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Thursday, November 21, 2024

December 7: バンクーバーで南京大虐殺追悼集会を開催します Nanjing Massacre Memorial Vigil will be held in Vancouver 南京大屠殺追悼會將在溫哥華舉行

私たちは「バンクーバー」と呼ばれる、先住民族のムスキウム、スコーミッシュ、ツレイワトゥッシュネイションの、盗まれた土地の上に存在する者たちです。

この12月で、1937年の南京大虐殺から87年になります。南京大虐殺とは、専門家の笠原十九司氏による定義は「日中全面戦争(1937-45年)の初期、1937年12月、中国の当時の首都・南京を攻撃・占領した日本軍が、中国軍の兵士・軍夫ならびに一般市民・難民に対しておこなった虐殺、及び中国人女性に対しておこなった凌辱、食料・物資・財産の略奪、人家・建物・施設の放火・破壊など、戦時国際法や国際人道法に反した不法・残虐行為の総体」です(『南京事件70周年国際シンポジウムの記録』日本評論社、2009より)。

私(ブログ運営人・乗松聡子)は2007年の南京大虐殺70周年のときに初めて南京を訪れて以来3回南京に行きました。地元バンクーバーでも、毎年この時期は、関連シンポジウム参加、追悼集会、映画会、海外の追悼集会との連携、などで、大日本帝国が行った残虐行為を忘れずに「ネバー・アゲイン」の誓いを、仲間と共に新たにしてきました。

きたる12月7日(土)午後5-7時、チャイナタウンの中華門前(50 East Pender St., Vancouver, BC) で、南京大虐殺87年の追悼集会を行います。カナダ9条の会、ピース・フィロソフィー・センター、Nikkei Vancouver for Justice など、日本にゆかりのあるグループや個人と、チャイナタウンにゆかりのある有志の仲間と共に企画しました。スピーチ、追悼の時間、パフォーマンスなどを予定しております。ぜひご参加ください。屋外ですので暖かい服装で来てください。雨天決行。お問い合わせは南京大虐殺追悼集会実行委員会まで nanjingvigil@gmail.com 



この行事に加え、「万人坑」の専門家である青木茂さんを迎えてのオンライン講演会を行います。こちらをご覧ください。

Wednesday, November 13, 2024

オンライン講演会 「万人坑」とはなにか~南京大虐殺の日に学ぶ中国人強制労働~ 講師:青木茂さん Webinar on Mass Graves(万人坑) of Chinese Forced Labourers


カナダ9条の会主催、ピースフィロソフィーセンター・Nikkei Vancouver for Justice 共催オンライン講演のご案内です。北米、中南米の人たちにも参加しやすい時間帯となっています。ぜひご参加ください。リアルで参加できない場合、登録した人には事後録画を送ります。参加費は無料です。

申し込みリンク:https://tinyurl.com/4rhz99t7

日時:2024年12月13日金曜日午後5時(太平洋時間);午後8時(東部時間)

(日本時間では、12月14日土曜日午前10時です。)


「万人坑」とはなにか 

~南京大虐殺の日に学ぶ中国人強制労働~

2024年12月13日は、南京大虐殺87年を記憶・追悼する日です。南京大虐殺は、大日本帝国が中国に対して行った残虐行為の代表的なものですが、これだけ残酷な事件でも「氷山の一角」だったのです。日本の1931年から45年までの侵略戦争の間、中国全土で日本企業は炭鉱や鉄鉱などの鉱山や軍事基地、ダムなどの建設現場などに中国人を大量に連行し強制労働させ、過労、飢え、衰弱死などで亡くなった人たちを山野などに捨てました。その「人捨て場」は「万人坑」と呼ばれます。「万人坑」を専門に20年間調査研究を行ってきた青木茂さんからお話を聞きます。

講師:青木茂さん

2000年、内蒙古自治区のハイラル近郊にある沙山万人坑を訪問して以来これまでに中国の42箇所の万人坑を現地で調査してきた。著書は『南京大虐殺から雲南戦へ』(2024)、『中国に現存する万人坑と強制労働の現場』(2022)、『万人坑に向き合う日本人』(2020年)、『華南と華中の万人坑』(2019)など多数。青木さんの仕事についてはHPを参照:http://yaris9304.starfree.jp/

申し込みリンク:https://tinyurl.com/4rhz99t7

問い合わせ先:peacephilosophycentre@gmail.com


★12月7日は、カナダ・バンクーバーで、南京大虐殺追悼集会を行います。詳しくはこちらを見てください。

Thursday, October 31, 2024

『日本の進路』24年11月号より転載:深圳の悲劇を中国敵視の道具にするな~友好こそが、被害者への追悼になる~ Japanese government and media used the Shenzhen tragedy as another China-hating weapon

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 『日本の進路』24年11月号に寄稿した記事を転載します。読者からは、「日本のメディアには出ない重要な視点」「被害男児が日本人と中国人のダブルだとは知らなかった」といった感想が寄せられています。子どもが殺された悲劇を極端に政治化し中国敵視に利用した日本のメディアと政府に反省を求めます。

深圳の悲劇を中国敵視の道具にするな

~友好こそが、被害者への追悼になる~

ピース・フィロソフィー・センター代表 乗松聡子


火がついた嫌中

 中国・深圳市で9月18日、日本人学校の男子児童が殺害された事件について、日本のメディアは連日大きく取り扱い、日中間の外交問題として政治化した。

この日は1931年、関東軍が南満州鉄道を爆破した「柳条湖事件」の日で、その後15年間にわたる満州植民地支配と中国全土に対する侵略戦争を記憶する「9・18」の日であった。そのことから日本では、中国の「反日教育」が招いた結果であると語られ、中国に対する嫌悪が主要メディアでもネットでもエスカレートした。この3カ月前の6月24日、蘇州の日本人学校のスクールバスが刃物を持った男に襲撃され、親子が怪我をした事件もあった。

 しかし、日本の嫌中傾向はこれらの最近の事件がきっかけになったわけではない。20世紀後半に経済大国化した日本はいまや衰退傾向で、近年、目覚ましい発展を遂げた中国を苦々しく思う心情がある。その上、米国はオバマ政権下で始まった、中国の台頭を阻止し一極支配の維持を狙うべく「アジアピボット(軸足移動)」(2011年)を進めている。対米従属の日本は12年に「尖閣諸島国有化」で、中国の国民感情を逆撫でした。

西側メディアはことさら中国について否定的な報道ばかりするようになる。世論調査でも、日本では中国に対し否定的な感情を持つ人が10年代以降は常に8割を超えるようになり、9割を超えることも少なくなくなった。


歴史記憶を「反日」と責める加害国・日本

 「反日教育」と言うが、中国や韓国や東南アジア諸国など大日本帝国の植民地支配や侵略戦争の被害を受けてきた国々がその歴史を伝えることは当たり前である。

「反日」と言う人ほど、日本が中国に何をしたのかを知らないし知ろうとしない。大日本帝国の中国に対する残虐行為で代表的なものは南京大虐殺(1937―38) であるが、それさえ日本では政治家が率先して否定している。日清戦争時の旅順大虐殺 (1894年)、満州侵攻後の平頂山虐殺(1932年)、民間人を「殺し尽くし、奪い尽くし、焼き尽くす」作戦を行い、重慶などの都市の無差別爆撃し、毒ガスや細菌兵器を使った。約4万人が日本に強制連行され約7千人が亡くなった。満州をはじめ中国全土でも、日本企業が経営する炭鉱や鉱山などで膨大な数の中国人が強制労働させられて亡くなった。その「人捨て場」であった「万人坑」が今も中国各地に存在する。

 もしこのような被害を日本が受けていたら、ましてやこれらの歴史を後世に教えることを加害国から批判されたらどう思うのか。広島・長崎の原爆被害を語り伝えることは「反米教育」なのか。日本がやられたことについては「継承」の大切さを語り、自分たちがやったことを語られると「反日」と騒ぐことこそダブルスタンダードだ。


深圳事件の「父親の手紙」

 深圳の事件は10歳の子が母親の眼前で襲撃され、その後治療の甲斐なく亡くなるという残酷な犯罪だった。日中両国の市民にできることといえばその地の法律で公正に裁かれることを願いながら、共に追悼し、遺族に寄り添うことではないだろうか。事件後、現場を訪れ献花し手を合わせる人が絶えないことは広く報道されている。

9月20日、殺された男児の父親によるという手紙が、香港のフェニックス・ニュースや「星島網」など各社が報道しSNSでも広く拡散された。日本のSNSでは「偽物だ」といった否定も見られたが、台湾の報道等で父親の会社や名前も確認されており、真正なものに見える。

