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Saturday, July 27, 2013

オリバー・ストーン&ピーター・カズニック広島での8月5日公開イベント「アメリカ史から見た原爆投下の真実」サイン会も!

8月4日から15日、広島、長崎、東京、沖縄を訪れる、テレビドキュメンタリーシリーズおよび書籍 The Untold History of the United States (日本語版は「オリバー・ストーンが語る もう一つのアメリカ史」としてNHK放映、早川書房翻訳出版)共作者、米国映画監督オリバー・ストーンと歴史学者ピーター・カズニック(来日総合情報はここを参照)。最初の公開イベントは8月5日午後1時半より、広島市内のゲバント・ホールにて。参加申し込みと問い合わせはこのポスターに記載されている主催団体「8.6ヒロシマ平和へのつどい2013」の連絡先までどうぞ。当日は早川書房の書籍「オリバー・ストーンが語る もう一つのアメリカ史」1-3巻を販売、イベント後は著者たちによるサイン会も行います。広島市立大平和研究所の田中利幸氏が司会進行、このブログの運営者、乗松聡子も参加します。ふるってご参加ください。また、当日広島にいる人たちに声をかけてください!

 
 

Saturday, July 20, 2013

8月6日広島にて「世界に広がる平和教育ネットワーク」国際シンポジウム An International Symposium on Peace Education, August 6 in Hiroshima

広島 で開催される平和教育国際シンポジウムを以下に紹介します。当ブログ運営人乗松聡子も参加します。@PeacePhilosophy


宮坂浩弁護士(国際法律家協会事務局長)による『沖縄の〈怒〉』書評

日本国際法律家協会の機関誌『インタージュリスト』177号(2013年8月号)に掲載される宮坂浩弁護士による書評を紹介します。

『沖縄の〈怒〉-日米への抵抗』ガバン・マコーマック+乗松聡子著

宮坂 浩

オーストラリア国立大学名誉教授のガバン・マコーマック氏とピース・フィロソフィー・センターの代表で、国法協の会員でもある乗松聡子さんとの共著「沖縄の〈怒〉-日米への抵抗」(法律文化社)が2013年4月に出版されました。


この本は、英語で執筆された「Resistant IslandsOkinawa Confronts Japan and the United States」の日本語版で、ノーム・チョムスキー氏や「敗北を抱きしめて」の著作で知られているジョン・ダワー氏等が推薦文を寄せ、高い評価をしています。

本では、琉球王国が日本に強制併合された琉球処分により差別的構造が作り出されたこと、1945年の沖縄戦では、沖縄は「皇土」と国体を守るための「捨て石」にされ、沖縄の人口の4分の1から3分の1にあたる12万人が殺戮されたこと、戦後、沖縄は米国の「太平洋の要石」とされ、昭和天皇は、沖縄の分離と米国の長期軍事占領を希望したこと、1952年のサンフランシスコ講和条約により本土の米国占領は終わったが、沖縄本島と周辺の島々、宮古・八重山諸島は1972年まで米国占領が続いたこと、1972年の施政権返還は、沖縄の肥沃な土地と空、海を米国が占領し続けるもので、「返還」とはほど遠いものであったこと、冷戦終了後、沖縄に基地を置く理由はなくなったのに、むしろ米軍再編で基地機能は強化され、沖縄の負担は加重されたことなどの歴史をひもときながら、現在の沖縄の問題を分析、論評しています。そして、大田昌秀元知事ら沖縄の抵抗運動を担ってきた人たちへのインタビューは、沖縄の人たちの視点を提供してくれると同時に、日本の本土人の沖縄への構造的差別の問題を私たちに提起しています。

「沖縄にとって不当な現実は、米軍事支配を受ける『戦争国家』として、憲法9条を持つ『平和国家』から切り離された1952年、そして安保改定によりその分断が再確認された1960年を経て、1972年の『返還』時に日本国憲法とその主権在民、基本的人権、平和主義の保障が沖縄に適用されるはずだったのに、実際には安保条約(密約部分を含む)が憲法の優位にたつ状態がずっと続いていることである。」というこの本での指摘は、まさに現在の沖縄問題の本質であると思います。

