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Thursday, April 28, 2016

ジョン・ピルジャー:なぜヒラリー・クリントンはドナルド・トランプよりも危険なのか John Pilger: Why Hillary Clinton is More Dangerous Than Donald Trump (Japanese translation)

 2016年のアメリカ大統領選挙は、民主党のヒラリー・クリントンと共和党のドナルド・トランプの対決となる公算が強まってきた。この2人の対決は何を意味するのか。これは日本に住んでいると見えにくい。ブッシュを出した共和党は保守主義でタカ派の軍事主義者、オバマの民主党は自由主義(リベラル)でハト派の平和主義者なのだろうか?この先入観に反して、オバマ政権では軍事費が過去最高に増大し、世界を覆う基地のネットワークは強化され、ドローンを使った一方的な戦争が仕掛けられている。民主党であろうと共和党であろうと軍事力を使って世界を支配しようとする点で違いはなく、軍事主義に対抗する勢力は二大政党システムに存在しない。異端と見なされるトランプより、むしろクリントンの方が、アメリカに通底する例外主義(アメリカだけは他の国々と違い、何をやっても許されるという考え)を代表している。
 この世界の真実から人々の目をそらしておくために、まやかしが流布される。人々の生存を脅かす暴力に対抗していくためには、メディアによるチェックと民衆の直接行動が、かつて無いほどに重要性を増している。
 ジョン・ピルジャーがシドニー大学で「世界大戦は始まった」と題して行った講演を、オーストラリアの独立ニュースサイトであるニュー・マチルダが編集して掲載したものを、翻訳して紹介する。
 原文は、
https://newmatilda.com/2016/03/23/john-pilger-why-hillary-clinton-is-more-dangerous-than-donald-trump/
(前文、翻訳:酒井泰幸、翻訳協力:乗松聡子)



米大統領民主党候補ヒラリー・クリントン(画像: アメリカ大使館, Flickr)

なぜヒラリー・クリントンはドナルド・トランプよりも危険なのか

ジョン・ピルジャー、2016年3月23日


私はオーストラリアの北の、太平洋の真ん中に位置するマーシャル諸島で、映画の撮影をしている。私が行ってきた場所のことを話すと、人々はいつも「どこですか、それは?」と聞いてくる。手掛かりに「ビキニ」のことを話すと、「水着のことですね」と返ってくる。

ビキニ水着が、ビキニ島を破壊した核爆発をほめたたえるために名付けられたということを知っている人はほとんどいないように見える。1946年から1958年までの間にマーシャル諸島でアメリカの手により66の核爆発装置が起爆されたが、それは12年にわたり毎日1.6個の広島型爆弾が爆発したのに等しい。

現在のビキニは静かで、突然変異し、汚染されている。ヤシの木が奇妙な格子状に生えている。動くものはない。鳥は一匹もいない。古い墓地の墓標は放射能に充ち満ちている。私の靴をガイガーカウンターが「危険あり」と示していた。

私は砂浜に立って、太平洋のエメラルドグリーンが巨大な黒い穴へと落ち込んでいるのを見た。これは「ブラボー」と名付けられた水素爆弾が残したクレーターだった。その爆発は、人々と彼らが暮らしている環境を、何百キロ彼方まで、おそらく永遠に毒で汚染した。


そこからの帰路、私はホノルル空港に立ち寄り『女性の健康』というアメリカの雑誌に目をとめた。表紙にはビキニ水着を着た女性が微笑み、「あなたもビキニボディになれる」という見出しが躍っていた。数日前にマーシャル諸島で、私はかなり違った種類の「ビキニボディ」を持つ女性たちにインタビューしたばかりで、みな甲状腺がんなど命に関わるがんを患っていた。

その雑誌の微笑む女性とは違って、彼女らはみな貧しかった。史上最も危険で飽くことを知らぬ超大国の、犠牲者でありモルモットだった。

私はこの経験を、私たちのあまりにも多くを飲み込んでいるまやかし[distraction、注意をそらすもの]を挫くための警告として語る。近代プロパガンダの創始者であるエドワード・バーネイズはこの現象を、民主社会の「習慣と世論の、意識的で利口な操作」と表現した。彼はそれを「見えない支配」と呼んだ。