 内容には、日本領事館や会社から発言を止められているようなことを匂わせる表現があり、それでも伝えたいという父親の思いが伝わってくる。

この手紙は、男児が日本人の父親と中国人の母親の間に生まれた「日本人でもあり中国人でもある」と明記され、「何が報道されようと、彼が日本人と中国人の両方のルーツを持つという事実は変わらない」とある。「日本人が殺された!」と大騒ぎしているメディアに対して抗議しているようにも読める。

「私たちは中国を恨まない、同じく日本も恨まない。国籍に関係なく、私たちはどちらの国も自分たちの国だと思っている」とあり、「歪んだ考えを持つ一握りの卑劣な人間の犯罪によって、両国の関係が損なわれることを私は望まない」としている。

この事件を中国敵視の材料に使いたい日本の一部政治勢力にとってはさぞ都合の悪い手紙であったろう。


「暴支膺懲」の勢いの日本政府

 石破茂氏は自民党総裁に選出された直後に、フジテレビの「The Prime」に出演した。司会者は、中国の「領空侵犯」「空母”遼寧”による接続水域航行」、自衛隊護衛艦「さざなみ」の台湾海峡初通過など日中の軍事的対立に注目させた上で深圳の事件を出して、「強い対抗措置」や「大使召還」といった言葉で敵意を煽った。

石破氏も怒りを露わにし「9・18」の日を「反日的」報道や情報が多く出る日と言っていた。自民党では比較的戦争責任を理解していると言われている石破氏でさえ「反日」という言葉を使う。その後石破氏は10月4日の所信表明演説で、中国の「東シナ海や南シナ海における力による一方的現状変更の強化」とセットでこの事件を持ち出し、「断じて看過しがたい」と言った。

戦時の「暴支膺懲」という言葉を思い出す。この事件が戦争準備に使われているのだ。

 殺人は当然どこの国でも許されないことだが、100%防ぐことなどできない。日本でも中国人が殺傷される事件が起きている。昨年11月、千葉県松戸市で中国人女性が日本人男性2人に殴打されて死亡した。今年7月には、大阪で中国人観光客が日本人男性に刺された。これらの事件が外交問題に発展したという話は聞いていない。

9月23日、ニューヨークで行った会談にて上川陽子外相は中国の王毅外相に対し、「根拠のない悪質で反日的なSNS投稿等は、子どもたちの安全に直結し絶対に容認できない」として、「早急な取り締まりの徹底を強く求め」た。

SNSでの極端な発言はどちらの国にもある。中国政府は悪質なサイトや投稿は削除する対策は取っている。だが、ふだんは中国の情報統制を批判している日本が、こういうときだけ「もっと統制しろ」と中国に指図しながら、自分たちは何もしていない。


「日本人でも中国人でもある」

 殺された子は、「日本人でも中国人でもある」子である。国籍が日本だからといってその子が日本人で、それ以外ではないということではない。この子の中国人アイデンティティを無視して「日本人が殺された!」とだけ言うのは、「中国人なら殺されても無視していい」と言っていることと一緒である。

また、もしこの子の父親が中国人で母親が日本人であったとしたら、日本の政府やメディアはここまでこの子を「日本人」として見たであろうか。「子どもは父親の家の子」という家父長制的考えがあったのではないか。事件への反応はジェンダー問題もはらむと思う。

 日本政府とメディアは、被害児童の中国人アイデンティティを引き剥がし、日本の中国敵視の道具に使ったことを反省してほしい。

今こそ日中の市民が交流と友好を深め、ネット上に流れる憎悪的な言論にも共に立ち向かえるような信頼関係を築くことが大事ではないか。それが被害者への一番の追悼になるのではないかと、私は思う。

(転載以上)


Tuesday, September 24, 2024

深センの日本人学校生徒殺害事件:被害に遭ったのは日本人でもあり中国人でもある「沈」さんという男の子 The victim of the murder of a Japanese school student in Shenzhen is half-Japanese and half-Chinese whose family name is reported as 沈 (Shen)

昨日からきょうにかけてXに投稿したことを一部修正して記す。

深センで殺害された中国人と日本人のミックスの男の子の父親によるものということで拡散されている手紙

Facebook でも王景賢さんが翻訳をシェアしている。

これについてだが、さきほど、中国出身で米国で大学教員をしている友人にこの手紙について聞いてみた。その友人によると、香港のフェニックスニュースをはじめとする報道各社が報道し、中国では広く拡散されたが、その後多くの媒体は削除したようだ。その背景には、この記事を受けて中国市民の、この犯罪と、極端なナショナリスト思想を持つ者たちへの怒りが爆発したことが背景にあったようだ。

圧倒的多数の中国市民はこの犯罪に怒り、悲しみ、遺族への追悼の気持ちと日中友好への思いを表明している。事件現場を訪れ花をたむける人が絶えない。フェニックスニュースの報道を友人がシェアした証として、スクリーンショットをここに置く。


「3天前」とあるが、それは友人がこの報道をシェアした9月20日、3日前のことだ(北米時間)。見出しは「深センで殺害された10歳日本人男児の父親「航平は日本人であり中国人でもある」と投稿ーフェニックスニュース」

星島網のニュースは今でも読むことができる。

Sintao Daily 星島網のニュースの見出しは「深センで日本人児童襲撃|亡くなった児童の日本人の父親が、中国を憎んでいるわけではなく、悲劇が二度と起こらないことを願っていると手紙で述べたとネットで報じられている。」である。

亡くなった子は父親が日本人で母親が中国人のようだが、もしこれが逆で、父親が中国人で母親が日本人だったり、中国名を名乗っていたりしてたら日本の政府メディアやナショナリストたちのリアクションはまったく異なっていたであろう。この事件への反応はジェンダー問題、家父長制問題でもある。

中国人でもあり日本人でもあるミックスの子を「日本人が殺された!」と大騒ぎするのは、逆にこの子の半分である中国人アイデンティティを完全に無視していることになり、「中国人なら殺されても無視していい」って言ってるのと同じですよ。命の選別とも言っていい。このことを受けて、複数のアイデンティティを持つ子たちがどれだけ動揺して、大人への信頼を失っているかと思う。

もし日本で、日本人と米国人を親にもつ子が日本人に殺されて、米国政府、メディア、民衆までもがいっせいに「米国人が殺された!日本はこわい!日本はけしからん!反米教育のせいだ!」みたいに騒がれたらみなさん、「被害者は日本人でもあるのに」って思いません?ふつうだったら殺された子の属性を取り上げて大騒ぎするのではなく、許されない犯罪として、死者を悼み、その国の法律で裁くのを見守るのが当然なのに、今回の大騒ぎはやっぱり日本人(政府、メディア、民衆)に蔓延している中国敵視がベースにあるとしか思えないです。

中国で、日本による中国侵略戦争の歴史を教えることが「反日教育」とか言う人たちは、米国による広島・長崎の原爆投下や全国の都市空襲を記憶し教えることを「反米教育」だと思っているのでしょうか。自国中心主義的なダブルスタンダードはやめよう。
と書いた後に、「中国の公式通報記録では、被害男児の苗字が沈です。」とのリプをもらった。たしかにこの星島の報道にもそうある。

父親の手紙であるとされる文書には「小山純平」という名が記されている。これが本当なら、日本人の「小山」さんを父に、中国人を母に持つ子どもの姓が「沈」さんだということになる。日本は結婚したもの同士に同じ姓を強制的に使わせる国だが、中国はそうではなく、それでも子どもの姓は父親の姓に合わせることが多いようだがが、母親の姓のときもある。また、ミックスの子どもたちは、ときと場合に応じて父の姓と母の姓を使い分けたり、セットで使ったりすることもある。だからこれは十分有り得ることだ。

先日Xでも書いたが、複数の国籍の間に生まれた子の「国籍」をどうするのかというのは国の規定やその家族の事情などいろいろなことを鑑みた上でその家族が決める個人的な選択だ。ある子が日本国籍を持っているからといってその子のアイデンティティが「日本人」でそれ以外ではないということではない。この子は中国人でもあり日本人でもある子だ。いずれにせよ、ある人が殺されたときその国籍の如何で政治的な意味づけをするのは間違っている。殺人事件は許されないことであり、その地の法律で裁くことだ。

いまわかっている情報では、被害に遭ったのは日本人でもあり中国人でもある「沈」さんという男の子であるということだ。

しかし上の「花」アカウントさんが言うように、日本政府やメディアは、「沈」さんという名前であると報じられていることも無視している。この子が中国人でもあり日本人でもあるというダブルのアイデンティティを持つこともほとんど語らない。なんとしても「日本人がやられた!」というナラティブに固執したいのであろう。

日本市民は政府やメディアのナラティブに惑わされず、この事件の被害者を中国の市民と共に悼み、被害者と遺族の痛みに心を寄せるという当たり前のことをしてほしいと思う。@PeacePhilosophy  


 

Tuesday, September 17, 2024

Webinar on October 4 (October 5 in Japan): Cover-up? Sexual Assaults Continue in Militarized Okinawa 10月5日(日本時間)英語ウェビナー:隠蔽か?止まらない沖縄の米軍性犯罪 

REGISTER NOW at this link: 登録リンクはこちらです!

https://us02web.zoom.us/webinar/register/WN_LyCB7l6ZQ3yp2rBNR03XpA



    In March of this year, a man stationed at Kadena Airbase in Okinawa was indicted for the kidnapping and sexual assault in December 2023 of a girl under 16. Only when it was reported in the local media on June 25 did the Japanese government in Tokyo inform the Okinawa Prefectural Government of the indictment. It was also revealed that a Marine was charged with attempting to sexually assault a woman in May. The delayed reporting of these cases is widely viewed in Okinawa as a Japanese government cover-up.


