりました。

シャバットさんは殺害される3日前の3月21日、「終わったと思って、ようやく休めると思ったのに、ジェノサイドが再び本格化して、また私は最前線に戻った」と投稿していました。イスラエルとハマスはトランプ次期大統領の働きかけもあって、1月19日に6週間の停戦を開始しました。「停戦」は、シャバットさんが「休めると思った」と言ったように、ガザにしばしの希望を与えました。しかしイスラエルは「停戦」中もガザの民間人殺戮を継続し、支援物資搬入を阻止するという戦争犯罪を重ね、同時に西岸地区への攻撃を激化させました。

イスラエル軍のガザからの撤退などを含む停戦第二段階への移行を妨害したのは明らかにイスラエルであるのに西側メディアは「ハマスが停戦拒否した」かのような印象操作をしました。3月18日、イスラエルは本格的な攻撃を再開、この日だけで400人のパレスチナ人(うち200人近くは子ども)を殺しました。イスラエルは米国の支援がなければパレスチナ占領も攻撃もできません。トランプ大統領がこれを許したのです。シャバットさんの最後のレポートはこの大虐殺についてでした。

いま、「ジェノサイド」がバイデンからトランプにバトンタッチされたことは動かぬ事実となりました。これを「民主主義」を標榜する米国および西側諸国が止めようとせず、逆に国内でジェノサイドを批判する者を「反ユダヤ主義」とレッテルを貼り、デモを禁止したり、声を上げる人を標的に拘束・逮捕したりといった表現の自由の否定が行われています。多数の例から一つ挙げると、3月26日にタフツ大学のトルコ出身の博士課程学生ルメイサ・オズトゥルクさんが自宅の外で、覆面をした私服のICE(米国移民関税執行局)職員に取り囲まれ拉致され、ルイジアナのICEの施設で抑留されています。米国は、ICJ(国際刑事裁判所)でイスラエルを訴えた南アフリカのエブラヒム・ラスール大使も追放しました。しかし大使はケープタウン空港で市民による熱い歓迎を受け、「私はこの“ペルソナ・ノン・グラータ”(好ましからざる人物)という烙印を、誇りのバッジとして身につける」と語りました。アパルトヘイトと闘い、何度も拘束や自宅軟禁されたことのあるラスール氏は、明けないかに見える夜の長さを知っていると同時に、明けない夜はないことも知っているでしょう。

シャバットさんが、「ジャーナリストになりたい!」と目をキラキラさせて語るパレスチナの女の子を励ます動画が拡散されています。民族と正義に殉じたシャバットさんと無数のパレスチナ人の遺志を胸に刻み、「夜明け」に向かって行動し続けたいと思っています。


★★★★★★★★★★★★★★★★★★★


〈私のノート 太平洋から東海へ 4〉

タートルアイランドに暮らして

乗松聡子

2025年06月29日

原文リンク→https://chosonsinbo.com/jp/2025/06/28-sk/

カナダの内陸部マニトバ州のウィニペグ市の埋め立て処分場では現在、3年も前に殺害された女性たちの遺体捜索が行われています。2022年の春、白人至上主義の男が、マルセデス・マイランさん(26歳)ら先住民族の女性4人に次々と性暴力を加え殺し、ごみとして捨てました。事件が発覚してからも州警察は埋め立て地の捜索をしようとせず、「先住民族の命を軽んじている」との批判の声が高まりました。23年10月の選挙で新たに州首相となった先住民族のワブ・キニュー氏のリーダーシップの下、24年末にようやく遺体捜索が始まりました。マイランさんら2人の遺体ともう1人の遺体の一部はすでに見つかっており、まだ見つかっていない1人を引き続き捜索中です。