いったい何人が、世界大戦が始まったということに気付いているだろうか?今のところ、それはプロパガンダの戦争、嘘とまやかしの戦争だが、最初の誤った命令、ミサイルの一撃によって、これは瞬時に変化しうる。

2009年にオバマ大統領は、ヨーロッパの中心であるプラハの真ん中で、熱狂的な群衆の前に立った。彼は「核兵器のない世界」を作ることを誓った。人々は喝采を送り、泣き出す者もいた。メディアは陳腐な決まり文句を垂れ流した。オバマはその後、ノーベル平和賞を受けた。

全ては見せ掛けだった。彼は嘘をついていた。

US president Barack Obama. (IMAGE: whoohoo120, Flickr)
アメリカ大統領バラク・オバマ(画像: whoohoo120, Flickr)
オバマ政権が作ったのは、より多くの核兵器、核弾頭、核兵器運搬システム、核兵器工場だ。核弾頭への支出だけをとっても、オバマ政権下では他のどのアメリカ大統領よりも高く上昇した。[オバマが提唱する核兵器近代化計画のため]30年間で費やす費用は1兆ドル[約百兆円]以上になる。

ミニ核爆弾が計画されている。B61モデル12と呼ばれるものだ。そのようなものは今までなかった。元米統合参謀本部副議長のジェームズ・カートライト大将は、「小型化すれば[この核]兵器[の使用]はもっと考えやすくなる」と語っている。

この18ヶ月で、第二次世界大戦以後で最大規模の、アメリカが主導する軍事力増強が、ロシアの西部辺境沿いに起こっている。ヒトラーがソビエト連邦に侵攻して以来、外国の軍隊がロシアに対してこのように明白な脅威を示したことはなかった。

かつてソビエト連邦の一部だったウクライナは、CIAのテーマパークになった。キエフでのクーデターを画策したアメリカ政府は、ロシアのすぐ隣にあってロシアに敵対する政権を実質的に支配している。文字通りナチスで腐敗した政権だ。ウクライナの代表的な国会議員たちは、悪名高いOUN[ウクライナ民族主義者組織]やUPA[ウクライナ蜂起軍]のファシストたちの政治的子孫だ。彼らは大っぴらにヒトラーを賛美し、ロシア語を話す少数派を迫害し追放せよと叫ぶ。

このことは西側ではほとんどニュースにならないか、真実を隠すために反対のことが報道される。

ロシアの隣国ラトビア、リトアニア、エストニアでは、アメリカ軍が戦闘部隊、戦車、重火器を配備している。世界第2の核大国に対するこの極端な挑発は、西側では黙殺されている。

核戦争の見通しをさらに危険なものにしているのは、中国に対する同時作戦だ。

中国が「脅威」と呼ばれない日はほとんど無い。アメリカ太平洋軍司令官のハリー・ハリス海軍大将によれば、中国は「南シナ海で砂の長城を建設している」。

彼が指しているのは、中国が南沙諸島に飛行場を建設していることで、フィリピンとの間で論争の種になっているが、ワシントンがマニラの政府に圧力をかけて賄賂を渡し、ペンタゴンが「航行の自由」という名のプロパガンダ作戦を打ち上げるまで、これは優先度の低い論争だった。

これは本当は何を意味するのだろうか?それは、アメリカの軍艦が中国の沿岸水域を巡回し支配する自由を意味するのだ。中国の軍艦がカリフォルニア沖で同じことを行ったらアメリカがどう反応するか、想像してみるが良い。

私は『The War You Don't See』(見えない戦争)という映画を作ったが、その中で私は、アメリカとイギリスの著名なジャーナリストたちにインタビューした。CBSのダン・ラザー、BBCのラゲ・オマール、オブザーバー紙のデヴィッド・ローズのような記者たちだ。

