2014年8月9日長崎原爆朝鮮人犠牲者追悼早朝集会 |
長崎原爆朝鮮人犠牲者追悼早朝集会メッセージ
長崎に原子爆弾が投下されたあの日から、六九年もの歳月が流れました。私たちは長崎原爆の犠牲となった朝鮮人を悼み、この追悼碑の前に集っています。一九七九年八月九日、岡正治牧師の呼びかけによって建立されたこの碑の除幕式に集った人々はわずか四〇名足らずでした。戦後三四年経っても、朝鮮人被爆者の存在は無視されていたといっても過言ではありません。朝鮮人被爆者は被爆者総数の一割にも及ぶと次第に知られるようになったのは、孫振斗裁判をはじめ、在韓被爆者の度重なる提訴や長崎在日朝鮮人の人権を守る会の実態調査があったからに他なりません。日本の朝鮮植民地支配と強制連行政策の犠牲者であることを認識するにつれて、良識ある人々は胸を痛めました。しかし、被爆者援護の政策から、在韓被爆者を最大多数とする在外被爆者が排除され、今なお差別が残されているのもまた事実です。
長崎在日朝鮮人の人権を守る会の代表でもあった岡正治牧師は除幕式において、「爆死し、異郷の地で悲惨な生涯を閉じられた朝鮮人のために、その追悼碑を建立することを決意した。無論、このささやかな追悼碑の建設によって、かつて日本帝国主義が、朝鮮を武力で威嚇し植民地化し、その民族を強制連行し、これを虐待酷使し、強制労働に従事させ、遂にはあの悲惨な原爆死に至らしめた戦争責任は決して消滅するものではない。」と述べています。この認識は、本日これほど多数お集まりの皆様と深く共有されているものと信じます。
高實康稔 |
長崎在日朝鮮人の人権を守る会の代表でもあった岡正治牧師は除幕式において、「爆死し、異郷の地で悲惨な生涯を閉じられた朝鮮人のために、その追悼碑を建立することを決意した。無論、このささやかな追悼碑の建設によって、かつて日本帝国主義が、朝鮮を武力で威嚇し植民地化し、その民族を強制連行し、これを虐待酷使し、強制労働に従事させ、遂にはあの悲惨な原爆死に至らしめた戦争責任は決して消滅するものではない。」と述べています。この認識は、本日これほど多数お集まりの皆様と深く共有されているものと信じます。
「兄は私より一年前に北海道より北のサハリンの炭坑に徴用されました。私は昭和一九年(一九四四年)、夜寝ているときにいきなりカワニナを獲るように連行されました。それは結婚して五ケ月目の時です。私は二二歳、妻は一六歳でした。」「私は造船所では四年間で何隻も船を造りました。「航空母艦」も造りました。飛行機が二階に全部載るほど大きいものです。大砲も機関銃も乗せて飛行機爆弾も乗せて、下を見下ろせば七階の高さです。組み立ての時は生死の境目に立っているようで危険です。内部は至る所に空洞があり、足を踏み外し間違って落ちれば大変なことになります。感電して死ぬ人、落ちて死ぬ人、それが限りなく出てきます。」「私はサハリンも行って、サハリンで徴用にかかって、九州ハシマにも行った。解放される前の年に妻がサハリンに入ってきて八日間だけ妻と暮らし、解放の年の四月にサハリンで娘が生まれた。解放の時、ウェノム(日本の奴)はサハリンの妻たちを韓国に必ず送ると言うので、それを信じて私たちはそのまま先に韓国に帰還した。その後サハリンとは連絡も途切れた。」
これらの証言は、長崎在日朝鮮人の人権を守る会が今春出版した『原爆と朝鮮人』第七集から引いたものですが、朝鮮人強制連行、強制労働、家族離散の真実を告発する無数の証言のごく一部分に過ぎません。しかし、これらの事実からだけでも、朝鮮人の原爆被爆の原因が日本による植民地支配と強制連行・強制労働にあることは明らかです。私たちはその歴史的因果関係を深く認識しなければなりません。
また、これらは、韓国の政府機関である「対日抗争期強制動員被害調査及び国外強制動員犠牲者等支援委員会」が刊行している被害者の申述集『私の体に刻まれた八月』と『酷い別離』に掲載されている証言ですが、同委員会が長崎に関する部分の翻訳(要約)を『原爆と朝鮮人』第七集に掲載することを快諾してくださったからこそ、今や私たちも読むことが可能となったのです。。委員会と翻訳の点検をしてくださった許光茂先生にどれほど感謝しても足りません。ここに厚く御礼を申し上げる次第です。
原爆が非人道的な兵器であることは論を俟ちませんが、それ故に核兵器廃絶を訴えるだけで足りるとは到底いえません。朝鮮人強制連行・強制労働に対する責任を問うのみならず、日本人の場合も被爆死の多数を占める徴用・学徒動員・挺身隊動員・報国隊動員の責任を問う必要があります。朝鮮人を酷使した三菱重工業や新日鉄住金に賠償を命じる判決が昨年7月、韓国の高等裁判所で下されたことは歴史的必然と言うことができます。一九六五年の日韓基本条約で「完全かつ最終的に解決済み」とする日本政府や企業の主張は人道に反するばかりではなく、個人の賠償請求権は国家たりとも奪うことはできないという戦後進歩した国際法の規範に反するものだからです。
安倍内閣は本年七月一日、集団的自衛権の行使容認を閣議決定しました。当然ながら反対世論が噴出しています。日本国民は、朝鮮人原爆犠牲者の無念の叫びに応えるためにも、「自存自衛」などと偽る戦争を絶対に再び許してはなりません。
以上の見地に立ち、また積年の課題を含めて、私は次のとおり日本政府に要求します。皆さんの賛同を得られれば幸いです。
一、在外被爆者に対する医療費支給を国内被爆者と平等に全額支給すること
一、朝鮮民主主義人民共和国在住の被爆者に被爆者援護法適用の道を開くこと
一、個人の損害賠償請求権を認め、抜本的な戦後補償政策を確立すること
一、日朝ピョンヤン宣言に基づいて、日朝国交正常化を早期に実現すること
一、集団的自衛権行使容認は無謀かつ憲法違反であり、その閣議決定を撤回すること
最後になりましたが、早朝にもかかわらず、本集会にご参集くださった皆様に心から感謝を申し上げ、メッセージを閉じさせていただきます。
二〇一四年八月九日
長崎在日朝鮮人の人権を守る会代表 髙實康稔
追悼碑に献花する学生 |
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