長崎で日米加の学生に講演する沢田昭二さん (2010年8月8日) |
放射線による内部被曝——福島原発事故に関連して——
沢田昭二
はじめに
3月11日の巨大地震と大津波によって東京電力福島第一原発はスリーマイル島原発事故を上回る大事故を引き起こした.いまなお安定的な冷却が実現できないばかりか,燃料棒の露出による水素爆発の危険性は継続している.放射能が強いためその放出箇所の特定もできていない.電源確保による安定的冷却が鍵であるが,そのための作業は難航し,作業員の累積被曝はかなりの線量に達している.
大気と海に放出された放射性物質が拡がり,原発から20 km圏内の住民は見通しもない長期的避難を余儀なくされ,福島県と北関東の農作物や魚の汚染による出荷禁止や摂取禁止措置なども深刻な影響をもたらしている.
今回の放射線被曝は,広島・長崎原爆の原子雲から降下した放射性降下物による被曝と共通性がある.日本政府は放射性降下物による被曝を無視できるとしてきた.これに対し,原爆被爆者は2003年から,国に対して全国的な集団訴訟に取り組み,原爆による放射性降下物の影響を不当に無視した岡山地裁判決を唯一の例外として,現在までに地裁と高裁で27連勝している1).
この集団訴訟では,放射性降下物による被曝影響無視の非科学的被爆者行政に対し被爆者の間に起こった事実に基づいた批判が行われ,その結果,今回の事故による被曝について,政府も内部被曝に触れるようになったものの,放射線影響の研究者を含めて,内部被曝に関する理解は不十分なままである.
本稿では,こうした広島・長崎原爆の被曝実態に基づいた内部被曝に重点を置いて原発事故による放射線被曝について考察する.
1 放射線被曝
放射線にはアルファ線、ベータ線,ガンマ線,X線,中性子線などさまざまなものがある.ベータ線は電子,アルファ線はヘリウムの原子核で,放射性原子核から数千電子ボルトないし数百万電子ボルトのエネルギーを持って放出された量子(量子化された波の塊)である.ここで電子ボルトはミクロの世界のエネルギーの単位で,eVと記し,電子と同じ電荷を持つ粒子が1ボルトの電位差の電極間で加速されて得るエネルギーが 1eVである.X線やガンマ線は電磁波で,光子と呼ばれる量子として放射性原子核から放出される.X線やガンマ線の光子は,通常の可視光線や電波の光子よりもはるかに波長が短く振動数が大きい.光子の持つエネルギーは振動数に比例するのでX線の光子はおよそ1000 eV以上,ガンマ線の光子はおよそ10万 eV以上のエネルギーを持って原子核から放出される.
アルファ線あるいはベータ線は電荷を持っているので,体内を通過する時,電磁相互作用によって光子を放出し,この光子が,水,タンパク質,DNAなど,生体分子内で原子を結合する役割を担っている電子に吸収されたり,散乱されたりして,電子にエネルギーを渡す.エネルギーを受け取った電子は分子から離脱し,その結果,水や生体分子が壊される.これが放射線による電離作用で,すべての放射線影響の始まりである.
電離作用に必要なエネルギーはせいぜい10eVであるのに対し,放射線を構成する量子は数千eVないし数百万eVのエネルギーを持つので,一個の放射線の量子は,生体組織内で数百ないし数十万カ所の電離作用を引き起こす.可視光線や電波はX線やガンマ線と同じ電磁波であるが,その光子は1eVに満たないエネルギーしか持たないので電離作用をせず,非電離性放射線と呼ばれる.
放射線は電離作用によって人体に障害を引き起こすので,物理学的には放射線が人体にどれくらいエネルギーを与えたかで被曝線量を表し,放射線から人体組織1kg当たり1ジュールのエネルギーを吸収したとき吸収線量1グレイ(Gy, Gray)という.
しかし,放射線の種類によって人体への障害の程度が異なるので,X線に比べて何倍の影響を与えるかを考慮した生物学的効果比(RBE)をグレイに乗じた線
図1 放射線の電離作用.ガンマ線が電離作用によって染色体DNAの2重らせんを直接切断する場合と,細胞内の水分子H2Oを電離して水素イオンと水酸化物イオンをつくり,水酸化物イオンがDNAと化学反応して,間接的に切断する場合を示した.