     Sexual assaults have plagued Okinawa ever since U.S. forces first arrived there in 1945. According to Okinawa Women Act against Military Violence (2023), there have been 655 rapes, attempted rapes, and attempted kidnappings. These figures are just the tip of the iceberg; sexual violence is always under-reported. With U.S. and Japanese courts hardly delivering any justice for the victims, whose families and communities are hosting the bases purportedly for the protection of people throughout Japan, these assaults have sparked some of the largest demonstrations and sustained grassroots action against U.S. bases. In the aftermath of the 1945 battle, American soldiers kidnapped women and girls from refugee camps and raped them. A five-year-old was raped and murdered in 1955. In recent decades Okinawans have organized huge anti-base rallies, such as after the gang rape of a 12-year-old girl in 1995, and after the rape and murder of a 20-year-old woman in 2016.


   Okinawa reverted from twenty-seven years of U.S. military occupation to Japanese administration in 1972, but the bases still occupy large areas of land, with U.S. forces numbering some 26,000. Okinawans are burdened with 70% of the total U.S. military presence in Japan. Yet their island chain accounts for only 0.6% of the nation's total land area and about one percent of Japan’s population. In addition to sexual assaults, the bases bring noise from military airfields that interrupt classes in schools and disturb the sleep of local residents. Leakage of PFAS "forever" chemicals poison the drinking water. Aircraft crashes and drunk-driving kill local residents.


We, the Okinawa Interest Group, invite you to join us on the 4th of October (the 5th in Japan) with two featured guest speakers, Suzuyo Takazato and Alexis Dudden.


Suzuyo Takazato, Co-chair of Okinawa Women Act against Military Violence and a former member of the Naha city council, helped establish a rape crisis center for the victims of military sexual violence and has worked for peace by resisting the militarization of Okinawa.


Alexis Dudden, Professor of History at the University of Connecticut and Visiting Professor of Japanese Studies at the National University of Singapore, helped organize a 2015 letter signed by a group of American academics condemning Japan’s denial of the history of its military sex slavery. A recent piece of hers, “Okinawans must not be overlooked in new US–Japan counter-crime forum”, has been published in the East Asia Forum.


Steve Rabson, a member of the Okinawa Interest Group and professor emeritus of Brown University will comment on the guest speakers’ talks.


As with our previous “open press conference,” we will set aside time for participants to ask questions to our two speakers. Let’s gather online to study and benefit from the insightful analysis of two leading feminists on topics such as the patriarchal values that run deep in the military community of the U.S. bases in Okinawa.


Contact: okinawastatement2024@gmail.com


Sunday, September 08, 2024

神奈川新聞にとりあげられました Kanagawa Shimbun reported "Nikkei Diaspora Statement on Japan’s Denial of the Great Kanto Earthquake Korean & Chinese Massacre of 1923"

 「1923年の関東大震災後の朝鮮人・中国人大虐殺に関する国家責任を否認する日本政府に対する日系ディアスポラ市民団体による共同声明 Nikkei Diaspora Statement on Japan’s Denial of the Great Kanto Earthquake Korean & Chinese Massacre of 1923」が、神奈川新聞に取り上げられました。

「関東大震災時の虐殺否定は卑劣」北米の日系人グループが日本政府を非難

https://www.kanaloco.jp/news/social/article-1106835.html

関東大震災時の朝鮮人・中国人虐殺を巡り、米国やカナダで平和教育活動を行う「ピース・フィロソフィー・センター」など複数の日系人グループは1日、歴史を否定する姿勢をとる日本政府を「卑劣」と非難し、普遍的人権の擁護を尊重し、支持するよう求める声明を出した。

 声明では、歴史学者らは大震災時の虐殺について「ジェノサイド(民族大量虐殺)として国家が責任を負わねばならない国際的犯罪だと主張してきた」と指摘。十分な証拠や生存者の証言があるにもかかわらず日本政府が「率先して歴史を否定」していることは、「帝国主義的価値観と野望の再起を示唆する卑劣な姿勢」と非難した。

 また、人種差別主義者が、差別対象の集団について「国や社会にとって危険」などと思い込むような偏見は、「大量虐殺を可能にする」と懸念。その上で、加害者や子孫がこれらの「負の遺産」を継承しないよう「国家は歴史を認め、国家責任をとり、過去の過ちを精算すべき」と強調し、人権侵害の被害者に対する国際法の基準である、公式謝罪や真相解明、被害者や遺族への賠償などを求めた。



 

 

Saturday, August 31, 2024

1923年の関東大震災後の朝鮮人・中国人大虐殺に関する国家責任を否認する日本政府に対する日系ディアスポラ市民団体による共同声明 Nikkei Diaspora Statement on Japan’s Denial of the Great Kanto Earthquake Korean & Chinese Massacre of 1923

「関東大震災絵巻」(淇谷 作;新井勝紘氏がネットオークションで入手)より、朝鮮人虐殺場面と見られる画面 The part that appears to be a scene of slaughter of Koreans in the aftermath of the Great Kanto Earthquake 1923, from Kanto Daishinsai Emaki, by Kikoku, discovered by Arai Katsuhiro) 

Today, September 1 (August 31 in North America), marks the 101st anniversary of the Great Kanto Earthquake in 1923, after which over 6,000 Korean and about 800 Chinese people were killed by the Japanese police, military, reserve soldiers, vigilantes, and other civilians, encouraged by the propaganda by the Japanese government that Koreans were committing crimes (they were not). It is one of the worst hate crimes of human history and yet so little known outside of Japan. It happened in the context of the Japanese colonial rule of Korea (1910-45), when Japanese colonial authorities were more and more fearful of the growing Korean resistance. Today, more than a dozen Nikkei groups mostly based in North America have together issued a statement demanding the Japanese government to recognize the history, not deny it, and take measures to right the wrong. Peace Philosophy Centre is one of the endorsers of this statement, and we can be reached at peacephilosophycentre@gmail.com. 

きょう9月1日は、1923年の関東大震災後の朝鮮人や中国人の大虐殺事件の101周年です。この節目にあたり、米国とカナダの、日系の市民グループが集まって声明を出しました。この歴史は日本国外ではあまり知られておらず、日本国内では逆に否定論がはびこり、日本政府や東京都もこの歴史を認めないという異常事態が続いています。以下、英語版、日本語訳と続きます。当ピース・フィロソフィー・センターも賛同団体の一つですのでお問い合わせ等は peacephilosophycentre@gmail.com で受けられます。

Nikkei Diaspora Statement on Japan’s Denial of the Great Kanto Earthquake Korean & Chinese Massacre of 1923

August 31, 2024

Vancouver, San Francisco, Los Angeles

Today we speak in one voice on the 101st anniversary of the Great Kanto Massacre — the violent mass murder of over 6,000 Koreans and an estimated 800 Chinese throughout the Kanto region of Japan, solely on the basis of their ancestries.

Historians have asserted that the Kanto Massacre was an act of genocide: an international crime for which the state must be held responsible. However, Japan denies its own history, despite an abundance of evidence and survivor testimonies. 

We unequivocally condemn Japan’s denial of state responsibility in the Kanto Massacre as a cowardly act that signals an alarming resurgence of imperial values and interests. The majority of Korean and Chinese victims of the Kanto Massacre were pushed out of their homelands colonized by Imperial Japan. These migrants fueled the imperial war machine as disposable labor, in weapons factories, infrastructure development, mining, and so on. During the Japanese aggressive war against China from 1931 to 45, Japan forcefully mobilized women and girls from Korea, China and other areas, in the Japanese military sexual slavery system. It was through their exploitation that the Imperial Japanese government pursued nation-building and waged wars of aggression throughout the Asia Pacific.