そして、英語版のタイトル「抵抗する島々:日米に立ち向かう沖縄」を、日本語版では「沖縄の〈怒〉」としたように、沖縄の過重基地負担やそれを生み出す構造的差別について、私たち日本人は自分の問題として捉え、主権侵害を許す日米安保と地位協定の改訂や廃棄について、真剣に取り組まなければならないと思います。

Thursday, July 18, 2013

「沖縄の怒り 世界に発信」共同通信記事(信濃毎日新聞、中国新聞掲載、産経新聞ネットで紹介)




共同通信に取材を受けた記事が、『信濃毎日新聞』に載りました(7月16日)。

追記:中国新聞にも載りました。(7月17日)。

産経新聞フォトニュースにも。
http://photo.sankei.jp.msn.com/highlight/data/2013/07/16/08okinawa/


 
 

来日間近のオリバー・ストーン、国家が市民にスパイ行為をはたらく意味を真剣に問う。2分間のメッセージビデオと和訳 Oliver Stone's 2-minute message calling for action to stop government spying on people

8月来日予定の映画監督オリバー・ストーンは、ACLU (American Civil Liberty's Union アメリカ市民自由連合)プロデュースによる2分弱のビデオメッセージを発表しました(7月10日)。
 

 
元のサイトはここです。
 
和訳をここに紹介します。オリジナルの書き起こしは下方を。
 
( オリバー・ストーン:映画監督、制作者、脚本家)
ひとつ簡単な質問をさせて下さい。
政府があなたをスパイしていたら気になりますか?
30年前ならこのような質問をすること自体がスキャンダルとなっていたでしょう。
ウォーターゲート事件の時代を生きて、
チャーチ委員会報告書を読んだなら、
政府による野放しの監視がどれほどの代償を伴うか知っているでしょう。
政府は私たちの忘れっぽさに付け込んでいるのです。
私たちは憲法修正第4条を
隠し事をする人のために作ったのではありません。
無制限の監視や捜査令状を禁じるために
この条項を作ったのです。
不透明な政府の代償が高く付くことは
明らかだからです。
われわれに隠さなければいけないような事があるのかどうかが問題なのではありません。
問題は、私たちが政府を統制するのか、
それとも政府が私たちを統制するかなのです。
この闘争は、アメリカ国民のアイデンティティーの一部です。
アメリカは反乱の中から生まれました。
イギリス政府はアメリカ人の生活を
はなはだしく拘束したからです。
私たちはそこから解放され
自由を守るため政府の制度を作りました。
アメリカの歴史は、絶え間のない闘争で
この価値観を守ってきたことがわかります。
私たちは今またそのような闘争の局面にいます。
(エドワード・スノーデン:NSA内部告発者)
最近の内部告発で、アメリカ政府には
巨大な監視機構が存在することがわかってきました。
この機構は私たちの自由を浸食しています。
皆さんが、これは問題だと思うなら、
ご自身の選挙区の国会議員に伝えて下さい。
アメリカ国民の通信・通話を監視することを
やめるように要請して下さい。
国家安全保障局(NSA)の監視機構が
私たち市民の自由を浸食していくのを、
私は黙って見ているわけにはいきません。
みなさんもです。
(監視機構を止めるように議会に伝えましょう。)
(署名に参加しましょう。)
 