量当量としてシーベルト(Sv, Sievert)が用いられる.国際放射線防護委員会(ICRP)はガンマ線とベータ線は外部被曝ではX線と同程度の影響であるとして,RBEを1とし,アルファ線のRBEを20としている.今回の福島原発事故による被曝は、1シーベルトの100分の1以下の被曝が問題になっているので1シーベルトの1000分の1のミリシーベルト(mSv),あるいは100万分の1のマイクロシーベルト(μSv)の単位が用いられている.
1シーベルトのガンマ線を体重 50 kgの人が全身被曝すると,50 ジュール= 3.12×1020eVのエネルギーを受けたことになり,これは全身の約60兆個の細胞1個当たり平均して52万カ所以上の電離作用を受けることになる.電離作用を受けても,ほとんどの生体分子は,再びもとの状態に修復される.ところが,きわめて小さい確率で誤った修復が行われる.特に電離作用がDNA分子の2重らせんの接近した箇所で起こると,切断箇所が誤って接合される確率が大きくなり,もとのDNA分子とは違うDNAになって染色体異常をつくり出す.染色体異常で次の細胞分裂が不可能になると,細胞は自死し,多数の細胞が自死すると急性放射線症を引き起こす.染色体異常を持つ細胞が細胞分裂できても,染色体異常を持つ細胞を再生して癌細胞につながる可能性が生まれる.
放射線の強さについては,放射性原子核が1秒間に何個崩壊して放射線量子を放出したかの回数を表すベクレル(Bq)も用いられ,1 kgの物質当たり,あるいは地面の 1 m2当たりのベクレル数が報告されている.放射性核種ごとに典型的な被曝に対してシーベルトへの換算がICRPによって提示されている.しかし,内部被曝には当てはまらない.
2 急性放射線症と晩発性障害
放射線被曝による障害は,発症時期によって急性放射線症と晩発性障害とに大別される.体外から放射線を浴びる外部被曝による急性放射線症は一般には1週間から2週間後に発症し,内部被曝の場合には,取り込んだ放射性物質が放出する放射線を浴び続けるので一般的にはさらに遅れて発症する.一方,癌などの晩発性障害は被曝後数年から10年以上を経て発症する.このように放射線影響は一般に被曝からかなり遅れて発症する.このことから「“直ちに”健康に影響が出るレベルではない」と影響がないかのように説明するのはごまかしである.
放射線被曝による急性症状の発症も晩発性障害の発症も個人差が大きい.これを示すため,典型的な急性放射線症である脱毛の発症率を原爆傷害調査委員会(ABCC,現在の放射線影響研究所)が1950年前後に寿命調査(Life-Span-Study; LSS)集団の広島被爆者について調査した結果を図2の■印で示す2).
図3に○印を付した曲線で表された被曝線量と脱毛発症率の関係3)を用いて,図2の■印の振る舞い全体を再現するように初期放射線と呼ばれる原爆爆発1分以内に放出されたガンマ線と中性子線による被曝線量と,放射性降下物による被曝線量を求めた.その結果が図3の被曝線量で,図2の■印を貫く太い曲線のようにきわめて良い精度で脱毛発症率を再現している.
図3のように,1シーベルトの被曝で5%の人が脱毛を発症するのに対し,60日以内に50%の人が死亡する半致死線量4シーベルトの被曝では96%の人が発症するが,6%近くの人はまだ脱毛を発症しない.一般に,急性放射線症は,個人差はあるものの,その個人に特有の線量の被曝をすれば必ず発症するので「確定的」影響と呼ばれる.また,被曝線量が大きいほど急性症状は重篤になる.
図2 広島原爆による脱毛,紫斑および下痢の爆心地からの距離による発症率.
爆心地から 0.75 kmにおける脱毛と紫斑の発症率は100%である.
3 外部被曝と内部被曝
放射線が生体組織を通過する時、X線とガンマ線はまばらな電離作用をするのでエネルギーを失うまでに相当の距離を通過するため透過力が強い.これに対し,アルファ線はきわめて密度の高い電離作用をして,数百万eVのエネルギーを数十μm 走るうちに全部放出するので,透過力はきわめて弱い.ベータ線はこの中間で,生体内では通常数 cm走ってエネルギーを失って止まる.電離作用を行う密度が大きいと,分子の接近した箇所の切断確率が大きくなり,電離作用による障害が大きくなる.こうしたことを考慮すると,ICRPが,内部被曝に対してベータ線のRBEを1とすることには疑問がある.