We are a diverse group of North America-based diaspora, predominantly Nikkei, Zainichi Korean, and Zainichi Chinese of diverse genders, representing more than a dozen social justice organizations throughout Turtle Island, also known as the United States and Canada, where European settlers committed genocide against the Indigenous people to steal their land, resources, and traditional knowledge. Settlers went on to benefit off the enslavement of people from the African continent, and following emancipation, Asian ‘coolies,’ in their imperial pursuit of Manifest Destiny on their backs. 

For ten months now, we have seen the live-streaming of genocide funded by our tax dollars — of well over 40,000 Palestinians, according to Gaza’s health ministry — by the settler-colonial state of Israel, which has been waging a 75-year campaign to dehumanize and erase the Palestinian people with American weapons, under the cover of the U.S. in the name of “military necessity” and “national security.” 

Today, in the United States, there is increasing hate and violence against LGBTQ people. In 2024, more than 600 legislative bills against transgender people have been submitted, 44 of which have been signed into law. We believe it is not a coincidence that hate crimes against LGBTQ people are on the rise. When the state controls sexual, gender and reproductive functions of the population and excludes specific groups as a burden or threat to the whole society, then history has already shown us they can be subject to wholesale violations, if not elimination. 

During WWII, support among Americans and Canadians for the mass incarceration of their fellow citizens solely due to their Japanese ancestry was considered patriotic. Therefore, we know firsthand that racism is the real threat to human rights. Racist assumptions of inherent criminality, immorality, and defectivity are precisely what makes genocide possible, and are directed against victims of genocide the world over, including against the Koreans and Chinese in Japan in 1923. 

All future generations deserve a country that has resolved its past mistakes so future descendants of perpetrators do not have to inherit problems for which they are not personally responsible. Acknowledgment of the Kanto Massacre is a necessary first step towards a genuinely post-imperial Japan. Furthermore, we demand the Japanese government meet international standards for state accountability to victims of human rights violations that include, but are not limited to, an official state apology, full investigation and disclosure of the truth, reparations to victims and victims’ families, guarantees of non-repetition, and teaching this history in the textbooks for future generations. 

To deny state responsibility, and the racism that it promoted, comes at too much of a cost, shattering the real possibility of equality and peace. For example, the arsonist who in 2021 burned Zainichi Korean residential buildings in Utoro, Kyoto, as a show of hostility toward Koreans. Back in 1923, under the government's blessings and encouragement, it was the civilians and leaders of fire stations or local neighborhood groups that took up arms and “valiantly” went after the “criminal” Koreans in Emperor’s name. 

You — the Japanese government — are responsible to humanity, and above all to your own constituents of today and tomorrow. In the name of all peace-loving people of Japan and Nikkei around the world, we call on the government of Japan to take the opportunity now to respect and uphold the value of human rights today, in order to guarantee a future that is inhospitable to genocide against any group and thus, can promote lasting peace and security for all.

Lastly, but not least, we wish to convey our collective condolences to all families of victims. May the souls of our ancestors rest in peace, and their memory a source of our collective solace and strength. 

We are: (organizations listed in alphabetical order) 

Article 9 Canada, Canada

Eclipse Rising - US/Japan

Hiroshima Palestine Vigil Community, Hiroshima

J-Town Action and Solidarity, Los Angeles

Nikkei Decolonization Tour (NDT), San Francisco Bay Area/Japan

Nikkei Resisters, San Francisco Bay Area

Nikkei Uprising, Chicago

Nikkei Vancouver for Justice, Vancouver

Nodutdol, US

NoNukes Action Committee, San Francisco Bay Area

Paper Cranes for Palestine, Toronto

Peace Philosophy Centre, Vancouver

San Francisco Comfort Women Justice Coalition, San Francisco Bay Area

Trans Rescue Action, San Francisco

Youth Forum Fukuoka, Fukuoka


日本語訳 


1923年の関東大震災後の朝鮮人・中国人大虐殺に関する国家責任を否認する日本政府に対する日系ディアスポラ市民団体による共同声明


2024年9月01日

バンクーバー、サンフランシスコ、ロサンゼルス


関東大震災後の虐殺から101年目の今日、6,000人を超える朝鮮人および推定800人の中国人が、朝鮮人や中国人と言う属性のみを根拠に日本の関東地方全域で大量に殺害された事件(以降「関東大虐殺」と称する)について私たちは結束して声をあげる。


歴史学者たちは、関東大虐殺はジェノサイドとして国家が責任を負わなければならない国際的犯罪であると主張してきた。しかし日本政府は、十分な証拠と生存者の証言があるにもかかわらず、自ら率先して歴史を否定している。


私たちは、関東大虐殺に対する日本の国家責任の否定を、憂慮すべき帝国主義的価値観と野望の再起を示唆する卑劣な姿勢であるとして断固として非難する。 関東大虐殺の朝鮮人と中国人被害者の大多数は、大日本帝国によって植民地支配された祖国をやむなく後にした人々であった。 大日本帝国は、これらの人々を使い捨て労働力として、兵器工場、インフラ開発、鉱山などに配置し、侵略戦争を支えるために酷使したのであった。また、1931年から45年までの日本の侵略戦争の間、日本軍は朝鮮や中国、その他の地域から女性や少女を強制的に、日本軍の性奴隷制度のために動員した。 大日本帝国政府は、これらの人々を踏み台にして、国家建設を進め、アジア太平洋全域で侵略戦争を繰り広げたのである。


私たちは、主に日系人、在日朝鮮人、在日華僑や在米コリアンからなる、北米を拠点とする民族や性・ジェンダーも多様なディアスポラのグループであり、「米国」「カナダ」として知られているタートルアイランド(注:大陸の形状が亀に似ることから、「亀の島」の意の名称が定着したと言われる)全域に所在する十以上の社会正義団体を代表している。 このタートルアイランドにおいて、欧州人の入植者たちは、先住民族の人々に対してジェノサイドを行い、先住民族の土地、資源、伝統的知識等を略奪した。その上アフリカ大陸の人々を奴隷にし、奴隷解放後はアジアの「クーリー」(注:19世紀産業革命後、欧州帝国や大産業らが挙ってアジアから大量に「輸入」し搾取した労働者たちを指す。大日本帝国も満州等でクーリーを動員した)を労働源に領土拡大を推し進めた。


私たちは10ヶ月もの間、現在進行形のジェノサイドが絶え間なく報道されるのを目の当たりにしてきた。ガザ保健省によると4万人をゆうに超えるパレスチナ人が、私達の税金によって殺戮されているのだ。入植者植民地主義国家イスラエルは、「軍事的必要性」や 「国家安全保障」の名の下に、アメリカが供給する武器を使い、アメリカの庇護の中、75年間にわたってパレスチナ人の人間性ないし命も奪う作戦を展開してきた。


今日、アメリカ社会ではLGBTQの人々に対する偏見、ヘイトクライムやスピーチなどが増大の傾向にある。 2024年には、トランスジェンダーの人々の権利を奪う600以上の法案が提出され、その内44が法制化された。 LGBTQの人々に対するヘイトクライムが増加しているのは偶然ではない。 国家が国民の性、ジェンダー、そしてリプロダクティブ・ライツ、とりわけ中絶の権利を管理し、特定の集団を社会全体に対する負担や脅威として「他者化」する時、それらの集団が大規模な人権侵害の対象となり、ひいては虐殺にもつながることは、歴史が既に証明している。


例えば、第二次世界大戦中、アメリカ及びカナダ社会においては、同じ市民であるにも関わらず、属性のみを根拠に日系人を大量収容することを支持した者は模範的な愛国者と賞賛された。人種差別は人権に対する真の脅威であることを、私たちは身をもって知っている。人種差別主義者が、差別の対象とする集団は本来犯罪を犯したり、不道徳であったり、欠陥を持つ傾向があり、国や社会にとって危険か負担な存在だと思い込む様な偏見は、まさに大量虐殺を可能にするものであり、その差別的偏見は、1923年の日本における朝鮮人や中国人に対するものを含め、世界中で大量虐殺の被害者に向けられてきたものである。


加害者や加担者らの子孫が、歴史の負の遺産を継承することがないように、国家は歴史を認め、国家責任をとり、しかと過去の過ちを清算するべきである。関東大虐殺に関する国家責任を認めることは、真の意味で日本が帝国主義から脱却するために不可欠な一歩である。 さらに私たちは、日本政府が人権侵害の被害者に対しても国際法によって定められた基準を満たすことを要求する。その基準とは、国家の公式謝罪、調査と情報公開を伴う真相解明、被害者と遺族への賠償、再発防止の保証、そして教科書への記載を含めこの歴史の教育を含めるが、これらに限定されるものではない。


