昨日からきょうにかけてXに投稿したことを一部修正して記す。
深センで殺害された中国人と日本人のミックスの男の子の父親によるものということで拡散されている手紙
なくなった子のお父さんが書いた手紙らしい。本当かわからないが、訳してみました。 https://t.co/gKhBIOXQBO pic.twitter.com/hmoDrxktUC
— 王陽🌝 (@wyang6636) September 20, 2024これについてだが、さきほど、中国出身で米国で大学教員をしている友人にこの手紙について聞いてみた。その友人によると、香港のフェニックスニュースをはじめとする報道各社が報道し、中国では広く拡散されたが、その後多くの媒体は削除したようだ。その背景には、この記事を受けて中国市民の、この犯罪と、極端なナショナリスト思想を持つ者たちへの怒りが爆発したことが背景にあったようだ。
圧倒的多数の中国市民はこの犯罪に怒り、悲しみ、遺族への追悼の気持ちと日中友好への思いを表明している。事件現場を訪れ花をたむける人が絶えない。フェニックスニュースの報道を友人がシェアした証として、スクリーンショットをここに置く。
「3天前」とあるが、それは友人がこの報道をシェアした9月20日、3日前のことだ(北米時間)。見出しは「深センで殺害された10歳日本人男児の父親「航平は日本人であり中国人でもある」と投稿ーフェニックスニュース」
星島網のニュースは今でも読むことができる。
Sintao Daily 星島網のニュースの見出しは「深センで日本人児童襲撃|亡くなった児童の日本人の父親が、中国を憎んでいるわけではなく、悲劇が二度と起こらないことを願っていると手紙で述べたとネットで報じられている。」である。亡くなった子は父親が日本人で母親が中国人のようだが、もしこれが逆で、父親が中国人で母親が日本人だったり、中国名を名乗っていたりしてたら日本の政府メディアやナショナリストたちのリアクションはまったく異なっていたであろう。この事件への反応はジェンダー問題、家父長制問題でもある。中国人でもあり日本人でもあるミックスの子を「日本人が殺された!」と大騒ぎするのは、逆にこの子の半分である中国人アイデンティティを完全に無視していることになり、「中国人なら殺されても無視していい」って言ってるのと同じですよ。命の選別とも言っていい。このことを受けて、複数のアイデンティティを持つ子たちがどれだけ動揺して、大人への信頼を失っているかと思う。もし日本で、日本人と米国人を親にもつ子が日本人に殺されて、米国政府、メディア、民衆までもがいっせいに「米国人が殺された!日本はこわい!日本はけしからん!反米教育のせいだ!」みたいに騒がれたらみなさん、「被害者は日本人でもあるのに」って思いません?ふつうだったら殺された子の属性を取り上げて大騒ぎするのではなく、許されない犯罪として、死者を悼み、その国の法律で裁くのを見守るのが当然なのに、今回の大騒ぎはやっぱり日本人(政府、メディア、民衆)に蔓延している中国敵視がベースにあるとしか思えないです。中国で、日本による中国侵略戦争の歴史を教えることが「反日教育」とか言う人たちは、米国による広島・長崎の原爆投下や全国の都市空襲を記憶し教えることを「反米教育」だと思っているのでしょうか。自国中心主義的なダブルスタンダードはやめよう。
中国の公式通報記録では、被害男児の苗字が沈です。
— 花🍎 (@Fkkttn) September 24, 2024
だからこそ、日本のマスコミは被害男児のことの詳細を報道できずにいるかもしれません。
「日本人被害男児 沈君」では、おかしいですもの。https://t.co/ZYjRYhkZgO pic.twitter.com/FUPy91lf9Q
父親の手紙であるとされる文書には「小山純平」という名が記されている。これが本当なら、日本人の「小山」さんを父に、中国人を母に持つ子どもの姓が「沈」さんだということになる。日本は結婚したもの同士に同じ姓を強制的に使わせる国だが、中国はそうではなく、それでも子どもの姓は父親の姓に合わせることが多いようだがが、母親の姓のときもある。また、ミックスの子どもたちは、ときと場合に応じて父の姓と母の姓を使い分けたり、セットで使ったりすることもある。だからこれは十分有り得ることだ。
先日Xでも書いたが、複数の国籍の間に生まれた子の「国籍」をどうするのかというのは国の規定やその家族の事情などいろいろなことを鑑みた上でその家族が決める個人的な選択だ。ある子が日本国籍を持っているからといってその子のアイデンティティが「日本人」でそれ以外ではないということではない。この子は中国人でもあり日本人でもある子だ。いずれにせよ、ある人が殺されたときその国籍の如何で政治的な意味づけをするのは間違っている。殺人事件は許されないことであり、その地の法律で裁くことだ。
いまわかっている情報では、被害に遭ったのは日本人でもあり中国人でもある「沈」さんという男の子であるということだ。
しかし上の「花」アカウントさんが言うように、日本政府やメディアは、「沈」さんという名前であると報じられていることも無視している。この子が中国人でもあり日本人でもあるというダブルのアイデンティティを持つこともほとんど語らない。なんとしても「日本人がやられた!」というナラティブに固執したいのであろう。
日本市民は政府やメディアのナラティブに惑わされず、この事件の被害者を中国の市民と共に悼み、被害者と遺族の痛みに心を寄せるという当たり前のことをしてほしいと思う。@PeacePhilosophy