先住民族女性失踪殺害を記憶する日「レッド・ドレス・デー」の集会(5月5日)で、被害者の写真を掲げる先住民族の女性たち

これはカナダでは決して珍しい事件ではなく、もう何十年も社会問題となっている「先住民族女性失踪殺害」がいまだに起こっているケースです。先住民族、とくに女性は失踪しても殺害されても警察はなかなか動きません。それどころか先住民族は、警察自体から性暴力を受けたり、警察との接触の中で命を奪われたりする事件も多発しています。カナダは、英仏など欧州人が、先住民族の土地を奪って作ったセトラーコロニアル(入植植民地主義)国家です。もうすぐ建国158年になりますが、先住民族はいまだに社会のあらゆる側面で制度的・構造的差別を受けています。

私が80年代にカナダに高校留学したとき、エバンという、先住民族のクラスメートがいました。かれの父親が小さいとき、寄宿学校に連れていかれそうになったけれど母親、つまりエバンの祖母が、父親を隠して行かせなかったと話してくれました。これは、19~20世紀にかけて、カナダ政府とキリスト教会が運営した強制同化施設「インディアン・レジデンシャル・スクール」のことでした。エバンの父親はその時は幸運でしたが、ほとんどの場合は強制力が強く、警察が拉致同然に連行したり、拒むと保護者が逮捕されたりしました。

全国に139校あった寄宿学校に約15万人の先住民族の子どもたちが送られ、民族の言葉も習慣も誇りも奪われ、聖職者による性暴力や虐待が横行しました。6千人かそれ以上が命を落としたと言われています。先住民族自身による長年の闘いの末、2007年に和解協定が結ばれ、08年に当時のハーパー首相は国会で、先住民族の代表者たちを前に謝罪しました。しかしサバイバーやその子孫に深刻なトラウマを残し、依存症や貧困などの社会問題としていまだに深い傷跡が残っています。

私は97年に大学院留学でカナダに戻り、その後、永住資格を取って暮らし始めてからこの歴史を学びました。自分も、盗まれた先住民族の土地の上に住む植民者なのだという自覚を持つようになりました。私の住む家は、住所はバンクーバー市ですが、スコーミッシュ、マスキアム、ツレイ・ワウトゥスという先住民族の伝統的領域の上にあるのです。さらに、この3民族を含む何十もの民族が属する言語文化集団が「コースト・セイリッシュ」と呼ばれ、その領域はカナダのブリティッシュコロンビア州南部と、米国のワシントン州北西部まで広がっています。

昨今末、次期米国大統領に決まっていたドナルド・トランプ氏が当時のジャスティン・トルドー首相に向かって「カナダを51番目の州にする」と言って大騒ぎになりました。就任後もカナダ製品に高関税をかける政策でカナダ人の怒りを買い、米国製品をボイコットするカナダ人が続出しました。

トランプ大統領は、北緯49度線の国境を「昔、誰かが人工的に引いた意味のない線」と言いましたが、これはある意味では正しいのです。1846年、当時勢力争いをしていた米英が、先住民族に相談することもなく、ロッキー山脈以西を49度線で分割する条約を結びました。この線はコースト・セイリッシュの領域の真ん中を突っ切り、多くのネイションが分断されました。自分の家の中に、ある日突然線を引かれ自由な往来も許されなくなったようなものです。その後、英国の植民地だったブリティッシュコロンビアもカナダ連邦に加わり、この線は米加国境として引き継がれました。

今、愛国心が高まっているカナダ人も、49度線国境自体が帝国主義の産物であるということを、忘れてはいけないと思います。亀の形に似ている北米は「タートルアイランド」と呼ばれ、先住民族から見たら一つの島なのです。私はこの地で暮らしながら、カナダの植民地主義に向き合わねばと思うようになりました。と同時に、出身国の日本を外から見て、日本の植民地主義やマイノリティー差別にこそ取り組まなければいけないと思うようになりました。それぞれ人生の半分ずつを過ごした二つの地への、私のコミットメントです。


