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Sunday, April 01, 2012

世界を破滅に導くミサイルの発射実験をしているのは誰か:『クリスチャン・サイエンス・モニター』誌クリーガー&エルズバーグ論説 Krieger and Ellsberg call for eradication of land-based "doomsday" missiles: Japanese translation

Here is a Japanese translation of an article in The Christian Science Monitor by David Krieger and Daniel Ellsberg, which appeared on March 27, 2012. Translated by Izumi Tanaka.

米国『クリスチャン・サイエンス・モニター』誌 The Christian Science Monitor に3月27日掲載された、米国の反核運動を代表する二人の声-デイビッド・クリーガーとダニエル・エルズバーグによる論説の日本語訳を紹介する。日本では311以来原発への危機感が全国で高まっているが、この記事は、人類が核兵器による滅亡の危機といまだに隣り合わせに生きていること再認識し、発電用だろうが殺人用だろうが、核は人類が自らと地球環境にもたらした脅威であり、その廃絶のために発言し行動することは市民としての責任であるということを思い出させてくれる。ベトナム戦争時身の危険を冒して米国の機密文書を公開したエルズバーグ氏は80歳を超えた今も「オキュパイ運動」等市民運動に直接参加して逮捕され続けている。見習いたいと思う。@PeacePhilosophy

For nuclear security beyond Seoul, eradicate land-based 'doomsday' missiles
http://www.csmonitor.com/Commentary/Opinion/2012/0327/For-nuclear-security-beyond-Seoul-eradicate-land-based-doomsday-missiles

核の安全保障のためにはまず「ドゥームズデイ(世界終末)」ミサイルを廃棄せよ


アメリカが保有する、発射体制が整っている地上配備型核弾道ミサイルは450もあり、「核攻撃の抑止」とは正反対の位置にある。それどころか、警報が誤作動した場合、それらの配備自体が第三次世界大戦を起こし人類滅亡につながる可能性をもつ。これは何も大袈裟に言っているのではない。

デイヴィッド・クリーガー、ダニエル・エルズバーグ

翻訳 田中泉

サンタ・バーバラ、ケンジントン(カリフォルニア)発

David Krieger
オバマ大統領ら世界の指導者たちは今週、安全が確保されていない核物質のもたらす脅威について話し合うため、韓国・ソウルで開かれた核安全保障サミットに集っていた。オバマ氏がもし本当に核の安全保障について懸念しているのなら、一瞬の通告を受けただけでロシアに発射できるよう配備されている450発の大陸間弾頭ミサイルの廃棄処分を真剣に検討すべきだろう。

先月、カリフォルニア州サンタ・バーバラの約70マイル北にあるヴァンデンバーグ空軍基地で夜中に逮捕された15人の抗議者の中に、私たちもいた。私たちは目前に迫っていた大陸間弾道ミサイル、ミニットマンⅢのテスト発射に抗議していたのだ。

これらの実験を行う際に空軍が持ち出す言い訳は、米国の核抑止力の信頼性を確保するためというものである。しかし核兵器を搭載し、発射準備も整った状態で地上配備された大陸間弾頭ミサイルは攻撃への抑止力とは対照的な存在だ。それどころかこれらが配備されていることによって第3次世界大戦が開始されてしまい、人類の滅亡が早まる恐れがある-それも警報の誤作動によってだ。

大袈裟に言っているのではない。理由はこうだ。これらの核ミサイルは先制攻撃兵器であり、そのほとんどは[敵の]核攻撃に耐えられるものではない。ロシアによる核攻撃の警報が出た場合、格納庫内のミニットマンⅢミサイルが敵の弾頭によって破壊される前にこれらのミサイル450発をすべて発射してしまう動機になり得る。

もしそれが誤報だと判っても(これまでにいくつもの誤報が出されている)、エラーを感知する前に米国のミサイルが発射されていれば、第三次世界大戦が始まってしまう。ロシアでも同様に、攻撃を検知したとの警告に基づいて、自分たちの地上配備ミサイルを発射する動機になってしまう。

米国とロシアの地上配備型ミサイルはどちらとも常に厳戒態勢にあり、数分間で発射できるよう準備が整っている。これらのミサイルの飛行時間は30分である。そのため米国とロシアどちらの大統領とも、差し迫った攻撃があると伝える情報を(一次的な脅威評価会議の後で)軍部指導者から提示された際には、わずか約12分でミサイル発射についての決定を行わなければならないだろう。
Daniel Ellsberg

つまり、世界規模の核戦争を開始するかどうかを大統領が決断する時間は、わずか12分かそれ以下、ということである。このシナリオ通りになる可能性は低いかもしれないが、可能であることは間違いない。各国の大統領たちは、繰り返しそのリハーサルをやってきたわけだし、起こりうる結末の重大性を考えるとその可能性を排除してしまうことはできない。