この問題を,具体的に於保源作医師4)が調査した広島の被爆者の爆心地からの距離による急性症状の脱毛,皮下出血による紫斑,下痢の発症率について見よう.図2に示したように脱毛の□印と紫斑の●印は爆心地からの距離とともにほぼ同じような変化をしている.しかし,△印の下痢の発症率は近距離では脱毛や紫斑に比べて小さく,遠距離では数倍大きい.
近距離では初期放射線のガンマ線や中性子線による瞬間的な外部被曝が主要な被曝影響を与える.外部被曝では透過力の強いガンマ線が腸壁まで到達できる.しかし,到達したガンマ線はまばらな電離作用を行って薄い腸壁を通り抜けてしまうので,高線量のガンマ線でなければ下痢を発症させない.
一方,遠距離では放射性降下物の放射性微粒子を体内に摂取したことによる内部被曝が主要になる.呼吸や飲食で取込んだベータ線を放出する放射性微粒子が腸壁に到達すると,ベータ線は密度の高い電離作用を行うので腸壁に損傷を与えて下痢を発症させる.このことを考慮して,図3に示したように,被曝線量と下痢の発症率の関係を,初期放射線のガンマ線による外部被曝の場合には脱毛と紫斑の場合より高い被曝線量方向にずれた曲線によって与え,放射性降下物による内部被曝の場合には脱毛と紫斑の場合より低い被曝線量方向にずれた曲線を用いると,図4に示したようにほとんど同じ被曝線量によって,脱毛,紫斑,および下痢の3種の急性症状の発症率を図2の細い曲線で示したように同時に再現できる.
このように障害のしくみが外部被曝と異なる内部被曝をX線やCTスキャンによる外部被曝と比較することは適当でない.
今回の原発事故による拡散した放射性物質は酸化物などの微粒子として飛散していると考えられるが,1μm 以下の大きさであれば,呼吸で鼻毛などに遮られないで肺胞を経て血液に達して全身を廻る.その際,放射性微粒子が水溶性あるいは油溶性であれば原子あるいは分子レベルに分解し,元素の種類によって
図3 被曝線量と脱毛,紫斑,下痢の発症率の関係.脱毛と紫斑については,50%
の人が発症する半発症線量を2.75シーベルト(○印),下痢については初期放射
線の外部被曝に対して3.03 シーベルト(▲印), 放射性降下物の内部被曝に対
して 1.98シーベルト(△印)の正規分布を用いた.
図4 急性放射線症発症率による広島原爆の推定被曝線量
特定臓器に蓄積し,集中した被曝を与える.
水溶性・油溶性でない場合には微粒子のまま, あるいは幾つかの微粒子に分解して循環し,体内の特定箇所に付着する.1μm の微粒子でも,原理的には数百億個の放射性原子を含むこともありうるので,微粒子が沈着した周辺の細胞は大量の被曝を継続して死滅する.
特に微粒子が多数のウランやプルトニウム原子核を含む場合にはきわめて高密度の電離作用をするアルファ線を放出するので被曝影響が大きくなる.こうしたことも外部被曝にない内部被曝の特質である.
図3に示されたように放射線の影響は個人差が大きく,標準的な人が発症しなくても,放射線感受性の高い人には影響が現れることを無視してはならない.また,図4に示されたように爆心地から1.2 kmまでは初期放射線による外部被曝が主要な影響を与えているが,1.2 kmより遠距離では放射性降下物による内部被曝が主要な影響を与えたことがわかる.
これまでの放射性降下物による被曝線量の評価は,「黒い雨」と呼ばれる放射性降雨に含まれて地中に浸透した後,その後の火災雨や台風による洪水で流されなかった放射性物質が放出した放射線の測定結果にもとづいている.
