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Tuesday, April 19, 2011

共同通信英語版の論説記事翻訳:チェルノブイリ専門家、「過小評価ではなく影響を最小化する対策を」A Kyodo Opinion Article by Alexey Yablokov: How to Minimize Consequences of the Fukushima Catastrophe

ヤブロコ博士らによるチェルノブイリ健康被害
研究結果をまとめた本 Chernobyl:
Consequences of the Catastrophe for People
and the Environment
(4月20日更新。沖縄タイムスに報道された記事を友人が送ってくれて、下に貼り付けています。これもネットにはないです。紙の媒体にアクセスできないので他に見かけたら教えてください。)

共同通信の英語版に掲載された、ロシアのアレクセイ・ヤブロコフ博士の論説を、翻訳ボランティアの方に即刻訳していただき、ここに紹介します。ヤブロコフ博士はチェルノブイリ原発事故の被害を過小評価しようとする重圧に屈せず、Chernobyl: Consequences of the Catastrophe for People and the Environment 『チェルノブイリ――大惨事が人と環境に与えた影響』(2009年)を筆頭著者としてまとめました。この本の紹介と、書評、この本の研究結果についてのビデオ(日本語字幕版)はこちらをご覧ください。下記、共同の記事の日本語訳、英語の原文、3月27日に録画された最新のヤブロコフ博士のインタビュー(英語)ビデオ、福島原発事故が発生した後の報道でヤブロコフ博士の談話を掲載している報道(共同通信、西日本新聞)を紹介します。

「福島」の現実をまず受け入れて、被害を少しでも抑えるための具体的対策を提案する博士の姿勢は、チェルノブイリの経験と知識に裏付けされたものであり、日本政府や東電に真剣に耳を傾けてほしいです。「最小不幸社会」を目指す菅首相、原発事故の「不幸」を少しでも抑えるために、過小評価ではなく、影響の最小化のための具体策を一刻も早く実施してください。


論説:福島での大惨事の影響を最小化する対策とは

アレクセイ・V・ヤブロコフ

モスクワ、2011年4月15日、共同通信

クリス・バスビー教授(放射線リスクに関する欧州委員会=ECRR)は、日本の文部科学省の公式データに基づき、福島第一原子力発電所事故による土地での放射能汚染がもたらす健康への影響を分析した。これによれば、今後50年間で、同原発から半径200キロメートル圏内では約40万人のがん患者が追加的に生じる可能性がある。

この数字には縮小の可能性があるが、増大の可能性もありうるが、それは事故の影響を最小化する戦略が行われるかどうかだ。過小評価を行うことは、過大な評価を行うよりも、国民と国家により大きな危険をもたらすことになる。

チェルノブイリでの経験に基づき、今回の大惨事以前の生活を速やかに取り戻すことはできないであろうことを理解した上で、「福島後」の現実を可及的に速やかに受け入れることが重要だ。

取るべき行動の主な方向性は次の通り。

1. 立入禁止区域を最低でも福島第一原発の半径50km圏まで拡大すること

2. 食物による追加的な汚染を避けると共に、個々人の健康を守る効果的な方法に関する具体的な指示を提供すること。個人線量計による(放射線核種全体に関する)定期的な計測を全員について、少なくとも週に一度は実施すること。放射線防護剤や除染剤(放射線の有害な影響から身体を守る物質)を配布すること。こうした種類の食品添加物は数多く存在する。

3. 汚染地域での安全な営農に関する勧告を作成すること。具体的には牛乳の再処理、肉の除染、食用生産から工業用生産(例、バイオ燃料)への転換など。こうした「放射性核種耐性型」農業は高コスト(従来型農業と比較して最高で3~4割程度割高)なので、補助金を支出する必要がある。

4. 被曝した人々が被る短期的かつ長期的影響に対処するため(染色体分析に基づく医学・遺伝学的診断など)、既存の医療センターを緊急に改良する――可能ならば新設する――必要がある。

5. 汚染地域での「福島後」の生活を支援するもっとも効果的な方法は(チェルノブイリでの教訓に基づくと)最初の数年間のもっとも困難な時期に起きる汚染地域での諸問題に対処するため、特別で強力な省庁横断型の政府組織(省または委員会)を設置することだ。

放射線の影響への対処では多大な経験を有する、ロシアやベラルーシ、ウクライナの放射線医学や農業の専門家、放射線生物学者や放射線生態学者は日本にいつでも協力する用意があると私は確信している。

(アレクセイ・V・ヤブロコフ氏はロシア科学アカデミー評議員で『チェルノブイリ――大惨事が人と環境に与えた影響』(2009年)の筆頭著者。)


From YouTube:
Interview with Dr. Alexey Yablokov co-author of "Chernobyl: Consequences of the Catastrophe for People and the Environment" recorded March 27, 2011.

Dr. Alexey Yablokov is a prominent Russian scientist, environmentalist, former member of the USSR parliament, and environmental advisor to former Russian President Boris Yeltsin and the Gorbachev administration. Dr. Yablokov has been a leader in efforts to reveal conservation and pollution challenges in Russia such as illegal whaling and radiation contamination, particularly in marine ecosystems and the biology of marine mammals.