彼ら全員が言ったのは、ジャーナリストと放送局がきちんと仕事をして、サダム・フセインが大量破壊兵器を持っているというプロパガンダに疑問を突きつけ、ジョージ・W・ブッシュとトニー・ブレアの嘘をジャーナリストが大声で繰り返すことがなければ、2003年のイラク侵攻は起きなかったかもしれないし、何十万人もの男女と子供たちは今も生きていたかもしれないということだった。

ロシアや中国に対する戦争の準備をするプロパガンダも要は同じである。私の知る限り、たとえばダン・ラザーのような西側の「主流」ジャーナリストの誰一人として、なぜ中国が南シナ海の飛行場を建設しているかを問う者はいない。

その答はまぶしいほどに明白だろう。アメリカは弾道ミサイル、戦闘部隊、核武装爆撃機を有する基地のネットワークで中国を取り囲んでいる。

この死を招く弧は、オーストラリアから太平洋の島々に沿ってマリアナ諸島、マーシャル諸島、グアム、そしてフィリピン、タイ、沖縄、韓国に延び、ユーラシア大陸を横切ってアフガニスタン、インドへと続いている。アメリカは中国の首に縄を結び付けたのだ。これはニュースにならない。メディアによる沈黙、メディアによる戦争だ。

2015年には極秘のうちに、アメリカとオーストラリアが「タリスマン・セーバー(Talisman Sabre)」と呼ばれる単一では近年で最大の海空軍事演習を実施した。その目的は、マラッカ海峡やロンボク海峡のようなシーレーンを封鎖し、中国が石油、ガスその他の重要な原材料を中東とアフリカから入手できないようにするAir-Sea Battle(空海統合戦略)計画をリハーサルすることだった。


Donald Trump speaking at the 2015 Conservative Political Action Conference (CPAC) in National Harbor, Maryland. (IMAGE: Gage Skidmore, Flickr).
メリーランド州ナショナルハーバーで開催された2015年の保守政治活動協議会(CPAC)で演説する
ドナルド・トランプ(画像: Gage Skidmore, Flickr)
アメリカ大統領選挙戦というサーカスで、ドナルド・トランプは変人、ファシストとして紹介されている。彼は確かに不愉快な人物だが、彼はメディアの憎悪対象でもある。このことだけでも、我々は怪しいと思うべきだ。

トランプの移民観は異様だが、デーヴィッド・キャメロン[第75代イギリス首相]の見解より異様というわけではない。最も精力的にアメリカからの強制送還を押し進めているのはトランプではなく、ノーベル平和賞受賞者のバラク・オバマだ。

ある重鎮リベラル派コメンテーターによると、トランプはアメリカで「暗黒の暴力的勢力を解き放とうとしている」そうだ。「解き放つ」だって?

この国はすでに、よちよち歩きの幼児が母親を銃で撃ち、警察が黒人に殺人的戦争を仕掛けるような国なのだ。この国は50を超える外国政権を(その多くは民主主義国家だったが)攻撃して転覆させようとしてきた。この国はアジアから中東までを爆撃して何百万もの人々の命を奪い、住む場所を奪ってきたのだ。

他のどの国も、この国の組織的暴力の歴史には太刀打ちできない。アメリカの戦争は(ほぼ全て無防備な国に対するものだが)ほとんどが共和党ではなく民主党のリベラル派大統領によって開始されている。トルーマン、ケネディ、ジョンソン、カーター、クリントン、オバマ。

1947年に、アメリカ国家安全保障会議の一連の命令は、アメリカ外交政策の主要な目的を「[アメリカ]自身のイメージに従って実質的に作り直された世界」と表現した。そのイデオロギーは救世主的アメリカ主義だった。人類はみなアメリカ人だ。さもなくば。異教徒は改宗させ、転覆させ、賄賂を与え、名誉を貶め、押し潰す。