Oliver Stone: Director, Producer, Screenwriter
Let me ask you a very simple question.
Does it concern you that the government is spying on you?
Thirty years ago to even ask this question would have been a scandal.
If you live through Watergate,
if you read the Church Committee reports,
you know the costs of unchecked government surveillance.
The government is exploiting our amnesia.
We did not pass the fourth amendment
in order to protect those for something to hide.
We passed that amendment which prohibits
general warrants or limitless surveillance,
because we know, all too well,
the cost of unaccountable government.
The question is not "Do you have something to hide?"
The question is whether we control government
or the government controls us.
Remember this struggle is part of who we are as a people.
This country was born in rebellion
because the British government was exerting
too much control over American lives.
We broke free and began to create
a system of government meant to protect liberty.
Our national history reveals a constant struggle
to stay true to this value.
We face one of those moments of struggle right now.
Edward Snowden: NSA Whistleblower
Recent leaks have given us a glimpse
into  our government’s gigantic surveillance machine.
It’s a machine that is eating our freedom.
If this concerns you and it should,
we need to contact your representatives in Congress now.
Ask them to end the tracking
of Americans’ domestic communications.
I won’t stand idly by
while our civil liberties are eaten
by the NSA surveillance machine.
You shouldn’t, either.
Tell Congress: We Need To Stop The Surveillance Machine
Sign The Petition Now At:
aclu.org/secure/stopNSA
ACLU

(書き起こし、翻訳:酒井泰幸 協力:乗松聡子)

Wednesday, July 17, 2013

「動物農場」:オーウェルの真意 ‘Animal Farm’: What Orwell Really Meant

 ソ連が崩壊した今でも、オーウェルが『動物農場』に込めたメッセージは色あせていない。オーウェルがこの寓話に込めた教訓は、具体的なスターリン批判を超えて、あらゆる権力は腐敗するという普遍的なものであったということが、彼の残した手紙の中に語られていた。
 いま日本で進行しつつあるのは、オーウェルが動物農場で描こうとした、権力欲の深い人々に率いられた共謀的な革命ではないのか。現状を失いたくないと考える日本の人々は、悲観的になって、アベノミクスより他に「仕方がない」、つまり手放しの資本主義以外に選択肢はないと思い込んでいる。憲法が解体されようとしているのに、日本人は地に足の付いた感覚を忘れている。人に優しい独裁主義などというものは存在しない。
 書評誌ニューヨーク・レビュー・オブ・ブックスに、刊行予定のオーウェル書簡集の予告としてその一部が掲載された。
(前文、翻訳:酒井泰幸)

「動物農場」:オーウェルの真意
2013年7月11日
ジョージ・オーウェル

http://www.nybooks.com/articles/archives/2013/jul/11/animal-farm-what-orwell-really-meant/

以下は、ジョージ・オーウェルがドワイト・マクドナルドに宛てた手紙からの抜粋で、アメリカで動物農場が出版されて間もない1946年12月に書かれた。この書簡集の編者、ピーター・デービソンによれば、マクドナルドはオーウェルに次のように書いたという。(脚注もデービソンによる。)
 

  • 彼[ドワイト・マクドナルド]が知る反スターリン主義の知識人たちが主張したのは、『動物農場』の喩えは、革命はいつも負け犬にとって惨めな形で終わるので、「革命を非難して現状の方を是認することになる」という意味だということだった。彼[マクドナルド]自身は、この本はロシアだけを対象にしていて、革命の哲学についてのより広い意見は含んでいないように読んだ。「私の知る左派の何人もが、誰に言われるともなく自らの意見として、口々にこの同じ批判をしたことに強い印象を受けました。なぜなら、私がこの本を読んだとき、そんなふうに思いもしなかったし、いまでもそうは思っていないからです。どちらの見方があなた自身の意図に近いとおっしゃるのでしょうか。」
オーウェルの返答は、8月にLiveright社から刊行予定の『George Orwell: Life in Letters(ジョージ・オーウェル:手紙に見る人生)』に収録される。


