1月13日、沖縄の環境団体や市民団体が、翁長知事に辺野古埋め立て承認の「撤回」を早急に行うよう相次いで要請行動を行った。
RBC報道:
環境団体や島ぐるみ会議が「撤回」を要請
OTV報道:
普天間基地移設計画 市民グループが埋め立て承認「撤回」を要請
以下は環境団体 Okinawa Environmental Justice Projectの吉川秀樹と
日本自然保護協会の安部真理子氏が行った記者会見の資料。翁長知事が埋立承認取消を取消した経緯の不透明さを指摘し、埋立承認「撤回」の重要性の確認、県の県外や米国への発信の必要性、近日中に行うとされる訪米の前に少なくとも岩礁破砕許可の取消をすること、「ジュゴン訴訟」との戦略的連動を翁長知事に提言するものだ。
|
13日、記者会見を行う(右から)吉川秀樹氏と安部真理子氏 |
2017年01月13日
記者会見資料
環境NGOからの翁長雄志県知事、沖縄県へ要請
県の広報の問題と「撤回」のタイミングについて
県の広報の問題点
翁長雄志沖縄県知事による、辺野古新基地建設に係る埋立て承認の「取消し」の「取消し」は、県民/市民にとって非常に分かり難いものとなっている。知事のもつあらゆる権限、手段を行使して新基地建設を阻止するという知事のこれまでの主張と、知事の「取消し」の行動が一致していないように映るからである。そして工事が再開され、市民が再び海上で抗議/阻止行動を強いられる状況のなか、知事の次なる具体的行動への期待と不満が広がっているといえる。
一方日本政府は、この状況を基地建設を強行していくためにうまく利用している。知事の埋立て承認の取消しは違法であるとする最高裁の判決を前面にだし、また知事の「取消し」の「取消し」を基地建設の容認だと解釈している。日本政府による見解や解釈は、国際社会/米国政府に対しても大きな影響を与えている。事実、辺野古新基地問題について、翁長知事の裁判による抵抗を取り上げてきたNY TimesやBBCなどのメディアも、最高裁が知事の取消しを違法と判断したとことを強調する論調となっている。
県民/市民に対して、また国際社会/米政府に対して、翁長知事の最高裁の判決に対する見解や、基地建設阻止の決意がきちんと伝わらない理由の一つは、沖縄県が独自の広報を通してきちんと情報を発信できていないことであろう。例えば、知事公室のHPで掲載されている知事発言・要請には、現在のところ最高裁の判断に対する知事の正式見解が公開されていない。またワシントンDCにある県の事務所の英語版のHPにおいても、最高裁の判断や今後の知事の取り組みは、まだ伝えられていない。これだけ重要な事項に、知事の意見や見解が県のHPで示されていないことは問題であると私たちは考える。
勿論、翁長知事の最高裁の判断に対する見解や建設阻止の決意については、沖縄のメディアがしっかりと伝えているといえる。しかし、日本政府、さらには米政府においても沖縄のメディアに対する偏見があり(例えば、連邦議会調査局も、沖縄の新聞については、正確な情報源というより、世論への影響を与える情報源としての分析の対象と捉えられている)、沖縄県としての独自の広報を行わなければならない。
沖縄県は早急に、翁長知事の最高裁の判断に対する見解と、新基地建設に対する今後の取り組みについて正式な文書を作成、発表し、HPに掲載することが求められる。
岩礁破砕許可や埋立て承認の「撤回」のタイミングについて
今回環境団体が翁長県知事に要請した岩礁破砕許可の「即時撤回」、埋立て承認の「早期撤回」は、いずれも可能なものであり、翁長知事としても知事の権限内にある「撤回」を行使するものであると考える。問題はそのタイミングである。
タイミングについては、国内の政治的動向を考慮するのは勿論であるが、政権交代が行われる米国における動向や、沖縄側からの米国への働きかけと連動させることが重要である。特に翁長知事が予定している訪米と、3月15日に予定されている「ジュゴン訴訟」の控訴手続きにおける公開審理(hearing)の日程との連動が重要である。