プロフィール

ジャーナリスト。東京・武蔵野市出身。高2,高3をカナダ・ビクトリア市の国際学校で学び、日本の侵略戦争の歴史を初めて知る。97年カナダに移住、05年「バンクーバー9条の会」の創立に加わり、06年「ピース・フィロソフィー・センター(peacephilosophy.com)」設立。英語誌「アジア太平洋ジャーナル」エディター。2人の子と、3匹の猫の母。著書に『沖縄は孤立していない』(金曜日、18年)など。19年朝鮮民主主義人民共和国を初訪問。世界の脱植民地化の動きと共にありたいと思っている。

(本連載は、反帝国主義、脱植民地主義の視座から日本や朝鮮半島をめぐる諸問題や国際情勢に切り込むエッセーです)

以上、『朝鮮新報』より。

Thursday, May 15, 2025

長崎で、三菱関連企業による中国人強制連行死者を追悼する:「歴史の正義を求め、人間の尊厳を守るために、日本政府は誠実に謝罪しなければならない」 新海智広さんの報告 Remembering Chinese victims of forced labour in Nagasaki: Responsibility lies with Mitsubishi and Japanese Government

 長崎人権平和資料館の会報『西坂だより』2025年4月1日号(第114号)に掲載された、新海智広さんによる、「第2回・中国人強制連行犠牲者追悼集会」の報告を許可を得て転載します。長崎原爆の爆心地より北に100m、最長350mの地点にあった長崎浦上刑務支所では刑務所内にいた職員19名、官舎居住者35名、受刑者及び刑事被告人81名(そのうち中国人32名、朝鮮人13名)計135名全員が即死したといいます。現在の長崎平和公園にはその刑務所の遺構が残っています。8月9日の記念日あたりに行くと式典のセットアップや人混みでしっかり見学ができないので、できれば他の時期に行くほうがいいと思います。中国人原爆犠牲者追悼碑や長崎原爆朝鮮人犠牲者追悼碑と合わせ、長崎の平和公園・爆心地公園における必見の地であると思います。「80周年」にあたり、日本の植民地支配や戦争のために長崎に連行され、強制労働させられた挙げ句、被爆死させられ、生き残った者も原爆症と貧困と差別の中で生きた、この歴史を日本人は学び心に刻むべきだと思います。そして新海さんの文にもあるように「和解」の当事者である加害企業であるにもかかわらず追悼集会に来ず、メッセージも寄せず、企業名に触れるなという、三菱マテリアルの人道にもとる姿勢には心からの怒りを感じます。だから名前に触れるなという三菱マテリアルの名を敢えて大きく叫ぼうと思います。後から踏みにじるような「和解」では「和解」とは言えません。また、いまだに謝罪もしないどころか、強制連行の史実さえ否定している日本政府への責任追及が必要です。中国の遺族の方々のメッセージは写真にあるように「歴史の正義を求め、人間の尊厳を守るために、日本政府は誠実に謝罪しなければならない」です。長崎に行ったら「二十六聖人殉教地」のすぐちかくにある長崎人権平和資料館をぜひ訪ねてください。朝鮮人・中国人被爆と、強制連行についてより深く学ぶことができます。@PeacePhilosophy 

2025年4月5日、中国人強制連行犠牲者追悼集会より。長崎市蚊焼町の日中友好平和不戦の碑の前で。横断幕のメッセージは「歴史の正義を求め、人間の尊厳を守るために、日本政府は誠実に謝罪しなければならない」


第2回・中国人強制連行犠牲者追悼集会


新海智広

 2025年4月5日、中国人強制連行被害者追悼集会が、日中友好平和不戦の碑・維持管理委員会(以下、維持管理委員会)の主催により、中国から42名の遺家族を迎え、長崎市蚊焼町の日中友好平和不戦の碑の前で開催された。以下はその集会を含む当日の報告、和解事業の問題点に関する私見である。