動物農場へのご質問に関する返答:
もちろん私は第一にロシア革命に対する風刺を意図していました。しかし私はそれがより広い適用範囲を持つことをこそ意図し、その種の(自覚していないが権力欲の深い人々に率いられた、暴力的・共謀的な)革命は、支配者を取り替えることにしかならないのだということをも意図しました。大衆が油断せず、指導者たちが役目を終えたらすぐに追い出す方法を知っている時にだけ、革命が抜本的な改善につながるということを、この話の教訓にしようと意図していました。物語の転換点は、豚たちがミルクとリンゴを自分たちのために確保した時(クロンシュタットの反乱)だったということになります。
1) その時、もし他の動物たちが地に足の付いた感覚を持っていたなら、物事は上手くいっていたでしょう。もし人々が、自分は「現状」を失いたくないと考えるなら、それはつまり、人々は悲観的になって、独裁主義や手放しの資本主義以外に選択肢はないと思い込んでいるのだと、私は思います。トロツキー派の人々の場合、1926年頃までのソ連で起きた出来事に責任を感じており、その頃を境に突如として退行が起こったと思わざるをえないという別の問題が加わります。しかし実は、この成り行き全体は予測可能だったと思いますし、バートランド・ラッセルのような何人かの人々は、ボルシェビキ党の性格そのものからこれを予見していました。私が言おうとしたことは、「自分で成し遂げるのでなければ革命を手にすることは出来ない。優しい独裁主義などというものは存在しない」ということでした。2)
ジョージ・オーウェル(アメリカ初版2013年)
 

注1) クロンシュタットとは、フィンランドまで数マイルの距離にあるサンクトペテルブルクの入り口を守る海軍基地で、1704年にピョートル大帝によって築かれた。「動物農場」の転換点は1921年のはじめにここで起きた出来事に関係している。食糧不足と圧政により、レニングラード[現在のサンクトペテルブルグ]で一連のストライキが発生し、3月にストライキはクロンシュタット海軍基地の水兵に援護を受けた。革命支持者が自分たちの政府に反対しただけでなく、1917 年革命を成功に導いた都市当局と海軍軍人による反乱という意味で、これは最初の重大な反乱だった。トロツキーとミハイル・トゥハチェフスキー(1893〜1937年)は 反乱を鎮圧したが、反乱軍によって被った損害は無駄にはならなかった。間もなく、改革の必要を認めた新経済政策が発表された。トゥハチェフスキーは1935年にソビエト連邦の元帥に任命されたが、2年後に彼はスターリンの粛正で処刑された。ラジオドラマ版の脚本の提出まで1週間ほどに迫っていた時、マクドナルドが動物農場で「転換点」の重要性を分からなかったという事実が、オーウェルがラジオドラマ版で「転換点」を強調した理由だったのかもしれない。彼は次の会話を加えている。

 クローバー:リンゴを着服するなんてフェアだと思うかい?
 モリー:なんだって、リンゴをみんな自分の懐に入れたのか?
 ムリエル:俺たちには1個も無しかよ?
 牛:平等に分けてくれると思ったのに。

残念ながら、レイナー・ヘッペンスタールは放送時にこれらの台詞を脚本から削除した。

注2) 1946年9月6日、イヴォンヌ・ダヴェからオーウェルへの手紙で、動物農場のフランス語版のタイトルを最初は『URSA—Union des Républiques Socialistes Animales[動物社会主義共和国連邦](=熊のURSA)』にしようと決めたと彼女は書いたが、「残念だが、スターリン主義者たちを刺激しすぎることを避けるため」変更された。



(参考)
『動物農場』全文の日本語訳はここで読むことができます。
http://blog.livedoor.jp/blackcode/archives/1518842.html

Monday, July 15, 2013

もうすぐ来日するオリバー・ストーン、ピーター・カズニックによる「ファイナンシャル・タイムズ」誌寄稿: オバマは暗黒の未来の土台を作っている Oliver Stone and Peter Kuznick: Obama is laying the foundations of a dystopian future (Financial Times)

昨年秋に発表され世界中で大反響を呼んでいるドキュメンタリー10部作と本『The Untold History of the United States (語られなかった米国史)』の共作者、映画監督オリバー・ストーン氏、アメリカン大学歴史学教授ピーター・カズニック氏が8月4日、広島、長崎、東京、沖縄を訪れる(来日サイトはここhttp://peacephilosophy.blogspot.ca/2013/06/blog-post_10.html)。その二氏による、『ファイナンシャル・タイムズ』へのホットな寄稿(7月10日掲載)を和訳で紹介する。(翻訳: 酒井泰幸)