OPINION: How to minimize consequences of the Fukushima catastrophe

By Alexey V. Yablokov

MOSCOW, April 15, Kyodo
http://english.kyodonews.jp/news/2011/04/85736.html

The analysis of the health impact of radioactive land contamination by the accident at the Fukushima Daiichi nuclear power plant, made by Professor Chris Busby (the European Committee of Radiation Risk) based on official Japanese Ministry of Education, Culture, Sports, Science and Technology data, has shown that over the next 50 years it would be possible to have around 400,000 additional cancer patients within a 200-kilometer radius of the plant.

This number can be lower and can be even higher, depending on strategies to minimize the consequences. Underestimation is more dangerous for the people and for the country than overestimation.

Based on Chernobyl experiences, it is necessary to understand that it may be impossible to quickly get back to life before the catastrophe and to accept the post-Fukushima realities as soon as possible.

The main directions of actions that should be taken:

1. Enlarge the exclusion zone to at least about a 50-km radius of the plant;

2. Distribute detailed instructions on effective ways to protect the health of individuals while avoiding the additional contamination of food. Organize regular measurements of all people by individual dose counters (for overall radionuclides) at least once a week. Distribute the radioprotectors and decontaminants (substances which provide the body protection against harmful effects of radiation) of radionuclides. There are many of such food additives;

3. Develop recommendations for safe agriculture on the contaminated territories: reprocessing of milk, decontamination of meat, turning agriculture into production of technical cultures (e.g. biofuels etc.). Such ''radionuclide-resistant'' agriculture will be costly (it may be up to 30-40 percent compared with conventional agriculture) and needs to be subsidized;

4. It is necessary to urgently improve existing medical centers -- and possibly create new ones -- to deal with the immediate and long-term consequences of the irradiated peoples (including medical-genetic consultations on the basis of chromosome analysis etc.);

5. The most effective way to help organize post-Fukushima life in the contaminated territories (from Chernobyl lessons) is to create a special powerful interagency state body (ministry or committee) to handle the problems of contaminated territories during the first most complicated years.

I am sure that Russian, Belarusian and Ukrainian radiation medicine and agriculture specialists, radiobiologists and radioecologists who have enormous experience in fighting radiation consequences will be ready to cooperate with Japan.
(Alexey V. Yablokov is a councilor for the Russian Academy of Science and a principal author of ''Chernobyl: Consequences of the Catastrophe for People and the Environment,'' published in 2009).

==Kyodo

参考報道

★沖縄タイムス 4月16日



★共同通信 3月25日

レベル6以上と海外専門家 スリーマイル超す事故

 【ワシントン共同】福島第1原発事故で、経済産業省原子力安全・保安院は国際的な評価尺度で「レベル5」の事故とする暫定評価結果を発表した。だが、周辺への影響は同レベルの評価を受けた米スリーマイルアイランド原発事故を既に上回っており「最終的にレベル6以上になるのは確実」との見方が海外の専門家に広がっている。

 レベル5は、0から7までの8段階の尺度のうち上から3番目。「発電所外へのリスクを伴う事故」を意味する。

 スリーマイル事故では、半径80キロ圏内に住む人が受けた放射線量は平均10マイクロシーベルトとされ、一般人の年間被ばく限度、千マイクロシーベルトの100分の1。健康に与えた影響は小さかった。

 一方、福島では、周辺の水や食物などから国の基準を上回る放射性物質が検出されていることから、外部に漏れた量はスリーマイル事故を大きく上回るとみられる。事故後3~4日の間に放出されたセシウム137の量は、レベル7の評価を受けた旧ソ連チェルノブイリ原発事故後10日間の量の20~50%に相当するとの試算もある。

 このため、フランス原子力安全局のラコスト局長は「レベル6の事故であることは明らか」と強調。米シンクタンクの科学国際安全保障研究所(ISIS)はレベル7に達する可能性もあるとした。

 チェルノブイリ事故の人や環境への影響を調べたロシアの科学者アレクセイ・ヤブロコフ博士は「福島事故はチェルノブイリ以上に深刻な事故になる恐れがある」と指摘。その理由として、燃料がチェルノブイリよりも多いことや、毒性の強いプルトニウムを含んだ燃料を使った原子炉があることを挙げている。

(2011年3月25日)

★西日本新聞

http://www.nishinippon.co.jp/nnp/item/233873 

「放射能被害を過小評価」 ロシアの科学者 福島原発を懸念

2011年3月27日

 旧ソ連で1986年に起きたチェルノブイリ原発事故について、人や環境に及ぼす影響を調べているロシアの科学者アレクセイ・ヤブロコフ博士が25日、ワシントンで記者会見し、福島第1原発事故の状況に強い懸念を示した。博士の発言要旨は次の通り。

 チェルノブイリ事故の放射性降下物は計約5千万キュリーだが、福島第1原発は今のところ私の知る限り約200万キュリーで格段に少ない。チェルノブイリは爆発とともに何日も核燃料が燃え続けたが、福島ではそういう事態はなく状況は明らかに違う。