中国人強制連行と三菱和解

 日本は不足する労働力を補うため、1943年から45年にかけ、国策として3万8935人の中国人を日本へ拉致し、強制労働に就かさせた。その約1割を占める3765人は三菱関連の事業場へ連行され、実に722人が死亡(死亡率19.2%)している。連行後1年ほどで日本は敗戦を迎え、実労働期間は1年数ヶ月であったことを思うと恐るべき死亡率の高さである。ちなみに強制連行された中国人全体での死亡者数は6830人(注1)、死亡率は17.5%であり、三菱関係の中国人労働者の死亡率はそれを上回っていることになる。

 2016年6月1日、三菱マテリアルと強制連行された中国人及びその遺族との和解(以下、三菱和解)が成立した。和解の文章の中で、三菱マテリアルがどのように述べているかは後述するが、中国人強制連行犠牲者への謝罪及び和解金の支払い条項と共に、追悼事業への協力が約されていることをここでは確認しておきたい。今回第2回目となる「中国人強制連行犠牲者追悼集会」も、この三菱和解・追悼事業の一環として執り行われたものである。


旧浦上刑務支所跡地にて

 当初、4月5日は午後15時15分からの追悼集会のみを予定していたが、中国側の希望により、午前中平和公園内の旧浦上刑務支所跡地および中国人原爆犠牲者追悼碑の見学が日程に組み込まれ、維持管理委員会のメンバーとして私はその説明にあたることになった。これは今回来崎された中国の方々の中に、崎戸炭鉱へ連行された後、浦上刑務支所へ移送され原爆死した韓文会さんのご遺族が含まれており、その強い希望によるものと推察できる(注2)。

 平和公園で待機していると、10時40分頃、中国の遺家族の方々がやって来られた。原爆死した韓文会さんの姪・甥にあたる繆力さん、呼中陶さんが、旧浦上刑務支所跡地に花束を捧げた後、かなり長い時間経ったままその場に佇んでいた。繆力さんは込み上げてくるものがあるのか、小刻みに身体を震わせ、涙ぐんでいた。2004年に初来日し、同じ場所で、原爆死した父・喬書春さんを思い号泣した喬愛民さんの姿を私は思わずにはいられなかった。


中国人原爆犠牲者追悼碑前で

 平和の泉の横にある浦上刑務支所・中国人原爆犠牲者追悼碑に移動すると、すぐに繆力さん・呼中陶さんのお二人は碑の裏側に回り、おじである韓文会さんの名を探した。涙を浮かべながら、親族の名を愛おしく切なく指で何度もなぞる姿は、刻まれた文字から亡き人の痕跡をたどっているようで、痛々しく、哀切としか言いようのない光景であった。

 今回の来崎に先だって、繆力さんからは原爆犠牲者遺家族としての挨拶文が送られてきていた。結局この挨拶文は集会において読み上げられることはなかったが、全文を紹介しておきたい。以下、中国語の翻訳は、昨年に続いて通訳をお願いした大瀧和代さんによる(中国総領事挨拶のみ周峰領事アタッシュによる訳)。

「尊敬する皆様こんにちは。

私は北京から参りました。私の母方の叔父韓文会は、強制労働者として日本の長崎県三菱鉱業所崎戸炭鉱に連行され、日も差さない坑道で石炭採掘の重労働をさせられました。企業側の搾取と食物の供給の少なさに耐えかね、多くの同僚が食料の要求をしましたが、企業側がこれを拒み、日本の警察は、治安維持法に違反するとして1944年12月同僚とともに逮捕されました。1945年3月31日、20人余りの同僚と一緒に長崎県浦上刑務支所に収監され、1945年8月9日原爆の犠牲となりました。異国で亡くなってから80年が過ぎ、遺骨は依然、天津の在日殉難烈士記念館に置かれたままで埋葬もできずにおります。日本侵略戦争で強制労働者として連行された人々は皆若く働き盛りで、家庭では年老いた両親と子供がおり、大黒柱を失った無数の家庭は、一家離散の憂き目に遭い言葉では言い表せない災難に見舞われました。80年の時が過ぎ、加害者企業はすでに謝罪をしました。しかし日本政府は国際的に中国人の強制労働の事実を認めてはいません。当時の中国人強制労働事業は日本政府と企業の共同の犯罪だと考えています。この度の訪日で私は多くの三菱被害者の家族から、日本政府が3766人の三菱被害者の家族に対して、また4万人の中国人強制労働者の家族に対して公の謝罪をするように、という強い要求を託されて参りました。ここに日本政府の謝罪を要求するものであります。