Obama is laying the foundations of a dystopian future


オバマは暗黒の未来の土台を作っている 
オリバー・ストーン、ピーター・カズニック

 オバマの後継者たちは、どこの誰でも標的にすることができるようになると、オリバー・ストーンとピーター・カズニックは語る。

 戦争と人権無視というジョージ・W・ブッシュの政策のせいでアメリカは国際社会ののけ者になったが、選挙運動中にバラク・オバマは、これを厳しく非難した。私たちにとってオバマが候補者として魅力的だったのは、彼が透明性を約束し、イラク戦争に反対し、軍国主義に決別したからでもあった。だからこそ失望を感じないわけにはいかない。

 オバマ氏は今、彼が攻撃した思想のいくつかを擁護し、さらにエスカレートさせている。これは私たちのような左派の批判者の視点とは異なるものだ。ブッシュ氏の報道官だったアリ・フライシャーは、「ジョージ・ブッシュが第4期目を勤めているようなものだ…(オバマ氏は偽善者だ」と語った。実は、この言い方には少し深みが欠けている。この大統領はネオコン政策の中心的要素を破棄したのだから。

 現政権は多少なりとも、拷問を止め、イラクから軍隊を引き上げ、アフガニスタンからの撤退に向けた工程表を定め、核廃絶のリップサービスを行い、イランへの侵攻を拒否した。オバマ大統領はシリアでの調停について、ワシントンのほとんどの政治家よりも懐疑的な態度をとってきた。彼はグアンタナモを閉鎖する道も探ったが、こちらは今のところ実を結びそうにない。

 だから、そう、彼はブッシュ氏ではないのだ。しかし、オバマ氏は、重要な点で、実際は前任者よりもたちが悪いということを主張しておかねばならない。内部告発者のエドワード・スノーデン氏による暴露から分かるのは、セキュリティー権限を持つ百万人以上のアメリカ人たちが、どれほど網羅的な監視能力を持っているかということだ。この集団は、国内外の人々をこれまで想像もできなかった規模で監視することを任務としている。

 オバマ氏は、流れていく膨大なデータと、データセンターが満杯になるほど蓄積された過去の記録が悪用されないように、たとえば外国諜報活動監視法廷のような歯止めがなされていると主張する。しかしこの団体は「めくら判」を乱発しているように見える。昨年おこなわれた申請のすべてに承認を与え、2008年から2012までの間に提出された8591件の申請のうち、却下されたのはたった2件だけである。

 それでも、この巨大な力を悪用しないというホワイトハウスの言葉を素直に受け取ることにしよう。オバマ氏の善意を信じることにしよう。だがもし、国家安全保障局(NSA)を通り抜けていく何兆ものEメールや写真、音声通話に網を掛けることをオバマ政権が望まないとしても、そうしたいと望む者がどこかに必ずいる。このようなデータをいちど収集すれば、いずれ閲覧され利用されることは間違いない。その誘惑はあまりに強い。

 これが真実であることは、1935年から1972年まで連邦捜査局(FBI)長官を務めたジョン・エドガー・フーヴァーの、長く不名誉な職歴がよく示している。彼はマーティン・ルーサー・キング・ジュニア牧師を監視下に置いたが、これは彼が失墜を目論んだ何人もの市民運動指導者のほんの一例に過ぎない。この国の将来の指導者たちは、抗議デモの参加者を却けるために放水銃と催涙ガスに頼らなくてもすむ。盗聴器を仕掛ける必要すらない。NSAは今、東ドイツのシュタージ[訳者註:秘密警察・諜報機関である国家保安省]が夢見ることしかできなかったような通信傍受装置を手にしているのだ。

 さらに、巧妙な弾圧が上手くいかず強制力が必要となるとき、オバマ氏とその後継者たちは、だれでもどこでも標的にできる正確無比な必殺の手段を手にすることになる。アメリカは、陸、海、空、宇宙、そしてサイバー空間の、全領域を覆う絶対的支配権を確立しようとしている。