ドナルド・トランプはこのようなアメリカ症候群の一つの現れではあるが、彼は異端者でもある。彼はイラク侵略が犯罪だったと言い、彼はロシアや中国と戦争したいとは思っていない。我々一般人にとっての危険はトランプではなく、ヒラリー・クリントンだ。彼女は異端者などではない。アメリカというシステムが誇りとする「例外主義」は、時折リベラルな顔を見せる全体主義なのであり、クリントンはそのシステムの根強さと暴力性を体現する存在だ。

大統領選挙の日が近付くにつれ、彼女の犯罪と嘘にもかかわらず、クリントンは初の女性大統領として歓呼されるだろう。ちょうどバラク・オバマが初の黒人大統領として賛美され、自由主義者が彼の「希望」についての戯言を鵜呑みにしたように。こうして口からよだれが流れ続ける。


new matilda, drone
アメリカの攻撃用ドローン(画像: Wikipedia)
ガーディアン紙コラムニストのオーウェン・ジョーンズが「楽しく、魅力的で、他のほぼ全ての政治家たちから身をかわすクールさを持っている」と評したオバマは、先日ドローンをソマリアに送り150人を虐殺した。ニューヨーク・タイムズによれば、彼はいつもドローンによる死の候補者リストが手渡される火曜日に人を殺す。何とクールな。

2008年の大統領選挙戦でヒラリー・クリントンは、イランを核兵器で「完全に抹消する」と脅した。オバマ政権の国務長官として、彼女はホンジュラスの民主政府の転覆に参加した。2011年のリビアの破壊に彼女が関与したときは、楽しそうと言ってもいいほどだった。リビアの指導者カダフィ大佐が公開の場で肛門をナイフで突かれたとき(これはアメリカの計画で可能になった殺人だったが)クリントンは彼の死をさも満足そうに眺めて、こう言った。「我らは来た、見た、彼は死んだ」。

クリントンに最も近い盟友の一人であるマデレーン・オルブライト元国務長官は、「ヒラリー」を支持していないという理由で若い女性たちを非難した。これは、50万人のイラクの子供たちの死を、「それだけの価値がある」と忌まわしくもテレビで祝福したのと、同じマデレーン・オルブライトだ。

クリントンの大口支援者の中には、イスラエルの圧力団体と、中東での暴力に油を注ぐ兵器会社がいる。彼女と夫はウォール街から巨額の金を受け取った。それでもなお、公認の悪魔、邪悪なトランプをやっつけ、女性を代表する候補者として、彼女は任命されそうな勢いだ。彼女の支持者たちには著名なフェミニストもいる。アメリカのグロリア・スタイネムやオーストラリアのアン・サマーズのような人々だ。

一世代前、今は「アイデンティティ・ポリティックス」と呼ばれるポストモダンのカルト宗教のせいで、知性あるリベラルな多くの人々が、支持する主義や人を厳しく吟味することを止めてしまった。たとえばオバマとクリントンのいんちき、あるいは国民を裏切って敵と手を組んだギリシャの急進左派連合のような偽の革新運動などは、吟味されねばならなかった。

自己陶酔、つまり一種の「ミーイズム」[自己中心主義]が、特権的な西側社会での新しい時代精神になり、戦争や、社会的不公正、不平等、人種差別、性差別に反対した、大規模な集団的運動が終焉する前兆となった。

現在、この長い眠りは終わったのかもしれない。若者たちは再び奮起しつつある。徐々に。イギリスでジェレミー・コービンを労働党の党首に推した数千人の人々は、この目覚めの一部で、それはバーニー・サンダース上院議員を支持して結集した人々も同様だ。

しかし先週イギリスで、ジェレミー・コービンに最も近い盟友で、彼の影の財務大臣、ジョン・マクドネルは、海賊的な銀行の負債を支払い、実質的にいわゆる緊縮経済を継続することを、労働党政権に約束した。

アメリカではバーニー・サンダースが、もしクリントンが指名されたら、その時には彼女を支持すると約束した。彼も、「正しい」と思うときには他国に対しアメリカが暴力を使用することに、賛成票を投じた。サンダースは、オバマは「すばらしい仕事をした」と言っている。