三菱原爆遺家族   繆力」


日中友好平和不戦の碑の前で

 昼食をはさみ、14時半前後から中国の遺家族の方々が追悼集会会場へやって来られた。集会開始前に、遺家族の方々は平和不戦の碑の横の刻銘碑(長崎へ強制連行された845人のうち氏名不明の2名を除く843人の名前が刻まれた石碑)へ赴き、強制連行犠牲者である自分の親族の名を確認していた。やはりここでも刻まれた名を撮影し、指でさすりながら涙ぐむ姿が見られた。

 15時15分から、維持管理委員会共同代表の崎山昇さんの司会により、「第2回・中国人強制連行犠牲者追悼集会」が開催された。はじめに同共同代表の平野伸人さんが「1992年に平和公園の被爆遺構が見つかり、原爆死した中国人の遺族探しが始まった。その後中国へ渡り生存者・遺族と交流し、さらに2003年以降は裁判闘争にも取り組んだ。粘り強く交渉を重ね2016年に三菱との和解が成立した。今日は戦争や原爆の歴史を、中国をはじめとするアジアの人々の視点から直視し、その被害に寄り添う1日にしたい」と主催者挨拶を述べた。

 続いて維持管理委員会共同代表の竹下芙美さんが平和不戦の碑に献花したあと、参加者全員で献花を行った。その後強制連行・強制労働の中国人犠牲者の苦難を偲びつつ、沈黙のうちに追悼の時を持った。

 次に陳泳中国駐長崎総領事が来賓挨拶を次のように述べた。

「本日、中国の清明節にあたり、我々は長崎の日中友好平和不戦の碑の前に集まり、共に、亡くなった中国人労働者を追悼し、中日の恒久平和を祈念します。日本軍国主義が引き起こした侵略戦争は、中国の人々に甚大な被害をもたらしました。亡くなった中国人労働者の悲惨な経験は、まさにその時代の縮図の一つでした。

『前事を忘れざるは後事の師なり』我々がこの集会に参加するのは、恨みを抱え続けるためではなく、歴史を直視し、教訓を学び、苦労して勝ち取った大切な平和を守るためです」

 

 続いて慰霊追悼委員会を代表し、孫靖弁護士が次のように挨拶を述べた。

「私は北京から来ました弁護士の孫靖と申します。今回の2度目の長崎訪問にあたり、長崎で亡くなった強制労働者の娘、張桂英さんを思い出しました。彼女の父親の名前は張培林と言い、抗日運動に参加したために日本軍に連れ去られました。その後、父親は行方がわからなくなりました。母は夫を、祖父母は一人息子を、一家は大黒柱を失いました。間もなく母親は倒れてしまい、祖父もまた倒れて一年余りで、母親と祖父は相次いで亡くなってしまいました。

 これは、日本の侵略戦争が多くの中国人にもたらした悲劇のほんの一つに過ぎません。

 私たちは互いに手を取り合って歴史を刻み、絶対に2度と悲劇を繰り返さないよう行動を以て、中日両国人民の友好を推し進めていこうではありませんか。」


 締め括りとして、遺族を代表し靳恩恵さん(代読:息子の靳常青さん)が挨拶を述べた。全文を紹介する。

「悲惨な運命と苦痛の回想

 私は靳恩恵と申します。中国河北省衡水市饒陽県西里満村に住んでいます。今年で84歳になりますが、不幸なことに80年間父親に会ったことがありません。今回の追悼会には高齢のため参加しませんが、私の気持ちを息子に託したいと思います。