 私達はこれが形をなし始めるのを見てきた。オバマ氏は毎週届く「処刑リスト」を読みふけっている。彼は誰を無人機の標的にするかを選ぶ。もっと改良された新型の無人機を急ピッチで開発しているのはアメリカだけではない。だがこれらの計画が、抹殺するよりも多くのテロリストを生み出しているという事実を、オバマ氏と彼の顧問たちはほとんど心に留めることがない。無人機によって何千人もが殺害されたパキスタンほど、アメリカが憎まれている場所はない。

 さらに、アメリカの技術的優位性は、アメリカを守ってはくれない。ハリー・トルーマン大統領は1940年代に、ソビエト連邦が核兵器を作るのはまだ遠い先のことで、アメリカは長期にわたって核を独占できると信じていた。しかし独占は1949年までしか続かなかった。もしアメリカが無人機を世界中に配備し、宇宙に兵器を送り込み、あるいはサイバー戦争を常態化させるなら、アメリカは同様の誤算を犯すだろう。

 オバマ氏は、人当たりが良く有能なアメリカ帝国の経営者になった。そして彼は、国家安全保障の名の下に、全領域の監視と全領域の軍事支配を組み合わせて、ぞっとするような暗黒の未来への土台を作っているのだ。

 オバマ氏が勇気あるスノーデン氏を世界の果てまで執拗に追い詰めるのは、このような恥ずべき行いの最も新しい一例である。ジャン=ポール・サルトルがアメリカ人にこう語ったのは、ちょうど60年前のことだった。「あなた方の国は恐怖で病んでいます…、ヨーロッパの一端からもう一方の端に向かって、私達がこう叫んでも驚かないで下さい。気をつけろ!アメリカは狂犬病にかかった!アメリカとの繋がりを全て断つのだ。さもなければ、私達はアメリカに咬まれて気が狂ってしまうぞ。」

 オバマ氏のもとでは、ハンガーストライキを行っても強制的に栄養を注入され[訳者注:グアンタナモ収容所で起こっていること]、内部告発者は残酷無比なやり方で告訴される。かつての誇り高きアメリカ共和国の棺桶に最後の釘を打ち込む前に、オバマ氏は狂いを生じた政策を再び正常に戻さなければならない。


 オリバー・ストーンはアカデミー賞受賞作家・監督である。ピーター・カズニックはアメリカン大学の歴史学教授である。ドキュメンタリー・シリーズ「オリバー・ストーンが語る もうひとつのアメリカ史(The Untold History of the United States)」は二人の共著である。

Friday, July 12, 2013

「ペンタゴン・ペーパー」で知られるダニエル・エルズバーグ氏によるワシントン・ポスト紙への寄稿:アメリカを脱出したスノーデン氏は正しかった Daniel Ellsberg's Op-Ed to Washington Post: Snowden made the right call when he fled the U.S.


 アメリカ国家安全保障局(NSA)の機密文書をリークして、現在は亡命を求めて出国しているエドワード・スノーデン氏に、かつてベトナム戦争に関する機密文書「ペンタゴン・ペーパーズ」を暴露したために逮捕され裁判を闘ったダニエル・エルズバーグ氏がワシントンポストにコメントを寄せる。権力が腐敗するように、秘密主義は腐敗する。このような機密情報のリークは、昔も今も、自由な報道と私たち民衆の血液なのだ。司法の現状は当時より悪化しているので、スノーデン氏は米国内に留まるべきではないとする。私たちはスノーデン氏が与えてくれたチャンスを生かすことが出来るだろうか。
 エルズバーグ氏が警告するネット社会の監視とプライバシーの無効化は、国境に関係なく日本でも進んでいる。またそれを企んでいるのは国家や公安組織にとどまらず、私たちの行動記録を単に「ビッグデータ」と呼んで収益を吸い取ろうとする企業が群がっている。シェア獲得競争を勝ち抜くため、企業は知的財産権を盾に秘密主義で行動する。したがってエルズバーグ氏が指摘するように、秘密主義はやがて腐敗し、私たち個人の存在を際限なく切り崩して売買し、監視のために利用するようになるだろう。
 秘密主義の組織や企業が腐敗するのは、原子力を見ても明らかだ。1954年に日本学術会議は、原子力に対する政府の態度を非難し、核兵器研究の拒否と原子力研究にあたっての三原則(自主・民主・公開)遵守を声明したが、実際に政府が推し進めた原子力政策は、秘密で覆い尽くされた原子力ムラを生み出した。核武装という秘密の意図を隠すため、秘密主義が膨張し、そして腐敗したのだ。
(前文、翻訳:酒井泰幸)