関東大虐殺に関しての国家責任の否認は国家が差別を伝播した事実の否認でもあり、それは社会にとって多大の代償を負わせ、平等と平和の実現を妨げるものである。2021年に京都のウトロ地区、在日コリアン居住地で、日本人青年が朝鮮人から日本社会を「守る」と言う目的で放火した事件は当時の差別偏見が継続していることを示している一例である。 1923年当時、政府の推進と奨励の下、武器を取り、天皇の名の下に「犯罪者」視された朝鮮人を「勇敢に」排除したのは、消防署や地元の町内会の指導者たちだった。


日本政府に率直に伝えるが、あなた方は人類に対して、とりわけ今日と明日の日本市民に対して責任があることを強調したい。 平和を愛するすべての日本市民と世界中の日系人の名において、私たちは日本政府に対し、いかなる集団に対してもジェノサイドが再発しない未来を保証し、すべての人々のための恒久的な平和と安全を促進するため、普遍的人権の擁護を尊重し支持することを求めるものである。そして最後にこの場を借りて、ご遺族の方々に対し、謹んで追悼の意を表明したい。


賛同団体一覧(アルファベット順に列挙しています)


Article 9 Canada, Canada

Eclipse Rising - US/Japan

Hiroshima Palestine Vigil Community, Hiroshima

J-Town Action and Solidarity, Los Angeles

Nikkei Decolonization Tour (NDT), San Francisco Bay Area/Japan

Nikkei Resisters, San Francisco Bay Area

Nikkei Uprising, Chicago

Nikkei Vancouver for Justice, Vancouver

Nodutdol, US

NoNukes Action Committee, San Francisco Bay Area

Paper Cranes for Palestine, Toronto

Peace Philosophy Centre, Vancouver

San Francisco Comfort Women Justice Coalition, San Francisco Bay Area

Trans Rescue Action, San Francisco

Youth Forum Fukuoka, Fukuoka


Tuesday, August 06, 2024

石田隆至:日中友好に後ろ向きの社会で、平和の片鱗を見いだすー秋田県大館市の「中国人殉難者慰霊式」参加レポート(月刊『日本の進路』より転載)Remembering the Chinese victims of forced labour by Japan: Visiting Hanaoka, Akita

日本の進路』8月号

6月末、日本の侵略戦争下で強制動員された中国人の蜂起をきっかけに起こった大虐殺事件「花岡事件」(中国語では「花岡惨案」と言われる)の記憶行事に出席するため秋田の大館を訪問しました。案内してくれたのはこの歴史に詳しく、『新中国の戦犯裁判と帰国後の平和実践』(社会評論社、2022年)の共著者である石田隆至さんです。石田さんと共同研究者の張宏波さんの論文はここで読めます

私はかねてから、「平和のための博物館国際ネットワーク」のメンバー館だった「花岡平和記念館」を訪問したいと思っていましたので有り難い機会でした。石田さんが私の感想などもまじえて書いた報告記事が、月刊『日本の進路』383 号(2024 年8月号)に掲載されました。石田さんと出版社の許可をもらってここに転載します。(注:文中の写真は『日本の進路』に掲載されたものではなく自分が撮ったものです。文中のリンクも乗松がつけました。)           @PeacePhilosophy 乗松聡子

秋田県大館市の「中国人殉難者慰霊式」参加レポート

日中友好に後ろ向きの社会で、平和の片鱗を見いだす

上海交通大学副研究員 石田 隆至

 現在の日本で「日中友好」という言葉を口にするには、時と場を選ぶ。〝中国と仲良くしよう〟という当たり前のことを言うだけでも、勇気が必要になったり、なぜなのかと説明が求められたりする。

 去る6月30日に大館市を訪れ、戦時中に強制連行された中国人犠牲者の慰霊行事に参加した。花岡町(現大館市)では1945年6月、苛酷な虐待に耐えかねた中国人800人が蜂起した。強制連行加害の象徴的な地の一つだ。一方、戦後間もない時期から市民が真相究明や、被害者の追悼に取り組んできた。

 大館での慰霊行事では、遠慮や気遣いなく中国や日中友好について語れる。そこに集う人々は、中国に対するゆがんだ情報があふれる日常で、どうすれば友好を前に進めることができるかと日々苦労している。

 戦争での死者を慰霊する行事は、広島、長崎や沖縄をはじめ各地で見られる。誰もが戦争を憎み、平和を希求していても、中国と仲良くしようと言いにくいのはなぜか。

 私は中国と日本を往来する生活をしているが、なんとか時間をつくり、極力参加するようにしてきた。この場に、他にはない魅力を感じてきたからだ。今年は、カナダ在住の平和実践家・乗松聡子氏と一緒に大館を訪れた。同氏は日本各地の戦争/平和関連施設や行事を調査するジャーナリストで、大館は初めてだった。


「大館市」腕章に新鮮な驚き

 慰霊式の会場に到着してすぐ、乗松氏は「新鮮な驚きを覚え」たという。会場の「交通整理をしていたスタッフが『大館市』という腕章をつけていた」からだ。

殺された429人の人々へ追悼の
言葉を述べる福原淳嗣大館市長
〈これは本当に自治体が正規に主催している「慰霊式」なのだと実感しました。「群馬の森」の朝鮮人強制連行を記憶する碑を、右翼の圧力によって群馬県が撤去してしまうという事件が起きたばかりです。日本中で、あるいは海外においても大日本帝国の加害を記憶する行為が、右派や日本政府の攻撃に遭っている時勢です。そんな中で、大館市長、市議会議員、地元選出国会議員までもが参列し、被害者の子孫や中国政府の代表も見守る中、日本の侵略戦争を反省し、「花岡惨案」を二度と起こさないことを誓い、日中不再戦を願う式典が、右翼の妨害もなしに開催されていることに新鮮な驚きを覚えたのです。〉

 乗松氏は普段から、「漠然とした平和教育」よりも加害の歴史を伝える必要があると訴えている。足元で起きた過ちを直視することこそ慰霊であり、それが平和をつくる砦となる現実に感慨を覚えたのだろう。「植民地支配や侵略戦争における残虐行為の被害者を追悼する式典が、加害側の政府や自治体主催で開催されている場所は他にあるだろうか」という指摘にはハッとした。

 また、市主催の慰霊式が続く上で、市民の努力が基礎になっていたと知り、納得したところがあるという。

〈地元の人たちは残された被害者の遺骨を1950年代から見つけ出し、真相究明を試みてきた。また、被害者や遺族を探しあて、花岡での強制連行とそれがもたらした大虐殺の被害者を追悼・記憶し、日中友好をふたたび築く努力を続けてきた。だからこそ、こんにちの大館市主催による式典があると知り、市民が主体となることの強さを感じました。〉

 慰霊式での中国大使館のあいさつには例年との違いを感じた。429人の中国人犠牲者を哀悼し、地元の真摯な取り組みに敬意を表する前半に続き、「この日を〝平和の日〟として中日双方の市民が思いを新たにしていることは、両国が平和的に発展していく一つの姿だ」と述べた。日中関係の悪化ばかりが伝えられる中、「平和的な発展」だという言及は、別次元の関係がこの地に生まれていることを指摘している。目を背けたくなる悲惨な戦争犯罪が行われた地で、一人一人が毎年その事実に向き合い、反省を再確認し、二度と繰り返さないことを誓い合う。その積み重ねこそが、日中間の壁を少しずつ取り払い、小規模とはいえ確かな平和が生まれつつあることを強調したといえる。


遺族も含め市民の取り組みに

 市が主催する慰霊式の他に、市民による独自の取り組みも見られる。

 前日には「フォーラムイン大館」があり、100人ほどが参加していた。以前は被害者が中国から駆け付け、往時の苦境や戦後の苦労、現在の心境などを語ってきた。1995年に謝罪と賠償を求めて鹿島建設を提訴し、2000年に東京高裁で「和解」が成立するまで闘争拠点だった。被害者が逝去した今は、遺族が参加している。家族もまた経済的、社会的に、また心身面でも戦後長く苦労したことを知れる機会は貴重だ。

花岡平和記念館の展示より。着の身着の
ままで厳寒の冬も働かされた。
 気になったのは、遺族が鹿島花岡訴訟を「段階的勝利」と呼び、「賠償金」を得たという表現を使ったことだ。一審で敗訴し、高裁でも判決に至らず、鹿島との法廷「和解」が成立したが、裁判所も鹿島自身も鹿島の法的責任を認めていない。国際法に違反して捕虜や民間人を強制連行し、奴隷労働を強いて虐待・虐殺を続けた明白な事実がありながら責任を認めない姿勢は、慰霊式を貫く精神とは対極的だ。「段階的勝利」と呼ぶのは、そうした保守的な日本の限界が念頭にあるのだろう。だからこそ、被害者たちは次に国の責任を求める裁判を起こした。加害主体でさえ侵略の責任を取らずに済む現実は、いま「日中友好」を口にすることの困難さにつながっている。