 日本の侵略戦争期間中の1944年の夏に、私の父靳青岩は連れ去られ、ここから我が家の悲惨な生活が始まりました。当時ただでさえ食うや食わずの生活でしたが、更にひどい生活に追い込まれました。1945年日本投降後、父の労働仲間だった何琛さんと劉振国さんが父の遺骨を家まで届けてくれました。家中の悲しみは形容しがたいものでした。老いた父は息子を嘆く、妻は夫を嘆く、子供は父を嘆く。天に呼べども地に叫べどもその悲しみを受け入れてくれる所はありませんでした。2人の友人の話に依ると、父は日本の炭鉱で働かされ、そこで亡くなったということでした。

 50年も経ってから、日本の友人から調査票の手紙を受け取り、父の亡くなった経緯がやっと分かりました。長崎から来た日本の友人が、中国の被害者に対して長年奔走してくださり、遅まきながら80年後に加害企業の謝罪を得ることができた、この正義の行いに対して、私はとても感謝しております。日本政府と加害者企業は共同の犯罪者です。企業はすでに謝罪を表明しております。しかし主犯である日本政府はまだ歴史の責任を負っていません。日本政府に対しては、強く中国被害者に対する謝罪を要求するものであります。

 人は世界の主人であり仁、善、礼、義の心は中国人も日本人も同じように持っています。今立場を入れ替えて考えたら、どのようにして被害者の家族に現実を受け止めてもらうことができるでしょうか?私の生きている間に日本政府の謝罪を見届け、このことを後の代まで、歴史の教訓として伝えていって欲しいと願います。


青春の碧血を日本に洒ぎ

赤誠丹心は冤魂と化す

厳詞義正の児孫在れば

公道の償還は乾坤を扭る


  在日殉難遺児 靳恩恵

   2025年4月5日」

 

 この後、維持管理委員会・事務局長として新海が経過報告を述べ、最後に維持管理委員会・共同代表の内田雅敏さんが閉会挨拶を述べて集会は終了した。


強制連行問題と日本政府の責任

 昨年の追悼集会でも感じたことであるが、日本の敗戦から80年になろうとする今日に至っても、中国人強制連行犠牲者及び遺家族の痛みと苦難は未だ癒されていない。特に正式な謝罪も賠償も一切行っていない日本政府に対する不満と憤りは強く、それは今回来崎した遺家族の方々が追悼集会の場で広げた横断幕の言葉「討還歴史公道、維護人類尊厳、日本政府必須給予遅到真誠的謝罪」(歴史の正義を求め、人間の尊厳を守るために、日本政府は誠実に謝罪しなければならない・冒頭の写真参照)によく示されていると思う。

 日本政府は、朝鮮人の場合とは異なり、中国人強制連行についてはその事実を認めている。政府や企業が作成した認めざるを得ない文書等が存在しているからでもあるが、例えば2001年11月7日の第153回国会・衆議院外務委員会において、田中真紀子外務大臣(当時)は「中国人の強制連行問題に関して、(中略)確かに、こういう歴史的な事実について私どもは直視をするということをきっちりしていかなければいけない。過去のことについてきちっと一つ一つ、嫌なことでも確認をしていくということをする義務があると思います。強制労働という形で来日して、厳しい労務につきまして、そして、その多くの方が苦難の中で一生を終えられたりした(中略)政府といたしましても、何とかできることについては、個々の状況も踏まえつつさせていただきたい。」と、述べているのである。外務大臣自らが「強制連行問題」「強制労働という形で来日」という言葉を用い、過去の嫌なことでも確認する義務がある、と言明しているのだが、結局その後この問題に関して日本政府は何一つ「義務」を果たしてはいない。


