「平和をつなぐキルト」制作裏話
「私たちにもキルトを作れないかな~!?」そんな話が最初にホワイトロックの会で持ち上がったのは、今から2年前の2008年のことです。日本国憲法第九条をいろいろな国の言語で、素晴らしいキルト作品にしておられる日高桂子さんの作品に感動してのことでした。
日高さんのキルトは、本当に素敵です。美しいだけでなく、そこに込められた平和へのメッセージは見る人の心に強く響きます。 ホワイトロックの会を進めている山本真理子さん、ロバーツ世以子さん、そして私。この3人でどれだけのことができるのでしょうか。
まずは仲間を集めようということで、クローバーの会(平和を愛するお母さんと子供の会)に相談しました。「これは、すごいプロジェクト!やりましょう。やりましょう。」と盛り上がったのです。が、問題は「誰もキルトを作った経験がない!」。
なんて無謀な企画なのでしょう!?何とかなるさという気持ちと不安を抱えながら、“平和をつなぐキルトの制作”という船は行き先もわからないままに沖へと漕ぎ出してしまったのでした。
ピース・フィロソフィー・センター、バンクーバー九条の会などを通して皆さんに協力を呼びかけると共に、ホワイトロックの会でもパッチワークを作る会などを企画しました。日本の日高桂子さんのグループからも、応援のパッチワークを送っていただきました。
だんだん具体的になってくると、「これはなんとか、できるだけ良いものを作りたい」と強く思うようになりました。それほど、皆さんから寄せられてくるパッチワークは貴重なものだったのです。
色も形も個性的……….
本当は9センチ角のピースを募集したのですが、慣れている人ならともかく、初心者が作るとだいぶ大きさも形も変わってしまうのは仕方がないこと。でも、それだけに「平和を願う」という共通の思いで頑張って作ってくれたんだな~と、その心意気がじわじわと伝わってくるピースたちでした。
これは、責任重大です。なんとしてでも全部のピースをつなげるために、キルト経験のある知人に教えてもらいに行ったり、図書館でキルトの本を借りて読んだり、コミュニテイ―センターの初心者用キルトコースにまで通ってしまいました。人生でこんなに手芸に打ち込む日が来ようとは、予想もしていませんでした。
手芸が得意というわけでもなく、特に根気があるわけでもなかったのに、「皆さんからお預かりしたパッチワークをなんとか形にしなければ」というプレッシャーに、調度良い具合いに背中を押してもらったという感じです。「今できる最高のものを!」と念じながらの制作の日々でした。
こんなにバラバラなピースがちゃんと1枚のキルトになるんだろうか。。。。そんな心配もありましたが、出来上がってみるとそれは本当にすごいパワーを感じるキルトとなっていました!ひとつひとつの個性がうまく調和しているのです。これは、それぞれのピースが「平和を!」という同じ方向を向いて作られたからなのかもしれません。
9センチ角のピースを実際に作られた方は、あの小さなピースが集まるとこれだけの力になるということにきっと驚かれるのではないでしょうか。
芸術的、技術的には不十分な’部分も多いのですが、子供から大人までほとんど針を持ったことのない人までが頑張って作ったと言う点で、このキルトの価値はものすごいと思います。ひとつずつのピースを作るのに費やした時間は、その人が平和について考えた時間でもあります。ということは、このキルトにはそれだけたくさんの思いと時間が込められているわけです。それがこのキルトのパワーとなっているのでしょう。
今度は、これを見た人が何かを感じ、平和について考えてくれることを期待したいと思います。
「平和をつなぐキルト」の制作が本当に私たちにできるのだろうかと不安だった初めの頃、日高桂子さんが「初心者でも、やる気さえあればできます。亀のようにコツコツとやっていけば。」と、背中をポンと押してくださいました。これはこのまま日高さんのお人柄を表しているような言葉で、今も心に残っています。日高さんには、いろいろなところで相談に乗っていただき、また励ましていただきました。
このキルトに掲げられた言葉、“We are love, and we are world peace.”は、乗松聡子さんからいただきました。この言葉によって、「平和をつなぐキルト」の方向性がよりはっきりしたものとなりました。
また、全体をどうやってまとめたらよいのだろう?と頭を抱えていた時、South Surrey 在住のArtist、Akiko・Michael さんが、字のデザインを快く引き受けてくださり、また色使いのアドバイスなどをしていただきました。
お名前を挙げきれないのですが、パッチワークを作ってくださった方々、「縫う会」に参加してくださった方々、それぞれの言語での「平和」を教えてくださった方々、アイデイアを与えてくださった方々、応援してくださった方々、その他数え切れない皆さんのサポートがあって、このキルトは完成できました。
皆さんに、心から感謝いたします。
みんなでナインパッチを縫う会を開いた時のこと、大きく広げたキルトの周りをぐるりと囲んで座ってチクチクと縫った時のこと、針を動かしながら語り合ったこと、全てが良い思い出でとなっています。制作に関わった方々、ひとりひとりがそれぞれの思い出をもっておられることと思います。とても楽しい時間でした。
日高桂子さんのお友達で、高橋真由美さんというキルト作家がおられます。(この方の作られた平和のキルトがまた、素晴らしいのです。)高橋さんは、「小さなピースをつな いで大きなキルトを作ることは平和運動と同じ」と、おっしゃっているそうです。ひとりひとりの声は小さいかもしれないけれども、それが集まったときには大きなパワーとなる。そのことを今回のキルト制作を通して、実感しました。
余談になりますが、最近裁縫箱の奥から、この企画をはじめるにあたって私が最初に作ったキルトが出てきました。鍋敷きを作った(つもり)のですが、これがひどい…….。正方形に作られているはずなのに、全体的に歪んでいるし縫い目もめちゃくちゃ。とんでもないシロモノです。こんなものを作っている状態で、よく「平和をつなぐキルト」なんて企画したものだと、我ながら恐ろしくなりました。と言うより、呆れてしまいました。
でも、ここで諦めてしまっていたら「平和をつなぐキルト」は生まれてこなかったわけです。常識的には「無理」だったのかもしれないけれど、なんとか完成にまで辿り着くことができました。
「軍備のない平和なんてあり得ない。」「核兵器のない世界は考えられない。」「 憲法九条を守ろうなんて無理。」などなど、この世にはたくさんの「無理」や「不可能」と言われることがあります。時にはそれがなんだか現実的に思えてしまうこともあります。
無理だと思って止めてしまったらそれまでだけれど、常識では不可能と言われることでも可能になると信じて進んで行くと、何かが変わっていくのかもしれません。
これからも、大きな希望を持って歩き続けていきましょう!
“We are love, and we are world peace !”
2010年4月
原 京子 (ホワイトロックの会)
Kyoko Hara
Thank you Kyoko-san. Personally, what struck me most as "peaceful" in the process was seeing boys and men holding the needles and threads, and making those nine-patches, in most cases, a lot better than I did. This is the kind of activity that the G20 leaders should be engaged in at the Summit.
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