アメリカを脱出したスノーデン氏は正しかった

ダニエル・エルズバーグ


 ダニエル・エルズバーグは「Secrets: A Memoir of Vietnam and the Pentagon Papers (秘密:ベトナムとペンタゴン・ペーパーズの回顧録)」の著者である。彼は1971年に、窃盗と、ペンタゴン・ペーパーズの複写に関する謀議、スパイ活動法違反の容疑をかけられた。この裁判は、違法な盗聴をはじめとする政府の不正行為の証拠が提出されると、1973年に免訴となった。


 多くの人々はエドワード・スノーデン氏と私を比べようとする。私のように裁判を受けるのではなく、彼がアメリカを出国して亡命を求めたことを非難する。私はこれに賛同できない。私がいた国は、遙か昔の、今とは違うアメリカだった。

 ニューヨーク・タイムズがペンタゴン・ペーパーズの公表を禁じられ(1971615日、新聞に対する事前の規制はアメリカ史上初のことだった)、ワシントン・ポストにも文書のコピーを渡すと(こちらも発行禁止になるのだが)、私は妻のパトリシアといっしょに13日にわたって地下に潜伏した。私の目的は、スノーデン氏が香港に飛んだのと全く同じように、FBIに知られていない何人もの仲間たちの助けを借りて、私がペンタゴン・ペーパーズを他の新聞17紙に次々と配布する手はずを整えるあいだ、監視の目を逃れるためだった。別の2紙も発行差し止めを受けていた。この間の最後の3日間は逮捕令状を無視しての潜伏だった。現在のスノーデン氏のように、私は「法からの逃亡者」だったのだ。

 しかし、前日の夜にペンタゴン・ペーパーズの最後のコピーを手渡して、私がボストンに出頭し逮捕されると、同日のうちに私は誓約保証金を払って釈放された。その後、私の容疑が最初の3件から12に増え、刑期の合計が最長115年にもなると、私の誓約保証金は5万ドルに引き上げられた。しかし起訴されていた2年の間、私はメディアや集会、講演会で自由に発言することができた。何といっても私は、長引く[ベトナム]戦争に反対する運動に参加していたのだ。その戦争を終わらせるための力になることが、私の第一の関心事だった。これはアメリカの外では出来なかっただろうし、アメリカを出ることなど私の念頭にはなかった。

 あの体験が今日の世界で再現されることはあり得ない。リチャード・ニクソン時代には明らかに犯罪行為であったような、被告人を不利にするためのホワイトハウスの行為が露見したことぐらいで、裁判が打ち切られるなど言わずもがなである。ニクソンはその結果、弾劾され辞任に追い込まれたが、今日では、私の「社会的権利を全て剥奪する」ことも含め、そのような行為はすべて合法と見なされている。

 スノーデン氏の暴露が私たちの民主主義を救う運動に火を付けることを私は期待しているが、彼がアメリカに留まっていたら運動に参加することは出来ないだろう。彼が今アメリカに戻れば保釈を許される可能性は一切なく、そもそも彼がアメリカを出国しなかったとしても、保釈される可能性はほとんどない。彼はその代わりにブラッドリー・マニング陸軍一等兵[米軍機密をウィキリークスに大量リークした米軍情報分析官]のように独房に監禁されるだろう。