ロシアは、1995125日に出された警告に基づき、すんでのところでミサイルを発射するところだった。エリツィン大統領は真夜中に起こされ、米国のミサイルがモスクワに向かっていると告げられた。幸運なことにエリツィンは慎重に対応し、対抗してロシアの核弾頭ミサイルを発射するかどうかの決断に、予定を超過した時間をかけた。

その延長時間の間に、ミサイルはモスクワに向かう米国のミサイルではなく、ノルウェーの気象衛星だったことが明らかになった。大惨事は危機一髪で回避された。

これからがこの話の本当に説得力がある部分だ。もし熱核弾頭を搭載した米国の地上配備型ミニットマンⅢミサイル450発すべてがロシアに向けて発射されるようなことがあれば-現在の計画ではその標的の多くが都市の中、または都市の近くだが-その結果、おおかたの人類と共に、米国人のほとんどが死亡するだろう。米国、および世界中にこれらの死をもたらすことに対して、私たち自身の兵器が貢献するのだ。ロシアが核弾頭を発射してきた場合と同じぐらいか、それ以上に。

なぜなら、米国による核先制攻撃がたった一度でも「成功」するだけでも巨大な核の爆風を引き起こすのである。その煙は、世界の気候に破滅的な混乱を招く。そして地球を保護しているオゾン層を大規模に破壊し、世界的な飢饉へと導くだろう。

アラン・ロボック(ルトガーズ大学)、ブライアン・トゥーン(コロラド・ボールダー大学)、リチャード・トゥルコ(UCLA)とその同僚ら大気の研究者たちが行った最近の査読済の研究によると、そのような攻撃によって巨大な爆風が引き起こされ、地球の成層圏は瞬く間に濃密な煙の層で包まれることになる。

その黒い煙は太陽によって温められ、熱気球のように舞い上がる。そして少なくとも10年間は成層圏に滞留するのだ。それにより、地球の表面に到達しようとする太陽光が広い割合で妨害・阻止されることになる。暖かい太陽の光が激減すれば、世界中でただちに氷河時代のような気候条件が生まれるだろう。これによって10年間は、作物の栽培期間がなくなるか、または大幅に短くなるので、人類のほとんどか全員に飢餓がもたらされる可能性が高い。

その他の影響と共に-長期間に渡るオゾン層の破壊も含まれる-地球上のきわめて複雑な生命の営みが破壊されうるのだ。約6500万年前に彗星が地球に衝突し、世界中に塵の雲がたちのぼって太陽光が減少した。 気温は下がり、植物が枯れた。それと似たプロセスになるのではないか、と科学者らは言う。それは恐竜、および地球の生物種の70%の絶滅を招いた。

私たちの場合、絶滅の原因は外部から来た天体にまつわる事象ではないだろう。むしろ、私たちが自らの知恵をもって自らの安全のためと称して作り出した核兵器の発射によるのだろう。

ゆえにヴァンデンバーグ空軍基地からのミニットマンⅢミサイルの実験とはまさに、米国の核のドゥームズデイ(世界終末)装置の実験なのである。

核兵器は、米国もしくは世界をより安全にするものではない。特に、ミニットマンⅢミサイル-地上に配備され、脆弱で、厳戒態勢におかれ、警報の誤作動を受けて発射されてしまいやすい-は私たちから安全を奪っている。人類に未来があるかどうかを気にかけるなら、誰もがこれらの実験に抗議すべきである。そして、核兵器の完全な撲滅への最初の一歩として、核弾頭を積んだ大陸間弾道ミサイルすべての撲滅を呼びかけるべきだ。

もしも今米国が、核兵器を搭載した地上配備型ミサイルを処分したとしても、核攻撃への報復用に持つ強力な潜水艦発射型大陸間弾道ミサイル288発(およそ1152発の核弾頭を搭載)がまだ残っている。だが、緊張が高まった時や誤った攻撃警報が出た時に、ロシア側が先制攻撃を仕掛けたくなるような対象はもはやなくなる。

それでも米国(そしてロシア)の核弾頭のすべてを、人類の滅亡を引き起こす可能性がないレベルまで削減することはぜひとも必要だろう。

インドとパキスタンが持っている、より小規模な現行の核兵器でさえも世界的な大惨事を招く恐れがある。ロボック教授とその同僚たちの推定では、インドとパキスタンの間の核の応酬でそれぞれが広島級の爆弾50発を使った場合(どちらも現在それ以上の数を保有しているが)成層圏へ上がっていく煙は世界中で太陽光を減少させ、オゾン層を破壊する。それにより不作と世界的飢餓が導かれる。

