12月13日、南京大虐殺82周年を記憶し被害者を追悼するための式典が南京の「侵華日軍南京大屠殺遭難同胞紀念館」で開催された。これについて日本のメディアは、おしなべて、「習近平主席ら共産党指導部の出席はなく、対日関係への配慮が見られる」といった報道をした(例:
朝日、
NHK、
日経、
共同、
時事)。この歴史においては加害国である日本のメディアが、このような歴史記憶の場を「どの程度“反日”なのか」といった角度からの関心でしか報道しないことは大変嘆かわしいことだ。日本の総理大臣は毎年、8月6日の広島と8月9日の長崎の原爆投下の式典に出席するのが恒例となっている。この歴史と被害者を重んじる姿勢から行っているのであってその時々の日米関係に「配慮」したりしなかったりした結果ではない。この歴史記憶行為が「反米」なだと言う人も日本にはまずいない。広島・長崎の原爆投下が米国の非人道的兵器による非戦闘員の大量虐殺であったことと同様に、南京大虐殺も、日本軍による中国の市民と捕虜に対する大量虐殺・強姦・略奪事件であった。記念日にはその歴史を認め、後世代に継承し、二度と起こさない・起こさせない決意を新にするのは当然である。その上で関係国間の友好や和解を語ることができるのだ。広島と長崎についてはそのような姿勢で臨めるのに、南京大虐殺など、日本の加害行為についてはその記憶行為自体を「反日」と位置付けるこのダブルスタンダードを改める必要がある。
12月14日、ここバンクーバーで開催した、南京大虐殺の被害者を追悼し東アジアの平和を考える集会(ピース・フィロソフィーセンター主催)の冒頭で上のような話をした。この集会には、日本各地、沖縄、カナダ、韓国などいろいろな場所の出身者が集まり、私が夏に朝鮮半島を旅した経験や、セラピストの加藤夕貴さんが、今年は南京で開催された、平和構築のセミナー
NARPI(Northeast Asia Regional Peacebuilding Institute) に参加した体験などを共
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12月13日、済州島の旧日本軍アルトゥル飛行場格納庫
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有した。また、前日に、南京大虐殺追悼集会を行った韓国・
済州島の市民たちからの連帯メッセージを読み上げた。
(済州島での南京大虐殺追悼行事の背景については
ここを参照。)
最後に、夕貴さんをファシリテイターとして、南京と済州島に思いを馳せながら、皆で一つの「ビジョンボード」を作った。被害者への追悼の意を表す白い花の周囲に、それぞれが、いろいろな色や材料を使ってメッセージを表現した。
同じ日に、南京の友人から「現代快報」のニュース映像が届いた。
国家公祭仪式众多国际友人寄语和平
https://www.pearvideo.com/video_1632431
この映像には、南京での式典に参加した日本人二人が登場する。一人は南京大虐殺研究者の松岡環氏。私は2017年12月、松岡氏が引率するツアーに参加し南京に行った(その旅については
ここに詳しく書いたので参照されたい)。もう一人は、「第17次 真宗大谷派平和法要友好訪中団」団長の、山内小夜子氏である。山内氏は、この「悲惨な加害の歴史」を心に刻み、「この悲しみの日を二度と繰り返さないために私たち日本人ができることは何なのか、考え学ぶために来ている」と語っている。
アジア太平洋戦争終結75周年となる2020年を、揺るぎない歴史認識と共に迎えたいと思う。
@PeacePhilosophy 乗松聡子
参考記事
2018年のバンクーバーでの追悼行事
Nanjing Massacre Memorial Events in Vancouver, and Jeju 南京大虐殺追悼集会 in バンクーバー、そして済州島
https://peacephilosophy.blogspot.com/2018/12/nanjing-massacre-memorial-events-in.html