 市民の手で設立された「花岡平和記念館」も見学した。乗松氏は展示で触れた「過酷な奴隷労働」の実態に「言葉を失った」と語った。


日本社会を照らし進む道標に

 30日午後には、「日中不再戦友好碑をまもる会」の76回目の慰霊祭にも参加した。会場である信正寺は、中国人が奴隷労働をさせられた花岡川の目の前にたたずむ。敗戦後、鹿島が被害者の遺骨を投げ出すように信正寺に託したのも、その無責任さを示す。対照的に、代々の住職は殉難者の供養を行い、市民と共に現在まで慰霊を続ける。寺院もまた地域社会の反人道的犯罪に向き合い、宗教的使命を果たそうとしてきた。

市民主導の信正寺での追悼行事

 50人ほどの参加者は事実をゆがめる教科書の採択に反対する元教員など、各自の普段の平和実践について報告し、励まし合った。「平和が大切」という一般論ではなく、加害の現実から出発した、具体的で自戒を伴った平和実践といえる。だからこそ、乗松氏が政府による中国敵視、その背後にある米国による中国包囲に言及すると、共感をもって受け止めた。

〈官憲や加害企業だけでなく、市民も加担した加害の歴史に70年以上にもわたって向き合うのは、決して容易ではなかったと思う。地元の方々の思いがひしひしと伝わってくる会でした。〉

 乗松氏自身も、カナダで日本の加害を記憶する活動を進めると、日系人社会やメディアから激しい反発を受けた経験を持つ。だからこそ、大館市民が過ちに対峙することがいかに貴重なことか、身をもって感じたのだろう。それでも、この取り組みを特別視するのではなく、日本社会を照らし、進むべき道標にする必要があると氏は述べる。

 花岡では、反発や抵抗があっても強制連行の蛮行に具体的に向き合い続けた人々が、被害者との新たな関係、言うなれば平和の片鱗を生み出しつつある。

(転載以上)

Tuesday, June 04, 2024

アビー・マーティン氏、吉川秀樹氏をむかえてウェビナー「沖縄と世界の環境を破壊する軍事化」開催!(日本時間6月14日午前6時)Free Webinar "Militarization: Destroying the Environment in Okinawa and the World" with Abby Martin and Hideki Yoshikawa (June 13 Thurs/ 14:00 PST; 17:00 EST)

Thanks so much for the hundreds who registered! See recording below for Abby Martin's powerful speech and Hideki Yoshikawa's thorough yet succinct presentation of the U.S. military base issue in Okinawa. Thanks to World Beyond War for co-hosting this event! A Japanese-subtitled version will be available soon. 6月15日追記:400人近くの登録を得て、150人ほどがリアルタイム参加し、大変盛況のうちに終わりました。アビー・マーティンさんのパワフルなスピーチ、吉川秀樹さんの詳しくかつわかりやすい「辺野古基地問題」の解説、少しでも多くのメディア関係者、インフルエンサーに書いてもらい広めてもらいたいです。録画は以下です。日本語字幕版はこちらです(Q&Aをのぞく)!


英語によるオンラインイベントのお知らせです。

REGISTER HERE NOW. 申し込みはこのリンクから。

Free webinar: 

Militarization: Destroying the Environment in Okinawa and the World

With Abby Martin and Hideki Yoshikawa

沖縄と世界の環境を破壊する軍事化

アビー・マーティン氏、吉川秀樹氏を迎えて

Go to World Beyond War event page to register: 

https://worldbeyondwar.org/militarization-destroying-the-environment-in-okinawa-and-the-world/?clear_id=true

沖縄戦から80年。沖縄は1945年から72年にかけて米軍に占領され、基地が増強されました。「復帰」後も基地押し付けは続き、いまだに日本の0.6%の土地に米軍専用基地の7割が沖縄に置かれています。水と土地は汚染され、騒音被害に悩まされ、航空機事故などのリスクに晒され続けているのです。今回は、沖縄を取材し「Earth's Greatest Enemy」(地球最大の敵)という映画を完成させつつある米国のジャーナリスト、アビー・マーティン氏と、沖縄の学者・アクティビストである吉川秀樹氏を迎え、生物多様性に富む辺野古・大浦湾の自然を破壊する基地建設がいかに無謀で不可能であるかを米国の報道関係者、ジャーナリスト、市民に訴えるオンラインイベントを行います。

共催:「沖縄関心グループ」、ピース・フィロソフィーセンター沖縄環境正義プロジェクトワールド・ビヨンド・ウォー

日時日本時間では6月14日(金)午前6時/米国時間では東部標準時6月13日(木)午後5時;太平洋標準時午後2時


アビー・マーティン
調査報道家。ドキュメンタリーサイト「Empire Files」のホストを務める。ドキュメンタリー映画「ガザは自由のために闘う」、近日公開の「地球最大の敵」など。
Abby Martin
 is an investigative journalist, the creator and host of the documentary web series the Empire Files, director of Gaza Fights For Freedom and the forthcoming documentary film Earth's Greatest Enemy.

吉川秀樹(よしかわ・ひでき)
沖縄環境正義プロジェクト」代表。名護市在住。名桜大学、琉球大学、などで教鞭をとる人類学者。「アジア太平洋ジャーナル:ジャパン・フォーカス」に論文多数。
Hideki Yoshikawa
 is the Director of the Okinawa Environmental Justice Project, which aims to to protect the environment and communities of Okinawa from the overwhelming presence of U.S. military bases on Okinawa's islands. He is a resident of the City of Nago on Okinawa Island, an anthropologist at Meio University and the University of the Ryukyus, and the author of many major articles at The Asia-Pacific Journal: Japan Focus.

War and militarization are the Earth’s greatest enemies, and this remains especially true in Okinawa, Japan. The Battle of Okinawa during WWII decimated 200,000 human lives and destroyed much of the environment in the prefecture. The militarization of Okinawa, carried out by the U.S. occupation of Okinawa from 1945 to 1972, ha created a dreadful situation: Okinawa, while accounting for only 0.6 percent of Japan’s land mass, bears approximately 70 percent of the land area used for U.S. military bases in Japan. As a consequence, the people of Okinawa have been forced to live with and fight against water and land contamination, unbearable noise from aircraft, the danger of aircraft crashes, and other forms of environmental destruction by the U.S. military.

In this open press conference, Abby Martin, an American journalist and filmmaker known for her anti-war and anti-militarization documentaries, will introduce her film “The U.S. Military: Planet Earth’s Greatest Enemy” and provide an overview of how the U.S. military is destroying the Earth. Hideki Yoshikawa, an Okinawan scholar and activist, will explain how the Japanese and U.S. governments are destroying the environment of Henoko-Oura Bay in Okinawa, one of the areas richest in biodiversity in Japan, through the construction of an air base there, and how the people of Okinawa and the environment have fought back.

This webinar is free and open to the public. Participants all need to register on this page.

This is an open press conference organized by Okinawa Interest Group, Peace Philosophy Centre, Okinawa Environmental Justice Project, and World BEYOND War for journalists, media personnel, and anyone interested in learning more about how the U.S. military presence in Okinawa affects the environment.

日本時間では6月14日午前6時開催となります。事後視聴も可能です。ふるってご登録ください。米国の時間に合わせて「グローバル記者会見」という位置付けですので米国のお知り合い、とくに報道関係者、ジャーナリスト、インフルエンサーに広めてください。このイベントは英語での開催となります。

イベント詳細・登録はこちらをクリック。


Tuesday, May 28, 2024

梯子社『G7広島サミットに市民はどう抵抗したか』オンラインで注文受付中 How Citizens Protested the Hiroshima G7 Summit: Book now available for order online

 地球的問題を考える広島の会(HIRAGI)編『G7広島サミットに市民はどう抵抗したか』(梯子社、2024)が、梯子社のサイトから注文可能になりました。一冊1000円(送料は別途200円)です。注文はここをクリック。当ブログ管理人の乗松聡子もこのG7抗議展示に参加し、この本にも寄稿しております。


以下、梯子社のHPの案内より:

G7広島サミット2023の期間中、話題を呼んだ広島市中心部でおこなわれた市民による反G7展示の内容が、フルカラー100頁の大ボリュームで待望の書籍化。

なぜサミットが開催されるたびに世界中で抗議運動が激化してきたのか。サミット会場となった「宇品」と戦争の歴史とは。広島サミットがNATO主導の対ロシア戦争会議となってしまった背景とは。サミットの裏で進んだ日韓政府による「元徴用工に対する不正義」とは何か。広島サミットについて、さまざまな角度から問題点を整理した。