 マニング一等兵の裁判が最近になってやっと始まる前に収監されていた3年の中で、特にひどい扱いを受けた8ヶ月よりもさらに長い間、スノーデン氏が完全な隔離のもとに監禁されるのはほぼ確実だろう。拷問に関する国連特別報告官は、マニング一等兵の置かれた状況を「残酷で、非人道的、自尊心を傷つける」ものだと表現した。(その現実的な見解はそれ自体、多くの国々がスノーデン氏に亡命を認める根拠となっている。アメリカからの嫌がらせと賄賂に屈しなければの話だが。

 スノーデン氏は自分が何も悪いことをしていないと確信している。私はこれに全面的に賛同する。私がペンタゴン・ペーパーズを無断で公表してから40年以上がたつが、このようなリークは今も自由な報道と私たち民衆の血液であり続けている。ペンタゴン・ペーパーズとスノーデン氏のリークから、一つの明快な教訓が浮かび上がる。権力が腐敗するように、秘密主義は腐敗するのだ。

 私の場合、ペンタゴンとランド研究所[軍事戦略の研究機関]で最高機密文書を職権で閲覧することができた。私が公表した後それらはペンタゴン・ペーパーズとして知られるようになった。私はその文書から、アメリカの議会と国民は歴代の大統領に嘘をつかれ、そして引きずり込まれた望みのない泥沼の戦争は、最初から違法だったということを知った。

 スノーデン氏は、国家安全保障局(NSA)に発する、もっと高度に機密指定された文書に接して当惑し、今回そのいくつかを選んで公表した。スノーデン氏が働いていたこの監視機関の、全てを吸い取ろうとするその意図は、「世界中のあらゆる会話や通信、あらゆる形の行動記録を、自らの知るところにする」ことだったと、彼はガーディアン紙のグレン・グリーンウォルド記者に語った。

 それは 、「全てを知る」ことを目的とした、スターリン体制の「ドイツ民主共和国[東ドイツ]」の国家保安省であるシュタージを、実質的に全地球規模へと拡大したものである。しかし、NSAが傍受している携帯電話や光ファイバー網、パソコン、インターネット通信は、シュタージの全盛時代には存在しなかった。

 スノーデン氏がガーディアン紙に語ったように、「この国は死んでも守る価値がある。」必要なら投獄も辞さない。たとえ死ぬまで出られないとしても。

 しかし、アメリカ憲法の修正第1条[信教、言論、出版、集会の自由、請願権]、修正第4条[不合理な捜索、逮捕、押収の禁止]、修正第5条[大陪審の保障、二重の処罰の禁止、適正手続、財産権の保障]を回復する高邁な理想のためにスノーデン氏がおこなった貢献は、彼が公表した文書の中にこそある。このことは、彼の名声、彼の性格や動機に対する憶測、ましてや現在掛けられている容疑に反論するために法廷に立つかどうか、あるいは残りの人生を彼が刑務所で過ごすかどうかとは無関係である。私の意見では、現在の司法の状況を考えれば、スノーデン氏が自発的にアメリカ当局に投降しても、何も価値のあることには結びつかないだろうと思う。

 彼が安全な場所を見つけることが出来て、アメリカ特殊部隊による誘拐や暗殺の危険が可能な限り低く、なるべく自由に発言できる場所であることを、私は望む。

 彼が私達に与えてくれたのは、絶好のチャンスなのだ。行政府と諜報機関、つまり、ユナイテッド・シュタージ・オブ・アメリカに、あらゆる実質的な権力を引き渡してしまう制御不能の監視網から、私たち自身を救い出すチャンスなのだ。もし私達に、彼のもたらした情報と、彼の困難に応じる用意があるなら。




Wednesday, July 03, 2013

「核の傘」の下で核廃絶を叫ぶ滑稽

環境法律家協会(JELF)の機関紙、『環境と正義』の7月号の巻頭エッセイに寄稿させていただきました。許可を得てここに転載します。@PeacePhilosophy