政府は図4に×印で示した広島の爆心地から西方約2 kmから4 kmの己斐・高須地域における積算被曝線量の0.006シーベルト〜0.02シーベルトのみ認め.その他の地域の放射性降下物は無視してきた.図4に示されるように,被爆者の間に生じた急性症状から推定した値は0.85シーベルトないし1.7シーベルトで,2桁の過小評価である.この過小評価が,ICRPの内部被曝の軽視と,今回の福島原発事故における内部被曝影響の軽視につながっている.
ここで,線量当量の単位のシーベルトを用いてきたが,内部被曝に対する適切な単位が存在しないために,外部被曝と同等な急性症状の発症率を与える内部被曝の影響を表す線量当量の意味で用いている.図4に示された結果は,放射性物質による内部被曝の影響が外部被曝よりもはるかに深刻であることを示している.
4 低線量被曝影響の推定
「確定的」影響である急性症状発症には,かつては,これ以下の被曝線量では症状は起こらないという「しきい値線量」が考えられていた.しかし,今日では図3のように発症率が分布していることがわかり,従来の「しきい値線量」に近い,発症率が5%ないし10%になる線量を「しきい値線量」と呼ぶ場合もある.古い「しきい値線量」の考え方に立って,「100㍉シーベルト以下の被曝ではまったく問題はありません」と言い切り,まれに放射線感受性のきわめて高い人が発症する可能性を否定しているのは正しくない.
1ミリシーベルトの被曝では全身の細胞1個当たり520カ所以上の電離作用を受けて,ほぼ100%の細胞で誤った修復あるいは,修復できない損傷が生ずる.さらに被曝線量が増えると,1個の細胞の損傷箇所が増えて,細胞の機能の損失が生じ,細胞の死滅が増加する.多数の細胞が死滅すると急性放射線症を発症する.
0.3 シーベルト,すなわち,300 ミリシーベルトの被曝では,脱毛と紫斑の発症率は 0.05%,すなわち1 万人が被曝して5 人,内部被曝による下痢の発症率は 0.08%,すなわち1 万人が被曝して8人が発症することになる.
多数の細胞死によって発症する急性放射線症状は,被曝線量によって重篤度が異なり,低線量被曝ではきわめて限定的・部分的に細胞が死滅しても臨床的には症状として検出されない.現在までの福島原発事故による被曝線量では,急性放射線症状よりも次に考察する晩発性障害に重点をおいた対応が求められる.
5 低線量被曝と晩発性障害
放射線に被曝しても,癌あるいは悪性新生物,甲状腺機能低下症などの晩発性障害の大部分や遺伝的影響は必ずしも発現するとは限らない.しかし,被曝線量が増えれば一般的に発症率・発現率が大きくなる.このような障害を確率的影響という.晩発性障害は一旦発症すれば,重篤度は被曝線量によらない.一般に晩発性障害の原因には、放射線被曝以外にもさまざまな原因があり、障害の起因性を急性症状のように放射線被曝であると特定することは困難である.そのため,まったく放射線被曝をしていない人々の集団の発症率と比較して被曝影響を求めることになる.特定個人の晩発性障害が放射線被曝によるかどうかの判定には,その個人の被曝前後の健康状態の変化を含め,過去からのさまざまな健康状態や他の疾病の経緯を総合して判断することになる.
被曝線量と晩発性障害の発症との関係は,例外もあるが,中程度の被曝の場合には.晩発性障害発症率の増加が被曝線量に比例すると考えられている.この関係がそのまま,低線量領域においても成り立つかどうかについては,さまざまなモデルが提唱されて,明確な結論はいまだに得られていない.最近になって,マイクロビームの放射線を特定細胞に照射し,その細胞に生じた障害が,照射を受けなかった隣接細胞にも生ずるバイスタンダー効果と呼ばれる現象が確認されており,低線量被曝の方が深刻な傷害を引き起こす可能性も示唆されている.
こうした問題があるが,具体的に低線量被曝影響を推定するために,広島大学原爆放射線医科学研究所(原医研)が広島県居住の被爆者の悪性新生物による死亡率を広島県民と比較した研究「昭和43〜47 年における広島県内居住被爆者の死因別死亡統計」5)にもとづいて、直爆被爆者の悪性新生物による1年間死亡率と被曝線量の関係を求める.この論文は,爆心地から1 km 以内,1 km〜1.5 km,1.5 km〜2 km,2 km〜6 km の各区分の直爆被爆者と非被曝の広島県民の悪性新生物による1年間の死亡率に対し,それぞれ 0.504 %,0.454 %,0.347 %,0.374 %,0.186 %を得た.これらの死亡率を,図4に■印で示したABCC の脱毛発症率から求めた全被曝線量に対して示すと図5になる.