オーストラリアでは、ある種の「墓掘り人の政治」が行われている。そこでは長く退屈な国会の駆け引きがメディアで繰り広げられ、その間にも難民と先住民は迫害され、不平等が広がるとともに、戦争の危険が増大する。マルコム・ターンブル首相の政権が1950億ドルの防衛予算と呼ばれるものを発表したところだが、それは戦争に向かって突き進むためのものだ。討論はなかった。沈黙だけだった。

政党の拘束を受けない民衆の直接行動という素晴らしい伝統に何が起きたのか?より良く公正で、平和な世界に向かう長い道のりを歩み始めるために必要な勇気と想像力、献身はどこにあるのか?芸術、映画、演劇、文学の世界で、反体制派はどこにいるのか?
沈黙を打ち破る者たちはどこにいるのか?それとも、我々は最初の核ミサイルが発射されるまで待つとでもいうのだろうか?
(以上、翻訳終わり)

John Pilger

著者のジョン・ピルジャー(John Pilger) は、1939年オーストラリア生まれ、ロンド ン在住のジャーナリスト、ドキュメンタリー映画作家。50本以上のドキュメンタ リーを制作し、戦争報道に対して英国でジャーナリストに贈られる最高の栄誉「ジャーナリスト・オブ・ザ・イヤー」を2度受賞、記録映画に 対しては、フランスの「国境なき記者団」賞、米国のエミー賞、英国のリチャード・ディンブルビー賞などを受賞している。ベトナム、カンボ ジア、エジプト、インド、バングラデシュ、ビアフラなど世界各地の戦地に赴任した。邦訳著書には『世界の新しい支配者たち』(井上礼子訳、岩波書店)がある。また、過去記事は、デモクラシー・ナウTUPなどのサイトにも多数掲載されている。


関連投稿


ジョン・ピルジャー「今なぜファシズム台頭が再び問題になるのか」(2015年3月28日掲載)

http://peacephilosophy.blogspot.jp/2015/03/jon-pilger-why-rise-of-fascism-is-again.html


Tuesday, April 26, 2016

【声明】在日コリアン朝鮮籍者に対する出国時の誓約書署名要請に抗議する

レイバーネットにも掲載されましたが、モントリオールの仲間の起草した声明文にブログ運営者(乗松聡子)も賛同したものをここに紹介します。(5月3日、賛同者リストを更新しました)



「在日コリアン朝鮮籍者に対する出国時の誓約書署名要請に抗議する」

413日付東京新聞朝刊によると、法務省入国管理局は現在、在日コリアンの内、   朝鮮籍者に限って、日本から出国する時、北朝鮮に渡航しないことと、もし、渡航した場合は再入国が出来ないことを承知で出国すると書いてある誓約書に署名を要請している。そして、署名なしの出国は原則認めないとも言っている。これは北朝鮮への独自制裁の一環として始められたそうだが、朝鮮籍の在日コリアンのみに出国、再入国に制限をつけるのは法的にも、人権上でも大いに問題があるのではないか。

まず第一に「朝鮮籍」とは「北朝鮮籍」を意味しない。19475月に出された、天皇最後の勅令「外国人登録令」によって、当時は日本国籍を有していた日本国内の朝鮮人は外国人登録された。つまり、日本国籍を有しながら、外国人登録もされるという二重政策が適用された。この外国人登録の国籍欄に記されたのが「朝鮮」である。1952年サンフランシスコ講和条約発効と同時に在日朝鮮人は全て、日本国籍を無効にされて、出入国管理令、外国人登録法の対象となった。この時、朝鮮籍を韓国籍に変えた人もいたが、韓国籍に変える人が急増したのは1965年の日韓条約締結後である。韓国籍であれば通常の旅券を持ち、永住権も取れるから、現在は韓国籍の人が圧倒的に多いが、朝鮮籍を変えずに持ち続ける人も勿論いる。そして、朝鮮籍の元はこの1947年の外国人登録令に記載されたもので、現在の朝鮮民主主義人民共和国(19489月建国。以後、北朝鮮と略す)ではない。「朝鮮半島出身」を意味するのが朝鮮籍だ。