米国での政権交代の後、知事が訪米し、辺野古新基地建設問題について知事の立場を直接訴えるということであるが、少なくとも、訪米までには岩礁破砕許可の取消し/撤回を行うべきだと私たちは考える。具体的な権限の行使をもって、米政府と交渉することが最も有効な手段であるはずだ。
ちなみに2015年11月に「島ぐるみ会議」が訪米した時は、翁長知事が埋立て承認の「取消し」を行った直後であり、「取消し」が行われた意義を米側の連邦議会議員や連邦政府機関は真摯に受け止めていた。
沖縄県はすでに、岩礁破砕許可に関わる問題で、沖縄防衛局に対して、投入した巨大コンクリートブロックによる岩礁への影響についての質問を送っている。来週にも予定されている防衛局からの回答を踏まえて、翁長知事は次なる動きをとると考えられるが、今回の訪米という機会を最大限に利用することが必要である。
次に沖縄、日本、米国の市民とNGOが原告となり米国防総省を訴えたジュゴン訴訟との連動である。同訴訟は、2003年の提訴から2015年2月までサンフランシスコ連邦地裁で行われていた。2008年1月には原告の主張を認める判断が下されたが、2015年2月には基地建設の合法性を主張する国防総省の主張が認められるかたちで結審した。強調されるべきは、その過程で沖縄県知事の法的判断が重要な意義をもっていたことである。つまり、2013年12月に仲井真弘多前知事が埋立てを承認したことが、連邦地裁が国防総省の主張を認めた根拠の一つとなっていたことだ。
2015年4月に原告が米国第9巡回控訴裁判所において控訴し、原告と国防総省の書面でのやり取りが行われたが、翁長知事による埋立て承認の取消し等を背景に、控訴が本審理にはいるかどうかを決める最終的な手続きである公開審理(hearing)の日程は決まらなかった。しかし2016年12月20日の日本の最高裁における判決の後、控訴裁判所において公開審理(hearing)が3月15日に行われることが決定している。
翁長県知事と沖縄県は、このジュゴン訴訟の日程も考慮し、基地建設阻止に向けて、埋立て承認の「撤回」を含めた知事のもつ権限を行使していくことが重要であると考える。
勿論、権限の行使のタイミングについては、慎重さを要することは理解できる。特に埋め立て承認の撤回の根拠を何にするのか等、緻密に検証していくことが必要であろう。しかしそのような場合でも、少なくとも、埋立て承認の撤回を含む権限の行使や根拠や行程を明確に文書で示し、HP等で公表し、ジュゴン訴訟の控訴の審理でも取りあげられるようにすべきである。
連絡: Okinawa Environmental Justice Project
吉川秀樹
(個人のメールアドレスと電話番号は割愛します。この件で連絡希望の方は本ブログに連絡ください)
******************************
以下は同日に行われた、うるま市「島ぐるみ会議」による県への要請。対応したのは謝花知事公室長。
|
要請書を手渡す仲宗根勇・うるま市島ぐるみ会議共同代表。 |
以下が要請書です。
(文中より抜粋)
「12月20日の最高裁の判決を受けて、12月26日に埋立承認の取り消しの取り消しを決定したことは、県民への丁寧な説明がなく、今後の辺野古新基地建設阻止のたたかいに不安をもたらしています。」
「安倍内閣・沖縄防衛局は、知事の取り消し処分を受けて、約590億円8件の発注済みの埋め立て工事を一気呵成に推し進めてくることは、高江の工事の経過からも明白であります。さらに陸上からの大型機械での工事、海上からの大型作業船での工事はいったん現場で着手されると止めようがありません。
まさに、一刻の猶予も許されない緊迫した現場状況であります。埋立工事の最初の汚濁防止膜の設置の前に、工事を止める知事の最高の権限である埋立承認「撤回」を早急に決断していただきますよう強く要請いたします。」
翁長知事がこの市民の訴えに早く応えることを望む。 @PeacePhilosophy