和解事業と三菱マテリアル

 こうした無責任な日本政府と対置する形で、中国人強制連行犠牲者遺家族からは、和解に応じた三菱マテリアルを評価する声が聞こえてくる。今回の遺族代表の挨拶の中でも「加害企業の謝罪を得ることができた、この正義の行いに対して、私はとても感謝しております」という一節がある。確かに今回の追悼集会も、三菱和解の追悼事業の一環として行われ、遺家族の方々の旅費等は三菱マテリアルから拠出されている。しかし、私はあえて言いたい。三菱マテリアルは、本当に過去に真摯に向き合っているのか。日本政府と共同で中国人を強制連行し、苛酷な労働を強い、多数の死傷者を出した過去を、本当に反省していると言えるのか。

 日中友好平和不戦の碑の前での集会は、これまで4回行われている。2021年11月14日の除幕式、2023年6月1日の中国から基金管理委員を招いての追悼集会、2024年7月7日の第1回中国人強制連行犠牲者追悼集会、そして今回である。この4回の集会への、三菱マテリアルの関わり方を見てみよう。2021年の除幕式の時は、九州支店長のS氏が出席し、挨拶を述べている。2023年の追悼集会の時も、三菱マテリアル社員のH氏が出席しやはり挨拶を述べている。ところが2023年の追悼集会の時は、同社よりの出席はあったが、こちらが要請した「挨拶」は断られ、さらに三菱マテリアルの社名を文書等に出さない、社員の会場での紹介もしないことを要求された。そして今回は「不参加」である。

 2016年6月1日に成立した三菱和解には、

「第二次世界大戦中、日本国政府の閣議決定「華人労務者内地移入に関する件」に基づき、約39,000人の中国人労働者が日本に強制連行された。弊社の前身である三菱鉱業株式会社及びその下請け会社(三菱鉱業株式会社子会社の下請け会社を含む)は、その一部である3,765名の中国人労働者をその事業所に受け入れ、劣悪な条件下で労働を強いた。」

との文言がある。更に三菱マテリアルは同じ和解文章の中で、「前事不忘、后事之師」(過去を忘れず、将来の戒めとする)という言葉を引用し、過去の歴史的事実・歴史的責任を認め、和解金の支払と共に追悼碑建立に協力し、この事実を次世代へ伝えていくことを約束している。

 そもそも今回の追悼事業は、三菱和解の一環として執り行われたものであり、中国人強制連行犠牲者およびその遺家族が一方の主役であるとすれば、三菱マテリアルはもう片方の主役なのである。その三菱マテリアルが、追悼事業に「不参加」とは、いったいどういうことか。

 「和解は和解の成立によって終わるのではない、その後の和解事業の遂行によって内容が深まる」とは内田雅敏弁護士の言葉である。真に意味のある和解とするためには和解事業を時間をかけて積み重ねる必要がある。2016年の三菱和解の成立の時点で、強制連行・強制労働の時点から70年以上が経過していた。この間に積もりに積もった企業(および日本政府)への怒りや憤り、不信を解くためには、和解事業を誠実に遂行することにより、企業側が過去を再認識し、二度と過ちを繰り返さないという姿勢を被害者側に示すことが何より重要だと思う。残念ながらこの間の三菱マテリアルの対応を見ていると、和解金や和解事業関連の費用を出したのだからもう自分たちには関係がない、とでも言うような冷淡さが感じられてならない。

 政府も、三菱という企業体も、それを構成するのは個人であり私たち市民である。過去の歴史と向き合い、過ちを率直にみとめ、真の友好親善を求める気運を市民社会の中で少しでも広げていくこと、どんなに迂遠にみえても、それが政府や企業を変える基盤となると信じたい。

(新海智広)

注1:この死亡者数は日本側から見たものであり、中国側からすればこれを上回る(連行者数も同じ)ことは以前述べた。詳しくは西坂だより112号の拙稿『中国人強制連行犠牲者遺族を迎えて』参照。

注2:三菱和解事業では強制連行犠牲者1名につき、その遺家族1名を追悼事業に招くことになっているが、この韓文会さんのご遺族は自費参加1名を加え、2名が来崎されている。この点からも思いの強さが伺える。

(転載以上)

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