1910年の強制併合で朝鮮人は、否応も無く日本人とされ、日本の敗戦で独立した祖国は大国の思惑で分断され、1952年に自分達の意向に関わりなくその日本籍を剥奪され(他国を植民地支配した国で支配が終わった段階で国籍選択の権利を認めたところは多い)、日本籍なら当然受けられる諸権利を奪われ、その後も指紋押捺等々、政治で自らのアイデンティティーを翻弄され続けた人たちにとって、国籍は簡単な選択ではない。

東京新聞の記事にもある通り、家族の中で韓国籍、朝鮮籍が混在している家庭も多い。日本人の多くはそういう背景を知らない。しかし、日本政府は勿論、朝鮮籍の背景を良く知っている。本来ならば、政府が説明して、人々の誤解を解く責任があるのに、現政府のやっていることは、政府によるヘイトクライムではないのか。公権力が理屈に合わない差別を始めた時、どんな残虐なことが起こるかは歴史が証明している。ナチスが国内のユダヤ人の権利を制限し始めた時、民衆による、ユダヤ人の店の打ちこわしなどが頻発したことは良く知られている。1923年の関東大震災では植民地からの安い労働力として、日本に住んでいた数多の朝鮮人を官憲と民衆がいっしょになって虐殺したことを決して忘れてはいけない。21世紀の今まさかとは思うが、昨今のヘイトデモなどを見ると、 それが杞憂とは言い切れない。

国の政策は社会の空気に大きな影響を与える。私たちの住むカナダも第二次大戦中は日系カナダ人を強制収容所に入れるという無茶なことをした。カナダの先住民の子どもたちを親元から離して、寄宿学校に入れるなどという酷い強制同化政策が1870年代から一世紀以上も続いて、先住民社会に今も癒えぬ傷を残している。しかし、このような差別政策に対する深い反省から、カナダは多民族、多文化主義を国是として、多くの移民、難民を受け入れて来た。勿論、問題も失敗も多々あるし、これからも失敗はあるだろう。しかし、人種も、文化も、背負っている歴史も違う人たちがお互いの違いを認めながら、共存することは可能だし、人種差別は許容しないという価値観は多くのカナダ人に共有されていると思う。

カナダに住む日系の市民として、日本政府に朝鮮籍在日コリアンに対する出国時の誓約書署名、その他の差別政策を即時中止することを強く求める。そして、多くの日本人が在日コリアンといっしょに立ち上がって、政府の差別政策を撤回させることを希望する。マイノリティーの人権を守れない社会は誰の人権も守れないのだから。

モントリオール在住 長谷川澄  (連絡先:sumi.hasegawa@mcgill.ca)
バンクーバー在住 乗松聡子

(賛同者)
橋爪亮子 ケベック州 モントリオール
鈴木博子 ケベック州 モントリオール
山田修 オンタリオ州 リッチモンド
上坂美和子 ケベック州 ポイントクレア
大槻ともえ ケベック州 モントリオール
田中裕介 オンタリオ州 トロント
安藤かがり BC州 バンクーバー
原京子 BC州 サレイ
尼崎竜一 オンタリオ州 トロント
菊池幸工 オンタリオ州 トロント
Yoshiharu Kawashima ケベック州 モントリオール
井上美智子 BC州 バンクーバー

Thursday, April 21, 2016

Take Me with U




Prince is dead?
Should I even believe it?
He was with me in my troubled youth
Of course, just an average one
My youth, was about him.
Not that anyone cares
He was with me in solitude
He was with me in love
He and his music made my younger years
So much richer,
Richer than they would have been without
Not that I can even imagine without.
But I don't want to say thank you yet.
It is maybe one of those tricks he is playing on us.
RIP? Doesn't even sound right.
Don't say it!
A Minneapolis Genius.
I haven't even been to Minneapolis.
Maybe I will go some day.
With or without him.
Prince.
I don't own you
But I loved you.