 だが、福島第1はチェルノブイリより人口密集地に位置し、200キロの距離に人口3千万人の巨大首都圏がある。さらに、福島第1の3号機はプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料を使ったプルサーマル発電だ。もしここからプルトニウムが大量に放出される事態となれば、極めて甚大な被害が生じる。除去は不可能で、人が住めない土地が生まれる。それを大変懸念している。

 チェルノブイリ事故の最終的な死者の推定について、国際原子力機関(IAEA)は「最大9千人」としているが、ばかげている。私の調査では100万人近くになり、放射能の影響は7世代に及ぶ。

 セシウムやプルトニウムなどは年に1-3センチずつ土壌に入り込み、食物の根がそれを吸い上げ、大気に再び放出する。例えば、チェルノブイリの影響を受けたスウェーデンのヘラジカから昨年、検出された放射性物質の量は20年前と同じレベルだった。そういう事実を知るべきだ。

 日本政府は、国民に対し放射能被害を過小評価している。「健康に直ちに影響はない」という言い方はおかしい。直ちにではないが、影響はあるということだからだ。

=2011/03/27付 西日本新聞朝刊=

4 comments:

  1. 4月20日アップデートより。

    共同英語論説ロシアのチェルノブイリ専門家による重要提言翻訳
    http://p.tl/C16T 今のところ唯一沖縄タイムスの紙面で発見。友人が送ってく
    れたので貼り付けています。でもネットでは私のところ以外、なし。

    放射線を否定するのではなく市民を守るために対処を。IPPNW新チェルノブ
    イリ被害報告の要旨翻訳も完成http://p.tl/Pnmf。両方必読。政治家専門家等政
    策に関わる人にも送ってください

    日本、冷静な対応訴える チェルノブイリ支援国会合(共同)国連の潘基文事務
    総長は、日本は「最悪の事態への備えが足りなかった」と指摘。日本は支援額示
    さず。 http://fb.me/VYQ02SC4

    潘事務総長に事故対応のまずさを指摘され、国際社会からもそう見られているの
    に、日本製品を買ってもらうことを強調。チェルノブイリの会議で、支援の約束
    さえできない。日本はやはり日本のことしか考えてないと思われたのではないだ
    ろうか。http://p.tl/yEn5

    http://p.tl/PwgrTokyo: 気になる記事。無制限の被ばくなければ救命できない
    程の事態があったか。負傷者報道やはり謎が多い。建屋の水で被ばくした3人の
    その後も気になる。「普通の火傷の治療」してるとか当時信じられない報道して
    た。放医研連れてってそれはないでしょう。

    NHK World が保安院西山審議官にインタビュー。情報開示や、周辺国感情、事故
    対応反省点などストレートな質問をしている。日本語のNHKはインタビューは
    おろかこのような質問をしない。これを日本語でも報道してほしい。じゃないと
    海外向けパフォーマンスと取られても仕方ない。http://fb.me/SYDf1lk0

    http://p.tl/7-57 東洋経済は先日の京大今中哲二氏らによる放射線調査も報道
    したが、今回も福島の子どもたちへの年間20ミリシーベルトへの懸念記事を出
    し、メディアの中ではその良識が目立っている。

    http://p.tl/KcSJ NHK解説委員について。「歯に衣着せぬ物言い」とは褒
    めすぎのような気がするが、「視点論点」で東電、保安院を批判して以来「外さ
    れたか」との見方がネットで拡がっていた。その後出ているが減っている。それ
    を確認した記事と言えよう。

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  2. 「チェルノブイリの話ばっかりしても」という声を聞きました。

    どうしてチェルノブイリの話が大事なのでしょうか。

    福島事故がレベル7になるまでは「チェルノブイリなんかと比べるな」という議
    論がたくさんありました。そして今度本当にレベル7になったら今度は「チェル
    ノブイリは大したことなかった」という議論が蔓延しています(典型は官邸資料)。
    チェルノブイリに真摯に向かわずして福島に向き合えるはずはないのです。世界
    最大の原発事故、。チェルノブイリの体験と知識(失敗からの教訓も含めて)か
    ら学ばずしてどこから学ぶというのでしょうか。今まで人類の核の歴史ー広島長
    崎、核実験、原発 等の中で、放射線被害からしっかり市民を守れた例が一つで
    もあったでしょうか。「恐怖を煽る」とか言う前に、その歴史にしっかり目を向
    け、被害を最小化するために今すぐ行動しなければいけないのです。

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  3. 2011年4月30日(土)のNPR (National Public Radio--アメリカのラジオ放送)のニュースで小佐古参与辞任の、短いニュースを流していました。こどもの20ミリシーベルトのことにも触れていました。最近NPRでは日本の原発ニュースはちょい出しですが、でもしっかりニュースになっていました。

    久保田竜子

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  4. ジョージ6:00 pm

    記事にさせて頂きました。ありがとうございました。
    http://george743.blog39.fc2.com/blog-entry-454.html

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