爆心地から1 km未満の直爆被爆者の大半は,半致死線量の4シーベルト以上を被曝し,1968年までに死亡していることを考慮してこれを除き,悪性新生物
図5 広島県居住被爆者の悪性新生物による1年間死亡率と被曝線量の関係
の増加が被曝線量に比例するとして回帰直線を求めると,年間死亡率= 0.138% ×被曝線量+0.186%となる.すなわち,悪性新生物による年間死亡率は1シーベルトの被曝により0.138%増加する.
低線量被曝まで被曝線量に比例するとして,100万人が10㍉シーベルトの被曝をすると10年間で悪性新生物によって死亡する人が138 人増えることになる.晩発性障害に対しても個人差が大きく分布しており,抵抗力が弱いとされている人や若年層の場合には100ミリシーベルトの被曝は要注意である.ところが,政府は専門家の意見を聞いて急性症状の白血球減少症状が起こらないから,原発作業員の被曝線量許容限度を250 ミリシーベルトに引き上げた.しかし,しきい値論に立っての判断は危険で,作業員に被曝影響が出ても,しきい値以下だから放射線影響ではないと切り捨てる可能性がある.
図5のように被爆者の悪性新生物による死亡率は非被爆者よりも高いにもかかわらず,全死因による死亡率は男女とも非被爆者より9%低率である.これは被爆者が年2回の健康診断を国の責任で行ってきたことの反映である5).このことは,原発作業員など,今回の放射線によって被曝した人びとに対し,健康管理を国の責任で行う必要性を示している.
おわりに
原発は未完成な技術であるうえに、地震が多く人口が密集している日本ではいっそう危険性が高いので、一刻も早く原発を終息させ、エネルギー政策をあらゆる自然エネルギーの可能性を含めて転換すべきである.中部電力浜岡原発は、東海地震の震源域の上にあり、福島原発以上に深刻な事態を招くもっとも危険な原発である.そこで、3月15日に原発問題愛知県連絡センターは日本共産党愛知県委員会は中電に原発の即時停止を申し入れた。
安全性の問題に加えて、①放射性廃棄物の処理に見通しがないこと、 ②米国核兵器産業維持のための日米原子力協定でスタートしたこと、③原子力平和利用の自主・民主・公開の3原則のすべてに反する原子力政策の実態、④独立した原子力安全委員会ないし規制委員会がないことなどの問題がある。
「安全神話」を振りまいてきた専門家を除き,自主・民主・公開の基本原則に基づいて国民の安全に責任を持つ専門家を総結集して,強い権限を持つ原発事故委員会を立ち上げ,事故の収拾計画,スポット状汚染地域の放射能のきめ細かい測定と居住環境の調査,被曝した人びとの健康管理,汚染土壌の処理を含めた農業などの安定的再開,海洋と水産物の汚染のきめ細かい測定と公表などを推進することが何よりも必要である.
引用文献
1) 山崎文徳,沢田昭二,原爆症認定集団訴訟運動の到達点,『日本の科学者』43, No.3, (2008).
2) Preston, D. L., 馬渕清彦, 児玉和紀, 藤田正一郎, 長崎医学会雑誌73, 251-253 (1998).
3) Kyoizumi, S.,Suzuki, T., Teraoka, S. & Seyama, T., Radat Res 194, 11-18 (1998).
4) 於保源作, 日本医事新報, No. 1746, 21-25 (1957).
5) 栗原登ら;広大原医研年報22 号;235-255,1981.
(『日本の科学者』2011年6月号緊急特集に掲載予定)
沢田昭二 略歴
1931年広島市に生まれる。1945年爆心地から1400mの自宅で被爆 現在名古屋大学名誉教授。
原水爆禁止日本協議会代表理事。原爆症患者の認定訴訟のために尽力。主な著書:「共同研究広島・長崎原爆 被害の実相」 「核兵器はいらない」 「素粒子の複合模型」「物理数学」など。
広めます!http://george743.blog39.fc2.com/blog-entry-201.html
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