それに比較して、米国とロシアが保有していて、いつでも発射できるようになっている熱核兵器の爆発力は、インドとパキスタンが保有する原爆100発分のおよそ500倍である。今こそ世界の人々と国々は、人類を滅亡しかねないものに対して立ち上がり、政治的指導者たちが核兵器ゼロへの道を歩むように要求すべきだ。それは核不拡散条約、および国際司法裁判所の規約で義務付けられている道筋だ。それまでは、私たち市民が反対運動と抵抗を続けなければいけない。

私たちは2つの主なゴールに向かうべきである。1つ目は、既存の核兵器保有国が、警告を受けての発射および核の先制攻撃を、いかなる状況下でも放棄すると誓うことである。2つ目は、段階的で、検証が可能で、撤回が不可能で、透明性のある核兵器撲滅のための新条約締結に向け、誠実な議論が行われることだ。

私たちは非暴力の市民的抵抗を続け、逮捕され、連邦裁判所に出廷し、一般の人々に私たちの行動を説明することによって米国の人々の目を覚まし、共通の未来に向けて最大の重要性をもつこの問題にひきこむことができればと願っている。


デイビッド・クリーガーは核時代平和財団 (Nuclear Age Peace Foundation) の会長。ダニエル・エルズバーグは同財団の特別上級研究員、元国防総省の戦略アナリストであり、米政府のベトナム戦争の極秘文書『ペンタゴン・ペーパー』を暴露したことで知られる。この記事は著者たちの個人的な見解である。著者たちは記事執筆にあたり、スティーブン・スター、アラン・ロボックの助言を得たことに感謝している。

参考報道 2012年3月28日毎日新聞

核安全保障サミット:閉幕 兵器転用への対応急務 減らぬ核物質、12万発製造可能
http://mainichi.jp/select/world/news/20120328ddm007030093000c.html
【ソウル会川晴之】核安全保障(セキュリティー)サミットで議長を務めた韓国の李明博(イミョンバク)大統領は27日夕の総括会見で、「高濃縮ウラン(HEU)やプルトニウムの使用を削減することが核テロ予防には重要」と強調した。しかし、原子力発電所の世界的な普及や、核兵器開発を続ける国が後を絶たず、核兵器に転用可能な両物質の量は、減少していない。核セキュリティーだけでなく、核軍縮、核不拡散でも首脳による取り組み強化が求められている。
国際原子力機関(IAEA)や、核科学者で構成する「核分裂生成物質に関する国際パネル(IPFM)」によると、2010年末時点で、世界中に存在するプルトニウムは約500トン、高濃縮ウランは1400トンに達する。IAEAは、プルトニウムだと8キロ、高濃縮ウランなら25キロで「核兵器製造が可能」と分析し、単純計算では12万発を超す核兵器製造に十分な量の核物質があることになる。
核兵器国のうち米英仏露の4カ国は、東西冷戦終結後の90年代以後、軍事用核物質の製造を中止している。しかし、中国は、製造中止に踏み切らず、両物質の製造を禁止する兵器用核分裂性物質生産禁止(カットオフ)条約の交渉開始にも難色を示し続けている。また、IPFMによると、インドとイスラエルが軍事用プルトニウム、パキスタンは軍事用高濃縮ウランの製造を続けていると見られる。イランや北朝鮮のウラン濃縮活動も国際社会の懸念材料だ。
一方、プルトニウムは、「原子力発電所で使用した核燃料を再処理して取り出す量に比べ、使用量が大幅に下回る傾向が続いている」(IAEA)ため、商業用の余剰量の増加が続いている。プルトニウムを核燃料として使う高速増殖炉の開発が進まず、代替策として、プルトニウムとウランを混ぜたMOX燃料を製造しているものの、価格が天然ウランの「3割増~2倍」(核専門家)のため、利用が進まないためだ。
こうした事態を打開するため、米露両国は、世界中に約200ある研究炉の核燃料や、がん治療用などの医療用アイソトープ製造に使う高濃縮ウランを、濃縮度20%以下の低濃縮ウランに置き換える取り組みを進める。この2年間でウクライナやメキシコなど8カ国で480キロの置き換えを実現した。
今回の会議でも、米国は、(1)欧州の約8割の医療用アイソトープ製造を手がけるフランス、オランダ、ベルギーの3カ国に、2015年から新たな原料を供給する(2)韓国、フランス、オランダと共同し、使い勝手の良い新たな研究炉用核燃料を提供する--と発表するなど、新たな対策を打ち出した。
「核なき世界の実現」を掲げるオバマ米大統領は26日、ソウルでの演説で、戦略核兵器だけでなく、ロシアとの間で戦術核兵器の削減交渉を進める考えを示した。「より安全な、幸せな世界を世界の子供たちに残す」(李大統領)ためには、米露を含め、国際社会が大胆な核軍縮や核不拡散対策を講じなければ、「核テロ」の原因を取り除けない状況は続く。
毎日新聞 2012年3月28日 東京朝刊

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