書籍化にあたり、期間中の広島市の様子や過剰警備の写真なども多数掲載。反G7のデモ・集会報告、県外からの抗議参加者による報告、関係閣僚会議に対する抗議運動の報告、サミット後の広島市政の変容について、サミットを終えて私たちが何を感じているのかなど、多数の寄稿文も収録。

ぜひお読みください。

この本については、ピース・フィロソフィー・センターへの問い合わせも歓迎します。

メール:peacephilosophycentre@gmail.com

X: @PeacePhilosophy

 


Wednesday, April 24, 2024

ジェフリー・D・サックス「CIAはいかに世界を不安定化させるか」(Common Dreams 寄稿)Jeffrey D. Sachs: How the CIA Destabilizes the World (Japanese Translation)

Jeffrey D. Sachs サイトより
メインストリームの経済学者であるコロンビア大学のジェフリー・サックス教授は米国の帝国主義と軍産複合体に真正面から批判の声を上げていることで、これらの権力の下僕と化したメインストリームメディアから疎まれるようになっています。サックス氏はいま学界から市民活動まで幅広い分野で西側プロパガンダと闘っています。戦争と制裁でグローバルサウス諸国を攻撃・搾取を続ける米国および西側諸国の「ルールに基づく秩序」ならず「マイルールに基づく秩序」を正し、公正で平和な世界を作ろうと声を上げている、貴重な論客だと思います。彼がプログレッシブなネットメディア『コモン・ドリームズ』に寄稿したCIAについての記事は核心をついていると思い、ここに翻訳を紹介します。Deepl訳を調整しました。翻訳はアップ後修正することがあります。文中のハイパーリンクは翻訳では省略してあるので原文をご覧ください。@PeacePhilosophy 

How the CIA Destabilizes the World

https://www.commondreams.org/opinion/cia-destablizes-the-world?fbclid=IwAR2-dJ8ygNnfCvLp4z6ftKWKUjgHkmq7vVlKZEB3XhJ4NgPwCO876tUKOx4


CIAはいかに世界を不安定化させるか

ジェフリー・D・サックス

2024年2月12日

チャーチ委員会が暴露した犯罪の結果、CIAの悪質な作戦の数々が歴史に幕を下ろすか、少なくともCIAが法の支配下に置かれ、公的な説明責任を果たすようになっていたならよかったのだが......。しかし、実際はそうならなかった。


CIAには3つの基本的な問題がある:その目的、方法、説明責任のなさである。CIAの作戦目的は、国際法や米国法に関係なく、CIAや大統領がその時々の米国の利益になると定義したものである。その方法は秘密主義で偽りだらけである。その説明責任のなさは、CIAと大統領が国民の監視なしに外交政策を運営することを意味する。議会はないがしろにされ、余興でしかない。

近年CIA長官を務めた、マイク・ポンペオはCIA時代のことをこう語っている: 「私はCIA長官だった。私たちは嘘をつき、ごまかし、盗んだ。それらを教えるための訓練コースもあった。アメリカの実験の栄光を思い起こさせる。」

CIAは、戦略サービス局(OSS)の後継組織として1947年に設立された。OSSは第二次世界大戦中、諜報活動と破壊工作という2つの異なる役割を担っていた。CIAはその2つの役割を引き継いだ。一方では、CIAはアメリカ政府に情報を提供する。もう一方では、CIAは「敵」、つまり大統領やCIAが敵と定義した相手を、暗殺、クーデター、騒乱の演出、反乱分子の武装化など、幅広い手段を使って転覆させることだった。

世界の安定と米国の法の支配に壊滅的な打撃を与えたのは、後者の役割である。CIAは今日もその役割を追求し続けている。事実上、CIAはアメリカの秘密軍隊であり、何の説明責任も果たさずに世界中に騒乱を引き起こすことができる。

ドワイト・アイゼンハワー大統領が、アフリカの新興勢力であるザイール(現コンゴ民主共和国)のパトリス・ルムンバを「敵」だと決めつけると、CIAは1961年に彼の暗殺を謀り、アフリカの民主化への希望を損なわせた。CIAによって暗殺されたアフリカの大統領は、ルムンバが最後とはとてもいえないだろう。

CIAはその77年の歴史の中で、1975年に一度だけ重大な公的責任を問われたことがある。この年、アイダホ州選出の上院議員フランク・チャーチが上院の調査を主導し、暗殺、クーデター、不安定化、監視、メンゲレ式の拷問や医学的「実験」など、CIAの衝撃的な暴挙を暴露した。

チャーチ委員会によるCIAの衝撃的な不正行為の暴露は、最近、ジェームズ・リゼン調査報道記者による素晴らしい本『The Last Honest Man』(最後の正直者): CIA、FBI、マフィア、ケネディ家―そして民主主義を守るための一人の上院議員の戦い』に記録されている。

このたった一つの、議会による政府監視が機能したケースは、珍しい出来事が重なったために起こった。

チャーチ委員会の前年、ウォーターゲート事件はリチャード・ニクソンを失脚させ、ホワイトハウスを弱体化させた。ニクソンの後継者であったジェラルド・フォードは、選挙で選ばれたわけでもなく、元下院議員であり、議会の監督権限に反対することに消極的であった。上院アーヴィン委員会が調査したウォーターゲート事件も上院に権限を与え、行政府の権力乱用に対する上院の監視の価値を実証した。重要なのは、CIAを改革しようとしていたウィリアム・コルビー長官が、CIAを新たに率いていたことである。また、同じくチャーチ委員会によって暴露された広範な違法行為の当事者であるJ・エドガー・フーバーFBI長官も、1972年に死去していた。

1974年12月、調査報道記者のシーモア・ハーシュは、その当時も今もCIA内部に情報源を持つ偉大な記者で あるが、米国の反戦運動に対するCIAの違法な諜報活動について発表した。当時の上院院内総務マイク・マンスフィールドは、個性的な指導者で知られていたが、チャーチをCIAの調査官に任命した。チャーチ自身、勇敢で、正直で、知的で、 独立心が強く、そして勇敢な上院議員であった。これらは米国の政界には慢性的に不足していた資質であった。

チャーチ委員会が暴いた犯罪の結果、CIAの不正な作戦が歴史から消え去り、少なくともCIAが法の支配下に置かれ、公的な説明責任を果たすようになっていたならどんなによかったことだろう。しかし、そうはならなかった。CIAは、海外破壊工作を含め、米国の外交政策において卓越した役割を維持することで、最後に笑い、いや、世界を泣かせたのである。

1975年以来、CIAはアフガニスタンでイスラム聖戦主義者を支援する秘密作戦を実行し、アルカイダを生み出しながらアフガニスタンを完全に破壊した。バルカン半島ではセルビアに対して、コーカサス地方ではロシアに対して、中央アジアでは中国に対して、CIAが支援する聖戦主義者を使った秘密作戦を展開してきた。2010年代、CIAはシリアのバシール・アル=アサドを打倒するための破壊的な作戦を実行した。CIAは少なくとも20年間、ウクライナで拡大する大惨事の扇動に深く関与してきた。2014年2月には、ウクライナのヴィクトル・ヤヌコビッチ大統領を暴力的に転覆させ、現在ウクライナを巻き込んでいる壊滅的な戦争を引き起こした。

これらの作戦について、何がわかっているのだろうか。内部告発者、少数の勇敢な調査記者、一握りの勇敢な学者、そして一部の外国政府が、アメリカ政府から厳しい報復を受ける可能性があることを承知で、進んで話してくれたり、話すことができた部分だけである。アメリカ政府自身による説明責任はほとんどなく、議会による意味のある監視や 制限も課せられていない。それどころか、政府はこれまで以上に秘密主義を強め、機密情報の暴露に対して、たとえその情報が政府自身による違法行為を示すものであったとしても、いやとりわけそういう時にこそ、強硬な法的措置を取るようになっている。

時折、元米政府高官がポロリと秘密を漏らすことがある。例えば、ズビグニュー・ブレジンスキーが、アフガニスタン政府を不安定化させるためにイスラム聖戦士を訓練するようジミー・カーターを誘導し、ソ連をアフガニスタンへ侵攻させる目的でCIAに命じたことを暴露したように。

シリアの場合、私たちは2016年と2017年に『ニューヨーク・タイムズ』紙に掲載されたいくつかの記事から、バラク・オバマ大統領の命令による、シリアを不安定化させアサドを打倒するためのCIAの破壊工作を知った。ここにあるのは、明らかに国際法違反の、ひどく誤ったCIAの作戦であり、それが10年にわたる騒乱、エスカレートする地域戦争、数十万人の死者、数百万人の避難民をもたらしたにもかかわらず、ホワイトハウスや議会はこのCIA主導の大惨事を一度も正直に認めていない。

ウクライナの場合、ヤヌコビッチを失脚させ、ウクライナを10年にわたる流血の渦に巻き込んだ暴力的なクーデターにおいて、米国が秘密裏に大きな役割を果たしたことは分かっているが、今日に至るまでその詳細は分かっていない。ロシアは、当時米国務次官補だったヴィクトリア・ヌーランド(現国務次官補)と駐ウクライナ大使のジェフリー・パイアット(現国務次官補)がクーデター後の政府について謀議した通話を傍受し、公開することで、世界にこのクーデターへの手がかりを提供した。クーデター後、CIAは米国が支援したクーデター後の政権の特殊作戦部隊を秘密裏に訓練した。ウクライナにおけるCIAの秘密工作について、アメリカ政府は口を閉ざしている。

現在はフリーの記者であるシーモア・ハーシュが言うように、CIAの工作員がノルド・ストリーム・パイプラインの破壊を実行したと信じる十分な理由がある。ハーシュが『ニューヨーク・タイムズ』紙に在籍していた1975年当時、同紙はまだ政府の責任を追及しようとしていたのだが、今や『タイムズ』紙はハーシュの証言を調べようともしない。

CIAに公的責任を問うことは、もちろん険しい道のりである。大統領も議会もやろうとすらしない。主流メディアはCIAを調査せず、代わりに「匿名の高官」と公式の隠蔽工作を引用することを好む。主流メディアは怠惰なのか、隷属させられているのか、軍産複合体からの広告収入減を恐れているのか、脅されているのか、無知なのか、あるいは上記のすべてなのか、無知なのか、そのすべてなのか。そんなことはわからない。

わずかな希望の光がある。1975年当時、CIAは改革者によって率いられていた。今日、CIAを率いているのは米国の外交官として長年活躍してきたウィリアム・バーンズだ。バーンズはウクライナについての真実を知っている。2008年当時駐ロシア大使を務め、NATO拡大をウクライナにまで押し進める重大な誤りについてワシントンに電報を打ったからだ。バーンズの地位と外交実績を考えれば、おそらく彼は緊急に必要とされる説明責任を支持するだろう。

CIAの作戦の誤りに起因する継続的な混乱は、驚くべきものである。アフガニスタン、ハイチ、シリア、ベネズエラ、コソボ、ウクライナ、さらにはそれ以外の国でも、CIAの破壊工作によって不必要な人命の損失、不安定化、破壊が今日まで続いている。主流メディア、学術機関、議会は、これらの作戦を可能な限り調査し、民主的な説明責任を果たすために文書の公開を要求すべきなのだ。

来年はチャーチ委員会の公聴会から50周年にあたる。50年経った今、チャーチ委員会自身の先例にならい、その経験をを教訓とし、いまこそ目隠しを外し、米国主導の騒乱の真実を暴き、米国の外交政策が透明性を持ち、説明責任を果たし、国内外を問わず法の支配に服し、仮想敵国を破壊するのではなく世界平和を目指す、新たな時代を始める時である。


ジェフリー・D・サックス

ジェフリー・D・サックスは、2002年から2016年まで地球研究所の所長を務めたコロンビア大学の大学教授兼「持続可能な開発センター」所長。「国連持続可能な開発ソリューション・ネットワーク」会長、国連ブロードバンド開発委員会委員。これまでに3人の国連事務総長の顧問を務め、現在はアントニオ・グテーレス事務総長の下でSDGsアドボケート(SDGs提唱者)を務めている。近著に『A New Foreign Policy: Beyond American Exceptionalism [新しい外交政策:米国例外主義を超えて]』(2020)。その他の著書には 『 Smart, Fair, and Sustainable[賢く、フェアで、持続可能]』(2017年)、潘基文との共著『The Age of Sustainable Development[持続可能な開発の時代]』(2015年)など。

Tuesday, April 23, 2024

第9回 戦争の加害パネル展 (横浜にて) 4月27日~5月5日 Annual Japanese War Atrocities Exhibit in Yokohama: April 27 to May 5, 2024

 今年も「戦争の加害パネル展」が横浜で開かれます。チラシをここに紹介します。





また期間中、「万人坑」調査で知られる青木茂さんによる講演があるとのことです。

 

第9回  戦争の加害パネル展(かながわ)                       

ミニ講演会の御案内 (参加無料)                               

日時:2024年5月4日(土)14:00~16:00 

場所:かながわ県民センター  パネル展会場内 

演題: 中国人強制連行・強制労働と万人坑(人捨て場) 

講演:青木茂(中国人強制連行・強制労働と万人坑に関する著書多数) 

(ミニ講演会の会場内で著書を販売します) 

Saturday, April 06, 2024

藤井正希著『検証・群馬の森朝鮮人追悼碑裁判』出版記念講演の呼びかけ人になったことを事後撤回します。

(4月7日追記:6日の時点で誤引用をしていたので削除しました。109ページの引用は他者の発言、124-5ページの引用は関東大震災虐殺否定本をまとめた表現でした。昨日は講演のショックのため注意が散漫になっていました。お詫び申し上げます)

(4月12日追記:藤井氏の講演動画はここにあります。

https://www.youtube.com/watch?v=mtYOU5uuXM8&t=7s 

【4月12日追記。講演で多くの人が違和感、怒りを感じたことをスルーして本の引用の話にすり替えている人たちがいるので、本の引用の部分は削除します。本についてもヘイトスピーチを容認、真実はわからない、歴史否定を歴史と同列に並べ両論併記していること等を私は問題視していますが、この発信の主旨は講演に対する批判です。】

【4月26日追記。「『検証・群馬の森朝鮮人追悼碑裁判』出版記念会実行委員会」からの声明「『検証・群馬の森朝鮮人追悼碑裁判』出版記念会の不手際について」が出ました。呼びかけ人数人を含む多くの人たちから講演内容への懸念が表明されたにもかかわらず、それらに向き合わず、「事実にもとづかない『論争』」、「藤井さんへの誹謗中傷」「名誉毀損」としか理解されていないことがわかり、大変残念な気持ちです。私を含む懸念を表明した人たちが事実と異なることを言っているとしたら訂正すべきですが、何が事実と違うのかが提示されていません。私が私の見解や意見を述べる権利は藤井正希さん自身、否定なさることはしないでしょう。ひとつ補足しますが、私にとっては、歴史否定はヘイトに値します。「朝鮮人の強制連行はなかった」という歴史否定について、「物事にはいろいろな見方がある」から共存すべきという意見は、私にとっては受け入れられないということです。今回、残念な結果となりましたが日本の植民地主義と闘う同じ目的を持つもの同士ですので、そこを大事にして前に進みたいと思います。対話をしてくださった、関係者みなさんに敬意を表します。群馬の森の朝鮮人追悼碑の撤去に抗議し、碑が再び設置されることを願い、歴史の記憶と被害者の追悼を続けることを支持し、私もそのような尽力の一端を担いたいと思っています。


さきほど、この、私も宣伝してしまったイベントの藤井正希氏の講演を聞いたあと退場しました。

【4月6日 東京でのリアルイベント】歴史修正主義とたたかうために:『検証・群馬の森朝鮮人追悼碑裁判』出版記念会https://peacephilosophy.blogspot.com/2024/02/4653068-ike-biz-107-800-150-e-mail.html

https://peacephilosophy.blogspot.com/2024/02/4653068-ike-biz-107-800-150-e-mail.html 藤井正希氏は、群馬の森の朝鮮人追悼碑の集会で「強制連行」という言葉を使ったことについて「ルール違反は明確」を繰り返しました。その「ルール」が「強制連行と言わない」などというルールではなく「政治的行事はしない」という条件でした。強制連行を強制連行と呼んではいけないのならいったい何のためにこの碑があるのか。しかし藤井氏は、碑自体を問題視したいがためにそれを「政治的表現」と解釈した県の側に完全に立っているように見えました。 また、関東大震災虐殺、強制連行、日本軍「慰安婦」を「嘘やデタラメ」と言うのも「表現の自由を守らなけばいけない」と何度も豪語し、強制連行などを認めた「政府見解」が気に入らないなら日朝宣言等撤回させればいいという、県や右派への批判的論調の中とはいえ「臭い匂いは元から断つ」といった表現を使い、強制連行をや関東大震災時虐殺や「慰安婦」を語る者を「臭いもの」扱いしたような結果になりました。 そのころには吐き気と目眩で私はそこにいられない気持ちになりました。政府見解至上主義的なところも大変気になりました。この中にはこれらの歴史(関東大震災虐殺、強制連行、日本軍「慰安婦」)に近い、当事者の人たちもいると思うといたたまれませんでした。

事後になってしまいますが呼びかけ人になったことを撤回します。歴史否定(ヘイト)と共存しろなどという人とその本を推薦することはできません。